28 / 43
カーマインの力。
しおりを挟む
ーーーーー
その翌日、私はトープくんたちに断りを入れて今日の勉強は休みにしてもらった。
もう一度あの木のところに行きたくて、作ったサンドイッチを持って朝から歩いて行く。
「たぶんこっちで合ってるはず・・・。」
枯れた木があったのは広大すぎる場所だった。
そのことから考えて、がむしゃらに真っ直ぐ歩いて突っ切ればあの場所に辿り着くと計算したのだ。
「お腹が空いたらサンドイッチを食べるか、昼ぐらいに食べるか悩むところだなぁ。」
昨日初めて見た木だったけど、あの木が『桜』かもしれないと思った私はもう一度ゆっくり見たいと思っていた。
花が咲くならお花見もいいと思うけど、あの木に懐かしい感じがしたのが気になって仕方ない。
「まぁ桜だったら懐かしく思うよねぇ、この世界に日本のものなんてないし。」
お皿やコップ、食べ物なんかは馴染みがあるものもあるけど、桜ほどの規模のものはない。
自分の名前に『桜』って漢字が使われてることもあって、じっくり見たかったのだ。
「あの木の下だったら昨日のこともゆっくり考えれそうだし。」
そう思いながら私は茂る森の中を進んでいった。
太い根が地面を盛り上げていて、山登りのようなテンションで歩きながら休憩を何度か挟んであの場所に向かったのだった。
ーーーーー
「つ・・ついた・・・。」
恐らく昼をとっくに回ったころに広大な草原にでた私。
まだ遠くに見えてる木は少し小さく見えてることから、まだもう少し歩かないと行けなさそうだ。
「食べながら歩こうかなぁ・・・って、それは行儀悪いか。」
目標物を視界に捉えれたことで気が楽になったわたしは、もう目的地で食べることにして歩いて行った。
森の中と違って周りを見回せる草原は目が楽しくて、鼻歌を歌いながら歩けてしまう。
「♪~・・・」
吹き抜ける風を感じながら歩いて行くと、幅の広いあの木の下に誰かがいるのが見えた。
立派すぎる木の幹にもたれかかって、腕を組んで座ってる。
「あれは・・・カーマインさん?」
見覚えのある短髪の髪型。
近づいていくと彼で間違いなかった。
「・・・寝てる。」
「・・・zzz。」
足を真っ直ぐに伸ばして幹にもたれかかり、すぅすぅと眠ってるカーマインさん。
まさか私以外にお客がいると思わず、どうしようか悩んでしまう。
「起こす・・のも悪いよね。仕事で疲れてるんだろうし・・。」
草原であるこの場所は風が気持ちよく吹いてる。
きっとそれが心地よくて眠ってしまってるのだろう。
起こすのが忍びなくて私は少し離れて腰を落とした。
広大な草原を眺めながらサンドイッチを取り出す。
「へへっ、いただきまーす。」
大きな口を開けてサンドイッチを食べようとした時、カーマインさんの体がもそっと動いた。
「あれ・・・?マオ・・?」
「あ・・起きました?おはようございます。」
ぱくっとサンドイッチにかぶりつくと、カーマインさんは崩れた姿勢を直すように体を動かしてる。
「え・・お前、ここまでどうやって来たんだ?」
「歩いてですよ?ちょっとゆっくり見てみたくなったんで来ました。」
そう言いながらサンドイッチを食べ進めてると、カーマインさんの視線がサンドイッチに移っていったのがわかった。
お昼を回ってまでここで眠っていたのなら・・・まだ昼ご飯は食べてないだろう。
「一つ食べます?」
そう聞くと彼は驚いた顔をしていた。
「え・・・!?」
「お昼まだでしたらどうぞ?まぁ、簡単なサンドイッチですけど。」
そう言って私はカバンからサンドイッチを一つ取り出した。
「・・・いいのか?」
「?・・・はい。ちょっと味は満足できてないんでその辺は勘弁してくださいね。」
カーマインさんに手渡したのは『たまごサンド』だ。
この世界、卵はあるけどマヨネーズはない。
卵と油、それに酢があればマヨネーズは作れるから作ったんだけど、大手メーカーの味に慣れてしまってるのかどうしても味に納得できない自分がいた。
(改良の余地あり。)
そんなことを考えてるうちにカーマインさんは私が作ったサンドイッチをばくっ・・!と、食べていた。
大きな口だからかパンの半分ほど無くなってる。
「!!・・・うまっ!?」
「疑問形?・・・ふふ。」
よくわからない感想に笑いながらサンドイッチを頬張る。
少し味が物足りないマヨネーズがなんとも言えない味だけど、外で食べるご飯は格別だ。
目から入ってくる景色や耳に聞こえる自然の音が調味料になってくれる。
「こんなの食べたことない・・・これ、マオが作ったのか?」
「え?・・・あ、そうですね。料理は好きなんで・・・。」
前の世界でも自炊はしていた。
時間さえあるのなら凝ったものも作りたかったけどなかなか時間が取れなかったのだ。
(料理検定とか取ったけど・・・結局使うことなかったし。)
何かの役に立つかと思って取った資格だったけど結局小学校の教員で就職が決まり、あまり『家庭科系』の資格は活用できなかった。
中学や高校の教員で採用が決まっていたらまた違ったのかもしれないと思うけど、違う世界に来てしまってる今、そんなこと考えたって何の意味もない。
「マオは・・・前の世界で何してたんだ?こことは違う世界だったんだろ?」
「まぁ・・そうですね。あ、でも大きくは違いませんよ?人がいて、家があって、お店があって・・・学校とか。」
「がっこう?」
「勉強しに行くところですね。みんな6歳になったら通う義務が発生するんです。15歳になるまでいろんなことを学んで・・・大きく成長していくんです。」
子供たちは義務教育期間の中でも小学校の間が一番大きく成長する。
知能や体はもちろんのこと、心も。
「マオはそこでも勉強を教えてたのか?子供たちに教える姿は随分慣れてるように見えたが・・・」
「あー・・ご名答です。コパーくんたちよりもっと小さい子から上は18歳まで教える資格を持ってました。」
「しかく?」
「お給金をもらって教えるには国の試験を受けて『教えれます』って証明がないといけないんですよ。・・・あ、カーマインさんの耳飾りみたいな感じですかね。」
力が使える者がつけてるという五角形の耳飾り。
ピアスのようだけど、これも資格証明書みたいなものだ。
「なるほど・・・。」
「文字の読み書きができないくらいの年の子にはお話を聞かせてあげたりとか、もう大人の仲間入りするくらいの年の子は、興味のあることを深く深く教えて・・・って、そんな感じでしたね。」
私は前の世界の生活をカーマインさんに話していった。
思えばこんな話をするのはここに来て初めてのことで、思い出しながらの話は私にとってとても楽しものだった。
楽しかった学生時代や苦労した初めての教育実習、家族でのバーベキューのことなんかがまだ鮮明に思い出せれる。
(これもいつか朧げな記憶になっていくんだろうなぁ・・・。)
そんなことを感じながら話していくけど、カーマインさんは私の話を真剣に聞いてくれていた。
相槌は欠かさないし、なんならずっとこっちを見ながら頷いてくれていたのだ。
聞き上手なのかと思いながら一通り話した私は、次はカーマインさんのことを聞こうと思って問うことにした。
「・・・カーマインさんは?」
「うん?」
「カーマインさんは騎士団として働くようになる前はどんな生活してたんですか?」
そう聞くとカーマインさんの顔から笑顔が消えていった。
聞いてはいけないことだったのかと思ってると、小さめな声でカーマインさんが話し始めたのだ。
「俺は・・俺に力があることがわかるまでは普通の生活してた。それこそコパーとかメイズとかみたいなな。」
「『力があることがわかるまで』?・・・10歳頃くらいまでってことですか?」
「あぁ。」
カーマインさんは作物を作る農家の家庭に生まれたらしく、毎日新鮮な野菜を口にしていたらしい。
朝は家の手伝いをして、昼からは同年代の子供たちと遊び、夕暮れ時に家に帰ってくる。
そんな生活をしていたらしいのだが、10歳の時に受けた『騎士判定』のテストで彼の周りは激変したそうだ。
「まぁ、『力』を持って生まれたことは喜ばしいとされてるんだけど、俺の力は独特というか・・ちょっと異質なものでさ。俺の周りに誰も近寄らなくなって・・・」
「え?誰も?ご両親もですか?」
「・・・そう、両親も。」
その激変した生活に耐えれなくなったカーマインさんは家を出ることを決め、ずっと城下町にある騎士団の寮のようなところで生活をすることに決めたのだとか。
そこで出会ったのがトープさんとセラドンさんらしく、二人はカーマインさんの力を理解し、受け入れてくれてるらしくて気を許せる唯一の存在らしい。
「あいつらがいるから・・他から無下に扱われても平気だし、仕事もできる。感謝しかない存在なんだよ。」
そう笑顔で話してくれるカーマインさんだけど、私はその『力』がどんなものなのか気になって仕方なかった。
(周りの人が離れていくような『力』って・・なんだろ。毒とか?)
そんなことを考えてると、私の考えが分かったのかカーマインさんは困ったように笑いながら教えてくれた。
「俺の『力』は『言霊』なんだ。対象物に触れて問うと、嘘偽りない答えを聞き出せるし、命令もできる。」
「・・・言霊!?」
「そう。まぁ、『力を使う』って思わない限り何も起こらないけどな。」
「へぇー・・・!」
聞き出したいことを聞けるなら情報系で役に立ちそうだ。
敵がいるなら尋問すればすぐに情報を聞き出せるし降伏させることもできる。
仲間内でも何かあれば全員から『本当のこと』を聞き出すことはできるだろう。
ただ、その『本当のこと』が主観的なものであればあるほどごちゃごちゃになるかもしれないけど・・・。
「あれ?じゃあもしかしてカーマインさんの近くにいた人が遠巻きになったのって・・・」
「俺に何か聞かれたり言われたりするのを恐れて・・・ってとこだな。」
「あー・・なるほど。」
秘密にしてることを無理矢理聞き出されたらいい気はしない。
言いたくないことやしたくないことを無理矢理させられるのも嫌なことだ。
(でもカーマインさんってそんな無理矢理みたいなことはしないと思うけど・・・。)
そんなことを考えながら私はまた一口サンドイッチを頬張る。
むしゃむしゃと食べ進めていくと、カーマインさんが不思議な顔をしながら私を見てることに気がついた。
「?・・・どうかしました?あ、おかわりですか?」
もう一つサンドイッチを取り出そうとカバンに手を入れると、カーマインさんは私を覗き込むようにして見てきた。
「お前・・逃げないのか?」
その翌日、私はトープくんたちに断りを入れて今日の勉強は休みにしてもらった。
もう一度あの木のところに行きたくて、作ったサンドイッチを持って朝から歩いて行く。
「たぶんこっちで合ってるはず・・・。」
枯れた木があったのは広大すぎる場所だった。
そのことから考えて、がむしゃらに真っ直ぐ歩いて突っ切ればあの場所に辿り着くと計算したのだ。
「お腹が空いたらサンドイッチを食べるか、昼ぐらいに食べるか悩むところだなぁ。」
昨日初めて見た木だったけど、あの木が『桜』かもしれないと思った私はもう一度ゆっくり見たいと思っていた。
花が咲くならお花見もいいと思うけど、あの木に懐かしい感じがしたのが気になって仕方ない。
「まぁ桜だったら懐かしく思うよねぇ、この世界に日本のものなんてないし。」
お皿やコップ、食べ物なんかは馴染みがあるものもあるけど、桜ほどの規模のものはない。
自分の名前に『桜』って漢字が使われてることもあって、じっくり見たかったのだ。
「あの木の下だったら昨日のこともゆっくり考えれそうだし。」
そう思いながら私は茂る森の中を進んでいった。
太い根が地面を盛り上げていて、山登りのようなテンションで歩きながら休憩を何度か挟んであの場所に向かったのだった。
ーーーーー
「つ・・ついた・・・。」
恐らく昼をとっくに回ったころに広大な草原にでた私。
まだ遠くに見えてる木は少し小さく見えてることから、まだもう少し歩かないと行けなさそうだ。
「食べながら歩こうかなぁ・・・って、それは行儀悪いか。」
目標物を視界に捉えれたことで気が楽になったわたしは、もう目的地で食べることにして歩いて行った。
森の中と違って周りを見回せる草原は目が楽しくて、鼻歌を歌いながら歩けてしまう。
「♪~・・・」
吹き抜ける風を感じながら歩いて行くと、幅の広いあの木の下に誰かがいるのが見えた。
立派すぎる木の幹にもたれかかって、腕を組んで座ってる。
「あれは・・・カーマインさん?」
見覚えのある短髪の髪型。
近づいていくと彼で間違いなかった。
「・・・寝てる。」
「・・・zzz。」
足を真っ直ぐに伸ばして幹にもたれかかり、すぅすぅと眠ってるカーマインさん。
まさか私以外にお客がいると思わず、どうしようか悩んでしまう。
「起こす・・のも悪いよね。仕事で疲れてるんだろうし・・。」
草原であるこの場所は風が気持ちよく吹いてる。
きっとそれが心地よくて眠ってしまってるのだろう。
起こすのが忍びなくて私は少し離れて腰を落とした。
広大な草原を眺めながらサンドイッチを取り出す。
「へへっ、いただきまーす。」
大きな口を開けてサンドイッチを食べようとした時、カーマインさんの体がもそっと動いた。
「あれ・・・?マオ・・?」
「あ・・起きました?おはようございます。」
ぱくっとサンドイッチにかぶりつくと、カーマインさんは崩れた姿勢を直すように体を動かしてる。
「え・・お前、ここまでどうやって来たんだ?」
「歩いてですよ?ちょっとゆっくり見てみたくなったんで来ました。」
そう言いながらサンドイッチを食べ進めてると、カーマインさんの視線がサンドイッチに移っていったのがわかった。
お昼を回ってまでここで眠っていたのなら・・・まだ昼ご飯は食べてないだろう。
「一つ食べます?」
そう聞くと彼は驚いた顔をしていた。
「え・・・!?」
「お昼まだでしたらどうぞ?まぁ、簡単なサンドイッチですけど。」
そう言って私はカバンからサンドイッチを一つ取り出した。
「・・・いいのか?」
「?・・・はい。ちょっと味は満足できてないんでその辺は勘弁してくださいね。」
カーマインさんに手渡したのは『たまごサンド』だ。
この世界、卵はあるけどマヨネーズはない。
卵と油、それに酢があればマヨネーズは作れるから作ったんだけど、大手メーカーの味に慣れてしまってるのかどうしても味に納得できない自分がいた。
(改良の余地あり。)
そんなことを考えてるうちにカーマインさんは私が作ったサンドイッチをばくっ・・!と、食べていた。
大きな口だからかパンの半分ほど無くなってる。
「!!・・・うまっ!?」
「疑問形?・・・ふふ。」
よくわからない感想に笑いながらサンドイッチを頬張る。
少し味が物足りないマヨネーズがなんとも言えない味だけど、外で食べるご飯は格別だ。
目から入ってくる景色や耳に聞こえる自然の音が調味料になってくれる。
「こんなの食べたことない・・・これ、マオが作ったのか?」
「え?・・・あ、そうですね。料理は好きなんで・・・。」
前の世界でも自炊はしていた。
時間さえあるのなら凝ったものも作りたかったけどなかなか時間が取れなかったのだ。
(料理検定とか取ったけど・・・結局使うことなかったし。)
何かの役に立つかと思って取った資格だったけど結局小学校の教員で就職が決まり、あまり『家庭科系』の資格は活用できなかった。
中学や高校の教員で採用が決まっていたらまた違ったのかもしれないと思うけど、違う世界に来てしまってる今、そんなこと考えたって何の意味もない。
「マオは・・・前の世界で何してたんだ?こことは違う世界だったんだろ?」
「まぁ・・そうですね。あ、でも大きくは違いませんよ?人がいて、家があって、お店があって・・・学校とか。」
「がっこう?」
「勉強しに行くところですね。みんな6歳になったら通う義務が発生するんです。15歳になるまでいろんなことを学んで・・・大きく成長していくんです。」
子供たちは義務教育期間の中でも小学校の間が一番大きく成長する。
知能や体はもちろんのこと、心も。
「マオはそこでも勉強を教えてたのか?子供たちに教える姿は随分慣れてるように見えたが・・・」
「あー・・ご名答です。コパーくんたちよりもっと小さい子から上は18歳まで教える資格を持ってました。」
「しかく?」
「お給金をもらって教えるには国の試験を受けて『教えれます』って証明がないといけないんですよ。・・・あ、カーマインさんの耳飾りみたいな感じですかね。」
力が使える者がつけてるという五角形の耳飾り。
ピアスのようだけど、これも資格証明書みたいなものだ。
「なるほど・・・。」
「文字の読み書きができないくらいの年の子にはお話を聞かせてあげたりとか、もう大人の仲間入りするくらいの年の子は、興味のあることを深く深く教えて・・・って、そんな感じでしたね。」
私は前の世界の生活をカーマインさんに話していった。
思えばこんな話をするのはここに来て初めてのことで、思い出しながらの話は私にとってとても楽しものだった。
楽しかった学生時代や苦労した初めての教育実習、家族でのバーベキューのことなんかがまだ鮮明に思い出せれる。
(これもいつか朧げな記憶になっていくんだろうなぁ・・・。)
そんなことを感じながら話していくけど、カーマインさんは私の話を真剣に聞いてくれていた。
相槌は欠かさないし、なんならずっとこっちを見ながら頷いてくれていたのだ。
聞き上手なのかと思いながら一通り話した私は、次はカーマインさんのことを聞こうと思って問うことにした。
「・・・カーマインさんは?」
「うん?」
「カーマインさんは騎士団として働くようになる前はどんな生活してたんですか?」
そう聞くとカーマインさんの顔から笑顔が消えていった。
聞いてはいけないことだったのかと思ってると、小さめな声でカーマインさんが話し始めたのだ。
「俺は・・俺に力があることがわかるまでは普通の生活してた。それこそコパーとかメイズとかみたいなな。」
「『力があることがわかるまで』?・・・10歳頃くらいまでってことですか?」
「あぁ。」
カーマインさんは作物を作る農家の家庭に生まれたらしく、毎日新鮮な野菜を口にしていたらしい。
朝は家の手伝いをして、昼からは同年代の子供たちと遊び、夕暮れ時に家に帰ってくる。
そんな生活をしていたらしいのだが、10歳の時に受けた『騎士判定』のテストで彼の周りは激変したそうだ。
「まぁ、『力』を持って生まれたことは喜ばしいとされてるんだけど、俺の力は独特というか・・ちょっと異質なものでさ。俺の周りに誰も近寄らなくなって・・・」
「え?誰も?ご両親もですか?」
「・・・そう、両親も。」
その激変した生活に耐えれなくなったカーマインさんは家を出ることを決め、ずっと城下町にある騎士団の寮のようなところで生活をすることに決めたのだとか。
そこで出会ったのがトープさんとセラドンさんらしく、二人はカーマインさんの力を理解し、受け入れてくれてるらしくて気を許せる唯一の存在らしい。
「あいつらがいるから・・他から無下に扱われても平気だし、仕事もできる。感謝しかない存在なんだよ。」
そう笑顔で話してくれるカーマインさんだけど、私はその『力』がどんなものなのか気になって仕方なかった。
(周りの人が離れていくような『力』って・・なんだろ。毒とか?)
そんなことを考えてると、私の考えが分かったのかカーマインさんは困ったように笑いながら教えてくれた。
「俺の『力』は『言霊』なんだ。対象物に触れて問うと、嘘偽りない答えを聞き出せるし、命令もできる。」
「・・・言霊!?」
「そう。まぁ、『力を使う』って思わない限り何も起こらないけどな。」
「へぇー・・・!」
聞き出したいことを聞けるなら情報系で役に立ちそうだ。
敵がいるなら尋問すればすぐに情報を聞き出せるし降伏させることもできる。
仲間内でも何かあれば全員から『本当のこと』を聞き出すことはできるだろう。
ただ、その『本当のこと』が主観的なものであればあるほどごちゃごちゃになるかもしれないけど・・・。
「あれ?じゃあもしかしてカーマインさんの近くにいた人が遠巻きになったのって・・・」
「俺に何か聞かれたり言われたりするのを恐れて・・・ってとこだな。」
「あー・・なるほど。」
秘密にしてることを無理矢理聞き出されたらいい気はしない。
言いたくないことやしたくないことを無理矢理させられるのも嫌なことだ。
(でもカーマインさんってそんな無理矢理みたいなことはしないと思うけど・・・。)
そんなことを考えながら私はまた一口サンドイッチを頬張る。
むしゃむしゃと食べ進めていくと、カーマインさんが不思議な顔をしながら私を見てることに気がついた。
「?・・・どうかしました?あ、おかわりですか?」
もう一つサンドイッチを取り出そうとカバンに手を入れると、カーマインさんは私を覗き込むようにして見てきた。
「お前・・逃げないのか?」
24
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
地味でブスな私が異世界で聖女になった件
腹ペコ
恋愛
どこからどう見ても、地味女子高校生の東雲悠理は、正真正銘の栗ぼっちである。
突然、三年六組の生徒全員でクラス召喚された挙句、職業がまさかの聖女。
地味でブスな自分が聖女とか……何かの間違いだと思います。
嫌なので、空気になろうと思っている矢先、キラキラ王子様に何故か目をつけられました……
※なろうでも重複掲載します。一応なろうで書いていた連載小説をモチーフとしておりますが、かなり設定が変更されています。ただキャラクターの名前はそのままです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚から外れたら、もふもふになりました?
みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。
今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。
すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。
気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!?
他視点による話もあります。
❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。
メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる