リンクして跳んだ先は異世界だった!?幸せを願う者にもらった未来~

すずなり。

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力。

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ーーーーー




キララが町の砂漠化を解消したころ、ケルセンの町の宿の部屋ではカーマインたちが話をしていた。

ひと月ほどかけてケルセンを囲う森の調査が終わったところで、現実と推測を混ぜながら話をしていく。


「町の周りは大型の獣はいなかった。それどころか小型の獣もいない。」

「木が町を囲うようにして何重にもなってたからねぇ。獣は入れないだろうよ。」

「じゃあやっぱりこの町の中に『守らなきゃいけない存在』があるってことだよね?」


「その存在って・・・やっぱマオしか考えられないんだよなぁ・・。」

「まぁ巻き込まれ召喚者だから異世界の人間だし?」

「原初の木に聞きたいけど、あの木は喋れないしなぁ・・・うーん。」


森が変わってしまってる原因はマオにあるとしか考えられなかった。

でもマオは何をするわけでもなく、ただ毎日買い物をしたり子供たちに計算を教えたり、町の人と喋るくらいしかしてないのだ。


「マオにお前の『力』を使ったら分かるんじゃないか?カーマイン。」


トープに言われ、俺は自分の手をぎゅっと握った。


「・・・お前たちは俺の『力』をなんとも思ってないみたいにしてくれてるけど・・・この力は嫌われる。できればもう俺の『力』は知られたくないんだよ。」


そう言うと二人は諦めたかのように笑って見せた。


「ま、ちょっと本人に接触して調べてみようよ。」


トープの言葉に、セラドンが同調するように首を縦に振る。


「そうだよ!もしかしたら何か話が聞けるかもしれないし!」

「・・・そうだな。」


俺たちは本人に接触する作戦に切り替えることにし、町に繰り出すことにしたのだった。




ーーーーー



「あれ?いないな。」


広場に行くとマオの姿はなかった。

子供たちもいなく、がらんとしている。


「もう解散したのか?」


そう思いながら辺りを見回したとき、森の方から声が聞こえてきた。

きゃあきゃあと楽しそうな声だ。


「子供と・・マオの声か?」

「みたいだな。行ってみるか。」


俺たちは声のする方に足を進めていく。

するとちょうど森の入口少し入ったところに、子供の姿を見つけた。

何やら楽しそうに走り回ってる。


「一体何してんだ?」

「さぁ・・・。」


不思議に思いながら足を進めたとき、別の子供が俺たちの前に飛び出してきた。

俺たちに背中を向けて、手に竹筒を持ってる。


「くらえ!!」


そう言って子供は手に持っていた竹筒を奥の子供に向けた。


「させるか!くらえ!!」


奥にいた子供も同じものを手に持っていて、それを持ったまま走ってくる。

そして子供は手に持っていた竹筒から水のようなものを発射せた。


「うわっ・・・!」


俺たちの目の前にいた子供は瞬時に飛びのき、身を隠した。

そして発射されたものは見事俺たちが被ることになってしまう。


「冷た・・・!」

「おいおいおい・・・。」

「わー・・・びしょ濡れ・・・」


一体何が起こったのかと思いながら子供を見ると、持っていた竹筒の節のところに穴が開いていた。

その穴からは水が滴り落ちていて、どうもあの穴から水が発射されたようだ。


「わぁ・・!旅のにーちゃんたちごめん!」


水をかけてきた子供が俺たちに気づき、謝りながら近寄って来た。


「いや、いいけど・・・・」

「何してたの?」

「これ、どういう仕組み?」


珍しいものに俺たちは釘付けになっていた。


「これ?マオが作ってくれたんだよ?」

「マオが?」

「見せてくれる?」


子供は俺たちに竹筒を見せてくれた。

見せてくれた竹筒には細い棒が入っていて、その棒の先端に布をぐるぐると巻きつけてあるのが見える。

どうもこの筒に入れた水を押し出して遊んでいたみたいだ。


「これ・・結構飛ぶんじゃないか?一回見せてくれるか?」


そう聞くと子供は近くにあった桶に行き、木の棒を竹筒に入れた状態で水に突っ込んだ。

そしてゆっくりと棒を引いていき、桶から竹筒を取り出したのだ。


「いい?見ててよ?」


そう言って子供は引いた木の棒をぐっと押した。

その瞬間、節に開けられた穴から水が勢いよく飛び出した。


「!!・・・すげぇな!」

「いや、ほんとにすごいね。」

「わー!めっちゃ飛ぶー!」


飛んだ距離を目測で計ってると、茂みからマオと子供が一人ひょこっと現れた。


「コパーくーん、なんかメイズくんが逃げてきたけど勝負ついたのー?・・・って、あれ?カーマインさんたちどうしたんですか?」


俺たちがここにいることに疑問を持ったマオ。

近くにいた子供はさっき俺たちに背中を向けていた子供だから、今日は二人みたいだ。

『マオを探してた』なんて言えるはずもなく、どう答えようかと思ったときマオが悲鳴を上げたのだ。


「きゃーっ!?びしょ濡れじゃないですか!?」


水をかけられて濡れてしまってる俺たちを見て、マオが口元を押さえていた。


「あ・・・そういえば水かけられたんだった・・・。」


竹筒の仕組みが気になっていた俺たちは濡れたことをすっかり忘れていたのだ。

さすがに濡れたままじゃ風邪を引いてしまうから、ここはトープに頼むことにする。


「トープ。」

「はいはい。」


俺が何を言いたいのかトープはわかったようで、トープは右手を前にスッと出した。

親指と中指を合わせ、ぐっと力を入れてる。

そしてその指を弾き、パチンっ!と、音が鳴った瞬間、俺たちの周りを風が囲ったのだ。

ふわっと体を駆け巡る風が服や髪の毛を乾かしていく。


「え・・・!?それ何ですか・・!?」


風に包まれる俺たちを見たマオは、驚きながら俺たちを見ていた。

子供たちは初めて見るのか、『力』に興奮気味だ。


「うわぁぁ・・!!」

「すげぇ!!」


目を輝かせながら見てる子供たちに向けて、トープは指をパチンっと鳴らした。

その瞬間、柔らかい風が子供たちを包んだのだ。


「わぁっ・・!」

「くすぐったい・・・っ!」


楽しそうに風と戯れる子供たち。

その様子をマオだけが驚きながら見ていた。


「すごい・・・・」

「マオは『力』は初めて見るの?」


驚くマオにトープが尋ねた。


「そう・・ですね・・・。初めて見ます・・・。」


心底驚いたように口を開くマオ。

マオには俺たちみたいな『力』はなさそうに見えた。


(力を持ってたら使うだろうし・・・初めて見たみたいだからやっぱ召喚に巻き込まれただけなのか?)


そんなことを考えてると、マオはトープの右手をまじまじと見始めた。

どうも右手が風を出してると思ってるようだ。


「マジック・・じゃないですよね?」

「まじっく?それはなに?」

「あ・・いえ、どうやって風が出てるのかと思って・・・」


マオの疑問に答える為、トープは指を擦り合わさずに風を集め始めた。

そよそよと吹いて来た風は、いつの間にか轟音を立てながら俺たちの周りを渦巻き始めてる。


「!?!?」

「ははっ、俺は『風』を操れる力を持ってるんだよ。こうやって風を呼べば集まって来る。」


そう言ったあと、トープは風を解放した。

さっきまで俺たちの周りにあった風は一瞬で消え失せ、空に舞った木の葉がひらひらと落ちてくる。


「すごい・・・・。」


ぽかんと口を開けて見てるマオ。

その様子が気に入ったのか、今度はセラドンが右手を差し出した。


「僕もできるんだよ?」

「へ・・・?」


中指と親指をぐっと押し付け、パチンっ・・!と、弾いたセラドン。

すると周りにあった木たちが揺れ始めたのだ。


「!?!?」


まるで踊ってるかのように見える木たち。

少ししてからセラドンは握るようにしていた右手をパッと広げた。

その瞬間、踊っていた木たちは動きを止めたのだ。


「わぁ・・・!旅のにーちゃん、風と植物の力を持ってるのか!」


子供たちはトープとセラドンが何の力を持ってるのかすぐにわかったようで、興奮気味に駆け寄ってきた。

そして目を輝かせながら俺をじっと見てる。


「にーちゃんも『力』あるんだろ!?左耳に耳飾りあるし!!」


その言葉を聞いたマオが首を傾けながら俺たちの左耳を見ていた。


「あ・・本当だ。みなさんお揃いのつけてるんですね。」


そう言いながらマオは自分の左耳を触っていた。

10歳の時に受ける適性検査で力があることが判明した者は皆、この耳飾りをつける決まりになってる。

薄い桃色の五角形の形をしていて、これはこの国の紋を表してるのだ。


「そうなんだよ。『力』を使える者としての証。」


トープがそう答えたとき、子供の一人が俺の手をがしっと掴んできた。


「にーちゃんは!?にーちゃんのも見たい!!」


無邪気な目でそう言われるものの、俺は自分の力を見せることはできなかった。

見せるときっと・・・この町にいられなくなるからだ。


「カーマインの力は結構体力使うからね、簡単には使えないんだよ。ごめんね?」


トープが子供の頭を撫でながらそう答えてくれた。

ナイスな言い訳に、次から俺も使わせてもらおうと思う。


「そっかー・・・じゃあ使うときは教えて?見たいから!!」


そう言われ、俺も子供の頭を撫でる。


「・・あぁ、もちろん。」

「へへっ。」


俺の答えに嬉しそうに笑う子供。

見せることができないことに心を痛めながら頭を撫でてると、マオが口を開いた。


「風と植物を操る力があるんですね・・・。他にもあったりするんですか?」


マオの問いにトープが答え始めた。


「あるよ?炎、水、土とか・・・あ、夢とかもあるかな?」

「へぇー!すごい・・・。」


子供みたいに無邪気な顔をして驚いてるマオ。

その顔を見て、この世界のことを何も知らないことに気がついた。


(知らなければ何もできない・・よな?)


マオのことを教えてもらわないと聖女かどうかの判断はできない。

でも獣がこの町に寄り付かないように植物たちが自主的に動いたりしてるところを見ると、マオにも何か力があるように見えてくるのだ。

実際、この町は水も豊かで作物も豊作。

町の人たちは元気だし、みな明るかった。


(あの木たち『誰を』守ってるのか喋ってくれたらわかるんだけど・・・。)


そんなことを考えてる時、ガサガサと音を立てて入ってくるやつの気配を感じた。

俺とトープ、セラドンは腰にある短剣を引き抜いて構える。

もちろん背中側にマオと子供たちを隠して。


「静かに。声、出すなよ。」


そう言って森に入って来たやつの動向を探る。

迷うことなくこちらに向かってきてるみたいだ。


(この気配・・・覚えがあるな。)


そう思った時、ガサッ・・!と音を立てて茂みから出てきた奴がいた。




「・・・マロー!?」






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