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それから2日が経ち、私は荷物をまとめて宿の店主さんに挨拶をしに来ていた。
カウンター越しに店主さんが少し寂しそうな顔をしてるのがわかる。
「ご飯だけでも食べにおいで、遊びに来てもいいんだからね?」
「ふふっ・・・お世話になりました。ご主人さんにもよろしくお伝えください。」
「寂しくなるねぇ・・・。」
深めのため息を漏らす店主さんだけど、私は2階部分を指さした。
「何言ってるんですか、3人もお客さんいるじゃないですか。」
「まぁね。でも討伐に行ってるから戻らない日もあるみたいだし。」
「『戻らない日もある』?」
「遠くまで行くとね、戻らずにそのまま獣を追ったりするからさ。」
「あー・・なるほど。」
確かに獣の痕跡を見つけたらそのまま追うこともあるだろう。
何も収穫が無かったら戻って来て、また違う方向に探しにいくのかもしれない。
(獣相手だったらケガとかも・・・あったりするんだよね。)
危険な仕事なのだろうけど、それで安心して町の人たちが暮らせるようになる。
必要な仕事はどの世界でもあるのだ。
「じゃあ・・・また遊びに来ますね。」
「あぁ、いつでもおいで、マオ。」
私は手を振りながら宿を出た。
これから始まる一人暮らしに胸が躍り始める。
「ぃよっし・・・!」
荷物を持ち直して歩き始めたとき、私の名前が呼ばれるのが聞こえてきた。
遠くの方から聞こえてる小さい声に振り返ると、宿のご主人がものすごいスピードで走ってくるのが見えたのだ。
「ふぁっ・・!?」
「マオォォォおぉ!!」
「どっ・・どうしたんですか・・・・。」
驚きでどくどくとなる心臓を押さえながら聞くと、私の前で足を止めたご主人は私の肩をがしっと掴んだ。
「とりあえず3人!集めたぞ!!」
「へっ・・・?あ、子供たちですか?」
勉強を教えるという約束をしていた私。
ご主人からの連絡待ちということもあって放置していたことを思い出した。
「そう!今からでいいか!?」
「今から!?」
「そうだ!ちょっと待ってろ!連れて来る!!」
そう言って走り出そうとしたご主人だったけど、私も自分の荷物を置きに戻りたいことに気がついた。
「あ・・・っ!あとででもいいですか?荷物置きに行ってきます・・・!」
「わかった!じゃあ広場でな!!」
そう言うとご主人はまたすごいスピードで走って行ってしまった。
私も広場に向かう為、急いで家に向かう。
「鉛筆と紙・・・とかこの時代無いだろうなぁ・・。あってもものすごく高いだろうし。」
どうやって勉強を教えていったらいいのかを悩むものの、一体いくつくらいの子供が来るのかがわからなかった私は準備のしようが無いことにも気がついた。
「まぁ、自己紹介と簡単な足し算くらいで終わり・・・かな?」
この世界の文字は私がいた世界とは違う。
もちろん数字も違うんだけど、書くとなぜかこちらの世界の文字に勝手に変わってるのだ。
自動翻訳のような感覚に最初は慣れなかったけど、地面に書いていくうちに慣れていったのだ。
「私の目には日本語には見えないのに読めるって・・・不思議。」
字は読めるに越したことはない。
このことはいいことだと思うことにした私はいろいろ見たり書いたりしていき、もう違和感を感じなくなっていた。
この世界に順応していってる証だ。
「・・・今川先生も聖女としてがんばってくれてたらいいけど。」
そう思っていた私だったけど、まさか彼女が『聖女の仕事』を何もしてないなんて・・・思っても見なかった。
ーーーーー
ーーーーー
「なぁ・・・っキララっ・・・!そろそろ仕事をしてくれないか・・・っ?」
万桜が城を追い出されてから1ヶ月と少しの時間が過ぎたころ、希星は自分を囲ってくれてる王子たちとベッドを激しく揺らしていた。
「ぁんっ・・!それはもうちょっとあとでも・・・っんっ・・!いいんじゃないですかぁ・・・あぁっ!」
「まぁ・・・この前の干ばつの回復は凄かったからなぁ・・・・」
希星の聖女としての力を目の前で見ていた王子、ビリジアンは干ばつの解消は『いつでもいい』と思っていた。
一度遠くの町に出向いてしまえば、目の前にある艶めいた体に触れることが困難になるからだ。
「王子さまぁっ・・・!もっと・・・もっとキララを抱いてぇ・・・っ!」
「!!・・・私だけじゃ満足しないんだろう?さっきまでアンバーたちと交わっていたじゃないか。」
希星は与えられる宝石やドレスに喜びを感じていた。
ねだれば無限に手に入る煌びやかな物。
それに加えて快楽に溺れる毎日を過ごすことがこの世界では許されるのだ。
これを『自分の為にある世界』だと思い込んでる希星は天井を知ろうとしない。
「王子さまが一番なの・・・誰よりも素敵だから・・・」
そう言って希星は王子の頬を手でそっと触った。
積極的に求めてくる希星に自分の欲情をぶちまけることができることに、王子も快楽に溺れてしまう。
「キララが満足するまで抱いてあげるからちゃんと仕事しておくれよ?」
王子は希星の望みを叶えるため、またベッドを激しく揺らし始めたのだった。
それから2日が経ち、私は荷物をまとめて宿の店主さんに挨拶をしに来ていた。
カウンター越しに店主さんが少し寂しそうな顔をしてるのがわかる。
「ご飯だけでも食べにおいで、遊びに来てもいいんだからね?」
「ふふっ・・・お世話になりました。ご主人さんにもよろしくお伝えください。」
「寂しくなるねぇ・・・。」
深めのため息を漏らす店主さんだけど、私は2階部分を指さした。
「何言ってるんですか、3人もお客さんいるじゃないですか。」
「まぁね。でも討伐に行ってるから戻らない日もあるみたいだし。」
「『戻らない日もある』?」
「遠くまで行くとね、戻らずにそのまま獣を追ったりするからさ。」
「あー・・なるほど。」
確かに獣の痕跡を見つけたらそのまま追うこともあるだろう。
何も収穫が無かったら戻って来て、また違う方向に探しにいくのかもしれない。
(獣相手だったらケガとかも・・・あったりするんだよね。)
危険な仕事なのだろうけど、それで安心して町の人たちが暮らせるようになる。
必要な仕事はどの世界でもあるのだ。
「じゃあ・・・また遊びに来ますね。」
「あぁ、いつでもおいで、マオ。」
私は手を振りながら宿を出た。
これから始まる一人暮らしに胸が躍り始める。
「ぃよっし・・・!」
荷物を持ち直して歩き始めたとき、私の名前が呼ばれるのが聞こえてきた。
遠くの方から聞こえてる小さい声に振り返ると、宿のご主人がものすごいスピードで走ってくるのが見えたのだ。
「ふぁっ・・!?」
「マオォォォおぉ!!」
「どっ・・どうしたんですか・・・・。」
驚きでどくどくとなる心臓を押さえながら聞くと、私の前で足を止めたご主人は私の肩をがしっと掴んだ。
「とりあえず3人!集めたぞ!!」
「へっ・・・?あ、子供たちですか?」
勉強を教えるという約束をしていた私。
ご主人からの連絡待ちということもあって放置していたことを思い出した。
「そう!今からでいいか!?」
「今から!?」
「そうだ!ちょっと待ってろ!連れて来る!!」
そう言って走り出そうとしたご主人だったけど、私も自分の荷物を置きに戻りたいことに気がついた。
「あ・・・っ!あとででもいいですか?荷物置きに行ってきます・・・!」
「わかった!じゃあ広場でな!!」
そう言うとご主人はまたすごいスピードで走って行ってしまった。
私も広場に向かう為、急いで家に向かう。
「鉛筆と紙・・・とかこの時代無いだろうなぁ・・。あってもものすごく高いだろうし。」
どうやって勉強を教えていったらいいのかを悩むものの、一体いくつくらいの子供が来るのかがわからなかった私は準備のしようが無いことにも気がついた。
「まぁ、自己紹介と簡単な足し算くらいで終わり・・・かな?」
この世界の文字は私がいた世界とは違う。
もちろん数字も違うんだけど、書くとなぜかこちらの世界の文字に勝手に変わってるのだ。
自動翻訳のような感覚に最初は慣れなかったけど、地面に書いていくうちに慣れていったのだ。
「私の目には日本語には見えないのに読めるって・・・不思議。」
字は読めるに越したことはない。
このことはいいことだと思うことにした私はいろいろ見たり書いたりしていき、もう違和感を感じなくなっていた。
この世界に順応していってる証だ。
「・・・今川先生も聖女としてがんばってくれてたらいいけど。」
そう思っていた私だったけど、まさか彼女が『聖女の仕事』を何もしてないなんて・・・思っても見なかった。
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「なぁ・・・っキララっ・・・!そろそろ仕事をしてくれないか・・・っ?」
万桜が城を追い出されてから1ヶ月と少しの時間が過ぎたころ、希星は自分を囲ってくれてる王子たちとベッドを激しく揺らしていた。
「ぁんっ・・!それはもうちょっとあとでも・・・っんっ・・!いいんじゃないですかぁ・・・あぁっ!」
「まぁ・・・この前の干ばつの回復は凄かったからなぁ・・・・」
希星の聖女としての力を目の前で見ていた王子、ビリジアンは干ばつの解消は『いつでもいい』と思っていた。
一度遠くの町に出向いてしまえば、目の前にある艶めいた体に触れることが困難になるからだ。
「王子さまぁっ・・・!もっと・・・もっとキララを抱いてぇ・・・っ!」
「!!・・・私だけじゃ満足しないんだろう?さっきまでアンバーたちと交わっていたじゃないか。」
希星は与えられる宝石やドレスに喜びを感じていた。
ねだれば無限に手に入る煌びやかな物。
それに加えて快楽に溺れる毎日を過ごすことがこの世界では許されるのだ。
これを『自分の為にある世界』だと思い込んでる希星は天井を知ろうとしない。
「王子さまが一番なの・・・誰よりも素敵だから・・・」
そう言って希星は王子の頬を手でそっと触った。
積極的に求めてくる希星に自分の欲情をぶちまけることができることに、王子も快楽に溺れてしまう。
「キララが満足するまで抱いてあげるからちゃんと仕事しておくれよ?」
王子は希星の望みを叶えるため、またベッドを激しく揺らし始めたのだった。
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