リンクして跳んだ先は異世界だった!?幸せを願う者にもらった未来~

すずなり。

文字の大きさ
上 下
19 / 43

宿泊終了。

しおりを挟む
ーーーーー



それから2日が経ち、私は荷物をまとめて宿の店主さんに挨拶をしに来ていた。

カウンター越しに店主さんが少し寂しそうな顔をしてるのがわかる。


「ご飯だけでも食べにおいで、遊びに来てもいいんだからね?」

「ふふっ・・・お世話になりました。ご主人さんにもよろしくお伝えください。」

「寂しくなるねぇ・・・。」


深めのため息を漏らす店主さんだけど、私は2階部分を指さした。


「何言ってるんですか、3人もお客さんいるじゃないですか。」

「まぁね。でも討伐に行ってるから戻らない日もあるみたいだし。」

「『戻らない日もある』?」

「遠くまで行くとね、戻らずにそのまま獣を追ったりするからさ。」

「あー・・なるほど。」


確かに獣の痕跡を見つけたらそのまま追うこともあるだろう。

何も収穫が無かったら戻って来て、また違う方向に探しにいくのかもしれない。


(獣相手だったらケガとかも・・・あったりするんだよね。)


危険な仕事なのだろうけど、それで安心して町の人たちが暮らせるようになる。

必要な仕事はどの世界でもあるのだ。


「じゃあ・・・また遊びに来ますね。」

「あぁ、いつでもおいで、マオ。」


私は手を振りながら宿を出た。

これから始まる一人暮らしに胸が躍り始める。


「ぃよっし・・・!」


荷物を持ち直して歩き始めたとき、私の名前が呼ばれるのが聞こえてきた。

遠くの方から聞こえてる小さい声に振り返ると、宿のご主人がものすごいスピードで走ってくるのが見えたのだ。


「ふぁっ・・!?」

「マオォォォおぉ!!」

「どっ・・どうしたんですか・・・・。」


驚きでどくどくとなる心臓を押さえながら聞くと、私の前で足を止めたご主人は私の肩をがしっと掴んだ。


「とりあえず3人!集めたぞ!!」

「へっ・・・?あ、子供たちですか?」


勉強を教えるという約束をしていた私。

ご主人からの連絡待ちということもあって放置していたことを思い出した。


「そう!今からでいいか!?」

「今から!?」

「そうだ!ちょっと待ってろ!連れて来る!!」


そう言って走り出そうとしたご主人だったけど、私も自分の荷物を置きに戻りたいことに気がついた。


「あ・・・っ!あとででもいいですか?荷物置きに行ってきます・・・!」

「わかった!じゃあ広場でな!!」


そう言うとご主人はまたすごいスピードで走って行ってしまった。

私も広場に向かう為、急いで家に向かう。


「鉛筆と紙・・・とかこの時代無いだろうなぁ・・。あってもものすごく高いだろうし。」


どうやって勉強を教えていったらいいのかを悩むものの、一体いくつくらいの子供が来るのかがわからなかった私は準備のしようが無いことにも気がついた。


「まぁ、自己紹介と簡単な足し算くらいで終わり・・・かな?」


この世界の文字は私がいた世界とは違う。

もちろん数字も違うんだけど、書くとなぜかこちらの世界の文字に勝手に変わってるのだ。

自動翻訳のような感覚に最初は慣れなかったけど、地面に書いていくうちに慣れていったのだ。


「私の目には日本語には見えないのに読めるって・・・不思議。」


字は読めるに越したことはない。

このことはいいことだと思うことにした私はいろいろ見たり書いたりしていき、もう違和感を感じなくなっていた。

この世界に順応していってる証だ。


「・・・今川先生も聖女としてがんばってくれてたらいいけど。」




そう思っていた私だったけど、まさか彼女が『聖女の仕事』を何もしてないなんて・・・思っても見なかった。




ーーーーー




ーーーーー



「なぁ・・・っキララっ・・・!そろそろ仕事をしてくれないか・・・っ?」


万桜が城を追い出されてから1ヶ月と少しの時間が過ぎたころ、希星は自分を囲ってくれてる王子たちとベッドを激しく揺らしていた。


「ぁんっ・・!それはもうちょっとあとでも・・・っんっ・・!いいんじゃないですかぁ・・・あぁっ!」

「まぁ・・・この前の干ばつの回復は凄かったからなぁ・・・・」


希星の聖女としての力を目の前で見ていた王子、ビリジアンは干ばつの解消は『いつでもいい』と思っていた。

一度遠くの町に出向いてしまえば、目の前にある艶めいた体に触れることが困難になるからだ。


「王子さまぁっ・・・!もっと・・・もっとキララを抱いてぇ・・・っ!」

「!!・・・私だけじゃ満足しないんだろう?さっきまでアンバーたちと交わっていたじゃないか。」


希星は与えられる宝石やドレスに喜びを感じていた。

ねだれば無限に手に入る煌びやかな物。

それに加えて快楽に溺れる毎日を過ごすことがこの世界では許されるのだ。

これを『自分の為にある世界』だと思い込んでる希星は天井を知ろうとしない。


「王子さまが一番なの・・・誰よりも素敵だから・・・」


そう言って希星は王子の頬を手でそっと触った。

積極的に求めてくる希星に自分の欲情をぶちまけることができることに、王子も快楽に溺れてしまう。


「キララが満足するまで抱いてあげるからちゃんと仕事しておくれよ?」


王子は希星の望みを叶えるため、またベッドを激しく揺らし始めたのだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地味でブスな私が異世界で聖女になった件

腹ペコ
恋愛
 どこからどう見ても、地味女子高校生の東雲悠理は、正真正銘の栗ぼっちである。  突然、三年六組の生徒全員でクラス召喚された挙句、職業がまさかの聖女。  地味でブスな自分が聖女とか……何かの間違いだと思います。  嫌なので、空気になろうと思っている矢先、キラキラ王子様に何故か目をつけられました…… ※なろうでも重複掲載します。一応なろうで書いていた連載小説をモチーフとしておりますが、かなり設定が変更されています。ただキャラクターの名前はそのままです。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

召喚から外れたら、もふもふになりました?

みん
恋愛
私の名前は望月杏子。家が隣だと言う事で幼馴染みの梶原陽真とは腐れ縁で、高校も同じ。しかも、モテる。そんな陽真と仲が良い?と言うだけで目をつけられた私。 今日も女子達に嫌味を言われながら一緒に帰る事に。 すると、帰り道の途中で、私達の足下が光り出し、慌てる陽真に名前を呼ばれたが、間に居た子に突き飛ばされて─。 気が付いたら、1人、どこかの森の中に居た。しかも──もふもふになっていた!? 他視点による話もあります。 ❋今作品も、ゆるふわ設定となっております。独自の設定もあります。 メンタルも豆腐並みなので、軽い気持ちで読んで下さい❋

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

処理中です...