リンクして跳んだ先は異世界だった!?幸せを願う者にもらった未来~

すずなり。

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「ばーさん!セラドンに話したことを俺にも話してくれ!!」


セラドンが言ってた髪飾り屋に来た俺は店の中に入って店主のばーさんに声をかけた。

ばーさんは驚いた顔をしながら俺を見て、俺の後ろを追いかけてきてるセラドンを見た。


「話したことって・・・。」

「俺は聞いてないからもう一回話してくれ!」


そう言うと、ばーさんはため息を漏らしながら額に手をあてた。


「はぁー・・・。マオのことだろう?あの子ならケルセンに向かったよ。」

「なんでケルセンなんだ?マオはケルセンなんか知らなかっただろう?」

「どこか遠いところに行きたいって言ってたから勧めたんだよ。昔、仕入れに行ったことがあってさ。いい町だったからねぇ。」


ばーさんは思い出すかのように視線を上げていた。

そんな様子を見ながら、俺はケルセンまでのルートを考える。


「ケルセン・・・馬で行ったら2週間ちょいか。」


馬車で行くと1ヶ月はかかる。

となると、きっとマオは今頃ケルセンについてる頃だろう。


「・・・なぁ、ばーさん。マオが来た後で変わったことはないか?」


俺は疑念を確証に変えるために聞いた。

するとばーさんは視線を下げて俺と目を合わせてきた。


「そういえば・・・珍しいものが手に入ったねぇ。」

「珍しいもの?」

「あぁ。隣国じゃないと手に入らないものがこの前手に入ったんだよ。ほら、そこの髪飾りさ。」


ばーさんは、しわの多い手を伸ばして棚に置かれた髪飾りを指さした。


「これは・・・!」


そこにあったのは1本の棒の先に白くて丸いものがあしらわれた髪飾り。

小さい飾りだけど、これは確か海にいる生き物から取れる貴重なものだった。


「どうやって手に入れたんだ?これが取れる国は外と交流を持たないだろう?」

「この前売りに来たやつがいてさ、高かったからみんな蹴ったようだけど・・・マオが来た時に見せようと思って仕入れたんだよ。」

「・・・。」


俺はばーさんの『マオに見せようと思って』という言葉が引っかかった。

確か、あの侍女も城を出て行くときに同じようなことを言っていたのだ。


(侍女は確か・・・『マオにもらった飾りのお礼を言いたかった。』だったな。)


二人ともが『マオに』と言う。

『キララ』にはないことだった。


「・・・トープ、セラドン。討伐申請をしてくれ。」


そう言うとトープは俺に聞き返してきた。


「討伐って・・大型の獣の討伐依頼は来てないと思うけど・・・?」


町の外で大型の獣が目撃された時、騎士団に討伐の依頼が来ることになってる。

でもトープの言う通り、ここ2週間ほどは依頼なんて来てなかった。


「適当に依頼作ってくれ。遠くの方で。」

「適当にって・・・討伐期間は?」

「3か月。」


そう答えるとトープとセラドンは示し合わせたかのように同時に叫んだ。


「3か月!?」

「3か月!?」

「ケルセンに向かう。マオを追うぞ。」


俺は店を後にし、トープたちと準備をしていった。

着替えや少しの食料をカバンに詰め、騎士団の服を脱いで旅人を装う格好をする。

一日かけてトープが討伐申請を作って国に出してくれ、俺たちはマオの足取りがわかった翌日、馬にまたがり出発をした。

目指すは最初の町、アンヤーだ。


「飛ばせばケルセンまで2週間で着く。途中で馬を乗り換えながら行くぞ。」


俺たちは手綱を握り、マオがいる町、ケルセンに向かって走り出した。




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カーマインたちがケルセンに向けて出発したころ、万桜は夕食を食べながら一人考え事をしていた。

それはここでどうやって生活をしていくか・・・だ。


(お金はあるけど宿に泊まるには一日銀貨1枚いる。一年が365日だから大体3年で金貨1枚。私が今、26さいだから80歳まで生きるとして・・・)


ざっと計算すると宿代として金貨が約20枚必要になることになる。

そのあいだの食費や服なんかの雑費もろもろも計算すると、今の手持ちでギリギリになるかもしれなかった。

もし私が長生きしたら、足りなくなることは間違いないだろう。


(ならどこかで家を買う?でも家の値段とかわからないしなぁ・・・。)


ため息を漏らしながらそんなことを考えてると、いつもの店員さんがお水を持ってきてくれた。

コトンっと音を立てて置かれた竹のコップの音に、私は視線を上げる。


「どうしたんだい?さっきから唸って。」

「あー・・・ちょっと考え事を・・・。」

「考え事?」


私はこの町に住みたい旨を店員さんに伝えた。

家をどうしたらいいのわからないことを伝えると、店員さんは豪快に笑い始めたのだ。


「あっはっは!それならうちの旦那に相談しな?」

「え?ご主人さん・・・?」

「あぁ、うちの旦那、家を作る仕事をしてるんだよ。」


その言葉を聞いて、私は思わず椅子から立ち上がった。


「えぇぇ!?」

「おや、言ってなかったかい?私はここの経営、旦那は家を作ったり補修したりしてるんだよ。」


店員さんだと思っていた女の人はまさかの店主さんで、ご主人が大工さんだった事実を知った私は開いた口が塞がらなかった。


「え・・じゃ・・じゃあ家の建築とかお願いできたりとか・・・?」


恐る恐る聞いてみると、店主さんは首を縦に振った。


「あぁ、もちろんだよ。場所は決まってるのかい?」

「あ・・場所・・・・」


何も考えていなかった私は、土地のことをすっかり忘れてしまっていた。


「不動産・・・土地ってどうしたらいいんですか?」


前の世界じゃ持ち主と直接の交渉か不動産屋さんを通しての購入が主な取引方法だった。

この世界の土地の売買知識がない私は店主さんに聞いたのだけれど、予想外な答えが返って来たのだ。


「土地?好きなとこでいいんじゃないかい?」

「・・・・へ?」

「何かが建ってるところはダメだけど、何もないところならいいだろう?」


なんと、土地は誰のものでもなかったのだ。


「えと・・・え?どこでも大丈夫・・なんですか?」

「あぁ。まぁ、場所が決まったら教えてくれよ。旦那に見てもらうからね。」

「あー・・・わか・・りました・・・。」


よくわからないけどとりあえずどこか場所を見繕って聞いてみようと思い、私は夕食を食べていったのだった。




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