リンクして跳んだ先は異世界だった!?幸せを願う者にもらった未来~

すずなり。

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知らない場所。

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ーーー



ーー



「う・・・・」


光りが収まったことを感じた私はそっと腕を下ろしながら目を開けた。

すると職員室とは全く違う光景が目の前に広がっていたのだ。


「え・・・?」


ひたすらに広い広間のような空間だ。

壁や天井には華美な装飾がこれでもかというくらいあって、豪華さで溢れてる。

視線を少し落とせば、私を少し遠巻きに囲うようにして十数人の人が見えた。

白くゆったりとしたローブのような服を着ていて、首からは赤く長いストールを垂れ下げてる。

その姿から、私は『神官』を想像した。


(え?え?・・・ここ・・一体どこ・・・?)


下手に口を開かないほうがいいと思った私は、黙ったまま辺りを見回した。

すると私の少し後ろに今川先生がいることに気がついたのだ。


(他の先生は・・・?)


いくら見回しても他の先生たちの姿はなく、なぜこんなことになったのか首を捻るばかりだ。


「おぉ・・!!召喚に成功したか・・・!?」


突然の大声に、私は声がした方を見た。

すると神官らしき人の間から一人の・・・恰幅のいい男の人が現れたのだ。


「王・・・!」


頭を下げる神官たちの様子から見て、この恰幅のいいひとが偉い人のようだ。


(『王』って呼ばれてたし・・・。)


とりあえず言葉が分かることに安堵しながら様子を伺ってると、王と呼ばれた人は私と今川先生を交互に見始めた。


「『聖女』は『一人』のハズだ!!どうして二人もいる!?」


怒るようにして神官に問い詰める王。

すると先端の尖った五角形の紋様入りの冠を頭にかぶった神官の代表のような人が口を開いた。


「お答えいたします。」


その神官は他の神官と違って白いローブにも紋様があった。

五角形の紋が所々あしらわれてる。


「おぉ!ビスター!神官たちの長よ!!これは一体どういうことだ?」

「はい。おそらく二人のうちのどちらかが聖女さまだと思われます。我々が召喚した時に偶然にも近くにいて、一人は巻き込まれるようにしてこちらに来たのではないかと・・・。」

「ふむ・・・。」


その話を聞いていた私は、頭の中を整理することで必死だった。

『召喚』だの『聖女』だのと非現実的な言葉が頭を痛くさせていく。


「お前たちのうち、どっちが聖女じゃ?国としてはどっちでもいいんじゃが・・・」


そう言いながら私の前に立った王。

口を開くべきか悩んでると、今川先生が大きな声で返事をした。


「はいはぁーい!私!私が聖女でぇす!」

「!?・・・ちょ・・!今川先生!?」


迂闊に喋らないほうがいいと思った私は彼女の口を塞ぎにいった。

手で押さえながら、小声で話をする。


「ここがどこだかわからないんだから喋らないほうがいいわよ!?」

「えぇー?ここ、絶対異世界だから楽しまないと損でしょぉ?」

「異世界って・・・・」

「『聖女』を求めてるみたいだしぃ?名乗れば優遇確実だしぃ?」


そう言うと彼女は不敵な笑みを私に見せた。


「な・・なにを・・・・」


嫌な予感がした私は後ずさりをした。

すると突然、今川先生は私を指さして大声を上げ始めたのだ。


「えーん!ちょっと聞いてくださぁい!私が聖女なのをこの女が妬むんですぅ!」

「は!?」

「この世界に呼ばれた時も邪魔されちゃってぇ・・・挙句の果てにはついて来ちゃったんですぅ!」

「!?」


今川先生は涙を拭うような仕草を見せながらその場に崩れ落ちていった。


(一体どこでそんな演技を覚えてきたっていうのよ・・・!)


そんなことを覚える暇があったら教師の勉強の一つでもしてくれと思った私だったけど、今川先生の言葉で周りの空気が一瞬で変わったのを肌で感じた。

ぐるっと周りを見回すと、冷ややかすぎる視線が私に向けられてる。


「---っ!!」

「えへ?」


嵌められたことに気がついたときには私の周りを神官たちが囲っていた。


「聖女じゃない女を物置部屋に閉じ込めておけ!!」


王の一言で私は神官たちに取り押さえられてしまった。


「ちょっ・・・!元の場所に帰してください!!私は戻りたいんです!!」


ここで彼女とお別れできるならそれでもいい。

でも仕事を放り出すなんてこと、私にはできないから戻らせてもらいたかったのだ。


「残念だがそれは叶わない。」


『ビスター』と呼ばれていた神官の代表のような人がそう言った。


「叶わないって・・・・」

「『聖女召喚の儀』は召喚のみ行える儀式。送り返すことはできない。」

「嘘でしょ・・・!?」

「こちらに来た瞬間、前の世界でのお前たちの存在は消え失せてる。戻れたところで意味はないだろう。」

「消え・・・・!?」


そんなことがあるのかと思いながら立ち尽くしてると、私は腕を引っ張られた。

神官たちが私を引きずるようにしてこの広間から出そうとしてるのがわかる。


(存在が消え失せるって・・・・私は居なかったことになるの・・・!?)


今までがんばってきたことや積み重ねてきたことを失ったことに、私は愕然とした。

それどころか、友達や親、受け持った生徒たちも私のことを忘れてしまってることになるのだ。


「嘘・・そんなことって・・・・」

「お前の処分は追って決める。それまで物置部屋で大人しくしておけ。」

「・・・。」


言われたことをすぐに受け入れることができなかった私は、神官たちに連れられて広間から出された。

神官たちに囲まれた状態で長い長い廊下を歩かされていく。


(ここ、お城だったんだ・・・。そして昼っぽい・・・。)


広間を出たことで、私がどんな場所にいるのかがわかった。

立派な中庭に、すれ違うのはメイド服を着た人や煌びやかな制服のような服を身に纏った人たち。

その装飾や人数、『王』と呼ばれていた人がいたことを推測すると、ここはお城で間違いなさそうだ。


(時代は・・・いつぐらいだろう・・。現代ではなさそう。)


廊下には天井からぶら下がる電球のようなものはなく、壁沿いに火のついてない松明の台が点々と置かれていた。

単純に考えても『電気』というものは存在しない場所らしい。

加えてメイド服を着た人が水の入った桶を持った姿も見ていて、水道も整備はされてなさそうだ。


(と、いうことはガスもない。結構昔っぽいなぁ・・・。)


今川先生が言った『異世界』という言葉。

ここが本当に私の住んでた世界と違うのならば、この先どうやって生きて行ったらいいのか不安に襲われる。


(てか、『処分』とか言われてたから・・殺されるのかも。)


時代が古ければ古いほど、疑わしい者や面倒者は殺されて処分されてきた。

巻き込まれてこの世界に来てしまったのだから慈悲があるかもしれないけど・・・どうなるか想像もつかない。


(とりあえず大人しくしてるほかないかー・・・。)


そんなことを考えてるうちにお城の中を何回か曲がらされ、気がつけば薄暗い廊下を歩かされていた。

点々とあった松明は距離を伸ばしていて、明らかに人気の少ないところに足を踏み入れてるのがわかる。

そしてさらに歩いたのちに『物置部屋』と呼ばれてる部屋に辿り着き、私はその部屋に押し込められた。


「ここで大人しくしてろ。食事は運んでやる。」


そう言って神官たちは扉を閉めた。

ガチャっという音が聞こえたから、外から鍵をかけられたようだ。


「ごほっ・・ごほっ・・・!ほんとに物置部屋・・・。」


扉を閉めた反動で舞い上がった埃たち。

私は部屋の奥にある窓に手をかけ、開け放った。


「ふぁ・・・!意外と高い・・・。」


逃げる気はないものの、下は結構な距離に地面が見えた。

飛び降りたら・・・軽症で骨折な感じだ。


「さて・・どう説明したら私はここから出れるんだろう・・・。」


とりあえず座れるところを作るため、私は物置部屋の整理整頓から始めることにした。




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