溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。

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弟。

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晩御飯を食べ終わり、雪華が食器を洗い始めた。

昼と同じように、洗いあがった食器を俺が拭いて片付けていく。



雄大「なぁ、雪華?」

雪華「うん?」

雄大「この食器さ・・・全部二つずつあるよね?」

雪華「うん。」

雄大「前のヤツとか・・・食べに来たりしてた?」




雪華が俺にハジメテをくれたから・・・前のヤツなんて眼中にはない。

それでも気になるのは・・・器が小さいからだろうか。




雪華「春樹?食べに来てたよ?」

雄大「あいつと食べるから・・・食器が二つずつあるの?」

雪華「あぁ、それは・・・・・」




雪華が答えようとしたとき、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

呼び鈴が無いから・・・ノックで来客が分かる。




コンコンっ・・・!




雪華「?・・・誰だろ、はーい。」



雪華は洗い物で濡れていた手を拭き、ドアを開けた。




ガチャ・・・





ユキ「・・・雪華!!」

雪華「!?」

雄大「な!?」




ドアの向こうにいたのは男だ。

ドアを開けた瞬間、雪華に抱きついた。



ユキ「会いたかったよ!雪華!」

雪華「ちょ・・・!」





あまりの出来事に、俺は慌てて二人を引きはがした。

雪華を背中に隠してこの男を睨みつける。




ユキ「・・・・誰?」

雄大「雪華の婚約者。」

雪華「!?」

ユキ「・・・婚約者ぁ!?」

雄大「・・・キミは?」




俺と同じくらいの背を持つ男。

若い気はするものの、見たことがない顔だった。




雪華「雄大さんっ・・!・・・弟ですっ!」

雄大「・・・・・・え?」

雪華「弟の・・・『ユキ』ですっ。」






ーーーーー







雪華の弟くんを部屋に上げ、俺たちはソファーに座った。

雪華は『動きたくない時用のセット』からお茶を出して淹れていく。




雪華「あのね?雄大さん、私とユキは双子なの。」

雄大「・・・双子!?」

雪華「両親が亡くなったあと、二人でこのアパートに住んでたんだけど・・ユキは仕事の関係上海外を渡り歩くことが多くなって・・・一人暮らしになったの。」

雄大「あ、それで食器が二つずつ・・・。」




食器の数に納得がいった時、雪華は弟くんを見た。




雪華「どうしたの?急に帰ってくるとか珍しい・・・。」

ユキ「あぁ、急に足首に痛みが走ったから・・・ケガでもしたのかと思って飛行機に飛び乗った。」

雪華「あー・・・昨日捻った。」

ユキ「ま、元気そうならいいよ。俺、帰るわ。」




そう言って弟くんは雪華が淹れたお茶を一気に飲み干した。




雪華「もう?たまには長く帰って来なさいよ?」

ユキ「おー、こっちが寒くなったらまとめて帰ってくるよ。・・・じゃあ、彼氏さんもまた。」




ぺこっと頭を下げてくれた弟くん。

俺も座ったまま頭を下げた。



雄大「また・・・。」




慌ただしくやってきて慌ただしく帰っていった弟くん。

雪華はまるで『いつものこと』みたいな感じでキッチンに戻った。

食器の片づけの続きを始める。




雄大「双子って・・・痛みを共有するって話を聞いたことあるけど・・・ほんとだったんだな。」

雪華「擦り傷とかはわかんないですよ?私もユキが足を骨折した時は痛くて歩けなかったことあるし(笑)」

雄大「へぇー・・・。」




双子のあるある話を聞きながら食器を全て片付け終わった。

雪華は手を拭きながら・・・ちょっと俯き加減に俺に言った。




雪華「今度・・・ユキが帰ってきたら一緒にご飯食べてくれる・・?」

雄大「そんなのあたりまえだろ?楽しみにしてる。・・・もう遅いし、俺はこれで帰るよ。」

雪華「うん。」




雪華の足に新しい湿布を貼り、俺は雪華のアパートを出た。

そのまま帰り道にある消防署に立ち寄る。




雄大「・・・署長、お話があります。」




署長室にいた署長に、相談を持ち掛けた。




署長「どうした?珍しい。」

雄大「出世・・・したいんですけど・・」

署長「!!」




俺は今まで出世の道は全部断ってきた。

一人で暮らしていくには申し分ないくらいの給料をもらっていたから。

貯金だってそれなりにある。

でも・・・


『結婚』ってことになったら話は別だ。

相手を養っていかなきゃいけないし、いろんな面で金が必要になってくる。





署長「どうした?今までそんなこと言わなかっただろう?」

雄大「結婚・・を考えてまして・・・。」

署長「!!・・・そうか。ちょうどリーダーの枠が一つ空くことが決まってる。だがタダではやれんぞ?」

雄大「なんでもします!よろしくお願いします!!」





いいチャンスが・・・俺に巡ってきてるようだ。

一生のパートナーになる女性に巡り合えて・・・出世の希望を出したところに枠ができた。

このチャンスを・・・逃すわけにはいかない。





署長「『出動』『訓練』『事務作業』。そのうちの事務作業が鬼のように増えるからな。覚悟しておけ。」

雄大「はいっ!!」







ーーーーーーーー







ーーーーーーーー








ーーーーーーーーー










雄大が雪華との未来を考えだしたころ、バーベキューで一緒だった原口 圭が居酒屋にいた。





圭「雪華ちゃんだろ?お前がフッた女の子。」





話しかけた相手は・・・春樹だ。

春樹はジョッキに入ったビールをごくっと一口飲む。




春樹「あぁ、消防士と付き合ってたか?」




春樹は食フェスで会った雄大のことを覚えていた。

それは二年前、燃え盛る火事の消火活動を・・・春樹は仕事中に通りかかって見ていた。

遠巻きに悲惨な状況を見てはいたが・・・手を差し出す必要も、意味もないと考えた。

実際、彼の職業は救助隊でもなければ医者でもない。

たかがエンジニアが・・・何かできるとは思えなかったから。




そんなことを思いながら見てると、雪華がカフェの制服を着て避難者に飲み物を配ってるのが見えた。

まだつきあってこそいなかったものの、ちょっといい感じの関係になっていた雪華と春樹。

そんな中で雪華のことを見てると・・・一人の消防士が雪華に話しかけてるのが見えた。


その時の消防士が・・・この前の食フェスで会った雄大だったのだ。






圭「お前が急に俺の仕事聞いてくるから何かと思ったら・・・元カノの状況が知りたかったのか?」




圭もジョッキに入ったビールをごくっと一口飲んだ。

圭と春樹は・・・高校の同級生だ。

先日あった同窓会で全員が職業を答えたのち、春樹が圭に話しかけにいったのだ。






春樹「まぁ・・・。」

圭「ヨリ戻したいとか?」





春樹にとって雪華の存在は大きかった。

それは『失って気がつく』とかきれいな話じゃない。



春樹「あいつだけなんだよ。」

圭「なにが?」

春樹「・・・ヤレなかったの。」




そう、春樹は今まで付き合ってきた女とは全員夜を共にしてきた。

『自分に抱かれたい女は山ほどいる』

そんなくだらない自慢が・・・春樹にとってはこの上ない喜びだった。




圭「・・・は?」

春樹「今付き合ってる女なんかどこででもヤレるんだぜ?」





その言葉に圭は思った。

『どこででもヤラせる女なんてどこがいいんだか』・・・と。




圭「で?どうするんだ?」

春樹「あの消防士とヤったんなら・・・俺ともできるだろ?」

圭「それは・・・その人によるんじゃないか?それにもし・・・雄大さんの彼女だったら俺は関わりたくない。」

春樹「なんで?」

圭「あの人・・・『キレる』って署では有名なんだよ。敵に回したくないタイプだ。」





春樹は仕事中の雄大しかしらなかったが、圭は内側を知っていた。

雄大が・・・鬼のように頭がキレることを。




春樹「なら雪華を抱くのにちょうどいいかもな。」

圭「・・・。」




春樹がどう考えてるのか圭にはわからなかった。

でもこの考えが・・・後々面倒を呼び込みそうな気がした圭は、席を立った。





圭「俺は関わらないからな。署内で敵は作りたくない。」



チームプレーが要求される職業において、乱すことを自らするバカはいない。

圭は『友達』より『仕事』を選択した。




圭「じゃな。」




そう言って居酒屋をあとにした。









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