溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。

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連絡先。

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ーーーーー




雪華「あー、楽しかったっ。」




ご飯を食べ終わった私たちはお店を出た。

程よく膨れたお腹を擦りながら、もう暗くなってしまってる道を歩く。




雄大「送る。」

雪華「・・・ありがとうございます。」

雄大「ビール、2杯でよかったの?」




私たちがお店で飲んだお酒の量はビールが2杯ずつ。

あとは焼き鳥やらサラダやらをつまみながらたくさん話をしていたのだ。



雪華「前はやけ酒みたいなものだったんで・・・それにいくら飲んでも酔いませんし。」

雄大「俺もザルだけど・・・女の子でザルな子は珍しいな。」

雪華「ふふ。今度飲み放題行ってどっちが先に酔うか競争します?」

雄大「決着がつかなさそうだけど・・・ま、行ってみようか。」




そんな話をしてるうちに、私たちはアパートについた。

帰り道に聞いた話によると、雄大さんのアパートは消防署の向こうにあるそうで、私たちの家は消防署を挟んで右左にあることがわかった。




雄大「じゃ、おやすみ。」

雪華「おやすみなさい・・・。」




雄大さんは私を送り届けたのち、自分のアパートに向かって帰っていった。




雪華「昨日振られたばっかりなのに、もうかなり過去のことに思える。」




部屋に入った私は二人掛けのソファーに座りながらポケットに手を入れた。

さっき切ってもらった指輪を取り出して・・・見つめた。



『別れよう』って言われたとき、ちょっとは抵抗したけど・・・必死に抵抗はしなかった。

それは・・・ずっと好きだと思っていたけど、実はそうじゃなかったのかもしれない。

嫌われたくなくて頑張ることが、重荷になっていたのかもしれない。




雪華「でも好きだったんだよ?・・・今までありがとう。」




そう言って私はゴミ箱に指輪を捨てた。








ーーーーーーー






それから数日、私は雄大さんと会うこともなく過ごしていた。

仕事も忙しく、特に消防署に寄る意味もないから連絡を取ってない。

それに・・・




雪華「連絡先・・・知らないんだよね。」




前に電話をかけたときは内線電話だった。

飲み友になったはいいけど知らない連絡先。

そのうち会えたら聞こう・・・と思いながら数日が経ってしまっていた。




雪華「うーん・・・今日、帰りに消防署に寄って聞いてみようかな。」





朝から仕事だった私はカフェで接客をしながらそんなことを考えていた。




カランカラン・・・



雪華「いらっしゃいませー。」

客「ケーキセットをアイスコーヒーで。」

雪華「かしこまりました。」




手慣れた手つきで冷ケースからケーキを取り出し、コーヒーを入れていく。

全ての用意を整えて、お客様のテーブルにお運びした。



雪華「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ。」




ケーキをアイスコーヒーをテーブルに置き、私はカウンターに戻った。

その時、お店のドアが開く音が聞こえた。




カランカラン・・・





雪華「いらっしゃいませー・・・・って・・・雄大さん?」





お店のドアを開けてはいってきたのは雄大さんだった。



雄大「やっと見つけた・・・。」

雪華「え?・・・とりあえずお席にどうぞ?」



わたしは雄大さんを席に案内した。



雪華「今日、お休みですか?」

雄大「ううん?夜勤、・・・あ、ホットコーヒーで。」

雪華「かしこまりました。・・・って、寝なくていいんですか!?」




確か夜勤のあるお仕事は夜通し働くはずだ。

だからその日、昼過ぎくらいまで寝てから出勤するのが一般的だ。




雄大「雪華を探してカフェを渡り歩いてた。」

雪華「・・・なんで?」

雄大「!!・・・連絡先をしらないからっ。」




焦ったように言う雄大さん。

私はさっき考えていたことを雄大さんに伝えた。



雪華「・・・今日、帰りに消防署に寄ろうと思ってたんですけど・・。」

雄大「・・・なんだ、焦って損した・・。」




雄大さんは自分の手のひらを口元にあてた。



雪華「焦る・・?」

雄大「もう・・・俺とは会わないのかと思って・・・焦ってたんだよ。」



顔が赤くなっていく雄大さん。

私もつられて赤くなってしまうのがわかる。



雪華「・・・今度、飲み放題行きましょうって言ったじゃないですか。」

雄大「・・・そうだね。」





私は雄大さんの注文したコーヒーを淹れにキッチンに戻った。

その時、ペーパーナプキンにケータイ番号とメールアドレスを書いて・・・一緒に持って行った。




雪華「お待たせいたしました。・・・あと、これと。」




そう言ってペーパーナプキンを渡すと、雄大さんの表情がみるみるうちに嬉しそうな表情になっていった。



雄大「!!・・・ありがとうっ。」

雪華「ふふ。お仕事が終わったら連絡ください。」




私は自分の仕事に戻った。

雄大さんはしばらくコーヒーを飲んでいたけど、仕事の時間が迫って来たらしくてお会計を済ませて出て行った。

私はその後姿を見送って・・・また仕事に取り掛かった。




店長「・・・さっきのイケメン、せっちゃんの彼氏?」



食器を洗うためにキッチンに入ると、店長がすすすと近づいてきて私にこそっと聞いてきた。



雪華「彼氏・・・ではないんですけど・・・。」

店長「気になる存在ってわけね?」



店長は私よりも年上の人だ。

お客さんの数も少ないし、辺りに誰もいないことを確認してから小声で相談した。



雪華「・・・私、この前彼氏に振られたところなんです。なのにもう気になる人ができるなんて・・・ダメですよね。」

店長「あら、じゃあ別れて何日経ったら気になる人ができてもいいの?」

雪華「・・・え?」

店長「恋に落ちるのは一瞬。一生かけて愛を育めばいいんじゃない?」


雪華「・・・一瞬、・・・一生・・。」





私は店長の言葉をかみしめていた。

もしかしたら私は、新しい恋を始めてもいいのかもしれない。

でも、春樹に振られた原因を克服できたわけじゃない。

そもそもそれが原因で振られたかどうかもわからないけど・・・




雪華「でも、雄大さんに理由・・・話したよね?」




指輪を切ってもらったときに聞かれた理由。

キスより先が怖いってことは確かに言った覚えがあった。



雪華「それをわかってて『付き合おう』って言ってくれてるのかな・・・。」




頭の中でいろいろ悩んでる時、制服のエプロンのポケットからチカチカとケータイが光ってるのが見えた。



雪華(メール?)



私はキッチンでしゃがみ込み、ポケットからケータイを取り出した。

そのままメールボックスを開くと・・・知らないアドレスからのメールだった。



雪華(・・・あ、雄大さんだ。)



開くと差出人は雄大って書かれていた。

内容は・・・



『仕事、頑張って。雄大』





たった1行のメールだった。

そのメールに、心が躍ってる自分がいることに気がついた。




雪華(あぁ、きっと私、雄大さんに惹かれてる。)





仕事中ということもあって返信はできなかったけど、メール画面を開いたまま私は仕事に戻った。

時々ケータイを見てはニヤつきながら・・・仕事に励んだ。

















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