溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。

文字の大きさ
上 下
4 / 41

指輪。

しおりを挟む

雄大「わかった。こっちおいで。」




私は雄大さんに連れられ、消防署の中を進んだ。

右に左に通路を曲がって現れたドア。

雄大さんはそのドアを開けて・・・私を中に引き入れた。




雄大「そこ、座って?」

雪華「・・・はい。」





入った部屋には小さなテーブルが一つと、椅子が二つあった。

回りは棚で囲われていて、いろんな道具や機械が置かれてるのが見える。

雄大さんはそれらの道具の中から・・・少し大きめなレンチみたいなものを取り出してきた。




雄大「この指輪さ、彼氏からもらったの?」

雪華「え?そうですけど・・・」

雄大「切っていいの?」

雪華「はい。」



私の向かいに座った雄大さん。

レンチみたいな工具をことんっとテーブルに置いて、私の手にある指輪をそっと触った。



雄大「・・・別れた?」

雪華「・・・そうですけど?」

雄大「じゃあ、切ってあげるから別れた理由教えてくれる?」

雪華「なんで・・・・」

雄大「俺が知りたいから。」



私は自分の右手を見つめた。

雄大さんの質問に答える義務はない。

でも、このまま指輪が取れないと・・・困ったことになる。



雄大「昨日お酒を飲み過ぎたって言ってたのって別れたから?」

雪華「・・・はい。」

雄大「振った?振られた?」

雪華「いや、ほんとに言わないと切ってくれないんですか!?」





私は左手でテーブルをバンバンっと叩きながら聞いた。




雄大「うん、俺が知りたいから。」

雪華「~~~~。・・・振られたんです。」




にこにこ笑いながら聞いてくる雄大さんに負けた気がして・・・

私は観念して話始めた。




雄大「なんで?」

雪華「なんでって・・・わかんないですけどたぶん・・・キスより先に進めなかったからかなーって。」

雄大「え?」

雪華「1年ちょっと付き合ってたんですけど・・・その・・・キスより先がどうしても怖くて・・・愛想つかされたみたいです。」

雄大「へぇー・・・。」

雪華「もういいですか?こんな話、恥ずかしすぎる・・・。」




私は両手で自分の顔を隠した。

きっと顔が赤くなってるはずだから・・・。




雄大「あぁ、ごめん。手、出して?」

雪華「はい・・・。」





雄大さんはテーブルに置いた道具を手に取り、私の右手にある指輪にあてがった。

そのままグッと力が込められ・・・ぱきんっと音と立てて指輪が切られた。



雪華「・・・取れた!」

雄大「切ったからね。・・・はい、指輪。」



割られた指輪は雄大さんが私の手の上に置いてくれた。

その指輪を取って眺める。




雪華「・・・・私が我慢すればよかったんですよね。」

雄大「え?」

雪華「怖くても・・・先に進めれば彼と別れなくて済んだのかもしれない。」




指輪に詰まった思い出は、もう彼と共有することはできない。

割れた指輪みたいに・・・繋がることはもう無い。




雄大「無理して付き合うくらいなら別れて正解じゃない?」

雪華「・・・・。」

雄大「じゃあ俺と付き合うってのはどう?」

雪華「・・・へ!?」

雄大「別れたんでしょ?今、フリーってことだよね?」

雪華「ま・・まぁ、そうですけど・・・・」

雄大「俺もフリーだし。どう?」





『どう?』って言われても・・・





雪華「いや、私、雄大さんのこと全く知りませんし・・!」

雄大「これから知ればいいんじゃない?」

雪華「昨日知り合ったばっかりだし・・・!」

雄大「どのカップルも初めて出会った日ってあると思うけど?」

雪華「~~~~っ。」




何を言っても正論で返してくる雄大さん。

私は反論することを諦めた。



雪華「・・・そもそもなんで私なんですか?雄大さんほどかっこいい人ならすぐに彼女とかできるんじゃないんですか?」

雄大「・・・・・。」




私は部屋から出ようと思い、ドアノブに手をかけた。

引くタイプのドアをぐいっと引いた時、雄大さんがドアに手をついた。




バンッ・・・。




雪華「ちょ・・!?」

雄大「俺と一緒にいるの・・・嫌?」

雪華「---っ!・・・嫌とか嫌じゃないとかじゃなくて・・っ。」

雄大「・・・嫌?」

雪華「~~~~っ。・・・嫌じゃないですよ。今朝のお話も楽しかったし・・・。」







吸い込まれる話術・・・みたいな感じで楽しかったのは事実だ。





雄大「なら友達からだな。」

雪華「友達・・・。」

雄大「『飲み友』からでどう?」

雪華「!!・・・はい!」



お酒が好きな私はつい『はい』と返事をしてしまった。

すぐに『しまった!』!と思ったけれども、にこっと笑う雄大さんには抵抗できないような気がしていた。




雄大「じゃ、さっそく今日飲みに行こうか。」



雄大さんはにこにこ笑いながらドアを開けてくれた。

私は雄大さんの言葉に驚いて、開けてもらったドアをまた閉める。



バンっ・・・!



雪華「・・・今日!?」

雄大「俺、もうすぐ上がりなんだよ。どう?この近所に美味い居酒屋あるけど?」

雪華「うっ・・・。」




この近所に居酒屋があることを知らなかった私は、雄大さんの話に乗るかどうか悩んでいた。

場所を知りさえすれば一人で行くこともできるようになる。

それに・・・




雄大「ん?」

雪華「---っ!」




にこっと笑う雄大さんのイケメン力がすごすぎて断れそうになかった。




雪華「い・・きます・・・!」

雄大「ははっ。じゃあ署の入り口のとこにあるベンチで待ってて?すぐ行く。」

雪華「はい・・・。」




私が閉めたドアを、雄大さんがまた開ける。

そのドアを支えてくれ、部屋の外に出た。

私は入り口に向かい、雄大さんは帰り支度をするためか奥に消えていった。




雪華「・・・やばいくらいイケメンでしょ・・。」



くっきり二重にシャープな顔立ち。

キレイな鼻筋はうらやましいくらいだ。


春樹と違って優しい言葉遣い。

少し茶色がかった髪が・・・猫っ毛のようで柔らかそうだ。




雪華「あんなイケメンが・・・なんで私?」



頭を悩ませながらベンチに腰かけていると、結構な時間が過ぎるもので・・・

気がつけば雄大さんが私服姿で歩いてくるのが目に入った。



雄大「雪華、お待たせ。」

雪華「あ・・・。」

雄大「?・・考えごと?行こうか。」

雪華「はい・・・。」




私は雄大さんと一緒に消防署を出た。

そのまま左に曲がると私が住んでるアパートに向かうことになるけど・・・雄大さんは道路を渡って真っ直ぐ歩き始めた。



雄大「この先の住宅街って行ったことある?」

雪華「あー・・越してきたばかりの時にちょっと探検したことはあります。」

雄大「雪華が引っ越してきたのって何年前?」

雪華「3年前ですね。大学出てすぐに・・・。」




大学在学中に両親が事故で他界し、卒業と同時に実家を売って引っ越してきた私。

安いアパートも見つけれて、仕事先もすぐに見つかって・・・順風満帆だった。




雄大「3年前じゃまだあの居酒屋はできてないな。去年の今くらいにオープンしたところだから。」

雪華「そうなんですか!楽しみです。」




新しい居酒屋さんがどんなところか、想像を膨らませながら歩いてると、雄大さんが歩きながら私の顔を覗き込んできた。



雪華「?」

雄大「俺さ・・・雪華のこと、どっかで見た気がするんだけど・・・・。」










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団の異色男子 ジャスティン・レスターの意外なお話 矢代木の実(23歳) 借金地獄の元カレから身をひそめるため 友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ 今はネットカフェを放浪中 「もしかして、君って、家出少女??」 ある日、ビルの駐車場をうろついてたら 金髪のイケメンの外人さんに 声をかけられました 「寝るとこないないなら、俺ん家に来る? あ、俺は、ここの27階で働いてる ジャスティンって言うんだ」 「………あ、でも」 「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は… 女の子には興味はないから」

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

救助隊との色恋はご自由に。

すずなり。
恋愛
22歳のほたるは幼稚園の先生。訳ありな雇用形態で仕事をしている。 ある日、買い物をしていたらエレベーターに閉じ込められてしまった。 助けに来たのはエレベーターの会社の人間ではなく・・・ 香川「消防署の香川です!大丈夫ですか!?」 ほたる(消防関係の人だ・・・!) 『消防署員』には苦い思い出がある。 できれば関わりたくなかったのに、どんどん仲良くなっていく私。 しまいには・・・ 「ほたるから手を引け・・!」 「あきらめない!」 「俺とヨリを戻してくれ・・!」 「・・・・好きだ。」 「俺のものになれよ。」 みんな私の病気のことを知ったら・・・どうなるんだろう。 『俺がいるから大丈夫』 そう言ってくれるのは誰? 私はもう・・・重荷になりたくない・・・! ※お話に出てくるものは全て、想像の世界です。現実のものとは何ら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ただただ暇つぶしにでも読んでいただけたら嬉しく思います。 すずなり。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

処理中です...