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変わるアイビー。
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誰かに頭を撫でられて、私は目を覚ました。
見えにくい視界に、深い青色が映る。
「に・・げら・・・?」
「!!・・・アイビー。そうだ、俺だ。」
ケガをしてるのか、痛む手をそっとニゲラ掴んだ。
大きくてごつごつした手は・・・ニゲラで間違いない。
「にげら・・・すて・・て・・?」
「?・・・『捨てる』?何を?」
鼓膜をやってしまってるのか、頭がぐらぐらする。
耳が聞こえ辛い。
でもどう声を出せば言葉になるのかは、わかっていた。
私の発音は大きくは間違ってないはずだ。
「みみかざり・・・すてて・・・」
「・・・・え?」
ジニアの私への行動は、明らかに『嫉妬』だった。
ニゲラに耳飾りの柄を教えたことに対しての嫉妬。
『自分が一番じゃなきゃ嫌だ』という欲求から起こした行動だ。
(ジニアが怖い・・・。)
このまま私がニゲラと関係を持つと、ジニアが何をするかわからない。
セダムやライムは多分、待ってくれるか諦めてくれるだろうけど・・・ジニアだけはそうじゃない気がした。
優しい表情を漏らしてるジニアの顔が・・・冷ややかな空気を纏ったときに感じたのだ。
私は見えにくい目をニゲラの目に合うようにもっていった。
「・・・ごめん。」
そう言った瞬間、私の意識が途切れた。
糸をハサミで切るかのように、ぷつんっと・・・切れた。
ーーーーー
ーーーーー
アイビーが気を失った直後、異変に気がついたニゲラがアイビーを抱えて病院に走った。
「大丈夫だからな・・!?大丈夫だから・・!」
そう何度も声をかけながらシャガと共に走り、医者にアイビーを託す。
「アイビーを頼む・・・!!」
さっきアイビーの手当てをしてくれた医者は、アイビーの状態を確認していく。
でもこの世界は医学があまり発展していなかった。
アイビーの前の世界だったらCTだのMRIだの、たくさんの機械があり、何が原因なのかすぐに特定することが可能だった。
でもこの世界はそんなものはない。
基本的に医者の触診と視診で判断がなされる。
「外傷はさっき見た通りなので・・・目が覚めるまではなんとも・・・。」
「目は・・覚めるのか!?」
「それもなんとも・・・。」
医者はこれ以上できることがなかった。
できることと言えば呼吸の確認と栄養の補給。
あとは・・・外傷の治療くらいなものだった。
「病室で様子を見ます。目が覚めるのを待ちましょう。」
アイビーは入院することが決まり、この日からシャガはアイビーの病室で寝泊まりを始めた。
アイビーがどうなるかわからなかったから、シャガはニゲラに『病院に来ないこと』を約束させ、それをジニアたちにも伝えさせた。
翌日に目を覚ますと思っていたアイビーは眠り続け、2日、3日と目を開けない。
「早く起きろよ・・・。」
毎日頭を撫で、手を擦り・・・シャガは懸命にアイビーの目を覚まさせようとした。
でもアイビーは深く眠ってるのか、呼吸が遅い。
それでいて静かで・・・このまま息をしなくなるんじゃないかと不安に襲われる日々を送っていた。
「頼むから早く起きてくれよ・・・。」
その日もアイビーの目は覚めなかった。
それどころか1週間経っても・・2週間経っても・・・アイビーは眠ったまま。
医者は毎日アイビーの腕に栄養剤を入れていった。
その針の痛みでさえ目を開けるどころか身体をピクリともさせることはない。
このまま一生目覚めないんじゃないかと思いながら1カ月の時間が過ぎていった。
ーーーーー
「ちょっと家に服、取りに帰ってくるからな。」
1カ月の時間が経っても目を覚まさないアイビーに声をかけた。
この部屋で寝泊まりを初めてもうだいぶ経つ。
毎日毎日『もう目が覚める』と思いながら・・・俺はあまり寝れない日々を送っていた。
目が覚めた時にすぐに医者を呼べるようにと思って・・・。
「黒い実もいっぱい買ってあるんだからな。さっさと起きて飲まないと・・・減らないぞ?」
あくびを一つしながらアイビーの頭を撫でる。
「すぐ戻ってくるから。いい子で待ってろよ。」
そう言ってシャガは病室を出て行った。
そしてその直後・・・ようやくアイビーは目を覚ました。
ーーーーー
(ここ・・・どこ・・・。)
ぼやっと見える視界に、陽の光が入ってくる。
その眩しさに何度も瞬きを繰り返して・・ようやく目が慣れてきたころ、ここがどこか理解できた。
(病院・・・。)
動かしにくい首をゆっくり傾ける。
すると服が無造作に置かれてるのが目に入った。
あの服は・・・シャガのだ。
(私が・・寝てる。シャガの服が・・ある・・。)
状況から考えて、入院してるのは私で間違いなさそうだった。
動かない体に、出ない声。
聞こえなかった耳が聞こえるようになってることに気がついたのは・・・数秒後だ。
病室の戸の向こうで誰かがぱたぱたと走りながら通り過ぎて行ったのが聞こえた。
(耳・・・聞こえなかったのに・・・。)
治ってることにホッとしながら、直近の記憶を手繰り寄せる。
山から落ちて、シャガに助けてもらって・・・家に帰った。
そのあと病院の先生が治療をしてくれて・・・私は眠りに落ちたのだった。
(すぐに起きなかったから病院に連れてこられたのかな。)
シャガの服があることから彼がここで寝泊まりしてそうなことはすぐにわかった。
(どれくらい寝てたんだろ・・・。)
声を出しにくいことから2、3日じゃないことは確かだ。
腕や足を動かそうにもなかなかいうことを聞いてくれない。
どうしようか考えながらも私はこれからのことが気になり始めた。
耳も聞こえてるし、目も見えてる。
身体が動かないことが問題だけど、感覚はあるから大丈夫そうだ。
問題は退院してから。
退院したら・・・またニゲラたちに会うことになる。
ニゲラとセダムとライムと・・・ジニアだ。
(あのジニア・・・怖かった。)
山から落ちる前に見たジニアの表情。
ジニアのアレは『嫉妬』だった。
自分が一番じゃなきゃ気が済まないタイプだ。
なのにニゲラに耳飾りを作ることを許したから・・・
私の心がニゲラにあるから・・・
嫉妬したんだ。
(一人の人としか結婚したくないとか・・我儘なのかな。)
思い返せばマネッチアさんは毎月違う色の耳飾りをつけていた。
数は少ないけど、他の女の人も耳飾りは色々変わっていた。
ジニアとデートした時に見かけた女の人はかなり強気な人だったし・・・。
よくよく考えれば郷に従えてない私が浮いてることは確かだった。
だから・・自分の考えは捨てるべきだ。
この世界の風に吹かれるんだから。
(みんなと・・・すればいいんだよ・・・。)
見えにくい視界に、深い青色が映る。
「に・・げら・・・?」
「!!・・・アイビー。そうだ、俺だ。」
ケガをしてるのか、痛む手をそっとニゲラ掴んだ。
大きくてごつごつした手は・・・ニゲラで間違いない。
「にげら・・・すて・・て・・?」
「?・・・『捨てる』?何を?」
鼓膜をやってしまってるのか、頭がぐらぐらする。
耳が聞こえ辛い。
でもどう声を出せば言葉になるのかは、わかっていた。
私の発音は大きくは間違ってないはずだ。
「みみかざり・・・すてて・・・」
「・・・・え?」
ジニアの私への行動は、明らかに『嫉妬』だった。
ニゲラに耳飾りの柄を教えたことに対しての嫉妬。
『自分が一番じゃなきゃ嫌だ』という欲求から起こした行動だ。
(ジニアが怖い・・・。)
このまま私がニゲラと関係を持つと、ジニアが何をするかわからない。
セダムやライムは多分、待ってくれるか諦めてくれるだろうけど・・・ジニアだけはそうじゃない気がした。
優しい表情を漏らしてるジニアの顔が・・・冷ややかな空気を纏ったときに感じたのだ。
私は見えにくい目をニゲラの目に合うようにもっていった。
「・・・ごめん。」
そう言った瞬間、私の意識が途切れた。
糸をハサミで切るかのように、ぷつんっと・・・切れた。
ーーーーー
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アイビーが気を失った直後、異変に気がついたニゲラがアイビーを抱えて病院に走った。
「大丈夫だからな・・!?大丈夫だから・・!」
そう何度も声をかけながらシャガと共に走り、医者にアイビーを託す。
「アイビーを頼む・・・!!」
さっきアイビーの手当てをしてくれた医者は、アイビーの状態を確認していく。
でもこの世界は医学があまり発展していなかった。
アイビーの前の世界だったらCTだのMRIだの、たくさんの機械があり、何が原因なのかすぐに特定することが可能だった。
でもこの世界はそんなものはない。
基本的に医者の触診と視診で判断がなされる。
「外傷はさっき見た通りなので・・・目が覚めるまではなんとも・・・。」
「目は・・覚めるのか!?」
「それもなんとも・・・。」
医者はこれ以上できることがなかった。
できることと言えば呼吸の確認と栄養の補給。
あとは・・・外傷の治療くらいなものだった。
「病室で様子を見ます。目が覚めるのを待ちましょう。」
アイビーは入院することが決まり、この日からシャガはアイビーの病室で寝泊まりを始めた。
アイビーがどうなるかわからなかったから、シャガはニゲラに『病院に来ないこと』を約束させ、それをジニアたちにも伝えさせた。
翌日に目を覚ますと思っていたアイビーは眠り続け、2日、3日と目を開けない。
「早く起きろよ・・・。」
毎日頭を撫で、手を擦り・・・シャガは懸命にアイビーの目を覚まさせようとした。
でもアイビーは深く眠ってるのか、呼吸が遅い。
それでいて静かで・・・このまま息をしなくなるんじゃないかと不安に襲われる日々を送っていた。
「頼むから早く起きてくれよ・・・。」
その日もアイビーの目は覚めなかった。
それどころか1週間経っても・・2週間経っても・・・アイビーは眠ったまま。
医者は毎日アイビーの腕に栄養剤を入れていった。
その針の痛みでさえ目を開けるどころか身体をピクリともさせることはない。
このまま一生目覚めないんじゃないかと思いながら1カ月の時間が過ぎていった。
ーーーーー
「ちょっと家に服、取りに帰ってくるからな。」
1カ月の時間が経っても目を覚まさないアイビーに声をかけた。
この部屋で寝泊まりを初めてもうだいぶ経つ。
毎日毎日『もう目が覚める』と思いながら・・・俺はあまり寝れない日々を送っていた。
目が覚めた時にすぐに医者を呼べるようにと思って・・・。
「黒い実もいっぱい買ってあるんだからな。さっさと起きて飲まないと・・・減らないぞ?」
あくびを一つしながらアイビーの頭を撫でる。
「すぐ戻ってくるから。いい子で待ってろよ。」
そう言ってシャガは病室を出て行った。
そしてその直後・・・ようやくアイビーは目を覚ました。
ーーーーー
(ここ・・・どこ・・・。)
ぼやっと見える視界に、陽の光が入ってくる。
その眩しさに何度も瞬きを繰り返して・・ようやく目が慣れてきたころ、ここがどこか理解できた。
(病院・・・。)
動かしにくい首をゆっくり傾ける。
すると服が無造作に置かれてるのが目に入った。
あの服は・・・シャガのだ。
(私が・・寝てる。シャガの服が・・ある・・。)
状況から考えて、入院してるのは私で間違いなさそうだった。
動かない体に、出ない声。
聞こえなかった耳が聞こえるようになってることに気がついたのは・・・数秒後だ。
病室の戸の向こうで誰かがぱたぱたと走りながら通り過ぎて行ったのが聞こえた。
(耳・・・聞こえなかったのに・・・。)
治ってることにホッとしながら、直近の記憶を手繰り寄せる。
山から落ちて、シャガに助けてもらって・・・家に帰った。
そのあと病院の先生が治療をしてくれて・・・私は眠りに落ちたのだった。
(すぐに起きなかったから病院に連れてこられたのかな。)
シャガの服があることから彼がここで寝泊まりしてそうなことはすぐにわかった。
(どれくらい寝てたんだろ・・・。)
声を出しにくいことから2、3日じゃないことは確かだ。
腕や足を動かそうにもなかなかいうことを聞いてくれない。
どうしようか考えながらも私はこれからのことが気になり始めた。
耳も聞こえてるし、目も見えてる。
身体が動かないことが問題だけど、感覚はあるから大丈夫そうだ。
問題は退院してから。
退院したら・・・またニゲラたちに会うことになる。
ニゲラとセダムとライムと・・・ジニアだ。
(あのジニア・・・怖かった。)
山から落ちる前に見たジニアの表情。
ジニアのアレは『嫉妬』だった。
自分が一番じゃなきゃ気が済まないタイプだ。
なのにニゲラに耳飾りを作ることを許したから・・・
私の心がニゲラにあるから・・・
嫉妬したんだ。
(一人の人としか結婚したくないとか・・我儘なのかな。)
思い返せばマネッチアさんは毎月違う色の耳飾りをつけていた。
数は少ないけど、他の女の人も耳飾りは色々変わっていた。
ジニアとデートした時に見かけた女の人はかなり強気な人だったし・・・。
よくよく考えれば郷に従えてない私が浮いてることは確かだった。
だから・・自分の考えは捨てるべきだ。
この世界の風に吹かれるんだから。
(みんなと・・・すればいいんだよ・・・。)
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