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ライムとデート。

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ジニアとデートをしてから3週間後。

私はライムとデートをしていた。

ジニアと同じく手を繋いで歩いてる。


(髪型と服装は一応同じにしておいたけど・・・。)


一人一回ずつのデートなら不公平感がないようにと思って同じにしてみた。

シャガも『その方がいいかもな』って言ってたからだ。


「ジニアとはどこ行ったの?」


ライムはやたらジニアのことが気になるのか前のデートのことを聞いてくる。


「湖行って、ご飯食べて・・・雑貨屋さん見て・・・かな?」


そう答えるとライムは気まずそうな顔を見せた。


「?・・・どうしたの?」


私の問いに、ライムは少し焦りながら答える。


「えっと・・・ごめん。僕の考えてたのとほとんど同じで・・・。」


どうやらライムも湖に行って小舟に乗る予定だったようだ。


「そうなの?」

「うん・・・。ちょっと考え直してもいい?」


頭の中で色々考え始めるライム。

私は繋いでた彼の手を引いた。


「いいんじゃない?もう一回乗ってみたかったしっ。」

「!!」

「早く行こっ?」


ライムがせっかく考えてくれたプランだ。

無下にはしたくなかった。

ジニアと歩いた道をライムと一緒に歩き進んで行く。

一緒に歩く人が違えば景色も少し違って見える。


「楽しみだねっ。」


そう言うとライムは小さな声で私に言った。


「・・・ありがとう。」

「ふふっ。」


小舟の乗り場に行くと、ジニアと来た時には無かったものがあった。

それは二人で隣同士に座って一緒にオールを漕ぐ造りの小舟だ。


「!!・・・ライム!あれ乗りたいっ。」

「一緒に漕ぐやつ?いいけど・・・アイビー、漕げるの?」

「初めて!だからやってみたい!」


ジニアが器用にオールを回してるのを見て、やってみたいと思っていた。

いづれシャガにお願いして漕がせてもらおうかと思ったくらいだ。


「いいよ?じゃあ一緒に漕ごう!」


ライムと一緒に小舟に乗り込み、私たちは隣同士で座った。

小舟に固定されてるオールを私が右、ライムが左で持った。


「ゆっくり少しずつ動かすよ?」


ライムの掛け声に合わせてオールを回していく。

小舟はぎこちない動きをしながらも乗り場からなんとか離れ、湖の真ん中に向かって出発した。


「よいしょっ・・・よいしょっ・・・!」


一生懸命漕ぐ私のペースに合わせてライムが漕いでくれる。

最初こそはクルクル回ってしまったり全然進まなかったり・・・。

でも何分も漕ぎ続けてると慣れてくるもので小舟はなんとか湖の真ん中に到着することができた。


「えへへっ、やったねっ。」

「上手だったよ?アイビー。」


私たちは休憩するかのようにオールから手を離し、空を見上げた。

あまり雨が降らないこの町は、雲一つない青空に覆われてる。


「ライムは仕事してるの?」


ライムの歳はちょうど20歳くらいのはず。

学校を卒業した後はどんな生活を送ってるのか知らなかった。


「働いてるよ?」

「へぇー、どんな仕事?」


そう聞くとライムはぽかんとした顔で私を見た。

驚いてるような感じだ?」


「・・・私、変なこと聞いた?」


そう聞くとライムはハッと我に返り、話し始めた。


「あ・・・ごめん。『何の仕事』って女の人には聞かれるけど『どんな仕事』って聞かれたのは初めてだったから。」

「・・ちょっと意味がわかんないんだけど・・・。」


ライムは今度はクスっと笑いながら話始めた。


「アイビーは仕事してる?」

「うんっ。庭掃除とか、ご飯作ったりする仕事を時々してるよ?」

「ならわかるだろうけど、収入はどう?」


収入は・・・ハッキリ言って少ない。

一人じゃ生活できるかできないかのラインくらいだ。


「・・・。」

「少ないだろ?でも定職につけば一定の収入になる。」

「定職?」


ライムの説明によると、シャガのような稼ぎ方は収入が一定とは呼ばないらしい。

依頼屋に仕事が来なくなれば無収入になるからだ。

でも『定職』と呼ばれる仕事を見つければ、毎月一定の収入は約束される。

それに加えて依頼屋の仕事もできるらしい。


(へぇー・・・社員が副業するような感じかな。)

「女の人が自分の髪色の耳飾りをつけてる間の財布は男持ちが基本。だから『何の仕事』をしてるかで男の価値を計られるんだよ。」

「そ・・そうなんだ・・・。」



びっくりするくらい男女で立場が違うことを知った。

ジニアとデートしたときに見た女の人の態度にも驚いたけど、『それ』がこの世界での普通だ。

私はこの世界での郷に従うことができるのかどうかに不安を覚えた。


「『どんな仕事』なんて聞かれると思わなかったから・・・ちょっと驚いたよ。」

「・・・私はライムがどんな仕事をしてるのか気になっただけだよ。ジニアやとうさんみたいに危ない仕事だったら心配だし・・・。」


狩りの時は少なからずケガをする。

その痕がジニアにもシャガにも残ってるのを私は知っていた。

いつかそのケガが元で死んでしまったらと思う時は・・・悲しくて涙がでてくるほどだ。


「優しいんだね、アイビー。」

「・・・そんなことないよ。」

「ははっ。・・・僕の仕事はね、『研究者』だよ。」

「初めて聞く・・・。」

「だろうね。学者よりも数が少ないし。」


ライムが言う『研究者』はいろいろなものを調べる人らしい。

食べ物や薬に関することがほとんどで、食べ物なら山に生えてるものが食用かどうかを調べたりする。

薬は病気やけがを治せれる薬草みたいなものを研究するらしい。


「へぇー!ケガとかは薬欲しいなぁっ、とうさんがすごくケガして帰ってくるから。」

「!・・・じゃあ今度、薬持ってくるよ。アイビーがケガしても塗れるやつ。」

「へへっ、ありがとうっ。」


ライムと私はお腹が空くまで小舟の上で話をした。

学校での思い出話や、三つ子たちのその後とか。

あの三人は学者の見習いとして仕事をしてるらしく、研究者のライムは時々顔を合わすことがあるんだとか。


「そっかぁ・・・元気にしてるみたいでよかった。またみんなでいつか会えたらいいね。」


そう言うとライムは私の手を取った。


「僕は・・・これ以上ライバルが増えるのはごめんだよ。三つ子たちはまだアイビーの魅力に気がついてない。できればこのまま知られたくない。」


ライムは私の肩に自分の頭を軽く置いた。

至近距離にライムの紫の髪の毛が見える。


「アイビーのことは僕が守るからね。」

「う・・うん・・・。」


ジニアと同様、プロポーズまがいのセリフをまたもらってしまった。

あまりにも普通にいうもんだからつい返事をしてしまったけど恥ずかしくて仕方ない。


(私・・そんなこと言ってもらえるような人間じゃないと思うんだけど・・・。)


ライムと私はオールを持ち、下り場に向かって漕ぎ始めた。

二人でなんとか息を合わせてゆっくりと漕ぎ、小舟を着ける。

小舟から下りた後はご飯屋さんに向かい、軽くご飯を食べた。

その後はぶらぶらと町を散策して・・・私はライムとのデートを終えた。


「送ってくれてありがとう。」

「!!・・・どういたしまして。明日は雨らしいから・・・風邪引かないようにね。冷えるよ。」

「うん。ライムもね。」

「・・・アイビー、好きだよ。18歳の誕生日の日は俺を選んで。またデートに誘うから。・・おやすみ。」


そう言ってライムは駆けるようにして帰っていった。


「もー・・・こんなのがあと2回もあるの?死んじゃうよ・・・。」


私は家の戸の前でしゃがみ込んだ。

地面にお尻をつけ、膝を立てて両腕を置く。

そこに顔を埋めて思いっきりため息を吐いた。


「はぁー・・・。」


のぼせた頭を冷やそうと、そのまま日が暮れるまで私は家の外でしゃがみ込んでいた。








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