上 下
15 / 61

時間の流れは早いもの。

しおりを挟む
私は翌日から早く起きることにした。

いつもより30分早く起きて畑仕事をする。

そのあとで学校に行き、みんなと一緒に勉強をする。



急に何時間も早く起きることはできないけど、少しのことくらいなら体に負担はかからない。



(5歳児にはキツいけど・・・ジニアと散歩を繰り返したせいか体力はあるし。)



学校の勉強はしなくてもついて行けることはわかってる。

この世界の仕組みを少しずつ知っていくことが今の私の目標だ。



(シャガも知らないことあるもんねー。)



こうして私は意気込んで毎日を過ごしていくようになった。







ーーーーー







ーーーーー






月日は流れるもの。

何かに向かって一生懸命なときや、楽しんでるときは尚更時間が流れるのは早い。


毎日楽しく学校に行き、ライムやセダムと仲良くなった私は学校帰りに一緒にお菓子を食べたりするようになった。

セダムはちょっと口悪いけど、聞いたことはストレートに答えてくれる。

前にセダムの成績を聞いたら・・・




「成績?あのクラスだったら最下位だぜ!」



と、自信満々に答えてくれた。

対してライムはいつでも紳士で・・・



「アイビー、どうぞ?」



とか言ってドアを押さえててくれたりする。

たかだか10歳の男の子がするような行動じゃないと思っていたけど、他の学年の男の子たちも女の子の為にドアを押さえてたりするのを見た。

その時に『これが普通なのかな』なんて思ってスルーしていた。



そんな毎日は1週間、1カ月、半年・・1年と続き、私とライム、セダムは基準通りの6年で学校を卒業した。






ーーーーー






「アイビーは卒業後はどうするの?」




卒業証書をもらって学校を出た時、ライムが聞いてきた。

この6年で私の髪の毛はだいぶ伸び、腰元まである。

ふわふわとした金色の髪の毛を今日は三つ編みにした。

前に流して頭には学士帽。

今日、卒業した証拠だ。



「うーん・・・私、もうすぐ12歳だけどまだ働けないと思うし・・・とうさんの仕事の手伝いするよ。」

「じゃあ一旦お別れだけど・・・また会うことになると思うから待っててね?」

「?・・・うん、わかった。」

「俺もアイビーに会いに行くから待ってろよ!!」




セダムも一緒になって私に言ってくる。



「もうわかったからっ。二人とも元気でね?」

「うんっ。」

「あぁ!」




学校の前で私たちは別れた。

ライムの言ってた『すぐに会うことになる』はおそらく同窓会みたいなものだろうと勝手に解釈をした私は家に向かって足を進める。


「アイビーっ!卒業おめでとう!」

「大きくなったな!」

「早く働ける年になれよー!」


町を歩けばたくさんの人が私に声をかけてくれた。

私の頭にある学士帽を見て声をかけてくれる。

学校帰りによく寄ったお菓子屋さんに、雑貨屋さん。

服屋さんに寄ることもあったし、シャガに頼まれて食料品を買って帰ることもあった。

どの店にも一度は顔を出してる私はこの町で知らない人はいないようになっていた。


「ふふっ、ありがとーっ!」


お祝いの言葉をかけてくれた人たちに感謝を伝えながら家に向かって歩いて行く。

『おめでとう』と言って欲しい人が待ってる家に向かって。


(早く帰ろっと。)


私は少し走るようにして町を抜けていった。




ーーーーー




「たっだいまーっ!!」



元気よく玄関の戸を開けると、シャガが黒い実を淹れていた。

コーヒーのいい匂いが部屋中に漂ってる。



「お?おかえり。早かったな。」

「うんっ!ほら見て見て?」



私はシャガに見せつけるようにして学士帽を見せた。



「うん、よく似合ってる。・・・おめでとう、アイビー。」

「・・・へへっ。」



帽子を取り、私は着替えるために部屋の奥に向かった。

着替えを済ませ、机に行くとシャガが黒い実でできたコーヒーをカップに入れて持って来てくれた。




「ほら、飲むだろ?」



黒い実は高いらしくて普段から飲めるものじゃなかった。

シャガの年収からしたら安易に手に入るものだけど、そもそも町であまり売ってないものだから切らすと手に入れることが難しいらしい。



「買っててくれたの?」

「お前が好きだからな。白い実もたっぷり入ってるぞ。」

「やったぁっ!」



私は机の前に座った。

5歳の頃に使ってた椅子は、今は部屋の隅で荷物置き場に変貌を遂げてる。



「飲んでもいいっ!?」


うきうきしながらシャガに聞くと、シャガは手のひらを私に向けた。


「どうぞ?」

「へへっ、いただきまーすっ!」


カップに口をつけ、ごくっと一口飲んだ。

ほどよい苦さと、ミルクの甘みが合わさって私の好きな味になってる。



「えへへー、おいしぃっ。」

「そりゃよかった。・・・ところでお前、『月のモノ』はもう来たのか?」

「え?『生理』のこと?」

「あー・・それが何かはわからんけど・・・女の人に月1回来るやつだ。」



シャガの言ってることはおそらく『生理』のことだ。

歳から考えたらそろそろ来てもいいのかもしれないけど、私にはまだ来てなかった。



「まだだよ?」



そう答えるとシャガは後ろ手に頭を掻きながら続きを話始めた。



「その・・・そのことで気になることがあったら『依頼屋』に言って聞けばいいから・・・。」

「『依頼屋』?」

「俺の仕事先だ。そこで依頼を聞いて退治だったり実拾いだったり行くんだ。そこの受付がアイビーと一番年が近い女だから。」

「そうなんだ。」



この世界のナプキン事情も気になっていた私は早速明日にでも聞きに行こうかと思った。

学校では結局私と同学年に女の子はいなかったし、新たに入ってくる別学年の子も女の子はいなかった。



(上の学年にはいたけど違う町から来たって聞いたし・・・もう連絡も取れないんだよね。ちょうどよかったかも。)




『学校』はいろんな町から通いに来てる子が多かった。

うちは歩いて行けるぶん近くて助かったと思ったくらいだ。



「で、アイビーは明日からどうするんだ?誰かいいヤツのとこに行くのか?」







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!

枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」 そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。 「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」 「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」  外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...