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学校。

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ーーーーー




シャガの声に、畑の近くにある建物の陰から一人の男の子が出てきた。

水色の髪の毛に、白のシャツ。

茶色のズボンを穿いている。



「こんにちは、アイビー。」



真っ直ぐに歩いて来た男の子は私の前で足を止めた。

見上げないといけないくらいの身長に、私よりも大きな手のひらを差し出してる。



「こんにちは・・・。」



私は差し出された手を取るかどうか悩んでいた。

この手を取るとどうなるのかが分からなかったからだ。




「アイビー、『ジニア』だ。お前より7つ年上だ。」

「『ジニア』?」

「お前が通う学校をこの前卒業した。」

「卒業・・・。」




21歳の私から見たらまだまだお子様なジニアだけど、5歳の私から見たらジニアは遥かに大きい『お兄ちゃん』だった。




「アイビーの体力も戻ってきたし、そろそろ学校に行ってもらおうと思ってな。」

「!!・・・ほんとに行くの?」


シャガに聞くとジニアがクスクスと笑いながら私に言った。



「みんな行きたがるのにアイビーは行きたくないのかい?」

「それは・・・」



一番の理由はシャガに金銭的な迷惑をかけたくないことだ。

この世界は学歴は問題視されない。

畑で取れたものを町で売ればそこそこ暮らしてはいける。

私とシャガが生きていくだけなら、私が学校に通う意味はない。




「金のことなら心配すんなって言ったろ?将来のこともあるし・・・な?」

「でも・・・・」



ジニアがこの場にいる以上、お金に関して詳しく発言はできない。

私はそのまま口ごもってるとジニアが私の手を掴んだ。




「ほらっ、一回学校を見に行ってみようよ!」

「へ!?」



ジニアは私の手を引き、小走りに駆けていく。

私は引っ張られるような形でジニアの後ろを走らされた。



「ちょ・・!とうさんっ!」



シャガに助けを求めようと顔だけ振り返ると、陽気に手を振るシャガが見えた。



「晩飯には帰って来いよー!」

(いやいやいや・・!止めてよぉっ!)




シャガ以外に止めてくれる人なんかいるわけもなく、私はジニアに手を引かれて畑を出た。






ーーーーー





「・・・ほんとに学校にいくの?」



私が諦めたことを分かったのか、ジニアは小走りからゆっくり歩きに変わった。

でも手は繋いだままだ。



「もちろん。・・・アイビーはどうして行きたくないの?」



にこっと笑いながら聞いてきたジニア。

水色の髪の毛がふわふわと風になびき、爽やかな表情が見えた。

12歳とは思えないくらいの大人っぽい表情に一瞬胸がどきっとした。



(!!・・・いやいや・・相手は子供だし!)


頭をぶんぶんと左右に振り、雑念を取り払う。

するとジニアは私の頭をがしっと掴んで止めた。



「こーら。そんなことしたら頭がクラクラするよ?」

「うっ・・・・。」




至近距離でにこっと笑ったジニア。

そのまま私の手を取り、また歩き始めた。



「・・・ねぇ、学校って行かなきゃだめなの?私、できればとうさんの手伝いしたいんだけど・・・。」

「・・行かなきゃいけないわけじゃないけど・・・アイビーは将来のこと考えてる?」

「将来?」



5歳の私はこのまま大きくなっていって・・・6歳、7歳、8歳・・・そして大人になる。

大人になったらシャガの手伝いをもっとできるようになる。



「とうさんの仕事の手伝いする。」



そう答えるとジニアは驚いたような顔を見せた。

でもその直後にクスクスと笑いだして・・・



「そっか、まだアイビーはちっちゃいからわかんないよな。」



そう言った。



「?・・・そんなことないと思うけど・・・。」





ジニアと歩き続けること30分。

平屋でできた大きな建物が見えてきた。



「ほら。アイビーの家からはちょっと遠いけど・・・ここが学校だよ。」

「わぁ・・・。」


真っ白の壁でできた学校。

出入口のところは大きく開かれ、両サイドに花が植えられてる。

壁の真ん中、横一面に窓が見え、中は陽の光が射し込んでそうだ。



「今はまだ授業中かな?ちょっと覗いてみようか。」

「・・・へ!?」

「ほら行くよー。」

「ちょ・・!・・えぇ!?」



ジニアは私の手を引いて建物の中に入っていった。

がっしりと掴まれた手は離してくれそうにない。



(そもそも年の差もあるし男と女じゃ力の大きさも違う・・・!)



どう考えても勝つことができない私は仕方なくジニアの少し後ろをついて行くことにした。




ーーーーー





「あ、先生。」



ジニアは学校に入ってすぐにいた先生のような人に声をかけた。

教科書のような本を数冊腕に抱え、眼鏡をかけてる。

髪の毛は暗めの茶色で、後ろで一つに束ねられていた。

少し年を召されてるような感じだ。



「あらジニア。この前、この学校を一番で卒業した優等生がどうしたの?」



にこっと笑って言った先生の言葉に、私はジニアを見た。



「・・・一位!?」

「そんな自慢できるようなことじゃないですよ。それよりこの子なんですけど。」



そう言ってジニアは私の背中に手をあて、ずぃっと前に押し出した。















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