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保護・・・?

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「よっ・・!ほっ・・!」

(ひぃーーっ・・!)



片手で私を抱いて、もう片手で太い木の枝を掴みながらひょいひょいと駆け飛んでいく。

あまりの動きの速さに目を回してるといつの間にか意識が遠のいていった・・・。





ーーーーー




ーーーーー






(なんか・・・声する・・・。)



目が覚めた私は耳に聞こえる声に集中した。



「お前・・・狼の退治に出かけて赤ん坊拾ってくるか?フツー・・・。それも女の子って・・・」

「見つけちまったもんは仕方ないだろ?ほっといたら獣に食われるかそのまま死ぬし・・・。」

「いや・・・だからってどうすんだ?」



赤い髪の毛の人は私を抱いたまま。

もう一人の人は深い青色の髪の毛をしていた。

目だけで辺りを見ると、椅子らしきものはなく、どうも床に座ってるようだ。

板張りの床に、木でできた小さなテーブルがある。

そのテーブルを挟んで、赤い髪の人と、青い髪の人が座ってる。



(誰だろう・・・友達・・とかかな。)



会話の内容からしたら『私』をどうするかってことらしい。

自分で動くことすらできない私はこのまま放置されたら確実に死んでしまう。

できれば保護施設にでも送ってもらいたいところだけど、この赤髪の人はとんでもないことを言った。



「俺が・・・育てる。」

「はぁ!?」

(えぇ!?)

「なんか・・・育てなきゃいけない気がする。」



そう言って赤髪の人は、膝の上にいた私を高く抱き上げた。



「俺は『シャガ』。こっちは腐れ縁の『ニゲラ』。それでお前の名前は・・・『アイビー』だ。」

(『アイビー』って・・・確か植物の名前・・・。)



『アイビー』は有名だから、だれもが名前こそは聞いたことがあるだろう。

思い返せば『シャガ』も植物の名前だったハズだ。



(この国の人って・・・もしかして植物の名前が人の名前なのかな。)



そんなことを思ってると、シャガの友達らしき人が怒ってるような感じで言った。



「育てれるわけないだろ!?女の子だぞ!?」

「・・・『ダリア』に聞く。昔とはいえ10人、子供を産んだんだ。」

「ダリアが産んだのは男だろ!?女じゃない!それに産んだのはだいぶ昔の話だぞ!?」

「それでも・・・赤ん坊は赤ん坊だ。」



シャガは私を抱えて立ち上がった。



「!?・・・今から行くのか!?」

「アイビーのメシがわからんからな。」



そう言ってスタスタと歩き、家の外に出て行った。

私を大事そうに抱えてくれ、時折顔を覗き込んでくる。



「アイビー、腹減ってるか?」

(空いてるっちゃ空いてるけど・・・)

「ダリアにメシはどうするのか聞くからそれまで待てよ?」

(いや、フツーは粉ミルクとかじゃ・・・。)



色々言いたいことはあったけど、どれも『あー』とか『うー』とかしか言葉は出ない。

まだ舌が発達してないからか、ちゃんと言葉の発音ができないみたいだ。



(まぁでも・・・育ててくれるって言ってくれてるし・・・。)



どうなるのかわからなかったけど、私の身はこの人に預けるしかなかった。





ーーーーー




「ダリア!居るか!?」




そう言ってシャガは一軒の家のドアをバーンっ!・・と開けた。



(いや、ノックは!?)



ノックをせずにドアを開けたことに驚いたけど、さらに驚いたのはこの家の住人の態度だった。



「おや、シャガじゃないか。なんの用だい?」

(フツーだ・・・。)



驚くこともなく、住人はテーブルを拭いていた。

ここの家は椅子があって、足の長いテーブルがあった。

家の中は細かく区切りがあるわけじゃなく、一つの大きな部屋しかないようだった。

背面キッチンが一つに、テーブルと椅子。

それに暖炉だ。

キョロキョロと目だけで家の中を見ると、階段が奥に見えた。

おそらく2階があるんだろう。




「ダリア、赤ん坊の育て方を教えてくれ!」

「赤ん坊?」




シャガは『ダリア』と呼んだ人に私を差し出した。

布一枚で身体を包まれてる私をダリアは受け取り、そっと覗き込んできた。



「あれまぁ・・・この子、どうしたんだい?」

「実はーーーーー」




シャガは私を拾った経緯をダリアに話始めた。

私はそんな会話どうでもいい。

経験者なんだから。



(それよりこの人・・・抱くの上手い・・・。)



シャガと違って無駄のない抱き方をしてるのが体でわかった。

シャガの抱き方は何と言うか・・・『がっちり守られてます!!』みたいな感じだけど、ダリアは優しくて、ほっとするような感じだった。

しわしわの手に、少し曲がった腰。

どう見ても『おばあちゃん』だ。

赤ちゃんを抱く経験が多いのか、思わずうとうとと眠ってしまいそうになるくらい心地がいい。




「で、俺が育てようと思うんだけどメシもわかんないしどうしたらいいのかと思って・・・。」

「シャガ・・・育てるのはいいとして仕事はどうするんだい?」

「そりゃもちろん連れて行くさ。」



シャガの言葉にダリアは呆れながらため息をついた。



「はぁー・・・こんな赤ん坊を連れて熊退治や狼退治に行くのかい?どうやって?山にこの子を置いて行くのかい?その間に獣に食われちまうよ?」

「あ・・・・。」

「獲物に近づいて行ってもこの子が泣いたら?一発でバレちまうよ。」

「・・・・。」




シャガはダリアの言葉に『確かにそうだ』と思ったようだった。

それくらいのこと、私でもわかる。




「でも・・・赤ん坊から出た光が・・・『育てろ』って言ったみたいな気がして・・・。」

「うーん・・・・。」



二人は示し合わせたかのように私を見た。



(これは・・・笑ったといた方がいい?)



『育てる』って言ってくれたけど『やっぱ無理だから山に戻す』とか言われたら困るから私はとりあえず笑ってみることにした。

顔の筋肉が上手く動いてくれるかどうかわからなかったけど、口角を上げるようにして口を開く。



「あぅー。」

「!!」

「!!・・・おやおやなんて可愛いんだい?」




上手く笑えたかどうかはわからなかったけど、シャガがダリアの肩をがしっと掴んだ。




「俺、いいこと思いついた・・・!」
















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