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4 定休日
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さて、今日は定休日のお話。
語りカフェを夜に開いてるマスターの休日の一日。
いつも通り朝5時に起きたマスターは家にある観葉植物たちに水やりをしていく。
一人暮らしとは思えない個性的な作りの家には、観葉植物専用の部屋があるのだ。
「みなさん、おはようございます。」
霧吹きを持ち、観葉植物一つ一つに声をかけていくマスター。
観葉植物の部屋は天井が吹き抜けになってる丸い形の部屋だ。
半面に窓がはめ込まれていて、太陽を好む観葉植物が置かれてる。
「今日は何をしましょうかねぇ・・・あ、そうだ。」
霧吹きによる水やりが終わった後、マスターは食事を着替えを済ませて家を出た。
今の時間は6時だ。
「市場で新鮮な果物を仕入れましょう。新作のメニューも欲しいし、今日は一日かけて作ってみましょうか。」
朝早くから市場に出向いたマスターは、穫れたての果物と野菜を順番に見ていく。
みずみずしく見えるフルーツはどれもこれもおいしそうだ。
「そうですね・・これとこれと・・あとこれも・・・。」
頭の中でレシピを組み立てながら欲しいものを買っていく。
どうやらマスターは何をカフェのメニューに加えるのか、もう決まってるみたいだ。
たくさんの人が忙しく行き交う市場の中で人の波を避けるようにして買い物をしてく途中、マスターはふと鮮魚のコーナーに目をやった。
たくさんの魚介類がズラッと並べられてるのだが、カフェで魚はあまり使うことはない。
でも自分の食事として買うのなら全然大丈夫なことだ。
「さすがにケースで買ってしまうと消費ができないんですけど・・・」
そう思いながらも新鮮な魚たちはマスターの目を奪っていく。
冷凍しておけばいいかと思いながら順番に見ていくと、魚を捌いてる人がいた。
鱗落としを使って手際よく鱗を取り除き、頭も落としていく。
腹を開いて内臓を取り、背を開く様子は見てて飽きるものではなかった。
「ほう・・見事ですな。」
そう言いながらマスターはまだじっと見ていた。
背から開かれた魚は次に腹からも割かれ、肩身を切り離された。
そしてもう肩身も下ろされて、見事三枚おろしになったのだ。
「お?兄ちゃん買ってくかい?」
捌いていたガタイのいい魚屋がマスターに声をかけた。
ずっと見られていたのはわかっていたけど、あまりにも真剣にマスターが見ていたもんだから声をかけなかったのだ。
「欲しいことは欲しいんですけど・・・ちょっと量がありすぎて私じゃ食べきれ無さそうなんですよね。」
そう答えるとマスターの足元に1匹の猫がすり寄って来た。
にゃーんっと甘えるような声で鳴く猫は人慣れしてるようで、マスターの足元を八の字を描くようにすり寄っていたのだ。
「え・・猫?」
驚きながら足元を見たマスター。
その姿を見た魚屋が豪快に笑い始めたのだ。
「ははっ!兄ちゃんが買う魚、少しおこぼれをくれっていってるんだよ。そいつはこの辺に住み着いてる野良猫なのさ。」
「野良猫・・・あ、餌ってことですね?」
「にゃーんっ。」
にゃあにゃあ鳴く猫は真っ黒の着物を纏っていて、心なしか腹が少し出ているように見えた。
子が腹にいるのなら、栄養をつけないといけないのだ。
「・・・店主さん、一つお願いがあるのですがいいですか?」
「?・・なんだい?」
「この魚、ケースで買うので半分、この猫にあげてもらえませんか?」
マスターの言葉に魚屋は驚いた声を上げた。
「半分!?半分って6匹あるぞ!?」
「私は一人暮らしなんでそんなにいらないんですよ。でもここは市場だから1匹でなんて売ってくれないでしょう?」
「それは・・そうだが・・・」
「ならこの猫にあげてほしいんです。おそらく身ごもってそうですから・・・。」
そう言われ、魚屋は猫の腹に目をやった。
野良だから細い体をしてるのに腹だけは出てる姿に、自然と明るいため息が零れていく。
「はぁー・・。いいよ、わかった。まぁ、毒入りの餌を持ってきて消そうとするやつもいるくらいだし、うちの魚の方が安全か。」
「ありがとうございます。ここで会った猫さんとの出会い、感謝しなくてはいけませんね。」
そう言ってマスターは少し身を屈め、猫の体を優しく撫でた。
「どっちが感謝するんだかね。・・・あ、こいつもさすがに一度に6匹は食えないだろうから分けてやるけどいいかい?」
「その辺りはお任せいたします。・・・じゃあ猫さん?がんばってかわいい子供を産んでくださいね?」
マスターは支払いをし、買った6匹の魚を持って帰路につくことにした。
「ふぅ・・少し買いすぎましたかね。」
両手にある重たい袋は買いすぎを教えてくれてる。
でも新鮮な魚も買えたし、猫のご飯も買えた。
あの猫が少しくらいしのぐことができると思えば、この荷物は軽く思えてくるのだ。
「あれだけ慣れてたら誰かが拾ってくれたらいいんですけどねぇ・・・。そんな簡単にはいきそうもないですが。」
猫には猫の生き方がある。
同じく人には人の生き方がある。
猫と人の両方がマッチしないと両方にとっていい方向には向かないものだ。
「さて・・・。」
そんなことを考えながら家に着いたマスターは買って来たものをカウンターに並べていった。
魚は晩御飯にするとして冷蔵庫に入れ他の果物や野菜たちを見ながらメニューに悩む。
「・・・お昼はアヒージョパスタにでもしましょうか。マッシュルームも大ぶりのが買えましたし。」
とりあえずは自分の昼ごはんメニューを決めたマスター。
オリーブオイルに野菜たちとにんにくを入れてアヒージョを作りながら果物をじっと見つめていた。
「パフェ・・は昼向きですよね、メニューとしてもうありますし。夜だったらもっとあっさりしたものがいいでしょうかね。」
そう思いながらもパフェしか思いつかないマスターは食器の入ってる棚から小さいシャンパングラスを取って来た。
「そうですよ、大きいからダメなんです。小さくすれば夜でも平気ですね。」
アヒージョを作ってる火を弱め、マスターは果物をいくつか手に取ってざっと洗った。
冷蔵庫から生クリームを取り出し、手際よく泡立てていく。
「やっぱりクリームは艶が大切ですよね。」
作り置いてるソースたちも冷蔵庫から出し、シャンパングラスにいれていく。
バニラクリームやアイス、フルーツを少しずつ交互に乗せ、皮つきの桃のカットを添えるように置く。
するとミニサイズのパフェが出来上がったのだ。
「・・・うん。店にいけばもう少しいろいろあるからまた明日考えましょうか。とりあえずミニパフェの方向で考えてみましょう。」
大体の案が固まった時、ちょうどアヒージョも完成した。
パスタを茹でるのを忘れてしまったことに気がついたマスターは、バゲットを5枚ほど切り、皿に並べていく。
「さて、いただきましょうか。」
ダークブラウンの長テーブルにアヒージョとパンを置き、マスターは椅子に腰かけた。
野菜たちの出汁が出たオリーブオイルにバゲットを浸し、口に運んでいく。
すると口の中で旨味が弾け、思わず目を閉じてしまう。
「うーん・・いいですね。」
情熱と太陽の国、スペインが瞼の裏に浮かぶようだ。
でも目を開けるとそこは我が家。
マスター以外誰もいない家なのだ。
「・・・誰かがいたら分け合うこともできたんでしょうかね。」
そうボソッと呟いたとき、庭の方から猫の鳴き声が聞こえてきた。
掠れるような声で、まるで誰かを探してるような鳴き方だ。
「?・・・今日は猫によく会う日ですね。」
手に持っていたバゲットを皿に置き、庭に通じる窓の鍵を開ける。
塀の代わりをしてる植物の間を目を凝らして見てみると、黒い着物を着た猫の姿を見つけた。
かわいらしくひょこっと顔を出すこの猫は、さっき市場で会った猫だったのだ。
「おまえさんは・・さっきの市場の猫じゃないですか?」
窓を開けて身を屈めると、黒猫は嬉しそうに泣きながら近寄って来た。
そしてマスターの足にスリスリと擦り寄ってる。
「にゃーん?」
「・・・ふふ、うちの子になりたいのかい?」
喉元を触るとグルグル言いながら甘えてくる猫。
『誰かが居たら』と考えていたマスターはこの猫を家の中に招き入れることにした。
「今日中にしなくてはいけないことが増えましたね。昼食を食べたら一気にしましょう。」
そう言うとマスターはものすごいスピードでアヒージョを食べ始めた。
ざっと洗い物をし、パソコンを起動して動物病院を探していく。
「うーん・・・あ、ここがいいですね。病院と美容院が併設されてるところがあるみたいです。」
見つけた病院の場所をメモし、支度をしていく。
そして黒猫をひょいと抱え、胸に収めた。
「あ・・・お名前が必要ですね。」
病院に行くには『名前』が必要になることに気がついたマスターは。胸の中にすっぽり収まってる黒猫をじっと見つめた。
薄汚れた黒い着物を纏ってはいるけど、洗えばきっときれいになりそうだ。
「・・・『ヨル』はどうでしょう。あなたの着物にぴったりだと思うのですが。」
マスターは『夜』に特性が出る。
この猫の色味といい、マスターの特性に惹かれてきたことは間違いなさそうだった。
だから『ヨル』と名付けたのだ。
「にゃんっ!」
「おや、気に入りましたか?では病院と美容院、両方済ませに行きましょう。」
「にゃっ!?」
「きれいになりましょうね。」
「・・・。」
運命だと思って諦めたヨル。
この後病院で注射され、ノミやダニを落とす薬を塗られ、体をきれいに拭かれて帰って来たのだった。
「さて、ヨルは疲れて寝てしまったようですし、今の間に買い物行ってきますね。出産を控えてるから生みやすいようにタオルやケージ、ご飯も吸収がいいものがいいと教えてもらいましたし・・・。あ、あと市場の魚も回収してこないと。」
必要なものをメモし、家を出たマスター。
歩きながら猫との生活のシミュレーションをしていく。
・・・と、その時、マスターは歩いていた足をピタッと止めた。
「え・・・もしかして生まれる子猫もうちで飼うことになるんですか?」
急に増える『家族』に戸惑うマスターの一日だった。
さて、今日は定休日のお話。
語りカフェを夜に開いてるマスターの休日の一日。
いつも通り朝5時に起きたマスターは家にある観葉植物たちに水やりをしていく。
一人暮らしとは思えない個性的な作りの家には、観葉植物専用の部屋があるのだ。
「みなさん、おはようございます。」
霧吹きを持ち、観葉植物一つ一つに声をかけていくマスター。
観葉植物の部屋は天井が吹き抜けになってる丸い形の部屋だ。
半面に窓がはめ込まれていて、太陽を好む観葉植物が置かれてる。
「今日は何をしましょうかねぇ・・・あ、そうだ。」
霧吹きによる水やりが終わった後、マスターは食事を着替えを済ませて家を出た。
今の時間は6時だ。
「市場で新鮮な果物を仕入れましょう。新作のメニューも欲しいし、今日は一日かけて作ってみましょうか。」
朝早くから市場に出向いたマスターは、穫れたての果物と野菜を順番に見ていく。
みずみずしく見えるフルーツはどれもこれもおいしそうだ。
「そうですね・・これとこれと・・あとこれも・・・。」
頭の中でレシピを組み立てながら欲しいものを買っていく。
どうやらマスターは何をカフェのメニューに加えるのか、もう決まってるみたいだ。
たくさんの人が忙しく行き交う市場の中で人の波を避けるようにして買い物をしてく途中、マスターはふと鮮魚のコーナーに目をやった。
たくさんの魚介類がズラッと並べられてるのだが、カフェで魚はあまり使うことはない。
でも自分の食事として買うのなら全然大丈夫なことだ。
「さすがにケースで買ってしまうと消費ができないんですけど・・・」
そう思いながらも新鮮な魚たちはマスターの目を奪っていく。
冷凍しておけばいいかと思いながら順番に見ていくと、魚を捌いてる人がいた。
鱗落としを使って手際よく鱗を取り除き、頭も落としていく。
腹を開いて内臓を取り、背を開く様子は見てて飽きるものではなかった。
「ほう・・見事ですな。」
そう言いながらマスターはまだじっと見ていた。
背から開かれた魚は次に腹からも割かれ、肩身を切り離された。
そしてもう肩身も下ろされて、見事三枚おろしになったのだ。
「お?兄ちゃん買ってくかい?」
捌いていたガタイのいい魚屋がマスターに声をかけた。
ずっと見られていたのはわかっていたけど、あまりにも真剣にマスターが見ていたもんだから声をかけなかったのだ。
「欲しいことは欲しいんですけど・・・ちょっと量がありすぎて私じゃ食べきれ無さそうなんですよね。」
そう答えるとマスターの足元に1匹の猫がすり寄って来た。
にゃーんっと甘えるような声で鳴く猫は人慣れしてるようで、マスターの足元を八の字を描くようにすり寄っていたのだ。
「え・・猫?」
驚きながら足元を見たマスター。
その姿を見た魚屋が豪快に笑い始めたのだ。
「ははっ!兄ちゃんが買う魚、少しおこぼれをくれっていってるんだよ。そいつはこの辺に住み着いてる野良猫なのさ。」
「野良猫・・・あ、餌ってことですね?」
「にゃーんっ。」
にゃあにゃあ鳴く猫は真っ黒の着物を纏っていて、心なしか腹が少し出ているように見えた。
子が腹にいるのなら、栄養をつけないといけないのだ。
「・・・店主さん、一つお願いがあるのですがいいですか?」
「?・・なんだい?」
「この魚、ケースで買うので半分、この猫にあげてもらえませんか?」
マスターの言葉に魚屋は驚いた声を上げた。
「半分!?半分って6匹あるぞ!?」
「私は一人暮らしなんでそんなにいらないんですよ。でもここは市場だから1匹でなんて売ってくれないでしょう?」
「それは・・そうだが・・・」
「ならこの猫にあげてほしいんです。おそらく身ごもってそうですから・・・。」
そう言われ、魚屋は猫の腹に目をやった。
野良だから細い体をしてるのに腹だけは出てる姿に、自然と明るいため息が零れていく。
「はぁー・・。いいよ、わかった。まぁ、毒入りの餌を持ってきて消そうとするやつもいるくらいだし、うちの魚の方が安全か。」
「ありがとうございます。ここで会った猫さんとの出会い、感謝しなくてはいけませんね。」
そう言ってマスターは少し身を屈め、猫の体を優しく撫でた。
「どっちが感謝するんだかね。・・・あ、こいつもさすがに一度に6匹は食えないだろうから分けてやるけどいいかい?」
「その辺りはお任せいたします。・・・じゃあ猫さん?がんばってかわいい子供を産んでくださいね?」
マスターは支払いをし、買った6匹の魚を持って帰路につくことにした。
「ふぅ・・少し買いすぎましたかね。」
両手にある重たい袋は買いすぎを教えてくれてる。
でも新鮮な魚も買えたし、猫のご飯も買えた。
あの猫が少しくらいしのぐことができると思えば、この荷物は軽く思えてくるのだ。
「あれだけ慣れてたら誰かが拾ってくれたらいいんですけどねぇ・・・。そんな簡単にはいきそうもないですが。」
猫には猫の生き方がある。
同じく人には人の生き方がある。
猫と人の両方がマッチしないと両方にとっていい方向には向かないものだ。
「さて・・・。」
そんなことを考えながら家に着いたマスターは買って来たものをカウンターに並べていった。
魚は晩御飯にするとして冷蔵庫に入れ他の果物や野菜たちを見ながらメニューに悩む。
「・・・お昼はアヒージョパスタにでもしましょうか。マッシュルームも大ぶりのが買えましたし。」
とりあえずは自分の昼ごはんメニューを決めたマスター。
オリーブオイルに野菜たちとにんにくを入れてアヒージョを作りながら果物をじっと見つめていた。
「パフェ・・は昼向きですよね、メニューとしてもうありますし。夜だったらもっとあっさりしたものがいいでしょうかね。」
そう思いながらもパフェしか思いつかないマスターは食器の入ってる棚から小さいシャンパングラスを取って来た。
「そうですよ、大きいからダメなんです。小さくすれば夜でも平気ですね。」
アヒージョを作ってる火を弱め、マスターは果物をいくつか手に取ってざっと洗った。
冷蔵庫から生クリームを取り出し、手際よく泡立てていく。
「やっぱりクリームは艶が大切ですよね。」
作り置いてるソースたちも冷蔵庫から出し、シャンパングラスにいれていく。
バニラクリームやアイス、フルーツを少しずつ交互に乗せ、皮つきの桃のカットを添えるように置く。
するとミニサイズのパフェが出来上がったのだ。
「・・・うん。店にいけばもう少しいろいろあるからまた明日考えましょうか。とりあえずミニパフェの方向で考えてみましょう。」
大体の案が固まった時、ちょうどアヒージョも完成した。
パスタを茹でるのを忘れてしまったことに気がついたマスターは、バゲットを5枚ほど切り、皿に並べていく。
「さて、いただきましょうか。」
ダークブラウンの長テーブルにアヒージョとパンを置き、マスターは椅子に腰かけた。
野菜たちの出汁が出たオリーブオイルにバゲットを浸し、口に運んでいく。
すると口の中で旨味が弾け、思わず目を閉じてしまう。
「うーん・・いいですね。」
情熱と太陽の国、スペインが瞼の裏に浮かぶようだ。
でも目を開けるとそこは我が家。
マスター以外誰もいない家なのだ。
「・・・誰かがいたら分け合うこともできたんでしょうかね。」
そうボソッと呟いたとき、庭の方から猫の鳴き声が聞こえてきた。
掠れるような声で、まるで誰かを探してるような鳴き方だ。
「?・・・今日は猫によく会う日ですね。」
手に持っていたバゲットを皿に置き、庭に通じる窓の鍵を開ける。
塀の代わりをしてる植物の間を目を凝らして見てみると、黒い着物を着た猫の姿を見つけた。
かわいらしくひょこっと顔を出すこの猫は、さっき市場で会った猫だったのだ。
「おまえさんは・・さっきの市場の猫じゃないですか?」
窓を開けて身を屈めると、黒猫は嬉しそうに泣きながら近寄って来た。
そしてマスターの足にスリスリと擦り寄ってる。
「にゃーん?」
「・・・ふふ、うちの子になりたいのかい?」
喉元を触るとグルグル言いながら甘えてくる猫。
『誰かが居たら』と考えていたマスターはこの猫を家の中に招き入れることにした。
「今日中にしなくてはいけないことが増えましたね。昼食を食べたら一気にしましょう。」
そう言うとマスターはものすごいスピードでアヒージョを食べ始めた。
ざっと洗い物をし、パソコンを起動して動物病院を探していく。
「うーん・・・あ、ここがいいですね。病院と美容院が併設されてるところがあるみたいです。」
見つけた病院の場所をメモし、支度をしていく。
そして黒猫をひょいと抱え、胸に収めた。
「あ・・・お名前が必要ですね。」
病院に行くには『名前』が必要になることに気がついたマスターは。胸の中にすっぽり収まってる黒猫をじっと見つめた。
薄汚れた黒い着物を纏ってはいるけど、洗えばきっときれいになりそうだ。
「・・・『ヨル』はどうでしょう。あなたの着物にぴったりだと思うのですが。」
マスターは『夜』に特性が出る。
この猫の色味といい、マスターの特性に惹かれてきたことは間違いなさそうだった。
だから『ヨル』と名付けたのだ。
「にゃんっ!」
「おや、気に入りましたか?では病院と美容院、両方済ませに行きましょう。」
「にゃっ!?」
「きれいになりましょうね。」
「・・・。」
運命だと思って諦めたヨル。
この後病院で注射され、ノミやダニを落とす薬を塗られ、体をきれいに拭かれて帰って来たのだった。
「さて、ヨルは疲れて寝てしまったようですし、今の間に買い物行ってきますね。出産を控えてるから生みやすいようにタオルやケージ、ご飯も吸収がいいものがいいと教えてもらいましたし・・・。あ、あと市場の魚も回収してこないと。」
必要なものをメモし、家を出たマスター。
歩きながら猫との生活のシミュレーションをしていく。
・・・と、その時、マスターは歩いていた足をピタッと止めた。
「え・・・もしかして生まれる子猫もうちで飼うことになるんですか?」
急に増える『家族』に戸惑うマスターの一日だった。
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