35 / 49
35
しおりを挟む
「ステラ!?・・・大丈夫か!?」
急に倒れたステラを地面すれすれで抱きとめた俺はステラの頬を軽く叩いた。
声をかけるものの、ステラは反応を示さない。
「またか!?」
ステラが倒れるのはこれで3度目だ。
一度目は外の寒さに凍えて倒れた。
二度目はヒールをかけすぎて。
三度目の今回は何が原因かわからない。
「とりあえず戻らないと・・・!」
俺はステラを抱きかかえ、空に浮かんだ。
するとその時、トゥレイスたちが追い付いてきたのだ。
「タウ・・!!大丈夫か!?」
「俺は大丈夫だ!ステラが倒れた!」
「・・・また!?」
「戻るから援護してくれ!!ステラがかけた結界魔法が解け始めてる!!」
空を見上げると国全体を覆っていた結界の上部が解けてきてるのが見えた。
解けてる部分は少しずつ広がっていってる。
「わかった!!」
「戻りながらさっきのこと話すから!!」
飛び始めた俺の後ろをアダーラとミンカルがついてきて、隣をトゥレイスが飛ぶ。
ステラの様子を確認しながらさっきのことを一通り説明すると、トゥレイスの表情は曇っていった。
「ディアヘルの者が魔法を使えるなら・・・攻めてくるつもりなのか?」
「それはわからない。」
「攻めてきたところで道具に入ってる魔力が尽きたらそれまでじゃないか?」
「それはそうだ。でも・・・」
「でも?」
「ピストニアに攻め入れさえすれば、魔力は補充できるんじゃないか?」
ピストニアの国民は全員魔力がある。
逃げ遅れた小さい子供や女性を捕まえたら・・・魔力を補充することができるのだ。
「!!・・・戦争が起こるのか!?」
「こっちは戦争になんの利益もない。・・・王がどうするかだな。」
さっきステラに弾け飛ばされた奴らは、きっと道具で命拾いしてることだろう。
そいつらが国に戻り、今回のことを報告してから攻めてくると仮定したら・・・
「1か月が最短だろうな。」
「1か月・・・」
「どうなるかはわからない。だから堺の森付近の見張りは強化しないと・・・」
「わかった!手配しておく。問題は・・・ステラだな。」
「・・・。」
前と同じように冷たくなって眠ってるステラ。
生気を感じれなく、ぞっとする瞬間が続いていた。
「原因はなんだ?結界か?ヒールか?」
ステラがしたことと言えばそれくらいだ。
そのどちらかに原因があるだろう。
「とにかく城に戻って医者に見せよう。意識が戻ったら原因を調べる。」
「そうだな。」
俺たちは今後のことを話しながら城まで飛んでいった。
ステラの歌のおかげで軽くなった体は疲れなんて知らないみたいで、俺は城に戻ったとき、全然疲れていなかったのだ。
(間近で聞くとこんなにも体が軽くなるのか・・・。)
ステラの歌の効果に驚きながらも、俺はステラの部屋に向かった。
部屋に入ると同時に医者も来てくれ、またステラの様子を診てくれてる。
「・・・・申し上げにくいのですが、今回もあまりこれといっては・・・」
「そうか・・・。」
医者は今回のこともわからないようで、何度も首をかしげながら部屋をあとにした。
とりあえず何もないなら目が覚めるのを待つしかなく、俺は椅子を持ってきてベッドの側で座った。
「トゥレイス、王への報告頼んでいいか?」
「あぁ。目が覚めるまでいてやれよ。・・・お前の大事な子なんだから。」
「!!」
そう言ってトゥレイスは手をひらひら振りながら部屋から出ていった。
蓋をしていた自分の気持ちが、いつの間にか溢れ出るくらい大きなものになってしまっていたようだ。
「くそ・・・あいつにバレてるならステラにもバレてるんじゃ・・・」
そんなことを思いながら眠ってるステラを見つめた。
こんなときじゃないとじっと見つめれないステラの顔は、見つめれば見つめるほど胸が締め付けられていく。
「抱きしめたくなるじゃねーか・・・。」
いつも少し潤んでる瞳はきれいな薄い青色で揺れていた。
金色の髪の毛は少しふわっとしていて、艶やかだ。
小さい体なのにケガをしてる人にヒールをかけ、優しい言葉もかける。
いつも笑っていて・・・その笑顔を自分だけに向けてくれたらどんなにいいかと想像しては諦めるのだ。
「倒れるならヒールなんかかけなくていい。結界なんて張らなくても俺たち騎士団がお前とこの国の人たちは守る。だから・・・目を開けてくれ。」
そう願いながら、俺はステラの手をぎゅっと握った。
するとステラの目が薄っすら開いたのだ。
「!!・・・目、覚めたか!?」
「あれ・・私・・・」
「俺にヒールをかけたあと、また倒れたんだ。どっか痛いところとかないか?」
「ない・・です・・・・」
まだ意識が混濁してるのか、ステラの目の焦点が合ってなかった。
無理矢理起きるのはよくないと思い、ステラの瞼にそっと手を乗せる。
「もう少し寝たほうがいい。起きたら水、用意しとくから。」
そう言うとステラは深い呼吸をし始めた。
手をどけると目を閉じてる姿がある。
「やっぱり魔力の使い過ぎが原因か・・・?」
前と同じような状況なことから魔力絡みが疑われた。
でも医者でもなければ研究者でもない俺は、断言なんてできない。
「何かもっと・・確信できるようなものがあればいいんだが・・・」
そんなことを考えながら、俺は次にステラの目が覚めるまで部屋にいた。
ステラの目が覚めるのは思いのほか早く、次の日の朝だった。
目が覚めたステラは少しぼーっとしてるものの、にこっと笑っていて体調は悪くなさそうに見えた。
そして俺は、昨日あった『ステラ誘拐』の話を確認しながら聞いていくことにした。
「何か嗅がされたって?路地裏で?」
「はい。」
ステラは執務室から出て行ったあと、街に行き、そこで『救い人』として視線を集めてしまった。
その視線にいたたまれなくなり、路地裏に逃げたところ、デネボラの制服を着たディアヘルの者に連れ去られてしまったらしいのだ。
「体に力が入らなくなって・・・箱に入れられたんです。」
「なるほど、箱ごと国の外に出たから誰にも気づかれなかったのか。」
上手く言い訳を作って箱をごと外に出たディアヘルの者は、少し離れたところで乗り物と一緒に待機していた奴らと合流。
そして堺の森に向かって進んでる時に、俺が見つけたってことらしい。
「あの人たちは・・・私の防界で飛んで行っちゃったんですよね?」
確認するように聞いてきたステラ。
俺は『その通りだ』と答えながらも空を見上げた。
ステラの部屋からは空なんて見えないけど、ステラがこの上に広がってると思ってるだろうものを指さす。
「ただ・・残念ながらステラの結界は・・・解けていってる。」
「・・・え!?」
「ステラが倒れてから、解け始めたんだ。」
今はもう半分ほどしか残ってないステラの結界。
ステラはベッドから飛び降りて窓の外を見に行った。
「ほんとだ・・・。」
「寝てる時とか・・・解けたことなかったのか?」
「なかった・・・ですね・・・。」
「『眠る』のと『意識の消失』は違うものなのか・・・?」
ぶつぶつ言いながら考えてると、ステラは左手の人差し指をピンっと立てた。
そしてその指を腕ごと真っ直ぐ空に向けた。
「ぼうか・・・・・」
「!?・・・言うな!」
俺は慌ててステラのところに行き、その口を手で塞いだ。
「んぐっ・・・!?」
「魔法はかけなくていい・・!」
そう言うとステラは俺の腕を掴み、口から引き離した。
「ぷはっ・・・。でも・・・」
「大丈夫だ!あいつらはまだ来れないだろうから・・・」
「え?」
内心『しまった』と思った俺だったけど、口から出てしまった言葉は戻せない。
俺は後ろ手に頭を掻きながらこれからの予想をステラに話した。
戦争になるかもしれないことを・・・。
「攻めてくるんですか・・・?」
「わからないけど、ステラの魔力を狙ってたことは確かだ。ステラをまた攫いに来るか、ステラの魔力を補えるだけの人間を攫いに来るだろう。」
「そんな・・・」
「ステラもみんなも俺たち騎士団が守る。だからお前は体調を戻すことだけを考えろ。いいな?」
そう言うとステラは少し悩んだ表情を見せた。
でも納得してくれたのか、何も言わずに首を縦に振ってくれたのだ。
「いい子だ。」
ステラの頭に手を乗せて撫でると、ステラは俺の手を取った。
そして少し顔を赤くしながら俺を見上げて言った。
「あの・・助けに来てくれて・・・ありがとうございました。タウさんなら・・・来てくれると思ったんで嬉しかった・・・です。」
「!!」
照れながら言うステラがあまりにも愛おしく見え、俺は思わずステラの体を抱きしめてしまった。
「ひぁっ・・・!?」
「悪い・・ごめん・・・」
「え?」
「こんなこと、言えないのはわかってる。お前は森に帰りたがってるんだし・・・・。でも、どうしても伝えたいんだ。」
「?」
抱きしめていた手を離し、俺はステラの両肩に手を添えた。
そして少し屈む。
「ステラが・・・好きなんだ。」
「・・・え?」
「ステラを大事にしたい。お前の笑顔を・・・俺一人が守りたいんだ。」
他の誰にもステラを触れさせたくないし、笑ってる顔なんか俺にだけ向けていて欲しいと思った。
そんなわがまま、していいはずもないけどそう思ってしまうのが『好き』って気持ちなのだ。
「拒んでくれ。」
「え?」
「想いに応えれないなら・・・拒んでくれ。」
そう言ってステラの顎をすくった。
「!!」
小さくてピンク色した唇に向かってゆっくり顔を近づけていく。
(拒まれるながらこの辺りだな・・・。)
好きでもない男と口づけなんてステラは嫌がるだろう。
そう思いながらもほんの少しだけ期待してしまう自分がいる。
(ステラも同じ気持ちだったらいいのに・・・ずっと俺が守り続けるのに・・・)
そう思いながら唇のすぐ近くで俺は近づくのを止めた。
拒まれると思ってステラの表情を見ると、赤い顔をして目をぎゅっと閉じていたのだ。
「!!・・・ステラ・・・?」
急に倒れたステラを地面すれすれで抱きとめた俺はステラの頬を軽く叩いた。
声をかけるものの、ステラは反応を示さない。
「またか!?」
ステラが倒れるのはこれで3度目だ。
一度目は外の寒さに凍えて倒れた。
二度目はヒールをかけすぎて。
三度目の今回は何が原因かわからない。
「とりあえず戻らないと・・・!」
俺はステラを抱きかかえ、空に浮かんだ。
するとその時、トゥレイスたちが追い付いてきたのだ。
「タウ・・!!大丈夫か!?」
「俺は大丈夫だ!ステラが倒れた!」
「・・・また!?」
「戻るから援護してくれ!!ステラがかけた結界魔法が解け始めてる!!」
空を見上げると国全体を覆っていた結界の上部が解けてきてるのが見えた。
解けてる部分は少しずつ広がっていってる。
「わかった!!」
「戻りながらさっきのこと話すから!!」
飛び始めた俺の後ろをアダーラとミンカルがついてきて、隣をトゥレイスが飛ぶ。
ステラの様子を確認しながらさっきのことを一通り説明すると、トゥレイスの表情は曇っていった。
「ディアヘルの者が魔法を使えるなら・・・攻めてくるつもりなのか?」
「それはわからない。」
「攻めてきたところで道具に入ってる魔力が尽きたらそれまでじゃないか?」
「それはそうだ。でも・・・」
「でも?」
「ピストニアに攻め入れさえすれば、魔力は補充できるんじゃないか?」
ピストニアの国民は全員魔力がある。
逃げ遅れた小さい子供や女性を捕まえたら・・・魔力を補充することができるのだ。
「!!・・・戦争が起こるのか!?」
「こっちは戦争になんの利益もない。・・・王がどうするかだな。」
さっきステラに弾け飛ばされた奴らは、きっと道具で命拾いしてることだろう。
そいつらが国に戻り、今回のことを報告してから攻めてくると仮定したら・・・
「1か月が最短だろうな。」
「1か月・・・」
「どうなるかはわからない。だから堺の森付近の見張りは強化しないと・・・」
「わかった!手配しておく。問題は・・・ステラだな。」
「・・・。」
前と同じように冷たくなって眠ってるステラ。
生気を感じれなく、ぞっとする瞬間が続いていた。
「原因はなんだ?結界か?ヒールか?」
ステラがしたことと言えばそれくらいだ。
そのどちらかに原因があるだろう。
「とにかく城に戻って医者に見せよう。意識が戻ったら原因を調べる。」
「そうだな。」
俺たちは今後のことを話しながら城まで飛んでいった。
ステラの歌のおかげで軽くなった体は疲れなんて知らないみたいで、俺は城に戻ったとき、全然疲れていなかったのだ。
(間近で聞くとこんなにも体が軽くなるのか・・・。)
ステラの歌の効果に驚きながらも、俺はステラの部屋に向かった。
部屋に入ると同時に医者も来てくれ、またステラの様子を診てくれてる。
「・・・・申し上げにくいのですが、今回もあまりこれといっては・・・」
「そうか・・・。」
医者は今回のこともわからないようで、何度も首をかしげながら部屋をあとにした。
とりあえず何もないなら目が覚めるのを待つしかなく、俺は椅子を持ってきてベッドの側で座った。
「トゥレイス、王への報告頼んでいいか?」
「あぁ。目が覚めるまでいてやれよ。・・・お前の大事な子なんだから。」
「!!」
そう言ってトゥレイスは手をひらひら振りながら部屋から出ていった。
蓋をしていた自分の気持ちが、いつの間にか溢れ出るくらい大きなものになってしまっていたようだ。
「くそ・・・あいつにバレてるならステラにもバレてるんじゃ・・・」
そんなことを思いながら眠ってるステラを見つめた。
こんなときじゃないとじっと見つめれないステラの顔は、見つめれば見つめるほど胸が締め付けられていく。
「抱きしめたくなるじゃねーか・・・。」
いつも少し潤んでる瞳はきれいな薄い青色で揺れていた。
金色の髪の毛は少しふわっとしていて、艶やかだ。
小さい体なのにケガをしてる人にヒールをかけ、優しい言葉もかける。
いつも笑っていて・・・その笑顔を自分だけに向けてくれたらどんなにいいかと想像しては諦めるのだ。
「倒れるならヒールなんかかけなくていい。結界なんて張らなくても俺たち騎士団がお前とこの国の人たちは守る。だから・・・目を開けてくれ。」
そう願いながら、俺はステラの手をぎゅっと握った。
するとステラの目が薄っすら開いたのだ。
「!!・・・目、覚めたか!?」
「あれ・・私・・・」
「俺にヒールをかけたあと、また倒れたんだ。どっか痛いところとかないか?」
「ない・・です・・・・」
まだ意識が混濁してるのか、ステラの目の焦点が合ってなかった。
無理矢理起きるのはよくないと思い、ステラの瞼にそっと手を乗せる。
「もう少し寝たほうがいい。起きたら水、用意しとくから。」
そう言うとステラは深い呼吸をし始めた。
手をどけると目を閉じてる姿がある。
「やっぱり魔力の使い過ぎが原因か・・・?」
前と同じような状況なことから魔力絡みが疑われた。
でも医者でもなければ研究者でもない俺は、断言なんてできない。
「何かもっと・・確信できるようなものがあればいいんだが・・・」
そんなことを考えながら、俺は次にステラの目が覚めるまで部屋にいた。
ステラの目が覚めるのは思いのほか早く、次の日の朝だった。
目が覚めたステラは少しぼーっとしてるものの、にこっと笑っていて体調は悪くなさそうに見えた。
そして俺は、昨日あった『ステラ誘拐』の話を確認しながら聞いていくことにした。
「何か嗅がされたって?路地裏で?」
「はい。」
ステラは執務室から出て行ったあと、街に行き、そこで『救い人』として視線を集めてしまった。
その視線にいたたまれなくなり、路地裏に逃げたところ、デネボラの制服を着たディアヘルの者に連れ去られてしまったらしいのだ。
「体に力が入らなくなって・・・箱に入れられたんです。」
「なるほど、箱ごと国の外に出たから誰にも気づかれなかったのか。」
上手く言い訳を作って箱をごと外に出たディアヘルの者は、少し離れたところで乗り物と一緒に待機していた奴らと合流。
そして堺の森に向かって進んでる時に、俺が見つけたってことらしい。
「あの人たちは・・・私の防界で飛んで行っちゃったんですよね?」
確認するように聞いてきたステラ。
俺は『その通りだ』と答えながらも空を見上げた。
ステラの部屋からは空なんて見えないけど、ステラがこの上に広がってると思ってるだろうものを指さす。
「ただ・・残念ながらステラの結界は・・・解けていってる。」
「・・・え!?」
「ステラが倒れてから、解け始めたんだ。」
今はもう半分ほどしか残ってないステラの結界。
ステラはベッドから飛び降りて窓の外を見に行った。
「ほんとだ・・・。」
「寝てる時とか・・・解けたことなかったのか?」
「なかった・・・ですね・・・。」
「『眠る』のと『意識の消失』は違うものなのか・・・?」
ぶつぶつ言いながら考えてると、ステラは左手の人差し指をピンっと立てた。
そしてその指を腕ごと真っ直ぐ空に向けた。
「ぼうか・・・・・」
「!?・・・言うな!」
俺は慌ててステラのところに行き、その口を手で塞いだ。
「んぐっ・・・!?」
「魔法はかけなくていい・・!」
そう言うとステラは俺の腕を掴み、口から引き離した。
「ぷはっ・・・。でも・・・」
「大丈夫だ!あいつらはまだ来れないだろうから・・・」
「え?」
内心『しまった』と思った俺だったけど、口から出てしまった言葉は戻せない。
俺は後ろ手に頭を掻きながらこれからの予想をステラに話した。
戦争になるかもしれないことを・・・。
「攻めてくるんですか・・・?」
「わからないけど、ステラの魔力を狙ってたことは確かだ。ステラをまた攫いに来るか、ステラの魔力を補えるだけの人間を攫いに来るだろう。」
「そんな・・・」
「ステラもみんなも俺たち騎士団が守る。だからお前は体調を戻すことだけを考えろ。いいな?」
そう言うとステラは少し悩んだ表情を見せた。
でも納得してくれたのか、何も言わずに首を縦に振ってくれたのだ。
「いい子だ。」
ステラの頭に手を乗せて撫でると、ステラは俺の手を取った。
そして少し顔を赤くしながら俺を見上げて言った。
「あの・・助けに来てくれて・・・ありがとうございました。タウさんなら・・・来てくれると思ったんで嬉しかった・・・です。」
「!!」
照れながら言うステラがあまりにも愛おしく見え、俺は思わずステラの体を抱きしめてしまった。
「ひぁっ・・・!?」
「悪い・・ごめん・・・」
「え?」
「こんなこと、言えないのはわかってる。お前は森に帰りたがってるんだし・・・・。でも、どうしても伝えたいんだ。」
「?」
抱きしめていた手を離し、俺はステラの両肩に手を添えた。
そして少し屈む。
「ステラが・・・好きなんだ。」
「・・・え?」
「ステラを大事にしたい。お前の笑顔を・・・俺一人が守りたいんだ。」
他の誰にもステラを触れさせたくないし、笑ってる顔なんか俺にだけ向けていて欲しいと思った。
そんなわがまま、していいはずもないけどそう思ってしまうのが『好き』って気持ちなのだ。
「拒んでくれ。」
「え?」
「想いに応えれないなら・・・拒んでくれ。」
そう言ってステラの顎をすくった。
「!!」
小さくてピンク色した唇に向かってゆっくり顔を近づけていく。
(拒まれるながらこの辺りだな・・・。)
好きでもない男と口づけなんてステラは嫌がるだろう。
そう思いながらもほんの少しだけ期待してしまう自分がいる。
(ステラも同じ気持ちだったらいいのに・・・ずっと俺が守り続けるのに・・・)
そう思いながら唇のすぐ近くで俺は近づくのを止めた。
拒まれると思ってステラの表情を見ると、赤い顔をして目をぎゅっと閉じていたのだ。
「!!・・・ステラ・・・?」
15
お気に入りに追加
970
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる