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おばぁちゃんの家に連れていかれた私は、木でできたベッドの上に寝かされた。

にこやかに微笑みながら私を覗き込んでるおばぁちゃんは、首をかしげてる。


「赤ん坊・・・ご飯はどうしようかねぇ・・。もう私は乳はでないし・・。あ、そうだ。ちょっとここで待ってなさんな、いい子でおるんだよ。」


そう言っておばぁちゃんは家から出て行ってしまった。


(平屋の・・・木造の家なんだ・・・。)


首が動く範囲でぐるっと見回すと、この家は丸太を組み合わせて作られたログハウスのような家だった。

木でできたテーブルに椅子、小さい机にベッド、すべてが木を組み合わせたものだ。

家電と呼べるような冷蔵庫やエアコンなどは見当たらない。


(すごく田舎な場所・・なのかな。さっきも木がいっぱいあって森みたいだったし・・・。)


そんなことを思いながら今度は自分の手を見つめた。

丸くて小さい手に短い指。

むちむちした手首の向こうには短い足が見えた。

さっきおばぁちゃんが私を抱えたことや『赤ん坊』と言ってたことから・・・どうやら私は『赤ちゃん』になってしまったらしい。


(・・・誠也さんに殺されて・・生まれ変わったとか?)


前世の記憶持ちの子は割といるらしい話は聞いたことがあった。

テレビなんかで特集されてて、小さい子が前世のことを話すシーンが印象的だった記憶がある。


(そっか・・私、やっぱり死んだのか・・。)


誠也さんがものすごい形相でノートパソコンを振り上げた瞬間が私の最期の記憶だ。

きっとあのあとも殴られて、私は死んだのだろう。


(赤ちゃんから人生リスタート・・・好きなことして生きれたらいいな。)


そう思ったとき、家の扉が開いた。

おばぁちゃんが帰ってきたようだ。


「よしよし、いい子だったみたいだね。すぐご飯にしてやるからもうちょっとお待ちよ。」


手に大きな木の実のようなものを持っていたおばぁちゃんは、テーブルでその実の端を包丁で切り落とした。

中からとろっと出てきた白い液体を鍋のような入れ物に入れ、火をかけていく。

そして少し湯気が上がり始めたときに火を止め、木でできたコップに注いでいった。


「さて、少しずつ飲もうかね。」


おばぁちゃんは私を抱きかかえて椅子に座った。

そして木でできたスプーンで白い液体をすくい、私の唇にちょんちょんっとあてたのだ。


「ほら、口を開けてごらん?」


そう言われて私は口を開けた。

するととろっとした液体が口の中に入ってきた。


(!!・・・何これっ・・!甘いっ・・!)


初めて口にした味に一瞬で虜になった私は、短い手でおばぁちゃんの手を掴んだ。

そしてスプーンを必死に口に入れた。


「んっ・・んっ・・・!」

「おやおや、気に入ったかい?これは赤ん坊用のミルクなんだよ?森にあるし、栄養満点。それでいて飲みやすいだろ?」

「あぅっ!」

「そうかいそうかい、気に入ったようでよかったよ。お腹いっぱいになるまでお飲み。」


私が満足するまで飲ませてくれたおばぁちゃん。

木の実一つをほぼ全部飲み切り、私は満足げに微笑んだ。


「おやおや、かわいい笑顔だねぇ。・・・・って、お前さん、瞳の色・・・」

「?」


じっと私の目を覗き込んできたおばぁちゃんは、私の体を隅々まで見始めた。

生成りの白い布一枚で包まれていた私はあっという間に裸にされてしまったのだ。


「あぅ・・・。」

「『金色の瞳を持つ者』・・・とんでもない子を拾っちまったようだね・・・。」

「ぅ?」


おばぁちゃんの言葉の意味が分からなかった私は、じっとおばあちゃんを見つめた。

するとおばぁちゃんは微笑みながら私の頭を撫でてくれた。


「まぁ・・・私が拾ったのも何かの縁だろうねぇ。」

(この辺の地域は捨て子が当たり前なのかな・・・。)


施設育ちだった前世の私も施設の前に捨てられていた。

だから地域によっては捨て子が多いところもあるのかもしれないと思った。


「さて、お前さんの名前を決めないとねぇ。」


そう言っておばぁちゃんは私の体を高く抱き上げた。

じっと私を見つめ、にこっと笑ってる。


「『ステラ』。お前さんの名前は『ステラ』だ。」

(!!・・・確か『星』って意味がある名前だ。)


素敵な名前をもらい、私の『ステラ』としての人生が幕を開けたのだった。













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