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恋心。

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望くんから返事が来ないまま数日が経った。

私は久しぶりにおじいさんのお店に遊びに来ている。




鈴「こんにちはー。」

店主「おぉ、鈴ちゃん。いらっしゃい。」





私はおじいさんにタイピンのことを話した。

お父さんもお兄ちゃんもとても喜んでくれたこと。

ちょっと無理して入院してたこと。


おじいさんは優しい笑顔で私を見ながら話を聞いてくれた。




店主「喜んでもらえてよかったねぇ。」

鈴「うんっ。また何か作れるものってある?」

店主「そうだねぇ・・・鈴ちゃんが好きそうなのは・・・。」





おじいさんは何かを探しに店の奥に入っていった。

それと同時にお店のドアが開いた。




カランカラン・・・




鈴「あれ?直哉お兄ちゃん?」




入ってきたのは直哉お兄ちゃんだった。



直哉「鈴?何してんだ?」

鈴「買い物・・・?お兄ちゃんは?」

直哉「お前がここに出入りしてるって翔平から聞いたから見に来てみた。」




直哉お兄ちゃんはお店の中をぶらぶら見始めた。



店主「あぁ、いらっしゃい。」

直哉「こんにちは。いつも鈴がお世話になってます。」



ぺこっと頭を下げたお兄ちゃん。



店主「鈴ちゃん、これなんてどうだい?」



そういっておじいさんが出してきたのは・・・




『オルゴール』だ。




鈴「どうやってするの?」

店主「カバーにボンドで飾りをつけるだけだよ?」

鈴「簡単そうっ。」

店主「作るんならどの曲がいいか聞いてごらん?」




私はねじを回して色んな曲を聞いた。



♪~・・・




直哉「お、きれいな曲だな。」

鈴「クラシックだよ?私、この曲好きー。」

直哉「ふーん?じぃさん、これいくら?」

店主「3000円と、パーツ代かな?」




私は計算し始めた。

まぁ、計算なんかしなくても財布の中身が足りないことぐらいすぐわかるんだけど。




鈴「またお小遣い貯めてきていい?」

店主「いいよ、いつまでも待ってるから。」

鈴「ありがとうっ。あと、パーツ、見てきてもいい?」

店主「あぁ、いいよ?奥にあるから。」




私は席を立って、お店の奥に入っていった。

パーツが入ってる棚を見る。



鈴「うーん・・・あ、うさぎがあるっ。」

直哉「うさぎ、好きなのか?」




私にくっついて来たっぽい直哉お兄ちゃん。



鈴「恭吾お兄ちゃんがうさぎのぬいぐるみをくれたの。おっきいやつ。それがかわいくて、うさぎが大好きになったの。」

直哉「へぇー・・・。」



直哉お兄ちゃんと棚を見てると、カタカタとまわりで音が鳴り始めた。



鈴「?」




何の音か分からず、辺りを見回した時、グラ・・・と身体が傾いた。



鈴「!?」

直哉「地震だ!鈴、こっち!」




ぐぃっと腕を引っ張られ、私は直哉お兄ちゃんに抱きすくめられた。




鈴「---っ!」





ものの数秒で収まった地震。





直哉「収まった・・・か?」

鈴「お・・・お兄ちゃん・・。」

直哉「お?悪い悪い。」





急に抱きしめられたからか、胸がどきどきとうるさかった。



直哉「・・・鈴?」

鈴「な・・なんでもない・・。」




直哉お兄ちゃんはパーツが置いてある棚を、また見始めた。

手をすっ・・・と伸ばして、私の目の前にあったパーツを手に取った。




鈴(大きい・・・手・・。)




ゴツゴツしてる手を、私はじっと見た。

直哉お兄ちゃんを・・・あんまりまじまじと見たことが無かった私は、思わず見上げ、お兄ちゃんの顔を見た。




直哉「?・・・なんだ?」

鈴「・・・・・・。」





シャープな顔立ち。

切れ長な二重の目。

屈強な体・・・ではないけど、私を支えてる手はたくましい。





鈴「直哉お兄ちゃんって・・・かっこいいよね・・・。」

直哉「!?・・・どうした?急に・・・。」

鈴「えっ!私、口に出てた・・・!?」

直哉「そりゃもう・・・。」




お兄ちゃんを見上げたまま、自分の顔が熱くなっていくのが分かった。



鈴(今、絶対顔が赤い・・・!)

直哉「鈴?」

鈴「なんでもないっ。」




私は視線を落とし、おじいさんのところに戻った。




鈴「お金貯めて、また来ますっ。」

店主「う・・・うん。」



かばんを持って、私はお店を飛び出た。



直哉「あっ!走るなっ!」

鈴「走ってないっ!」



ダッシュで住宅街を走る私をものすごいスピードで追いかけてくる直哉お兄ちゃん。




直哉「待て!鈴っ!」

鈴「やだっ!」



運動不足な私が直哉お兄ちゃんを巻けるわけなく、あっという間に捕まってしまった。




ガシッ・・!




直哉「どうした?体調悪いのか?」

鈴「元気だから離してぇ・・・。」

直哉「離すから・・・走るなよ?わかったな?」

鈴「わかったからっ。」




直哉お兄ちゃんは私の様子を見るようにしながらそっと手を離してくれた。




鈴「ちゃんと歩くから・・・帰るね。」




歩き出そうとしたとき、私は直哉お兄ちゃんに後ろからまた、抱きすくめられた。



鈴「!?」

直哉「ちょっと熱だけ。」



そう言って手が伸びてきて私のおでこに手があてられた。



鈴「やっ・・・!」



その手を払いのけ、私はお兄ちゃんの腕から抜け出した。








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