お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。

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ごはん。

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鈴(え・・・?私ここにいる・・・。)



ガチャガチャといろんなドアが開けられる音が聞こえる。

多分私を探してるんだと思うけど眠たさに勝てない。



翔平「鈴ー!?」

鈴「ここ・・・。」




お兄ちゃんに私の場所を知らせるためにベッドから下りようとした。

でもふらつく身体に上手く力が入らず、ベッドから落ちてしまった。




どん・・っ!どさっ!




鈴「いたたた・・・。」




体を起こそうとしたとき、バタバタと階段を駆け上がってくる音が聞こえた。

ほどなくして開かれた部屋のドア。



ガチャ・・!



翔平「・・・いた。」

鈴「います・・・。」




お兄ちゃんは私の側まできた。

床に座り込んでしまった私の側でしゃがむ。


翔平「・・・なにしてんだ?」

鈴「呼ばれたんで・・・返事をしようとして落ちました・・。」




ベッドに戻ろうと立ち上がった時、翔平お兄ちゃんは私を姫抱きに抱え上げた。



翔平「よっと・・。」

鈴「---っ!?」

翔平「まだ熱が下がってないんだから俺の見えるとこにいときなさい。わかった?」

鈴「あ・・歩けます・・っ。」




下ろして欲しくて言ったのに、お兄ちゃんはスタスタと歩いて1階のリビングに向かった。



翔平「階段から落ちたら危ないからな。・・・しかしお前、軽いな。ちゃんと食ってたか?」

鈴「・・・・・・・・食べてました。」

翔平「ふーん、その『間』が気になるけどな。」

鈴「---っ。」





お兄ちゃんは私をソファーに座らせた。





翔平「寝る?座っとく?」

鈴「座ります・・・。」




ソファーに座った私のおでこに手をあててきた。



翔平「んー・・まだ熱あるな。腹は?なんか食べれそう?」

鈴「大丈夫・・です。」

翔平「・・・たまご粥作ってやるよ。少しでいいから食べな?」




そう言ってキッチンで手際よく作り始めた。

その様子をじーっと見てると、いい匂いが部屋にたちこめだす。




鈴「・・・おいしそうな匂い。」

翔平「お?・・『おいしそう』って言うなら食べれそうだな。」




そう言って私に小さい木の器を持ってきてくれた。

木のスプーンも一緒に入ってて中身は・・・




鈴「・・・これがたまご粥?」

翔平「そうだけど・・・?」

鈴「・・・いただきます。」





熱そうなお粥を少しスプーンに取って、口に運んだ。




鈴「あつっ・・!」

翔平「ちゃんと冷ましてから口に入れろよ?」

鈴「ふー・・ふー・・。」



ちゃんと冷ましてから、ぱくっと食べたお粥はとても・・・おいしかった。

体中に温かさが染みわたっていく。



鈴「・・・おいしい。」

翔平「そりゃよかった。」




冷ましては食べ、冷ましては食べを繰り返してあっという間に完食してしまった。



鈴「あっ・・・!」

翔平「?・・・どうした?」

鈴「全部・・・食べちゃいました・・・。」

翔平「おかわりもあるよ?」




私はどうしたらいいかわからず、ソファーから立ち上がった。



翔平「はい、鈴、座りましょう。」

鈴「・・・は・・・はい。」




お兄ちゃんは私の隣に座りに来た。

私の手にあった器を取り上げる。



翔平「鈴はさ、施設でどんな生活してた?」

鈴「わ・・・わたし?」

翔平「朝起きてから夜、寝るまで。」

鈴「?・・・朝は6時に起きて・・・・・・」




私は一日の暮らしを説明した。

最初は笑顔で聞いてくれていたお兄ちゃんだったけど、時々表情が険しくなるときがあった。



翔平「毎日規則正しい生活を送ってたんだな。」



私の頭を撫でるお兄ちゃん。



鈴「はい。」

翔平「・・・気になったんだけどさ、ご飯ってみんなで食べてた?」

鈴「はい。大皿に盛られてて・・・食べる分だけ取ります。」

翔平「鈴は?お腹一杯食べてた?」

鈴「それは・・・」





育ち盛りの子が多い施設。

一口でも多く食べさせてあげたくて私は食べない日が結構あった。




翔平「・・・食べてなかったのか?」

鈴「た・・食べてましたよ?」

翔平「ほんとに?」

鈴「ほ・・んとに。」

翔平「まぁ、これからいっぱい食べたらいいか。」




そういってお兄ちゃんはソファーから立ち上がり、器にお粥をよそって持ってきてくれた。



翔平「ん。まだ熱があるし、あとちょっとな。」

鈴「食べて・・・いいの?」

翔平「もちろん。・・・薬はいらなさそうだし、夜は念のために一緒に寝ような。」



私は器を受け取り、ほかほかと湯気のたつお粥を平らげた。











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