甘々彼氏はレスキュー隊!?溺愛の代償は本気の夜!?

すずなり。

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お泊り。

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ーーーーー

陽平side


「なぁ、ちとせ。事故のショックもあるだろうから今日、うちに泊まらない?」


病院からの帰り、車をしばらく走らせた後、俺はちとせに聞いた。

数時間前の事故からの救出時、ちとせは目が泳いでいて足元もふらついていた。

今は大丈夫そうに見えるけど、家で一人の時に何かあったらと心配になったのだ。


「え?泊まり?」

「うん。ちとせが『大丈夫』て言うなら無理にとは言わないんだけど・・・」


そう聞くとちとせは笑顔を見せてくれた。


「大丈夫って言いたいんだけど・・・陽平さん、心配性だから泊めてもらおうかな?へへ。」

「!!・・・ありがとう。」


これでちとせが不安になっても側にいることができる。

不安を取り除けるように動くことができる。

そう思った俺に、ちとせが思い出したかのように言った。


「あっ・・・!」

「どした?」

「ごめん、コンビニに寄ってもらってもいい?泊まるならいくつか欲しいものがあって・・・」


確かに、泊まるなら必要なものもある。

でもうちにあるものもあるのだ。


「服は俺の使えばいいし、歯ブラシとかなら予備があるよ?さすがに化粧品系はないけど・・・」

「ふふ。ありがと。・・・メイク落としとメイク道具はリュックにあるんだけど、ちょっと欲しいものがあって・・・。」

「?・・・ちとせの家、寄る?」

「ううん、一つだけだし、今日は疲れちゃったから家で用意する体力が残ってないかも・・・。」


ちとせの家からショッピングモールまでは電車で3駅ほど。

ちとせのことだから歩いて・・・1時間くらいはかかったはずだ。

それに加えてショッピングをして、事故に遭って・・・

今日だけでかなり疲れてそうだ。


「わかった。そこに見えてるコンビニで大丈夫?」

「うん。」


俺は近くに見えてたコンビニに車を入れた。

ちとせは『すぐに戻ってくるから』と言って一人で店に入っていき、言葉通りすぐに戻ってきた。


「待たせてごめんね?」

「ううん?何買ったの?」

「・・・ヒミツ。」

「?」


助手席でリュックを抱きしめるちとせを横目に、俺はまた車を走らせ始めた。

流れる景色はもう夜景になっていて、すれ違う車たちのヘッドライトが眩しい。

ちとせは外の景色をぼーっと眺めていて、抱えてるリュックを時々ぎゅっと抱きしめていた。


「あれ?ちとせ、そんなキーホルダーつけてた?」


ぎゅっと抱きしめられるリュックに目をやったとき、きらきら光るキーホルダーが目に入ったのだ。


「え?・・あ、これ?」

「そう。」

「モールで買ったの。ひよこグッズの専門店があって、見てたら欲しくなっちゃって・・・。」


ちとせはご飯を食べた後、いろんな店を覗いてから帰ろうと思ったらしい。

その時に見つけたひよこグッズの店で何を買うか迷いまくって、このキーホルダーにしたのだとか。


「へぇー。」

「ぬいぐるみは持って帰るのが大変そうだったし、割れ物は重いし?だからチャームにしたんだけど・・・すごくかわいくてお気に入りになっちゃった。」


そう笑いながら、ちとせはキーホルダーを見せてくれた。

金属板にひよこが描かれていて、裏は殻からくちばしが出てるひよこだ。

ちとせが好きそうなデザインに、思わず笑みがこぼれる。


「ははっ。」

「?・・・なにがおかしいの?」

「いや?・・・ところで何しにモールに行ってたの?『ひよこの店を見つけた』って言ってたからそこが目的じゃないんだろ?」

「!!」

「どこか出掛けるときはいつも言ってくれるのに、今日のは聞いてなかったし・・・。」


俺の言葉にちとせは視線を逸らした。

真正面から少し外寄りを見てる。


「・・・。」

「ちとせ?」

「えっと・・ちょっと・・用事?」

「あんな遠いモールに用事なんかないだろ・・・。」


ちとせは嘘をつこうとすると明らかにわかる行動を取る。

視線を逸らしたり、ごまかしたり・・・。

そんな言動、傍から見たら嘘をついてることくらいすぐわかるのだ。


「いや、言いたくないならいいけど・・・」

「・・・。」


無理に聞き出す気がない俺は、運転に集中しようとハンドルを握りなおした。

そして前をしっかり見てアクセルを踏んだ時、ちとせがなにやらリュックをがさごそし始めたのだ。


「?」


何をしてるのか気になりながらも運転に注意を傾けてると、突然ちとせが声にならない声をあげた。


「!?!?」

「え?どうした?」


明らかに何かあったっぽいちとせは、リュックの中を見て固まっていた。

何かとんでもないものでもリュックに入ってたかのようだ。


「な・・なんでもない・・・」

「いやいやいや・・・何でもないわけないだろ?なんかすっげぇ声震えてるように聞こえるんだけど・・・。」


俺は気になってちとせのリュックに手を伸ばした。

するとちとせは俺の手にリュックが届かないように端に寄せたのだ。


「だっ・・だめっ・・・!」

「・・・。」


明らかに何かを隠してるちとせ。

強引に聞く手もあるけど、ちとせを信用してる俺は聞かないことにした。

本当に見られたくないものなら、無理に見ることはできない。


「見ないから大丈夫。虫とかが入ってたわけじゃないんだろ?」

「う・・うん・・・。」

「覚えの無い物が入ってたりとかも?」

「だ・・大丈夫・・全部私の・・・」

「ならいいよ、ごめんな、見ようとして・・。」


気持ちを切り替えようとしたとき、ちょうど家の駐車場に着いた。

車を止めてエンジンを切り、ちとせと一緒に家に入る。


「あ、どっかでご飯食べてくればよかったな。晩御飯のことすっかり忘れてた・・・。」


家に入った時に思い出した俺は足を止めて立ち止まった。

すると後ろをついてきたちとせがひょこっと顔を出してきた。


「材料あるなら作るよ?キッチン借りてもいい?」

「え?野菜と肉くらいならあるけど・・・いいの?疲れてない?」

「大丈夫だよ。泊めてもらうお礼で作るね?」


そう言ってちとせはリビングに荷物を置き、キッチンに行った。


「冷蔵庫、開けさせてもらうねー?」

「あぁ。」


冷蔵庫の中身とにらめっこをし、その辺に置いてある調味料をじっと見つめてる。


「陽平さん、がっつり食べれそう?濃い目の味付けのが作れそうなんだけど・・・」

「常にがっつり食べれるよ?」


俺が答えると、ちとせは口元に手をあててクスクスと笑い始めた。


「ふふっ、いろいろ使わせてもらうね。」


ちとせはキッチンにあった鍋やらフライパンやらを出して料理をし始めた。

俺はこの間にちとせが泊まるのに必要になりそうなものを用意しに行く。


「えーっと・・歯ブラシ、タオル、服・・・は、新しいやつ出してっと・・・」


ついでに風呂も洗って湯を張っておく。

ゆっくり入れるように、いつもより温度を少しだけ下げておいた。


「これで大丈夫か?」


今回足りなかったものがあれば、次までに揃えようと思いながら、俺はリビングに戻った。

するとキッチンからジュージューと肉が焼ける音が聞こえてきたのだ。


「同棲・・とかしたらこんな感じなのかな・・・。」


目線をキッチンにやると、ちとせがフライパンを振ってる。

俺はその姿を見ながら食器を用意したり、一緒にキッチンに立ったり・・・。

子供とかいたら一緒に遊んだりして、用意ができるのを待つのかもしれない。


「・・・って、どんだけ先のことを想像してんだ、俺は・・・。」


そう思って頭を振るけど、ちとせとは出会ってからもう半年過ぎることに気が付いた。

長く一緒にいるような、まだ知り合って日が浅いような不思議な感覚が自分の中にある。


(ちとせは・・・俺とずっと一緒にいてくれるんだろうか。)


何かを味見して頷いてるちとせをみながら、そんなことを考えた。

ちとせは起業するためにがんばってる真っ最中だ。

資金を始め、足りないものが多い中ですぐに起業はできないだろう。

そうなると数年・・・いや、10何年後かに夢が叶うかもしれない。

無事にカフェをオープンさせてからの結婚となると、俺は40手前になってるかもしれないのだ。


(恋人の段階だとちとせも出費がある。結婚してしまえばその出費はなくなるし、俺が養うから・・うーん・・)


ぶつぶつ言いながら悩んでると、ちとせがキッチンから俺を呼んだ。


「陽平さーん、食器ってどれ使ってもいーいー?」

「え?あ、うん。大丈夫。手伝うよ。」


俺はキッチンに行き、食器を取りだした。


「どれがいる?」

「お茶碗とお椀、あと大きめのお皿を二枚ー。」

「はいよ。」


言われた食器を取り出して渡すと、ちとせは作ってくれた料理をよそってくれた。

でもその中に不思議なものがあって・・・


「え!?米、鍋で炊いたの!?」


そう、ちとせは米を炊飯器でなく鍋で炊いてたのだ。


「?・・うん。お鍋のほうが早いし。」

「そんな簡単に炊けるの!?」

「え?私は慣れてるから目分量でいけるけど・・・初めて炊くなら計ったほうがいいかも?」


そう言ってちとせは茶碗にご飯を入れた。

真っ白でつやつやな白米は、俺がいつも炊飯器で炊く米と同じものかと疑うくらいきれいだった。


「すご・・・。」

「おいしいと思うよ?温かいうちに食べよ?」

「う・・うん・・・。」


二人でリビングにあるテーブルまで運び、俺たちは手を合わせた。


「いただきます。」

「いただきます。」


ちとせが作ってくれたのは肉と野菜を甘辛く炒めたおかずに、野菜がいっぱい入ったスープ、それに卵焼きだった。


「うち、卵焼き器はなかったと思うんだけど・・・。」


きれいな形の卵焼きがおかずのお皿に乗ってることが疑問だった。


「フライパンでもちゃんとできるんだよ?」

「知らなかった・・・。」


俺は卵焼きを一切れ箸で取り、口に放り込んだ。

程よく甘い味が、卵焼きを噛むと広がっていく。


「!!・・・うまっ!」

「お出汁をちゃんと取ればもっとおいしいんだけど・・・それはまた今度だね。」


そう言ってちとせも卵焼きを口に放り込んだ。


「うん、おいしい。・・・陽平さんも自炊するんでしょ?よく作るのってなに?」


ぱくぱくとご飯を食べながらちとせが聞いてきた。


「え?あー・・自炊って結構消費しきれないものが多くてさ、ここ最近は外食が多くなってるんだよ。」

「あー・・わかる。」


野菜なんかはすぐに腐らせてしまうし、使いきれないものも多い。

かといって少量パックを買うと高くつくしでなかなか難しいのだ。


「ちとせが『冷凍してる』って言ってたから、それいいなって思ったんだけどなかなか行動にも移せてなくて・・・。」

「冷凍は一気に作っちゃわないとなかなかねぇ・・・。」

「休みの日に作っても、仕事で遅くなったりしたらもう外食のほうが楽だし。」

「陽平さんのお仕事って体力も使うから・・・。」


そんな話をしながら俺たちはご飯を食べていった。

途中ちとせの仕事の話になったり、俺の実家の話になったりと話はいろんな方向に飛んで行ったけど、ちとせが作ってくれたご飯をちとせと一緒に食べるのは嬉しいうえにおいしい。

俺はさっきちとせが隠したもののことなんてすっかり忘れ、この時間を大事にしたいと思いながら箸を進めていった。






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