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謝罪。
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「ちとせ!迎えにきたよ。」
病院の待合室で椅子に座ってると、陽平さんが声をかけてくれた。
「あ・・ごめんね?来てもらっちゃって・・・。」
「全然大丈夫。・・・会計とか終わった?救急は保険きかないから結構高いんだけど・・・」
「うん、高くてびっくりした・・・。」
陽平さんが来てくれるまでに呼ばれた会計の金額は8万円。
あまりの高額ぶりに驚いたけど、こういう時の為に持ってるカードがあった。
不本意だけど・・・それを使うほかなかったのだ。
「支払えたの?」
「うん。親から持たされてるカード使ったの。」
非常用に持たされてるクレジットカードは本当に緊急の時にしか使わないことにしていた。
今まで使ったことはなく、今日初めて使ったのだ。
「そっか。・・・医者はなんて言ってた?」
「ケガは数日で治るって言ってたよ?」
「大きなケガは無かったんだな。よかった。」
ほっとしたように安心したという表情を見せた陽平さん。
心配かけて申し訳ない気持ちが溢れてくる。
「うん。・・・助けてくれてありがとね。」
そう笑顔で返したとき、私に向かって歩いてくる人の姿が見えた。
女の人で・・・見覚えがある人だ。
「あ、間に合ってよかった。」
陽平さんが呟いたあと、陽平さんはその女の人に向かって軽く頭を下げた。
「陽平さん、知り合い?」
「知り合いじゃないよ。ちとせが救急車に乗ったあと、声をかけてきてくれたんだよ。」
「え?」
その女の人は私の前で足を止め、突然深く頭を下げた。
「えっ・・!?」
「あのっ・・!さっきはすみませんでした・・!」
「え?」
「私がぐぃぐぃ聞いちゃったからあんなことになっちゃって・・・本当にすみませんでした・・・。」
この女の人はショッピングモールで私に質問を投げかけてきた人だったのだ。
さっきとは違って随分落ち込んでるようで・・・今にも泣きそうな表情をしてる。
「いえ・・私も後方を確認してなかったので・・・。」
「いやっ・・私がもっと落ち着いて聞ければよかったんですけど・・・若女将を見つけて興奮しちゃって・・・」
女性は何度も謝りながら、私に会えた嬉しさを語ってくれた。
旅館をよく知る人から私の情報を得、いつか私に会いたいという気持ちを募らせてくれていたのだ。
「・・そのお気持ち、すごく嬉しいです。時々旅館のお手伝いしてるので・・・お会いできる日を楽しみにしてますね。」
そう笑顔で言うと、女性は嬉しそうな顔を見せてくれた。
そして『旅館で会える時を楽しみしてます!』と意気込みながら帰っていったのだった。
「あの人さ、ちとせが救急車に乗った後、俺に話しかけてきて『若女将に謝りたい』って言ってきたんだよ。」
「え!?そうなの!?」
「うん。」
陽平さんは女性の後姿を見送りながら、その時のことを話してくれた。
私がエスカレーターのところで落ちたのは自分のせいだと思ったらしく、陽平さんと親しく話していたのを見て知り合いだと思ったらしいのだ。
「すごく自分を責めてる感じがして・・・『可能性として国立救急センターに』って教えたんだよ。・・・勝手なことしてごめん。」
「ううん、うちの旅館をすごく好きな人みたいだったから・・・たぶんよかったと思う。」
きっと棗旅館のすべての従業員を見てるんだろう。
仲居や番頭、私の母である女将も。
その中で私の存在だけを知らなかったら・・・知りたくなるのも無理はない。
「ちとせ、帰ろうか。」
「うん。」
私の肩を抱きながら、ゆっくり歩き始めた陽平さん。
体を気遣ってくれる優しさに笑みをこぼしながら、私は病院を後にした。
病院の待合室で椅子に座ってると、陽平さんが声をかけてくれた。
「あ・・ごめんね?来てもらっちゃって・・・。」
「全然大丈夫。・・・会計とか終わった?救急は保険きかないから結構高いんだけど・・・」
「うん、高くてびっくりした・・・。」
陽平さんが来てくれるまでに呼ばれた会計の金額は8万円。
あまりの高額ぶりに驚いたけど、こういう時の為に持ってるカードがあった。
不本意だけど・・・それを使うほかなかったのだ。
「支払えたの?」
「うん。親から持たされてるカード使ったの。」
非常用に持たされてるクレジットカードは本当に緊急の時にしか使わないことにしていた。
今まで使ったことはなく、今日初めて使ったのだ。
「そっか。・・・医者はなんて言ってた?」
「ケガは数日で治るって言ってたよ?」
「大きなケガは無かったんだな。よかった。」
ほっとしたように安心したという表情を見せた陽平さん。
心配かけて申し訳ない気持ちが溢れてくる。
「うん。・・・助けてくれてありがとね。」
そう笑顔で返したとき、私に向かって歩いてくる人の姿が見えた。
女の人で・・・見覚えがある人だ。
「あ、間に合ってよかった。」
陽平さんが呟いたあと、陽平さんはその女の人に向かって軽く頭を下げた。
「陽平さん、知り合い?」
「知り合いじゃないよ。ちとせが救急車に乗ったあと、声をかけてきてくれたんだよ。」
「え?」
その女の人は私の前で足を止め、突然深く頭を下げた。
「えっ・・!?」
「あのっ・・!さっきはすみませんでした・・!」
「え?」
「私がぐぃぐぃ聞いちゃったからあんなことになっちゃって・・・本当にすみませんでした・・・。」
この女の人はショッピングモールで私に質問を投げかけてきた人だったのだ。
さっきとは違って随分落ち込んでるようで・・・今にも泣きそうな表情をしてる。
「いえ・・私も後方を確認してなかったので・・・。」
「いやっ・・私がもっと落ち着いて聞ければよかったんですけど・・・若女将を見つけて興奮しちゃって・・・」
女性は何度も謝りながら、私に会えた嬉しさを語ってくれた。
旅館をよく知る人から私の情報を得、いつか私に会いたいという気持ちを募らせてくれていたのだ。
「・・そのお気持ち、すごく嬉しいです。時々旅館のお手伝いしてるので・・・お会いできる日を楽しみにしてますね。」
そう笑顔で言うと、女性は嬉しそうな顔を見せてくれた。
そして『旅館で会える時を楽しみしてます!』と意気込みながら帰っていったのだった。
「あの人さ、ちとせが救急車に乗った後、俺に話しかけてきて『若女将に謝りたい』って言ってきたんだよ。」
「え!?そうなの!?」
「うん。」
陽平さんは女性の後姿を見送りながら、その時のことを話してくれた。
私がエスカレーターのところで落ちたのは自分のせいだと思ったらしく、陽平さんと親しく話していたのを見て知り合いだと思ったらしいのだ。
「すごく自分を責めてる感じがして・・・『可能性として国立救急センターに』って教えたんだよ。・・・勝手なことしてごめん。」
「ううん、うちの旅館をすごく好きな人みたいだったから・・・たぶんよかったと思う。」
きっと棗旅館のすべての従業員を見てるんだろう。
仲居や番頭、私の母である女将も。
その中で私の存在だけを知らなかったら・・・知りたくなるのも無理はない。
「ちとせ、帰ろうか。」
「うん。」
私の肩を抱きながら、ゆっくり歩き始めた陽平さん。
体を気遣ってくれる優しさに笑みをこぼしながら、私は病院を後にした。
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