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帰宅。
しおりを挟む翌週、退院の手続きを済ませて、かえでは家に帰ってきた。
かえで「ある・・く・・・。」
慶「大丈夫か?」
家の門の前で車から降ろすと、かえでは『歩く』と言い出した。
リハビリも兼ねて、歩かせる。
慶「こけるなよ?石畳の道だし・・。」
ゆっくりした足取りで歩き出すかえで。
一歩・・また一歩と歩くけど、ふらふらしてて気が気じゃない。
慶「も・・この辺でいいか?」
かえで「や・・・。」
あまりにも怖くて終了を切り出した。
でもかえではまだ歩く気満々だ。
慶「こけたらケガするぞ?」
手を引きながらゆっくり歩く。
歩いてると・・・春斗の姿が遠くに見えた。
物陰からそっと身を出してかえでを見てる。
慶「・・・かえで?あそこ見てみな?」
かえで「?」
顔を上げて指をさした方を見るかえで。
春斗の姿を捉えたようで、かえでは叫んだ。
かえで「は・・ると・・・!」
春斗「!!」
かえでが呼んだからか、春斗は俺たちのとこまで歩いてきた。
ゆっくり歩いてきて・・・かえでの前で膝を地面につけた。
春斗「申し訳ありません!!」
手も地面につける春斗。
かえでは意味が分からずに春斗を見ていた。
かえで「・・・?」
春斗「お嬢を危険な目に遭わせてしまい・・・申し訳ありませんでした!!」
頭も地面につけて謝る春斗。
かえではしゃがもうと思ったのか、俺に体重を預けてきた。
慶「・・・屈むのか?」
そう聞くとかえでは頷いた。
慶「ゆっくりな?」
そっと屈ませてかえでの体を支えた。
膝をつくと痛いだろうから・・・しゃがむようにさせる。
かえで「あ・・りがと・・う・・。」
春斗「!!・・・お嬢・・ごめん・・ごめん・・っ!」
涙を流しながら謝る春斗。
かえでは手を伸ばしてその頭を撫でた。
かえで「だいじょ・・・ぶ。」
慶「・・・。」
かえでは・・・目が覚めた後、自分の記憶を手繰り寄せたのか、俺に春斗のことを聞いてきた。
まぁまぁケガはしたけど無事だと伝えたら安心した顔をしたから・・・ケガの内容を正確に伝えることはしなかった。
慶(・・・ちゃんと回復してからでもいいし・・。)
春斗の頭を撫で終わったかえで。
俺は体を起こして抱え上げた。
かえで「?」
慶「ほら・・・もう行こう。春斗も逃げないしな。」
かえで「う・・ん・・・。」
離れの部屋にかえでを連れていき、布団に寝かせる。
布団をかぶせて・・・これからのことをかえでに説明する。
慶「毎朝、かえでを本宅に連れて行くからな?」
かえで「?・・・そう・・な・・の?」
慶「廊下とか部屋にいっぱい椅子置いてある。」
かえで「?」
慶「一人で歩く練習。疲れたら誰か通った時に俺の部屋に運んでもらいな?疲れない限り・・・たくさん動けよ?」
かえで「・・・!?」
驚いたのか・・・俺の考えがわかったのか、かえでは目を大きく見開いた。
慶「・・・俺は病院より厳しいぞ?早く元通りになろうな。」
かえで「!?!?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
翌日から始まったリハビリ。
朝、かえでを離れに迎えに行き、廊下にある椅子に座らせる。
慶「いっぱいあるだろ?できるだけ一人で歩けよ?手すりもつけたし。」
かえで「う・・ん・・・。」
慶「数分おきに誰かは通る。俺もしばらくは家からでないから・・・。」
そう言うと、かえでは俺の身体をぐっと押した。
かえで「行ってら・・しゃい・・。」
早く仕事に行けと言わんばかりの目で俺を見てるかえで。
心配しつつもかえでを信じて仕事部屋に向かう。
慶「・・・行ってくる。」
廊下を歩き進め、俺は仕事部屋に入った。
すぐにパソコンを起動して・・・あるソフトを起動する。
リョウ「・・・この前つけた監視カメラのですか?」
気配を消して、リョウが覗き込んできていた。
慶「お前・・・もうちょと気配出せよ。」
リョウ「かえでさんは気づきますよ?私に。・・・これ、ちゃんと見れるんですか?」
かえでの様子を仕事しながらでも見れるように設置した監視カメラ。
起動したソフトから映像を出してみる。
慶「さっきかえでを座らせたのが・・・入り口のとこだから・・・あっ・・いたいた。」
椅子を三つほど進んでいたかえで。
ぼーっと座ったり、通り過ぎるやつらに手を振ったりしてるのが見れる。
リョウ「良好みたいですね。」
慶「だな。仕事しながら時々様子見る。」
ちらちらパソコンの画面を見ながら進める仕事。
隣町を買収したことで仕事量は増えたけど、2カ月もすれば落ち着いてはくる。
慶「・・・誰か隣町を任せてみようか。」
ぽつりとつぶやくとリョウが驚きながら俺を見た。
リョウ「・・・本気ですか?」
慶「まぁ・・・。でも無理かなー・・うちのやつら、誰も俺の仕事に絡んでないし・・。」
見回りや雑用的なことはさせてるけど、収入や支出、経営整備は全て一人でやって来た。
リョウのサポートがないと正直きびしいところもある。
慶「リョウに任せたら俺がキツいしな・・・。しばらくはこのままがいいか。」
リョウ「私も一人でするとかごめんです。社長にお任せしたいです。」
慶「・・・。」
リョウの微妙な裏切りにショックを受けつつも、俺はパソコンの画面に目を向けた。
かえでの様子を確認するために。
慶「あれ・・?いない?」
画面にないかえでの姿。
端から端まで確認したけど姿が見えなかった。
慶「ちょっと見てくる・・・!」
不安になった俺は椅子から立ち上がり、仕事部屋を出た。
その時に言ったリョウの言葉も聞かずに・・・。
リョウ「・・・あ、ちょうどお昼の時間・・。」
ーーーーーーーーーーーーーーー
仕事部屋を出た俺は廊下を見渡した。
椅子はあるけどかえではいない。
床に倒れてるわけでもなかった。
慶「・・・どこいった?」
廊下を歩きながら探す。
所々にあるドアを開けては中を確認したけどかえでの姿はなかった。
慶「誰も通らないのも気になるし・・。」
数分に一度はだれかが通る廊下。
なのに誰も通ることがなかった。
その気配すら感じない。
慶「どういうことだ?」
不思議に思ってる時、食堂の方から声が聞こえた。
部下「もう一回・・・!もう一回だけ・・・!」
慶(?・・・何かしてるのか?)
気になった俺は食堂に足を向けた。
歩き薦めていくうちに、食堂から聞こえる声が大きく・・多くなってくる。
部下「最後・・・!」
部下「あとちょっと・・・!」
慶(?)
食堂に足を踏み入れると、そこに・・・かえでの姿があった。
慶「・・・かえで?」
見えるのはかえでの後姿。
テーブルに向いて、椅子に座ってる。
そのかえでを囲むようにしている6人の部下。
部下「おぉーっ!!すごい!」
部下「全部食べた!!」
慶「『食べた』・・?」
部下の言葉に、俺は自分の腕時計を確認した。
今の時間は午後12時半。
昼ご飯の時間だ。
慶「昼・・・食べたのか?」
部下たちをかき分けてかえでを覗き込む。
そこには空になったお椀が一つ、かえでの前に置かれていた。
部下「若!お嬢、全部食べましたよ!!」
慶「・・・完食は初めてだな・・。」
部下「たくさん動いたからじゃないですか?いっぱい移動させましたし!」
慶「・・・え?」
部下たちの話によると、通りがかる度にかえでの手を引いて歩かせたと。
椅子から椅子にだからそんなに距離はないけど、かえでは午前中ずっと歩いてたことになる。
慶「動いたから・・・お腹空いた?」
そう聞きながらかえでの顔を覗き込むと、目がとろんとしていた。
もう眠そうだ。
慶「あーあー・・疲れたか。」
かえで「ねむい・・・。」
慶「おいで。部屋で寝よう。」
かえで「・・・zzz。」
かくんっと体が前に傾いたかえで。
慶「!!・・・あっぶな・・。」
手を出して傾いた体を咄嗟に支えた。
慶「まぁ・・・嬉しいのはわかるけど、リハビリはもうちょっとほどほどにな。」
部下たち「・・スミマセン。」
俺はかえでを抱えて離れに向かった。
よっぽど疲れたのか俺の腕の中ですぅすぅ眠ってる。
慶「・・・もうちょっと体力ついたら・・旅行とかいきたいなー・・。」
『お詫び』も兼ねて、かえでに何かしたいと考えてる。
喜んでくれるかどうかはわからないけど・・・とりあえず思い付いたのは『旅行』だった。
慶「国内でも・・海外でも・・・かえでが望むことならなんだって叶えるけど・・・。」
ふと頭によぎったことがあった。
それは・・・かえでに『逃げかた』と『隠れ方』を教えていた時の『ご褒美』だ。
慶「まさか・・・また『だっこ』とか言わないよな・・・?」
かえで「・・・zzz。」
可愛く寝てるかえでを眺め、若干不安になりながら離れに向かって歩いた。
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