上 下
45 / 68

ホテル・・?

しおりを挟む
かえでside・・・




かえで「う・・あ・・?」



目が覚めた私は辺りを見回した。

身体はふかふかなベッドの上。

目線を上げるとキレイな飾り棚も見える。

ベッドの周りはソファーや・・・食事に使うような大きさのテーブルも見えた。

この景色は・・・




かえで「ホテル・・・?」




寝てる体を起こそうとすると、手が自由にならなかった。


かえで「え?」



自分の手を見ると、前で両手首を縛られている。




かえで「え?・・・なんで・・?」




どうしてここにいるのかもわからずに身をよじる。

なんとかして体を起こそうと動いてると、ドアが開く音が聞こえた。




ガチャ・・・




翔太「起きたか。」




私の背中側から聞こえる声。

その声は・・・知っていた。



かえで「翔太・・・?」




身体をひねって声の聞こえる方を向く。

そこには確かに翔太の姿があった。




翔太「・・・まさかお前が金になるなんて思いもしなかったわ。」

かえで「え・・・?どういうこと・・?」

翔太「うちのボスに頼まれてよ。『水瀬かえでを連れてきたら借金はチャラにしてやる』って。」

かえで「私・・?なんで私?」





翔太は私に近づき、縛られてる腕を掴んだ。

そのままぐぃっと引き、私は寝てる状態から起き上がらされた。




翔太「お前を欲しがる理由なんて知らねーし、知る意味もねぇ。俺は俺が遊んで暮らせたらそれでいい。」

かえで「・・・だから私と一緒に暮らそうとしたの?」




アパートを勝手に引き払って同棲を求めてきた翔太。

それまでも家に帰ることなくうちに入り浸って・・・仕事もしてなかった。





翔太「お前はいいカモだったのによ。勝手にアパート引き払いやがって。」

かえで「・・・。」

翔太「・・・まぁ、いい。俺はこれで1000万の借金はチャラ。またなんかあったら・・・お前をここから逃がして捕まえればいいしな。」

かえで「!?」




ニヤッと笑った翔太。

その笑い方は悪魔のようで・・・私の知ってる翔太じゃなかった。

何をどう間違えたのか・・・それともこれが正解だったのか・・・

翔太は・・・人の道を外れてしまった。





翔太「じゃーな。せいぜい可愛がられろよ。」

かえで「・・・。」




手を振りながら私に背を向けた翔太。

ドアのほうに足を進め、ガチャンッ・・・とドアの音が締まる音が聞こえた。







かえで「帰らないと・・・。」



ベッドから下りようとしたとき、カチャカチャと音が聞こえた。

その音は私の足元から聞こえる。

嫌な予感を感じながらも恐る恐る見てみると・・・それは足枷だった。





かえで「・・・・え!?」





右足首に巻かれてる犬の首輪のようなもの。

その片足にチェーンがくっついていた。




かえで「う・・・嘘・・・・・。」




どこまで続いてるのか目で追う。

チェーンはベッドの上から下へと続いてる。

身を乗り出して覗くと、そのチェーンはベッドの足に繋がれていた。





かえで「私・・・出れないの?」




そう思った時、部屋のドアが開く音が聞こえた。





ガチャ・・・




社長「おぉ、目が覚めたのか。」




入ってきたのは男の人。

結構横にぽちゃぽちゃとされた人だ。

この人は・・・見覚えがある。




かえで「!!・・・あなたはこの前のパーティーの・・・。」




慶さんと一緒に行ったパーティーで見かけた人だった。

確か・・・エレベーターのところで挨拶をした記憶がある。




社長「覚えていたか。じゃああの時一緒にいた私の娘も覚えてるか?」

かえで「私と同じ・・赤いドレスを着た・・?」




同じ色だったからよく覚えてる。





社長「そうだ。私の娘・・・かわいいだろう?神楽と結婚させたいんだよ。」

かえで「・・・結婚!?」

社長「うちは業績が悪くてなー・・神楽のとこと合併したら安泰だ。」

かえで「安泰って・・・・」




その人は部屋にある椅子に腰かけて、続きを話始めた。




社長「だからお前が邪魔なんだよ。」

かえで「邪魔って言われても・・・慶さんは私と結婚の約束をしてます!」

社長「今の世の中、殺すとあとが面倒だからなー・・・お互いにお互いのことを忘れるまで・・・お前にはここにいてもらおうと思って。」

かえで「え・・・・?」

社長「簡単だろ?忘れたら帰れる。」

かえで「ふざけないで!結婚の約束をしてる人を・・・忘れるわけないじゃない!」




そう答えると、その人の表情が一変した。



社長「ほぅ・・・ならお前は一生ここで暮らすんだな。」

かえで「一生・・?」

社長「そういうことだろう?」

かえで「一生って・・・私は慶さんと結婚の約束を・・・!」

社長「お前は可愛いからな・・・。ここで一生私のペットになってもらおうか。」





『ペット』と言われ、私の背筋がぞっとした。





かえで「ぺ・・ペットって・・・。」

社長「飲み食いは問題ないだろ?寝るとこもちゃーんとある。たまに見に来るからせいぜい尻尾ふって機嫌取れよ?」

かえで「そんな・・・!」

社長「・・・反抗的だったら・・・『躾』しないとなぁ・・・。」

かえで「!!」





翔太以上に悪魔のように笑い、その人は部屋から出て行った。





かえで「・・・どうしよう。」





助けを呼ぼうにもケータイを持ってない。

ケータイどころかか何も持ってない。




かえで「ここって・・・どこなんだろ。」




ベッドから下りて、私は部屋の中を歩いた。

窓の外を覗くと、見えたのは空ばかり。

背伸びをして眼下をみるけど・・・見えた景色は小さすぎた。



かえで「ここ・・・高層ビル?それか高層ホテル・・・。」



何か目印になるような景色でも見えないかと思って目を凝らすけど、何も分からなかった。

ここは私の知ってる街じゃないのかもしれない。




かえで「この部屋・・・時計が無いから時間もわからないし・・・。」




太陽の角度で時間を予測するしかない。




かえで「慶さん・・・絶対心配してる・・・。」




『今』がここに連れてこられた日なのか、眠らされてる間に何日か過ぎたのかさえ分からない。




かえで「でも・・・逃げないと。」




こんなところで一生を終えるなんてごめんだ。

ましてやあんな人の『ペット』なんて・・・。




かえで「どうやったら出れるんだろう。」





私は部屋の中を歩き回り、何か使えるものがないか探して回った。













しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:42

【R18】嫌いになりたい、だけなのに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,150pt お気に入り:594

妹とアイス、星と雨。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:16

社長から逃げろっ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:46

私が橋渡し役!?時代を逆行した世界でそんな大役できません・・!?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:65

処理中です...