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どれくらいの量?
しおりを挟む翌日・・・
かえで「うー・・・足は治んなかった・・・。」
まだ普通に歩けない足。
私は仕事場の店長に電話をかけ、1週間ほど休みたい旨を伝えた。
店長は了承してくれ、念の為、10日間お休みをくれた。
かえで「その間に・・・レシピ作ってみようかな。」
使ってないノートを取りだして畳の部屋でうつ伏せに寝っ転がった。
一番得意なメニューを書き出してみる。
かえで「私・・『鶏のトマトクリーム煮』が一番得意なんだけど・・・一人1枚鶏肉使ったら・・・20枚いるってことになるんだよね・・?」
玉ねぎも10個くらいいるし、牛乳も1リットル以上いることになる。
かえで「すごい量・・・。でも一度作ってみたくなっちゃう・・・。」
書き出してるうちに作りたくなってしまった私。
とりあえず軽食になるようなものを考える。
かえで「サンドイッチかなー・・この前卵の作ったけど・・・ツナと人参のやつも美味しんだよね。・・・よし。」
私は立ち上がり、 鞄を持って部屋を出た。
玄関に行き靴を履く。
かえで「冷蔵庫の中は・・・今日使うものが入ってるよね?なら新しく買う方がいいよね?」
使用人さんたちが使う予定で置いてあるものがあるかもしれない。
なら新しく買う方が無難だ。
かえで「・・・足・・まだ治ってないけど一人で行っちゃだめかな・・。」
玄関を開けて石畳の道をひょこひょこと歩き始める。
本宅への道を通り過ぎて、私は門に向かった。
大きい門のところに立ってる人に・・・お願いする。
かえで「・・・出てもいいですか?」
門番「・・・お嬢、一人はダメって言われてますよね?」
かえで「すぐそこに買い物行くだけなんです。慶さんの邪魔はしたくないですし・・・。」
門番「・・・・・・ダメです。春斗に言ってください。」
かえで「春斗さんも仕事あるじゃないですかー・・・。」
門番「ダメです。」
どうしても開けてくれない門番さん。
どうしようか考えてる時、誰かが私の肩をがしっと持った。
かえで「え?」
春斗「お嬢・・・。俺に言えって言っただろ?」
かえで「ぅわぁ・・・春斗さん・・・。」
薄っすら汗をかいてる春斗さん。
息も少し荒いから・・・走ってきたっぽい・・・。
春斗「離れの玄関が開いたから見に行ったらいねーし・・・。」
かえで「すみません・・・。」
春斗「お嬢になにかあったら俺が若に殺されるんだからな?・・・で、どこ行くんだ?」
かえで「う・・・スーパー・・?」
春斗「わかった。」
春斗さんは私の手を握った。
そして門番さんに言う。
春斗「お嬢と出る。」
門番「お気をつけて。」
ギギ―・・・と門が開き、春斗さんは私の手を引いて歩き始めた。
春斗「車まで歩くからな?先に言えば回しといたのに。」
かえで「うぅ・・・すみません・・・。」
手をずっと引かれ、私は車庫まで春斗さんと一緒に歩いた。
ーーーーーーーーーーーーーー
かえで「すごい・・・何台あるの・・・?」
乗せてもらったことがある車だけでも3台ある。
その他にもずらっと並んだ車たち。
なんだかタクシーの駐車場みたいだ。
春斗「数えたことはねーけど・・・2、30台くらいじゃね?」
かえで「!?・・・そんなに!?」
春斗「まぁ・・・各自で出ることもあるしなー。ほら、乗れ。後ろな。」
春斗さんはドアを開けてくれ、私を乗せてくれた。
運転席に乗り込み、エンジンがかかる。
春斗「で、どこのスーパー?」
かえで「あ、どこでもいいけど・・・。」
春斗「なんだ。ならいつもんとこな。」
そう言って車を走らせ始めた。
かえで「『いつものとこ』・・・?」
どんなとこなのか分からずに聞く。
春斗「よく買いに行くとこがある。そこは月末にまとめて支払いにいくんだよ。だから全部ツケで買える。財布はいらない。」
かえで「そ・・そうなんだ・・・。」
春斗「なんでも売ってるぞ?日用品から服まで。」
かえで「へぇー・・・楽しみだなー・・・。」
車は山を下りて、しばらく走った。
何回か曲がって・・・見えてきたのは超大型スーパーだった。
かえで「こんなとこあったの!?」
圧倒される大きさ。
一人で入ったら迷子になるのは確実だ。
春斗「お嬢の仕事場とは真反対な方向だからなー、知らなくても当然だ。」
駐車場に車を入れる春斗さん。
空いてるところにささっと車を停めた。
春斗「ほら、行くぞ。」
ドアをあけ、私に手を差し出す春斗さん。
かえで「う・・うん・・・。」
その手を取りながらも、なんで手を繋ぐのか気になって仕方なかった。
かえで「ね・・ねぇ、春斗さん・・?」
春斗「なんだ?」
かえで「なんで・・・『手』・・?」
握ってる手を少し持ち上げる。
春斗「あぁ、お嬢が後ろ歩いてたら誰かに攫われてもわかんないだろ?」
かえで「攫われるって・・・そんなことないよ・・・?」
春斗「若を陥れるために利用される可能性だってある。だから確実性を取る。」
かえで「そ・・そうなんだ・・。」
手を繋いだままスーパーに入り、手を繋いだまま買い物をする。
不思議な光景だったけど、ふと頭によぎった言葉があった。
かえで(・・・お兄ちゃんみたい。)
私には兄はいない。
兄がいないどころか一人っ子だから兄妹がいなかった。
そんな中、一度は憧れたことがある『兄』の存在。
生前、お母さんに『お兄ちゃんが欲しい』と頼み、『それは無理かなー・・・弟なら・・・』みたいな返事を何度かもらった記憶がある。
その度に『お兄ちゃんがいいっ』と言っていたけど・・・
かえで(大きくなってその『意味』が理解できたんだよねー・・・。『お兄ちゃん』は私より後には生まれない。)
当たり前のことだけど小さかった私には理解できないことだった。
かえで(ま、仕方ないよねー・・・。)
春斗さんと繋いでいた手をきゅっと握った。
春斗「?・・・どうした?」
かえで「いや・・・『お兄ちゃん』みたいだなーと思っちゃって・・・。」
そう言うと春斗さんは笑いながら私の頭を撫でた。
春斗「ははっ。ならお嬢は『妹』だな。」
かえで「!!・・・うんっ。」
春斗さんは繋いでいた手を少し持ち上げた。
かえで「?」
春斗「俺はお嬢の言うことをなんでも守る。約束だ。だからお嬢もなんでも俺に言え。若に心配かけるなよ?」
かえで「・・・・はいっ。」
春斗「よしっ。・・・で、何買うんだ?」
かえで「えーっと・・・パンとーーーーーーー」
私は春斗さんと一緒に買い物を済ませ、家に戻った。
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