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増す過保護度2。

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医者「打撲ですね。内臓は無事ですよ。」



眠ってるかえでを診た医者が言った。



慶「そうか。助かった、ありがとう。」

医者「いえ。ではこれで。痛むようなら痛み止め出しますのでおっしゃってくださいな。」

慶「わかった。」




医者は部屋から出て行き、部屋にかえでと二人になった。

睡眠薬のせいで、かえではすぅすぅと眠ってる。



かえで「・・・zzz。」

慶「内臓までいってなくてよかった・・・。まぁ、春斗ならわかるか。」




命に関わるかどうかのケガくらい、会社の者はわかる。

前はケガなんて日常茶飯事だったから。



慶「昔はなー・・ケガしたやつ連れて帰るのにうるさかったからコレ飲ませてたけど・・・まさかこんなとこで役に立つなんてな。」



『置いて行ってくれ』とか『痛い』だのうるさいときに飲ませていた睡眠薬。

いつも持っていた名残でまだ財布に入れていた。



慶「しばらく持ってたほうがいいかもな。」




そんなことを考えてる時、玄関を開ける音が聞こえた。



ガラガラガラ・・・



春斗「失礼します!」

慶「・・・春斗か。」




廊下を歩く足音が大きくなっていく。

その足音は部屋の前でぴたりと止み、ふすまの向こうで春斗が口を開いた。



春斗「若、お世話になりました。」

慶「・・・。」

春斗「お嬢を守れず・・・申し訳ありませんでした。・・・失礼します。」




足音が遠くなっていく。

玄関くらいまで足音が遠くなった時、俺は春斗を呼んだ。



慶「春斗、誰が辞めろって言った?」

春斗「!!・・・言われてません。でも・・」

慶「二度目はない。いいな?」




かえでが睡眠薬で眠るまでの間、ずっと春斗を庇ってた。

目が覚めた時に春斗の姿を二度と見れないと知ったら・・・きっと悲しむ。




春斗「・・・いいんですか?」

かえで「いいもなにも・・・かえでが泣くだろ?お前はかえでにとっては『兄』のような存在なんだから。」






そう言うと春斗はばたばたと廊下を走って戻ってきた。

ふすまの向こうに立って・・俺に誓う。



春斗「二度目はありません!お嬢を守ります!!」

慶「忘れるなよ。」

春斗「はいっ!!失礼します!!」

慶「あと、呼び方。」

春斗「はいっ!!社長!!」





きっちり返事をして、春斗は離れの家から出て行った。



慶「目が覚めるまで側にいるから・・・。」

かえで「・・・zzz。」




俺はかえでの布団に潜り込み、体を引き寄せた。

自分の腕にかえでの頭を乗せ、そのまま眠りについた。







ーーーーーーーーーーーーーーー







ーーーーーーーーーーーーーーー







8時間後・・・






かえで「あ・・ぅ・・・?」




目が覚めたかえで。

虚ろな目で何度も瞬きをしてる。




慶「起きた?俺が誰かわかる?」

かえで「ぅ・・・あ・・・・」

慶「ゆっくりでいい。」




薬が切れて目が覚めたみたいだけど、完全に薬が抜けてないみたいで意識が朦朧としてるようだった。




かえで「ぁ・・けい・・さ・・・」

慶「うん。大丈夫。薬が抜けるまでもうちょっとかかる。目、閉じときな。」




頭を撫でると、かえでは目を閉じた。

そのまま規則正しい寝息が聞こえだす。




かえで「・・・zzz。」

慶「次に起きたら薬は抜けてるから・・・。」





薬はきっと抜けてる。

問題は腹のケガ。

仕事はしばらく休ませるとして・・・犯人をどうするかだ。




慶「きっとアイツだよな。もう一度リョウに頼むか。」




そう呟いたとき、ふすまの向こうでリョウが返事をした。



リョウ「かしこまりました。」

慶「!!・・・ほんと忍者みたいだな。」

リョウ「お褒めに預かり光栄です。かえでさんの仕事先にも連絡しておきます。」

慶「頼む。起きたら自分で電話するだろうけど始業時間に間に合わなかったら困るだろうし。」

リョウ「かしこまりました。」






リョウが返事をした後、俺は自分のケータイを取り出した。

アドレスから知り合いの番号を探し出す。




慶「えーと・・・・・あ、あった。」



俺はその知り合いに電話をかけた。




ピッ・・ピッ・・ピッ・・・・





「はい。」

慶「俺。」

「なんだ?」

慶「作って欲しいものがある。」

「なにを。」

慶「小さめ真珠のネックレス。」

「お前・・・機械埋め込むの苦労するんだぞ?」

慶「わかってる。ちゃんと払う。」

「はぁ・・・手間賃、上乗せするからな。」

慶「明後日までな。」

「はぁ!?」

慶「頼むよ。」

「更に上乗せしてやる!」ピッ・・・




慶「・・・四桁は乗らないよな?」




少し不安になりながら、俺はケータイを見つめた。








ーーーーーーーーーーーーーーー









2時間後・・・



かえで「んぁ・・・?」

慶「・・・おはよ。」




俺の腕枕で目を覚ましたかえで。

昨日のことと、今の状況を確認する。



慶「頭、痛くない?」

かえで「うん・・・。」

慶「腹は?」

かえで「・・・・。」

慶「昨日医者に診せたから。春斗にも聞いた。・・・あいつに殴られたんだろ?」



そう言うとかえでは目に涙を溜め始めた。



慶「え!?痛い!?」

かえで「ごめ・・ごめんなさ・・・・・」

慶「・・・なんでかえでが謝るんだよ。」

かえで「ごめんなさいー・・・。」



ぽろぽろと涙を溢すかえで。

すくってもすくっても・・・キリがないくらい溢れた。

涙が止まるまで背中を擦り、抱き締める。




慶「どう?落ち着きそう?」

かえで「うぅー・・・。」

慶「・・・春斗が玄関の外で待ってるよ。」





そう言うと、かえでは視線を上げて俺を見た。




かえで「・・・ほんと!?」

慶「ははっ、涙は止まったみたいだな。」


目に溜まっていた涙を指ですくい、俺は布団から体を起こした。



慶「呼んでくるよ。」

かえで「う・・・うん・・・。」



部屋をでて、玄関に向かう。

靴を履いてドアを開けると、春斗が立ち上がった。




春斗「社長・・・お嬢は・・・」

慶「起きた。行ってこい。」



俺の言葉に、春斗は笑みをこぼした。




春斗「行ってきます!」

慶「俺はこのまま仕事いくから・・・かえでのこと頼む。」

春斗「はい!!」




春斗に見送られ、俺は本宅に戻った。













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