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パーティー2。

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かえで「・・・・すごい。」




エレベーターを降りると目の前にあったホール。

あまりの広さと、あまりの人の多さに私は驚いていた。




慶「かえで、離れるなよ。」

かえで「はいっ。」



私は慶さんの腕を掴んで、一緒にホールに入った。



中は絨毯が敷き詰められてる。

両端々にテーブル。

軽食や飲み物がたくさん乗っていた。

『立食パーティー』ってやつだ。



慶「かえで、飲み物・・・酒は?飲める?」

かえで「飲める・・・よ?」

慶「弱い?」

かえで「ううん、大丈夫・・・。」



そう言うとリョウさんが飲み物を持って現れた。


リョウ「どうぞ。かえでさんは桃のカクテルです。」

かえで「ありがとうございます。」



グラスを受け取って、口をつけた。




かえで「!・・・おいしいっ。」




桃の香りが鼻を抜ける。

甘くて・・・いくらでも飲めそうなカクテルだった。




慶「へぇ・・・。一口くれる?」

かえで「どうぞ?」



グラスを渡すと、慶さんはカクテルを口に含んだ。



慶「!!・・・これ、結構キツいよ?」

かえで「そう?」



返してくれたグラスを受け取り、私はまた口に含んだ。




慶「・・・まぁいいけど。」

リョウ「・・・。」




しばらく二人でお酒を楽しんでると、パーティーに来ていた人が慶さんに声をかけてきた。




「神楽さん!久しぶり!」

慶「ご無沙汰してます。」

「どうですか?最近は。」

慶「そうですねー・・・・。」





仕事の話をする慶さんたち。

小難しい会話が飛び交う。




かえで(・・・なんの話してるのか全然わからない・・。)




少しでも理解しようと頑張って耳を傾けるけど、分からなさ過ぎた。




かえで(今の間にお手洗いいってこようかな・・・。)




私は慶さんの腕から手を抜いた。

慶さんは気づいたみたいだったけど、私がトイレだということも気づいたみたいで何も言わなかった。




かえで(会話に水を差すのも悪いしね。)




ゆっくりと背を向け、私はホールの出口にに向かって歩き出す。




かえで(トイレってどっちだろ。)




ドアのところまで来た時、ちょうどスタッフの人を見つけた。




かえで「すみません、お手洗いはどちらでしょうか。」

スタッフ「右の突き当りでございます。」

かえで「ありがとうございます。」





教えてもらった通りに右に向かおうとしたとき、リョウさんが私を呼んだ。



リョウ「かえでさんっ。」

かえで「?・・・リョウさん。どうしたんですか?」

リョウ「一緒に行きますから。一歩でも動く前に私に声をかけてください。」

かえで「・・・すみません。」




私はリョウさんに体を支えられ、歩き始めた。

真っ直ぐの廊下。

幅が広くて・・・途中にソファーがある。

近くにある窓も大きくて・・・座って見ればきっとすごい景色が見れそうだった。




かえで「あとで窓からの景色見てもいいですか?」

リョウ「それは・・・夜のほうがきれいだと思いますよ?」

かえで「夜・・・ですか?」

リョウ「えぇ。」




夜までパーティーがあるのかと思うとちょっと気が滅入るけど、確かに『夜景』はキレイだ。

昼間も見たいけど・・・我儘も言えない身分だし、素直に従うことにした。




かえで「じゃあ・・・暗くなるの楽しみにしてますっ。」

リョウ「はい。・・・あ、お手洗いはそこを曲がってすぐです。私はここにおりますので・・・何かあれば『リョウ』と叫んでください。すぐにお側に参ります。」

かえで「わ・・わかりました。」




私は支えてもらっていた腕から離れ、言われたところを曲がった。

曲がってすぐにあった女の子用のトイレ。



広い広い個室に入り、無事済ませたあと鏡を見ながら身なりをチェックした。




かえで「うん。髪の毛も崩れてない。」



慶さんの隣に立つから、身なりは気にしてしまう。

少しでもきれいに見えるようにして、私はトイレから出た。

その時・・・




翔太「・・・かえで。」

かえで「?」



後ろから聞こえた声。

私は振り返った。




かえで「!!・・なんでここに・・・」




そこには翔太が立っていた。

慶さんから受けた傷なのか・・・頬や手の甲に絆創膏を貼ってる。





翔太「俺さぁ・・・お前のおかげで住むとこなくなってさぁ・・・ほんと困ってんだよ。」

かえで「・・・・・。」

翔太「だーかーらっ・・・お前の家に住ませてくれよ。」

かえで「・・・・・やだ。」

翔太「・・・・はぁ?」

かえで「私はもう翔太とは関係ない。」




そう言って歩き出そうとしたとき、翔太は私の手を掴んだ。




翔太「・・・お前、大声が嫌いだろ?荒っぽい言葉も。」

かえで「!?」

翔太「こんな静かなとこで叫ばれたら・・・パニックかもな?」

かえで「!!」

翔太「・・・耳元で叫ばれたくなかったら・・来い。」




翔太はぐいっと私の手を引っ張った。



かえで「やだってば・・!離して・・・!」

翔太「さっさと歩け。この前のヤツが来たらどうするんだよ。」




この前のヤツは慶さんのことだ。

私はさっきリョウさんに言われたことを思い出した。




『何かあればリョウと叫んでください。』




かえで「!!・・・『リョウ』っ!!」

翔太「!?・・・ちっ!」




私が大きな声でリョウさんの名前を呼んだとき、翔太は私の手を引いて走りだした。



かえで「えっ!?」



・・・ドレスを着て、急には走れない。

ましてや私はピンヒールを履いてる。




かえで「・・あっ・・!わっ・・!!」



必死にこけないようにするけど、そんなことは無理だ。



かえで「きゃあっ・・!!」



私は見事に前のめりにこけた。

翔太は巻き添えをくらいたくないのか、私がこける直前で手を離した。




かえで「いたたた・・・。」




手を持たれていたからか、腕を伸ばしたままこけた私。

傷む身体を起こそうとしたとき、後ろからリョウさんの声が聞こえた。



リョウ「かえでさん!!」

翔太「ちっ!!」



翔太は逃げるようにして走っていった。

床に手をついて上半身だけ起こしたとき、リョウさんが私の身体を支えてくれた。



リョウ「大丈夫ですか!?」

かえで「は・・はい、大丈夫です・・・。」



支えられながら立ち上がる、

右足を床につけた時、足首に激痛が走った。




かえで「いぃぃっ・・!?」

リョウ「!?・・・ちょっと座りましょうか。」

かえで「はい・・・。」




リョウさんが支えてくれ、私はゆっくりその場に座る。



リョウ「失礼します。」



リョウさんは私の足首を触り始めた。

ケガがないか見たり・・親指で押したり・・・


くぃっと足首を傾けられたとき、さっきの痛みが私を襲う。


かえで「いぃぃぃっ・・!」

リョウ「捻挫ですね・・・。軽いとは思いますけど・・・すみません、私がいながら・・。」

かえで「いえっ・・。リョウさんは悪くないですよ・・。助けてくれてありがとうございます。」




悪いのは翔太だ。

いつまでも私に関わってきて・・・何がしたいのかわからない。



リョウ「社長に知らせたいのですが・・・おひとりにもできませんし・・・。」

かえで「・・・できれば知らせて欲しくないんですけど・・・心配かけたくないですし・・。」




せっかくのパーティーだ。

お仕事の話もされてるし、華やかな雰囲気も壊したくない。




リョウ「しかし・・・。」

かえで「とりあえず立ってみたいので・・・手伝ってもらえますか?」

リョウ「・・・わかりました。」



私はリョウさんに手伝ってもらって立ち上がった。

ピンヒールを履いて・・・歩いてみる。



かえで「いぃぃっ・・!」

リョウ「・・やはり連絡します。医者にも見せないと・・・。」

かえで「大丈夫・・です・・・。」




痛みに慣れれるように、ゆっくり歩き始める。

リョウさんに支えてもらって、長い廊下を歩いてるうちに慣れていく痛み。

ひょこひょこと歩くことも無くなった。



かえで「・・・いけます。」

リョウ「はぁ・・・社長にバレたら私が怒られるんですけど・・・。」

かえで「家に帰るまでバレなければ大丈夫っ。帰ってから捻ったことにします。」

リョウ「・・・それは無理かと。」

かえで「?」




リョウさんと一緒に歩き進め、私はパーティーの会場に戻ってきた。

背筋を伸ばして、中に入る。



リョウ「社長はあちらです。ご武運を。」

かえで「ありがとうございますっ。行ってきますっ。」



私はリョウさんの手から離れ、慶さんのもとに向かって歩き始めた。

さっきまではリョウさんにもたれかかっていたけど、今は一人。

自分の体重を自分で支えてる。

痛みもさっきより酷い。



かえで(大丈夫・・・大丈夫・・・。)




自分に言い聞かせながら私はゆっくり歩いた。















リョウ「あー・・・怒られる・・・。」







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