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パーティー。

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それから何日か経ち、私は慶さんに頼まれて仕事の休みをもらっていた。

それも二連休。




かえで「どっか行かなきゃいけないって言ってたよね・・・?」



先日、小難しい話をしていた慶さんとリョウさん。

その合間に聞いていたから何の用事だったか忘れてしまっていた。



かえで「・・・なんだっけ。」



頭を捻ってる時、家の呼び鈴が鳴った。




ピンポーン・・・




かえで「?・・・はーい。」



ぱたぱたと走って玄関に行くと、本宅の使用人さんが大きな箱を持って入ってきた。



かえで「?」

使用人「社長からのお届け物です。『これを着て待ってて』と。」



そう言って箱を部屋に運んでくれた。



使用人「お着替え、お手伝いいたします。」

かえで「・・・へ!?」



箱を開けた使用人さん。

出してくれたのは・・・真っ赤なドレスだった。



使用人「一人では着れませんので・・・。」



広げて見せてくれたドレスは、胸のところで止まるタイプ。

下着も特殊だし、一人で着れないことは確かだった。




かえで「・・・お願いします。」

使用人「失礼いたします。」




私は服を脱ぎ、下着をつけてもらった。

服を着るのを手伝ってもらい、髪の毛もセットしてもらう。




使用人「キレイですよ?」

かえで「ふふ。ありがとうございます。」




背中くらいまである髪の毛。

キレイにしてもらい、右耳の下くらいにお団子を作ってくれた。



使用人「羽をあしらった飾りをつけますね。」


そう言ってつけてくれたのは真っ白な羽の髪飾り。

いくつかの羽がふわふわとしていてとてもきれいだった。



かえで「すごい・・・。」

使用人「社長が選んでましたよ?」

かえで「そうなんですかー。」



1時間もすれば終わった身支度。

私は姿鏡の前に立って、全身を見せてもらった。



かえで「すごい・・・。」



Aラインの裾が大人しめなドレス。

ワインレッドで・・・ウエストのとこで生地が切り替わってて・・・



かえで「シンプルだけどめっちゃキレイ・・・。」

使用人「サイズもぴったりでよかったです。」

かえで「・・・あ、ほんとだ。」




ウエストもさることながら、バストも・・・丈もぴったりだった。

丈はぎりぎり床につかない長さだ。

きっと靴を履いたら・・・きれいに見える。




使用人「サイズは全て社長の指示なんですよ?」

かえで「そうなんですか?」

使用人「かえで様用のマネキンを作ったんです。その時も『もうちょっと細い』とか『胸が足りない』とかおっしゃって。」

かえで「!?・・・恥ずかしい・・。」

使用人「愛されてますね。ふふ。」




抱きしめられることは多々あるけど、私のサイズをわかってるとか・・・正直困る。

太れないし・・・痩せれない・・・。




かえで「もー・・・。」

使用人「ふふ。」




使用人さんとそんな話をしてると、玄関の開く音が聞こえた。




ガラガラガラ・・・




慶「かえでー?用意できたー?」



慶さんが私を呼びに来た。



かえで「はーい。・・・じゃあ行ってきますっ。」

使用人「行ってらっしゃいませ。」




私は廊下を歩き、玄関に回った。

そこにはいつもと違うスーツに身を包んだ慶さんの姿があった。



かえで「・・・かっこいい。」

慶「いやいや・・・かえでが可愛いんでしょ?靴持って来た。」



そう言って私の前に差し出されたのはゴールドのヒール。

そんなに高さは無いけど・・・ピンヒールだった。



かえで「こけちゃうかも・・・。」

慶「俺の腕持ってて。こけそうになったら支える。」

かえで「わかった。・・・ところで・・どこ行くの?」

慶「へ?・・・聞いてなかったのか?仕事のパーティだよ。同伴者が必要でさ。」

かえで「あー・・・そうだったような・・?」

慶「車で話してあげるから。行こう。」




私は慶さんに靴を履かせてもらい、玄関を出た。

石畳を歩きながら慶さんの腕を掴む。




かえで「こけるこける・・っ。」

慶「なら、これでどう?」



慶さんは私の腰に手を回し、反対の手で私の手を取った。




かえで「あっ、歩きやすいっ。」

慶「じゃあこれで行こうか。」




スマートに歩けるようになったころに門につき、私は高級リムジンの中に案内された。



慶「どうぞ?」

かえで「ありがとう・・・。」





慣れるのもおかしいけど、私はいつもの席に腰かけた。

慶さんは私と少し距離をあけて座る。




かえで「?」

慶「ドレスがシワになるといけないからね。」

かえで「あー・・。」




座ると少し広がるドレス。

シワにならないように気をつけながら私は座り直した。




慶「ははっ。可愛い。」

かえで「~~~っ。」

慶「こらこら・・・真っ白の肌に合うように選んだんだから顔を赤くしてちゃだめだろ?」

かえで「!?!?」

慶「ますます赤くなった(笑)」




私は手で顔を仰ぎながら行き先のことを聞く。




かえで「そっ・・そんなことより・・パーティーって・・・。」

慶「仕事上で付き合いのある人たちの集まりみたいなものだけど・・・まぁちょって牽制も兼ねて。」

かえで「?」

慶「かえでは俺の側かリョウの側にいて。絶対に一人にはならないし、誰に何を聞かれても答えない。わかった?」

かえで「う・・・うん。」





車が走るなか、私はずっと慶さんと約束事を繰り返していた。

子供じゃないから守れる自信はある。




慶「着くよ。」




リムジンの窓から見えたのは高層ビル。

テレビでよく見る・・・高級ホテルだった。




かえで「!?」

慶「ここの80階。行こうか。」





リムジンはホテルの入り口に止まり、慶さんが先に車から下りた。

ドアの向こうから私を呼ぶ。




慶「かえで。」

かえで「はい。」



私も車から下り、慶さんの手を取った。

慶さんは私の腰に手を回して歩きやすくしてくれる。



慶「行こう。」



一歩ずつゆっくり歩き始め、ホテルの中に入る。

真正面にあるエレベーターに乗るため待ってると、慶さんに声をかけてきた人がいた。




「おや!神楽グループの!」

慶「お久しぶりですね。お元気でしたか?」




結構横にぽちゃぽちゃとされた方だ。

隣には私と同じ、赤いドレスを着た人が立ってる。




「なかなか良い人が現れませんのですよ!どうですかな!?うちの娘とのお見合い!」

かえで「!?」

慶「あいにく、私にはパートナーがおりますので・・・。紹介します。『かえで』です。」




私は無言のまま、頭だけを下げた。




「ずいぶんと若くて・・かわいらしい・・・」

慶「お嬢さんに素敵なお相手が見つかることを祈ります。では。」



ちょうどやってきたエレベーター。

私と慶さんが乗り込み、ドアが閉まった。

80階を目指してぐんぐん上がっていく。



慶「・・・ったく、前も断ったってのに、何考えてるんだ?」

かえで「・・・。」

慶「・・・かえで?」

かえで「・・・。」





私は拗ねていた。

慶さんは『断った』って言っても、『お見合い』なんて話が出て拗ねない彼女はいないと思う。



慶「・・・拗ねた?」

かえで「ーーーーっ!」

慶「そっか・・・拗ねたならご機嫌は取らないとな?」



そう言って慶さんは私の唇に自分の唇を重ねてきた。




ちゅ・・・




かえで「!?」

慶「ほら・・・口開けて?」

かえで「んぅ・・・んっ・・・」



ちゅくちゅくと口の中を弄ばれる。



かえで「ふぁ・・・んんっ・・・」

慶「パーティーなんて無かったらいいのに・・・。」




エレベーターが到着する直前までキスをしていた私たち。

唇を吸われ刺激を受けた私の唇は・・・口紅を塗ったかのように赤くなっていた。




ちゅぱっ・・・



かえで「はぁ・・・はぁ・・・」

慶「うん、可愛い。」




ふらふらする足もと。

慶さんは私の腰を支えながらエレベーターを下りた。














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