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翔太と遭遇。
しおりを挟むかえで(もう来るかな?)
少し長引いた仕事が終わった私はお店の外で神楽さんを待っていた。
車が通るたびに視線を上げる。
かえで(車の音・・・遠くに聞こえる・・。)
誘拐された時に、視界を奪われた私は聴覚がよくなった。
少し聞こえがいいくらいだけど、重宝するときもある。
次に通る車が神楽さんかもしれないと思い、少し道路側に寄る。
そのとき、後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。
翔太「・・・かえで!!」
かえで「!?」
振り返るとそこに翔太が立っていた。
怒った顔をしながら。
かえで「しょ・・た・・・。」
翔太「お前アパート解約しやがって・・・!今どこに住んでんだよ!」
声を荒げながら近づいてくる。
耳がいいと・・・荒げられる声も大きく聞こえるもので・・・私は恐怖感に襲われた。
この4日、優しいトーンの声しか聴いてなかった私は、翔太の声が怖くて仕方ない。
翔太「聞いてんのか!!」
かえで「ひぅっ・・!」
耳を押さえ、その場にしゃがみ込む。
翔太はしゃがみ込んだ私の髪の毛を掴んだ。
がしっ・・!
かえで「いたっ・・!」
翔太「来いっ!!」
引っ張って歩き出そうとする翔太。
私は必死に抵抗した。
かえで「やだ!」
翔太「はぁっ!?」
かえで「別れるって言った!私は翔太の物じゃない・・・!」
私の髪の毛を引っ張ってる腕を掴む。
かえで「離してっ・・・!いたいっ・・!」
離してもらおうと必死に腕を掴んでると、誰かが翔太の腕を掴んだのが見えた。
翔太「!!」
慶「彼女の髪の毛、放してくれるかな?」
かえで「神楽さん・・っ。」
翔太の腕を掴んだのは神楽さんだった。
神楽さんは翔太の腕をぐっと握った。
神楽さんの指がどんどん翔太の腕にめり込んでいき・・・翔太は痛さに私の髪の毛を放した。
翔太「いっってぇぇっ!!くっそ・・・!なんなんだよ!」
翔太が叫ぶのもお構いなしに、神楽さんは私の身体を支えてくれた。
慶「待たせてごめんね?行こうか。」
そう言って私の肩を抱き、翔太に背を向け歩き始めた。
翔太「聞いてんのかよ!」
かえで「ひぅっ・・!」
慶「・・・。」
怖い声。
私は自分の耳を両手で塞いだ。
翔太「かえで!!」
戻らないと、翔太は何をするかわからない。
今まで暴力こそは振るわれたことはないけど、荒げられる声が怖くて・・・私は体が震えていた。
慶「・・・先に車に乗っててくれる?」
神楽さんは歩いてた足を止め、笑顔で私に言った。
私は耳を塞いでいた手を外す。
かえで「は・・はい・・・。」
私の肩から神楽さんの手が離れる。
慶「リョウ、頼む。」
リョウ「かしこまりました。」
いつも神楽さんと一緒にいる人が私の後ろに立ち、神楽さんの代わりなのか、肩を抱いてくれた。
翔太「おいっ!!」
かえで「!!」
後ろから翔太の声が聞こえる。
リョウ「・・・失礼します。」
かえで「え?」
神楽さんといつも一緒にいる人が、私の耳を塞いだ。
リョウ「聞かないほうがいいです。」
かえで「?」
『聞かないほうがいい』と言われても、私の耳は聞こえてしまう。
しっかり閉じられた耳に、微かに聞こえた音。
それは・・・誰かが誰かを殴る音だった。
かえで「!!」
振り返るつもりで体を捻ろうとしたとき、自分の体が動かなかった。
かえで「え!?」
神楽さんと一緒にいる人は、手で私の耳を塞ぎ・・・腕で私の肩を押さえていた。
リョウ「社長は大丈夫です。あなたに見せたくないだけですから・・見ないであげてください。」
かえで「・・・。」
その場に立ち尽くす私。
目を閉じて見ないようにするけれど、聞こえてくる音が・・・私に不安感を与える。
かえで(どうしよう・・・どうしよう・・っ。)
少しすると、私の肩と耳は解放され・・・目を開けると神楽さんが私の前に立っていた。
慶「・・・怖かったよね。」
そう言って私の身体を抱きしめた。
かえで「こ・・こわかった・・・。」
慶「ごめんね、もっと早くに着いてたら・・・」
かえで「か・・神楽さんがケガしてるんじゃないかと思って・・・怖かった・・・。」
慶「・・・え?」
ケガしてるんじゃないかと思って心臓がばくばくとうるさかった。
どうしよう・・どうしよう・・と、そればかり考えた。
私が翔太のところに戻れば・・神楽さんが危険な目に合うことはない。
なら・・・私は翔太のところに戻るって思った。
慶「俺はケガなんてしないよ?」
かえで「・・・。」
確かに無事だった神楽さん。
私は神楽さんの背中に腕を回した。
たくましい背中の向こうで私の手が出会うことはなかったけど、それでも必死に抱きついた。
慶「・・・水瀬さん?」
かえで「・・私の側にいて・・・ずっと側に・・・いて欲しいの・・。」
神楽さんが好きだ。
自分よりも・・・彼の身を案じてしまう。
彼に何かあったら・・・そんな想像をしただけで私の心臓が押しつぶされそうだ。
ずっと側で・・・笑ってて欲しい。
慶「それって・・・俺と結婚してくれるの・・?」
かえで「・・・・はい。」
慶「!!・・・とりあえず帰ろうか。車に乗るよ。」
神楽さんは私を抱え上げ、車に乗せてくれた。
慶「帰ったらゆっくり・・・話をしようか。」
かえで「はい。」
車は走り出し、山の上にある神楽さんの家に向かった。
翔太「くっそ・・!なんなんだあいつ!」
手も足も出せずに一方的にやられた翔太が身を起こした。
翔太「かえでがいねーと住むとこもメシもないじゃん!」
ぶつぶつ言いながら、翔太は街の雑踏の中に消えていった。
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