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支度。

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サンドイッチを食べ終わり、腕時計の時間を見ると午前7時に差し掛かるところだった。





慶「水瀬さん、そろそろ用意しないと・・・。」



そう言うと彼女は大皿の料理たちに大きめのスプーンを入れていった。



かえで「あとはご自分でお願いしますねー。」




食堂でご飯を食べてる部下たちにそう言って俺のもとに来た。




慶「何分で支度できる?」

かえで「10分です!」

慶「おっけ。送ってく。用意出来たら門まで来れる?」

かえで「はいっ。」





俺は彼女を離れに送って行き、自室に戻った。

自分の用意もさっさと済ませる。






慶(いい返事かなー・・・。)





さっきの彼女の笑顔が頭から離れない。

ニヤつく顔を押さえながら着替えをしてると、リョウが部屋に入ってきた。



ガチャ・・・




リョウ「社長、かえでさんの体重が減った理由わかりました。」

慶「お前まで名前呼びかよ・・・で、何だった?」

リョウ「あの男の食費を捻出するために、自分が食べてなかったようです。」

慶「は?」

リョウ「スーパーの防犯カメラに映ってたのですが、半年前と直近で買う量は同じだったんです。でも、あの男のご飯は作っていた。おそらく食べてなかったのではないかと思われます。」





つくづく最低な男だと思いながら俺はネクタイを結んだ。

あの男のために自分の身を削る彼女もどうかと思ったけど・・・さっきの行動を考えたら・・・




慶「あいつらに朝ご飯作ってたもんな・・・そういう性格か・・。」





俺がネクタイを結んでると・・・リョウはとんでもないことを言った。




リョウ「あと、あの男の『営み』なんですが。」

慶「・・・それは聞きたくない。」




彼女とあの男の『行為』のことなんて聞いたら嫉妬に狂うかもしれない。

だから聞きたくなかった。



リョウ「・・・お耳に入れておいた方がいいと思います。」

慶「・・・・・。」




リョウの言うことは大概正論だ。

仕方なく俺は聞くことにした。




慶「わかった。話してくれ。」

リョウ「あの男と『寝た』ことのある女たちに聞いて回りましたところ、結構酷かったそうです。」

慶「・・・『酷い』?」

リョウ「『二度と寝たくない』と、皆が口を揃えていいました。かえでさんはあの男しかしらないはず・・・。」

慶「あー・・・そういうことか。わかった。」





女と男ではそもそも身体の作りが違う。

感じ方も人それぞれだ。



慶(俺は違うけど・・・彼女が『そういうもの』だと思い込んでたら・・・。)





リョウ「・・・・車、回してきます。」

慶「頼む。」




俺は身支度を済ませ、石畳が離れへの道へと分かれるところで彼女を待った。

数分も経てばパタパタと走ってくる音が聞こえた。




かえで「す・・すみませんっ。」



走りながらきた彼女。

俺は自分の手を差し出した。




慶「行こうか。」

かえで「・・・・はいっ。」



きゅっ・・・と、俺の手を握ってくれた。

そのあまりの小ささに・・・驚いた。




慶(ちっさ・・・折れそう・・・。)



にこにこ笑いながら俺を覗き込む。

昨日までと違って、全身で俺を見てる。

その姿が愛しすぎて・・・思わず抱き締めたくなるけど我慢だ・・・。



慶「今日は何時まで?」

かえで「17時ですけど・・・。」




ちょうど門のところについた俺たち。

繋いでた手を離して、彼女を車に乗せた。




慶「帰り、迎えに行く。・・・行っといで。気をつけてな?」



そう言うと、かえでは不思議そうな顔をして聞いてきた。



かえで「?・・・神楽さんは?」

慶「俺も仕事。行き先が反対方向だから・・・終わったら電話して。」




そう言ってポケットから小さいケータイを取り出した。

二つ折りの赤いケータイだ。




かえで「私、ケータイ持ってますよ?」

慶「帰ってきたら番号聞く。今日はそれ持ってて。開けたらすぐに俺に繋がる。」

かえで「・・・ありがとうございます。」

慶「いってらっしゃい。」

かえで「・・・いってきますっ。」



車のドアを閉め、見送った。




慶「さて・・・仕事に行きますか。」





リョウが回してきた車が俺の目の前に止まった。

後部座席に乗り込み、今日の予定を確認する。



慶「・・・隣町の会社と食事?」



面倒くさい予定が一件練り込まれてる。



リョウ「あ、先方がどうしてもとおっしゃったので。」

慶「あの会社、業績悪いだろ?後先考えずに行動起こすから・・・。」




同じ業界では有名になってきてる会社だ。

地域住民に還元するどころか、金を搾り取ってる。

悪どい金貸しをして・・・路頭に迷う人数も増えてる報告があった。



リョウ「仕事・・・の話じゃないかもしれませんね。」

慶「そうだな。軽くあしらって済ませよう。」










『軽くあしらって済ませる』

そう思ってたのに、後々大変なことになるなんて・・・この頃は思いもしなかった。











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