81 / 91
81
しおりを挟む
この日、涼さんはものの数時間で仕事の大半を済ませていった。
不動産屋さんのようなお店で色々資料を見せてもらいながら、何か英語で話してるのをずっと私は見ていたのだ。
(何言ってるのか全然わからなかったけど・・・涼さんは何を話してたのかな。)
ペラペラと日本語を話すように英語を話していた涼さん。
その様子を見てて、私も少しは理解できたほうがいいんじゃないかと少し不安にかられていた。
移住が現実になれば・・・英語の世界で生きなくてはならないからだ。
「うーん・・・。」
仕事が終わり、ホテルに戻るまでの帰り道で呟くように唸った時、涼さんが私を覗き込んできた。
「?・・・どうした?」
歩きながら私の前にひょこっと顔を出した涼さん。
私は足を進めながら答えた。
「え?・・・あ、ちょっと言葉を・・勉強したほうがいいかなと・・・思って・・?」
そう答えた時、涼さんは驚くような表情を見せた。
何か変なことでも言ったかなと不思議に思ってると、涼さんは全然違うことで驚いていたようだ。
「ハル・・・怖くないの?」
「え?」
「俺が覗き込むと・・いつも顔真っ青にしてたけど・・?」
そう言われ、今のは怖くなかったことに気がついた。
「あ・・うん、大丈夫。」
「もしかして環境の変化が良かった・・?」
言われてみると確かに関係してそうだった。
日本にいる時より周りに気を配ったりすることがある上に、言葉も通じない場所だ。
環境を見て、自分が住んでることをイメージして・・と、忙しすぎてトラウマに囚われてる場合じゃなかったのかもしれない。
「これは・・いい発見だな。」
嬉しそうに笑う涼さん。
このことは私にとってもいいことだったけど・・・今は言葉の壁のほうが私にとって重要な気がしていた。
「そうなんだけど・・・英語ってすぐに覚えれるものじゃないよね・・・。」
文章として見ればある程度はわかると思うけど、話し言葉になると話は変わる。
発音も聞きとらないといけないし、文章を簡略化して話すこともあるだろう。
そのあたりを臨機応変に覚えていけるかが不安なところだった。
でも私の考えとは裏腹に、涼さんはしれっと言ったのだ。
「あぁ、覚えなくていいよ?」
「え・・?でも・・・」
「ハルには必要ないから。・・・どうしてもって言うなら少し日常会話を覚えるくらいでいいよ。俺がいるし。」
「そ・・そう・・なの?」
私が知ってる涼さんなら『覚えるなら俺が教える』とか『帰ったら英会話行く?』とか言いそうなものだけど、予想とはかけ離れた言葉が返って来たことに私は驚いた。
(覚えなくていいって・・・『暮らす』ことになったら必要になるんじゃないの?)
どうやって私は生活をするんだろうと疑問を持ちながら、ホテルに足を進めて行ったのだった。
ーーーーー
ーーーーー
その日から私と涼さんは町の中を歩いたり、買い物をしてみたりして過ごしていた。
涼さんは時折仕事をしていたけど、その内容はやっぱりわからなかった。
でもなぜか残念そうな顔をする涼さんを見て、たぶん仕事の話がうまくいかなかったんだろうなと、勝手に想像していたりもしていた。
そんな時間を過ごしながら町の雰囲気を感じたりしていた私は、初めての下見ということもあってかイマイチしっくりこない感じを受けていた。
(うーん・・・町はキレイだし、お店の人も優しいし、治安もいいみたいだけど・・・)
急ぎ早に移住先を決める必要はない。
そう思って他の国に期待を寄せようと思った。
「ハル、もう出国だけどどうだった?ニュージーランド。」
3日なんて時間はあっという間に過ぎて行く。
しなくてはならないことがあるなら尚更時が過ぎるのは早い。
あっという間に滞在期間が終わり、私たちはオークランド国際空港にいた。
「うん、よくわかんないけど・・他の国も見て見たいって思った。」
正直に思ったことを言うと、涼さんはカウンターでスーツケースを預けながら仕事の話をし始めた。
「俺はちょっとここでは事業を拡大できそうにないかな。」
「そうなんだ。」
「うん。まぁ、できなくもなさそうだけど・・・ちょっと苦戦しそう。」
二人の意見が合わなければ住むべきじゃない。
二人ともダメなら尚更だ。
だから私は笑顔で涼さんに言った。
「なら次の国だねっ。」
「そうだな。」
私たちは他の国に期待を寄せることにして、出国した。
ーーーーー
ーーーーー
その後、私たちはプライベートジェットでオーストラリアに渡り、また3日間過ごした。
ニュージーランドと同じように、涼さんは仕事関係で私は生活面を見て行く。
町の雰囲気を肌で感じながら過ごしていったのだった。
そうして10日間ほどの海外移住の下見旅行は終わり、私たちは帰国したのだった。
不動産屋さんのようなお店で色々資料を見せてもらいながら、何か英語で話してるのをずっと私は見ていたのだ。
(何言ってるのか全然わからなかったけど・・・涼さんは何を話してたのかな。)
ペラペラと日本語を話すように英語を話していた涼さん。
その様子を見てて、私も少しは理解できたほうがいいんじゃないかと少し不安にかられていた。
移住が現実になれば・・・英語の世界で生きなくてはならないからだ。
「うーん・・・。」
仕事が終わり、ホテルに戻るまでの帰り道で呟くように唸った時、涼さんが私を覗き込んできた。
「?・・・どうした?」
歩きながら私の前にひょこっと顔を出した涼さん。
私は足を進めながら答えた。
「え?・・・あ、ちょっと言葉を・・勉強したほうがいいかなと・・・思って・・?」
そう答えた時、涼さんは驚くような表情を見せた。
何か変なことでも言ったかなと不思議に思ってると、涼さんは全然違うことで驚いていたようだ。
「ハル・・・怖くないの?」
「え?」
「俺が覗き込むと・・いつも顔真っ青にしてたけど・・?」
そう言われ、今のは怖くなかったことに気がついた。
「あ・・うん、大丈夫。」
「もしかして環境の変化が良かった・・?」
言われてみると確かに関係してそうだった。
日本にいる時より周りに気を配ったりすることがある上に、言葉も通じない場所だ。
環境を見て、自分が住んでることをイメージして・・と、忙しすぎてトラウマに囚われてる場合じゃなかったのかもしれない。
「これは・・いい発見だな。」
嬉しそうに笑う涼さん。
このことは私にとってもいいことだったけど・・・今は言葉の壁のほうが私にとって重要な気がしていた。
「そうなんだけど・・・英語ってすぐに覚えれるものじゃないよね・・・。」
文章として見ればある程度はわかると思うけど、話し言葉になると話は変わる。
発音も聞きとらないといけないし、文章を簡略化して話すこともあるだろう。
そのあたりを臨機応変に覚えていけるかが不安なところだった。
でも私の考えとは裏腹に、涼さんはしれっと言ったのだ。
「あぁ、覚えなくていいよ?」
「え・・?でも・・・」
「ハルには必要ないから。・・・どうしてもって言うなら少し日常会話を覚えるくらいでいいよ。俺がいるし。」
「そ・・そう・・なの?」
私が知ってる涼さんなら『覚えるなら俺が教える』とか『帰ったら英会話行く?』とか言いそうなものだけど、予想とはかけ離れた言葉が返って来たことに私は驚いた。
(覚えなくていいって・・・『暮らす』ことになったら必要になるんじゃないの?)
どうやって私は生活をするんだろうと疑問を持ちながら、ホテルに足を進めて行ったのだった。
ーーーーー
ーーーーー
その日から私と涼さんは町の中を歩いたり、買い物をしてみたりして過ごしていた。
涼さんは時折仕事をしていたけど、その内容はやっぱりわからなかった。
でもなぜか残念そうな顔をする涼さんを見て、たぶん仕事の話がうまくいかなかったんだろうなと、勝手に想像していたりもしていた。
そんな時間を過ごしながら町の雰囲気を感じたりしていた私は、初めての下見ということもあってかイマイチしっくりこない感じを受けていた。
(うーん・・・町はキレイだし、お店の人も優しいし、治安もいいみたいだけど・・・)
急ぎ早に移住先を決める必要はない。
そう思って他の国に期待を寄せようと思った。
「ハル、もう出国だけどどうだった?ニュージーランド。」
3日なんて時間はあっという間に過ぎて行く。
しなくてはならないことがあるなら尚更時が過ぎるのは早い。
あっという間に滞在期間が終わり、私たちはオークランド国際空港にいた。
「うん、よくわかんないけど・・他の国も見て見たいって思った。」
正直に思ったことを言うと、涼さんはカウンターでスーツケースを預けながら仕事の話をし始めた。
「俺はちょっとここでは事業を拡大できそうにないかな。」
「そうなんだ。」
「うん。まぁ、できなくもなさそうだけど・・・ちょっと苦戦しそう。」
二人の意見が合わなければ住むべきじゃない。
二人ともダメなら尚更だ。
だから私は笑顔で涼さんに言った。
「なら次の国だねっ。」
「そうだな。」
私たちは他の国に期待を寄せることにして、出国した。
ーーーーー
ーーーーー
その後、私たちはプライベートジェットでオーストラリアに渡り、また3日間過ごした。
ニュージーランドと同じように、涼さんは仕事関係で私は生活面を見て行く。
町の雰囲気を肌で感じながら過ごしていったのだった。
そうして10日間ほどの海外移住の下見旅行は終わり、私たちは帰国したのだった。
23
お気に入りに追加
547
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる