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この日、涼さんはものの数時間で仕事の大半を済ませていった。
不動産屋さんのようなお店で色々資料を見せてもらいながら、何か英語で話してるのをずっと私は見ていたのだ。
(何言ってるのか全然わからなかったけど・・・涼さんは何を話してたのかな。)
ペラペラと日本語を話すように英語を話していた涼さん。
その様子を見てて、私も少しは理解できたほうがいいんじゃないかと少し不安にかられていた。
移住が現実になれば・・・英語の世界で生きなくてはならないからだ。
「うーん・・・。」
仕事が終わり、ホテルに戻るまでの帰り道で呟くように唸った時、涼さんが私を覗き込んできた。
「?・・・どうした?」
歩きながら私の前にひょこっと顔を出した涼さん。
私は足を進めながら答えた。
「え?・・・あ、ちょっと言葉を・・勉強したほうがいいかなと・・・思って・・?」
そう答えた時、涼さんは驚くような表情を見せた。
何か変なことでも言ったかなと不思議に思ってると、涼さんは全然違うことで驚いていたようだ。
「ハル・・・怖くないの?」
「え?」
「俺が覗き込むと・・いつも顔真っ青にしてたけど・・?」
そう言われ、今のは怖くなかったことに気がついた。
「あ・・うん、大丈夫。」
「もしかして環境の変化が良かった・・?」
言われてみると確かに関係してそうだった。
日本にいる時より周りに気を配ったりすることがある上に、言葉も通じない場所だ。
環境を見て、自分が住んでることをイメージして・・と、忙しすぎてトラウマに囚われてる場合じゃなかったのかもしれない。
「これは・・いい発見だな。」
嬉しそうに笑う涼さん。
このことは私にとってもいいことだったけど・・・今は言葉の壁のほうが私にとって重要な気がしていた。
「そうなんだけど・・・英語ってすぐに覚えれるものじゃないよね・・・。」
文章として見ればある程度はわかると思うけど、話し言葉になると話は変わる。
発音も聞きとらないといけないし、文章を簡略化して話すこともあるだろう。
そのあたりを臨機応変に覚えていけるかが不安なところだった。
でも私の考えとは裏腹に、涼さんはしれっと言ったのだ。
「あぁ、覚えなくていいよ?」
「え・・?でも・・・」
「ハルには必要ないから。・・・どうしてもって言うなら少し日常会話を覚えるくらいでいいよ。俺がいるし。」
「そ・・そう・・なの?」
私が知ってる涼さんなら『覚えるなら俺が教える』とか『帰ったら英会話行く?』とか言いそうなものだけど、予想とはかけ離れた言葉が返って来たことに私は驚いた。
(覚えなくていいって・・・『暮らす』ことになったら必要になるんじゃないの?)
どうやって私は生活をするんだろうと疑問を持ちながら、ホテルに足を進めて行ったのだった。
ーーーーー
ーーーーー
その日から私と涼さんは町の中を歩いたり、買い物をしてみたりして過ごしていた。
涼さんは時折仕事をしていたけど、その内容はやっぱりわからなかった。
でもなぜか残念そうな顔をする涼さんを見て、たぶん仕事の話がうまくいかなかったんだろうなと、勝手に想像していたりもしていた。
そんな時間を過ごしながら町の雰囲気を感じたりしていた私は、初めての下見ということもあってかイマイチしっくりこない感じを受けていた。
(うーん・・・町はキレイだし、お店の人も優しいし、治安もいいみたいだけど・・・)
急ぎ早に移住先を決める必要はない。
そう思って他の国に期待を寄せようと思った。
「ハル、もう出国だけどどうだった?ニュージーランド。」
3日なんて時間はあっという間に過ぎて行く。
しなくてはならないことがあるなら尚更時が過ぎるのは早い。
あっという間に滞在期間が終わり、私たちはオークランド国際空港にいた。
「うん、よくわかんないけど・・他の国も見て見たいって思った。」
正直に思ったことを言うと、涼さんはカウンターでスーツケースを預けながら仕事の話をし始めた。
「俺はちょっとここでは事業を拡大できそうにないかな。」
「そうなんだ。」
「うん。まぁ、できなくもなさそうだけど・・・ちょっと苦戦しそう。」
二人の意見が合わなければ住むべきじゃない。
二人ともダメなら尚更だ。
だから私は笑顔で涼さんに言った。
「なら次の国だねっ。」
「そうだな。」
私たちは他の国に期待を寄せることにして、出国した。
ーーーーー
ーーーーー
その後、私たちはプライベートジェットでオーストラリアに渡り、また3日間過ごした。
ニュージーランドと同じように、涼さんは仕事関係で私は生活面を見て行く。
町の雰囲気を肌で感じながら過ごしていったのだった。
そうして10日間ほどの海外移住の下見旅行は終わり、私たちは帰国したのだった。
不動産屋さんのようなお店で色々資料を見せてもらいながら、何か英語で話してるのをずっと私は見ていたのだ。
(何言ってるのか全然わからなかったけど・・・涼さんは何を話してたのかな。)
ペラペラと日本語を話すように英語を話していた涼さん。
その様子を見てて、私も少しは理解できたほうがいいんじゃないかと少し不安にかられていた。
移住が現実になれば・・・英語の世界で生きなくてはならないからだ。
「うーん・・・。」
仕事が終わり、ホテルに戻るまでの帰り道で呟くように唸った時、涼さんが私を覗き込んできた。
「?・・・どうした?」
歩きながら私の前にひょこっと顔を出した涼さん。
私は足を進めながら答えた。
「え?・・・あ、ちょっと言葉を・・勉強したほうがいいかなと・・・思って・・?」
そう答えた時、涼さんは驚くような表情を見せた。
何か変なことでも言ったかなと不思議に思ってると、涼さんは全然違うことで驚いていたようだ。
「ハル・・・怖くないの?」
「え?」
「俺が覗き込むと・・いつも顔真っ青にしてたけど・・?」
そう言われ、今のは怖くなかったことに気がついた。
「あ・・うん、大丈夫。」
「もしかして環境の変化が良かった・・?」
言われてみると確かに関係してそうだった。
日本にいる時より周りに気を配ったりすることがある上に、言葉も通じない場所だ。
環境を見て、自分が住んでることをイメージして・・と、忙しすぎてトラウマに囚われてる場合じゃなかったのかもしれない。
「これは・・いい発見だな。」
嬉しそうに笑う涼さん。
このことは私にとってもいいことだったけど・・・今は言葉の壁のほうが私にとって重要な気がしていた。
「そうなんだけど・・・英語ってすぐに覚えれるものじゃないよね・・・。」
文章として見ればある程度はわかると思うけど、話し言葉になると話は変わる。
発音も聞きとらないといけないし、文章を簡略化して話すこともあるだろう。
そのあたりを臨機応変に覚えていけるかが不安なところだった。
でも私の考えとは裏腹に、涼さんはしれっと言ったのだ。
「あぁ、覚えなくていいよ?」
「え・・?でも・・・」
「ハルには必要ないから。・・・どうしてもって言うなら少し日常会話を覚えるくらいでいいよ。俺がいるし。」
「そ・・そう・・なの?」
私が知ってる涼さんなら『覚えるなら俺が教える』とか『帰ったら英会話行く?』とか言いそうなものだけど、予想とはかけ離れた言葉が返って来たことに私は驚いた。
(覚えなくていいって・・・『暮らす』ことになったら必要になるんじゃないの?)
どうやって私は生活をするんだろうと疑問を持ちながら、ホテルに足を進めて行ったのだった。
ーーーーー
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その日から私と涼さんは町の中を歩いたり、買い物をしてみたりして過ごしていた。
涼さんは時折仕事をしていたけど、その内容はやっぱりわからなかった。
でもなぜか残念そうな顔をする涼さんを見て、たぶん仕事の話がうまくいかなかったんだろうなと、勝手に想像していたりもしていた。
そんな時間を過ごしながら町の雰囲気を感じたりしていた私は、初めての下見ということもあってかイマイチしっくりこない感じを受けていた。
(うーん・・・町はキレイだし、お店の人も優しいし、治安もいいみたいだけど・・・)
急ぎ早に移住先を決める必要はない。
そう思って他の国に期待を寄せようと思った。
「ハル、もう出国だけどどうだった?ニュージーランド。」
3日なんて時間はあっという間に過ぎて行く。
しなくてはならないことがあるなら尚更時が過ぎるのは早い。
あっという間に滞在期間が終わり、私たちはオークランド国際空港にいた。
「うん、よくわかんないけど・・他の国も見て見たいって思った。」
正直に思ったことを言うと、涼さんはカウンターでスーツケースを預けながら仕事の話をし始めた。
「俺はちょっとここでは事業を拡大できそうにないかな。」
「そうなんだ。」
「うん。まぁ、できなくもなさそうだけど・・・ちょっと苦戦しそう。」
二人の意見が合わなければ住むべきじゃない。
二人ともダメなら尚更だ。
だから私は笑顔で涼さんに言った。
「なら次の国だねっ。」
「そうだな。」
私たちは他の国に期待を寄せることにして、出国した。
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その後、私たちはプライベートジェットでオーストラリアに渡り、また3日間過ごした。
ニュージーランドと同じように、涼さんは仕事関係で私は生活面を見て行く。
町の雰囲気を肌で感じながら過ごしていったのだった。
そうして10日間ほどの海外移住の下見旅行は終わり、私たちは帰国したのだった。
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