溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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バーをあとにした俺はハルを探して海辺を歩ていた。

二人のことだから、ショッピングはせずにぶらぶら歩いてると思ったからだ。


(いうほどショッピングできる場所もないし、たぶん話をしてるんじゃないかなー。)


数年ぶりに会った親子だから、色々話したいこともあるだろう。

それに俺たちは明日発つから、ゆっくり離せるのは今日しかないのだ。


(もう暗くなるし、そろそろ帰ってくるかな。)


夕陽が射すオレンジの砂浜を見てると、向こうの方から二人組の人が歩いてくるのが見えた。

背格好や歩き方から見て、ハルとお母さんだろう。

二人は楽しい話でもしてるのか、わちゃわちゃとしながら歩いていて、時々笑い声が聞こえて来た。

そんな二人を目指しながら、俺は歩いて行く。


「あ、涼さーん!」


靴を手に持ち、裸足で砂浜を歩いていたハル。

随分と気持ちよさそうな光景に、俺も自然と笑みがこぼれる。


「楽しかった?」


そう聞くとハルは満面の笑みで答えてくれた。


「うんっ!」

「そっか、よかった。・・・何の話してたの?」

「えっとー・・・」


ハルはぴょこぴょこ動き回りながら、お母さんとの会話を教えてくれた。

俺がお父さんに聞かれたことと殆ど同じで、ハル目線か俺目線かの違いくらいだ。

きっとお母さんはこのあとお父さんとは話をして、両目線を楽しむのだろう。


「都築さんはお父さんとお話できたのかしら?」


ハルが話終わったあとにお母さんが聞いてくれた。


「はい、同じような話をしました。お父さん、ビールを飲んでお部屋に帰られました。」


そう答えるとハルのお母さんは手を口にあてて驚いていた。


「えぇ!?お父さんお酒ダメなのに・・・。」

「え!?」

「あ、大丈夫。すぐ酔っちゃうくらいで害はないから。・・・私はお父さんのところに戻るわね。二人とも楽しんでー。」


そう言ってハルのお母さんは手を振りながら戻って行ってしまった。

その後ろ姿を見送りながら、ハルの手を握る。


「ハル、お父さん、ほんとに大丈夫?」


心配のあまりハルに聞くと、ハルはけろっとしながら答えた。


「え?大丈夫大丈夫。いつものことだから。」

「いつものこと・・・」

「お酒は好きなんだけど、弱くてすぐ酔っちゃうんだよ。朝には元気になってるよ。」

「・・・。」


お酒が弱いのに飲んでくれたことを申し訳なく思いながら、ハルの手を引いて歩き始めた。

軽く波打つ海の音が耳を癒してくれる。


「すっごくきれいだよね、ここ。」


そう言ってハルは海を見つめていた。

潮風になびく髪の毛を耳にひっかけ、目を細めながら暗くなっていく海を見てる。


「うん、きれいだね。」


近くに流木で作られた椅子を見つけ、俺はそこにハルを連れて行った。

二人で腰かけ、ハルとお母さんの話を聞く。


「なんかね、『悠春』の話が出て・・・お母さん、事件のことを結構気にしててね?」

「いや、気にするだろう・・娘なんだし・・。」

「うーん・・それで・・もう『悠春』は辞めたら?って言われて・・・ちょっと悩んでる。」


どうやらハルのお父さんとお母さんは同じことを考えていたらしい。

もしかしたら今日、俺たちがここに来るのに合わせて伝えることにしてたのかもしれないけど・・・。


「ハルはどうしたい?」


『悠春』を続けることでまた命が危険にさらされることになることは明白だ。

お父さんとお母さんは、娘がそんな目に遭って欲しくなくて、きっと『辞める』ことを提案してくれたのだろう。


「私はお花が好きだから・・・悠春じゃなくてもお花の近くにいれたらいいなーって思う。」


大々的に復帰を宣言したわけではなかったけど、細々と活動を続けて来たハルは、自分でも限界を感じているようだった。


「うん。」

「でも、だらだらいなくなるのは違う気がするから・・・ちゃんとどうするのか決めて行動したい。」


自分で決めたハルは、揺るがない眼差しで俺を見た。

その真剣な目に尊敬すら抱く。


「・・・そうだな。」


自分のことをきちっと決めれるハルに負けないようにと思いながら、俺はハルの肩をそっと抱いた。




ーーーーー



ーーーー


ーーー


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