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「ふふ、ハルをよろしくね。都築さん。」
ハルのお母さんが俺に向けて言った。
その言葉を聞いて、俺はまた頭を深く下げる。
「・・・一生大切に守ります。幸せにします。」
「ハルがいい人に巡り合えてよかったわ。」
そう言って、ハルのお母さんは行ってしまった。
(まぁ・・こんなとこまでついて来る男だから『結婚相手』と見てもらえるよな。)
お母さんから許し?を得た後はお父さんだ。
どの時代もお父さんからの許しは難しいものだ。
(『ダメだ』とか言われたらどうしよう・・・。)
不安に思いながらも俺はハルを追いかけてホテルの中に入った。
チェックインを済ませ、部屋に荷物を運んでから二人で外に出る。
「ハルはお母さんと出掛けるだろ?小遣い足りる?」
ここに来る前に両替を済ませておいた豪ドルを財布から取り出す。
「私も両替してあるから大丈夫っ、この旅行の代金も帰ってから・・・」
『支払う』というつもりのハルの言葉を遮るようにして言った。
「払わなくていいよ。」
「でも・・・・」
「とりあえず今はお母さんと一緒に楽しんできな?俺はお父さんと一緒にちょっと飲んでくる。」
そう言ってお父さんが待ってるであろうバーを指差した。
「!!・・・ふふっ、お父さん、お酒弱いから気をつけてねー。」
ハルは手を振って俺から離れていった。
すぐ向こうで待ってるお母さんを呼びながら駆けていく。
「さて・・決戦と行きますか。」
俺は気合を入れ、ハルのお父さんが待ってるバーの中に入った。
カウンター席の奥のほうに、ハルのお父さんの姿がある。
「お待たせしてすみません。」
そう声をかけると、お父さんは隣の席をぽんぽんっと叩いた。
「失礼します。」
叩かれた席に座ると、お父さんは店員に声をかけた。
《ビール二つ。》
流暢な英語に驚き、俺はお父さんをじっと見てしまった。
《英語ができることが不思議かい?》
その言葉に日本語で返すべきか英語で返すべきか悩んでると、お父さんは笑いながら言った。
「ははっ、とりあえず乾杯でもしようか。」
日本語に戻ったお父さん。
それと同時に冷えたビールが二つ、俺たちの前に置かれた。
「じゃ、ようこそキリバスへ。」
「・・・いただきます。」
グラスを合わせ、ぐぃっとビールを胃に流し込んだ。
「!!・・・うまっ!」
長いフライトで疲れた体に冷えたビールは格別だった。
思わず一気飲みしてしまいそうになるのをぐっと堪え、グラスをカウンターに置く。
「ハルからいろんな話は聞いてるんだけど・・出会ったときからのことを聞かせてもらってもいいかな?なんせ普段も会うことが滅多にないから・・・。」
ハルのご両親が海外に出てそろそろ4年くらいになる。
お互いの状況はメールや電話で話すこともあるらしいけど、それも滅多にないとハルは教えてくれていた。
大事な娘の近況は気になるところだろう。
「喜んで。じゃあ初めに花屋で出会った時からーーーーー」
俺はハルに出会った経緯から話し始めた。
ハルに一目惚れしたことや、毎週のように花を買いに通ったこと。
それに一人で重たいものを持っていたときに遭遇したことや、ハルが『華道家』であることを教えてくれたことも・・・。
火事や事件のことを話した時は怒りや悲しみも混じった表情をしていたけど、お父さんは笑顔で聞いてくれ、時に笑いを堪えてる場面もあるくらい話をきちんと聞いてくれた。
「そうかそうか。ハルが幸せそうでよかったよ。」
満足そうに言ってくれたお父さんに、俺は姿勢を正して向き直った。
両手を膝上に乗せる。
「お父さん・・とお呼びしていいのか分かりませんが、彼女と結婚したいと言ったら・・許していただけますでしょうか。」
今回キリバスまで来た目的は、移住先を探すことの他にハルをご両親に合わせることもあった。
滅多に会えなさそうだからせっかくだと思ったけど・・・もう一つ目的があったのだ。
それは『結婚』のことだ。
ハル自身にはまだ伝えてないけど、海外に移住するとなれば結婚してから行きたい。
夫婦となって、新たな生活を新しい場所で始めたいのだ。
「結婚は当人同士で考えるものだよ。親の意見もあるだろうけど、ハルはもう成人してる。それにあの子は精神面でかなり大人だし、それなりに稼いでもいる。」
「そうですね・・。」
稼ぎに関しては、『悠春』の収入がかなりすごいことを前に教えてもらったことがあった。
何件もこの仕事を受けたら、俺の年収くらいすぐに超えてしまいそうな金額に、俺はかなり驚いたものだ。
「事件のこともあったし、そろそろ『悠春』は引退したほうがいいんじゃないかな。」
「・・・。」
そう言ったお父さんに、俺は何も言えなかった。
ハルは『悠春』の活動が嫌になったわけではない。
むしろ喜んでしてることなのに、事件の影響を考えたらもう辞めるのが最善の策になってきてしまってるのだ。
それはハルも薄々わかってることだろうけど、口に出さないし俺も言わなかったのだ。
「それは・・・ハルに委ねたいと思います。周りが決めることではないと思いますので・・。」
「そうだね。あの子がどう決めても・・・側にいてくれたら嬉しく思うよ。」
お父さんは手に持っていたビールをカウンターに置いた。
中身は一滴も減ってない。
「娘を・・・ハルを末永くお願いします。」
そう言ってお父さんは頭を深く下げてくれた。
俺ももう一度姿勢を正し、頭を下げる。
「一生をかけて幸せにします。」
「ははっ。こんなとこまで来るぐらいだから幸せにしてくれると思ってるよ。年収も問題ないだろうしね、都築代表?」
「いえ・・まだまだです。」
「謙遜しなくても。」
お父さんはカウンターに置いたビールを取り、ぐぃっと胃に流し込んだ。
そして半分ほど残してカウンターに置き、席から立ち上がる。
「そろそろ酔うから部屋に戻るよ。ここは海がきれいだからゆっくり散策するといい。」
「ありがとうございます。お気をつけて。」
ホテルに戻っていくお父さんの背中を見送り、俺はポケットから財布を取り出した。
《いくら?》
そう店員に聞くと、店員は首を横に振った。
《こっちに座ってた人がもう払ってますよ。》
《え?あー・・・ありがとう。》
お父さんに出してもらってしまったことを後悔しながら、俺はグラスのビールを全て飲み干した。
ハルのお母さんが俺に向けて言った。
その言葉を聞いて、俺はまた頭を深く下げる。
「・・・一生大切に守ります。幸せにします。」
「ハルがいい人に巡り合えてよかったわ。」
そう言って、ハルのお母さんは行ってしまった。
(まぁ・・こんなとこまでついて来る男だから『結婚相手』と見てもらえるよな。)
お母さんから許し?を得た後はお父さんだ。
どの時代もお父さんからの許しは難しいものだ。
(『ダメだ』とか言われたらどうしよう・・・。)
不安に思いながらも俺はハルを追いかけてホテルの中に入った。
チェックインを済ませ、部屋に荷物を運んでから二人で外に出る。
「ハルはお母さんと出掛けるだろ?小遣い足りる?」
ここに来る前に両替を済ませておいた豪ドルを財布から取り出す。
「私も両替してあるから大丈夫っ、この旅行の代金も帰ってから・・・」
『支払う』というつもりのハルの言葉を遮るようにして言った。
「払わなくていいよ。」
「でも・・・・」
「とりあえず今はお母さんと一緒に楽しんできな?俺はお父さんと一緒にちょっと飲んでくる。」
そう言ってお父さんが待ってるであろうバーを指差した。
「!!・・・ふふっ、お父さん、お酒弱いから気をつけてねー。」
ハルは手を振って俺から離れていった。
すぐ向こうで待ってるお母さんを呼びながら駆けていく。
「さて・・決戦と行きますか。」
俺は気合を入れ、ハルのお父さんが待ってるバーの中に入った。
カウンター席の奥のほうに、ハルのお父さんの姿がある。
「お待たせしてすみません。」
そう声をかけると、お父さんは隣の席をぽんぽんっと叩いた。
「失礼します。」
叩かれた席に座ると、お父さんは店員に声をかけた。
《ビール二つ。》
流暢な英語に驚き、俺はお父さんをじっと見てしまった。
《英語ができることが不思議かい?》
その言葉に日本語で返すべきか英語で返すべきか悩んでると、お父さんは笑いながら言った。
「ははっ、とりあえず乾杯でもしようか。」
日本語に戻ったお父さん。
それと同時に冷えたビールが二つ、俺たちの前に置かれた。
「じゃ、ようこそキリバスへ。」
「・・・いただきます。」
グラスを合わせ、ぐぃっとビールを胃に流し込んだ。
「!!・・・うまっ!」
長いフライトで疲れた体に冷えたビールは格別だった。
思わず一気飲みしてしまいそうになるのをぐっと堪え、グラスをカウンターに置く。
「ハルからいろんな話は聞いてるんだけど・・出会ったときからのことを聞かせてもらってもいいかな?なんせ普段も会うことが滅多にないから・・・。」
ハルのご両親が海外に出てそろそろ4年くらいになる。
お互いの状況はメールや電話で話すこともあるらしいけど、それも滅多にないとハルは教えてくれていた。
大事な娘の近況は気になるところだろう。
「喜んで。じゃあ初めに花屋で出会った時からーーーーー」
俺はハルに出会った経緯から話し始めた。
ハルに一目惚れしたことや、毎週のように花を買いに通ったこと。
それに一人で重たいものを持っていたときに遭遇したことや、ハルが『華道家』であることを教えてくれたことも・・・。
火事や事件のことを話した時は怒りや悲しみも混じった表情をしていたけど、お父さんは笑顔で聞いてくれ、時に笑いを堪えてる場面もあるくらい話をきちんと聞いてくれた。
「そうかそうか。ハルが幸せそうでよかったよ。」
満足そうに言ってくれたお父さんに、俺は姿勢を正して向き直った。
両手を膝上に乗せる。
「お父さん・・とお呼びしていいのか分かりませんが、彼女と結婚したいと言ったら・・許していただけますでしょうか。」
今回キリバスまで来た目的は、移住先を探すことの他にハルをご両親に合わせることもあった。
滅多に会えなさそうだからせっかくだと思ったけど・・・もう一つ目的があったのだ。
それは『結婚』のことだ。
ハル自身にはまだ伝えてないけど、海外に移住するとなれば結婚してから行きたい。
夫婦となって、新たな生活を新しい場所で始めたいのだ。
「結婚は当人同士で考えるものだよ。親の意見もあるだろうけど、ハルはもう成人してる。それにあの子は精神面でかなり大人だし、それなりに稼いでもいる。」
「そうですね・・。」
稼ぎに関しては、『悠春』の収入がかなりすごいことを前に教えてもらったことがあった。
何件もこの仕事を受けたら、俺の年収くらいすぐに超えてしまいそうな金額に、俺はかなり驚いたものだ。
「事件のこともあったし、そろそろ『悠春』は引退したほうがいいんじゃないかな。」
「・・・。」
そう言ったお父さんに、俺は何も言えなかった。
ハルは『悠春』の活動が嫌になったわけではない。
むしろ喜んでしてることなのに、事件の影響を考えたらもう辞めるのが最善の策になってきてしまってるのだ。
それはハルも薄々わかってることだろうけど、口に出さないし俺も言わなかったのだ。
「それは・・・ハルに委ねたいと思います。周りが決めることではないと思いますので・・。」
「そうだね。あの子がどう決めても・・・側にいてくれたら嬉しく思うよ。」
お父さんは手に持っていたビールをカウンターに置いた。
中身は一滴も減ってない。
「娘を・・・ハルを末永くお願いします。」
そう言ってお父さんは頭を深く下げてくれた。
俺ももう一度姿勢を正し、頭を下げる。
「一生をかけて幸せにします。」
「ははっ。こんなとこまで来るぐらいだから幸せにしてくれると思ってるよ。年収も問題ないだろうしね、都築代表?」
「いえ・・まだまだです。」
「謙遜しなくても。」
お父さんはカウンターに置いたビールを取り、ぐぃっと胃に流し込んだ。
そして半分ほど残してカウンターに置き、席から立ち上がる。
「そろそろ酔うから部屋に戻るよ。ここは海がきれいだからゆっくり散策するといい。」
「ありがとうございます。お気をつけて。」
ホテルに戻っていくお父さんの背中を見送り、俺はポケットから財布を取り出した。
《いくら?》
そう店員に聞くと、店員は首を横に振った。
《こっちに座ってた人がもう払ってますよ。》
《え?あー・・・ありがとう。》
お父さんに出してもらってしまったことを後悔しながら、俺はグラスのビールを全て飲み干した。
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