溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

文字の大きさ
上 下
73 / 91

73

しおりを挟む
「え!?」

「は!?」


俺の言葉に二人は口をぽかんと開けて驚いていた。

兄妹だからか、その姿がよく似てる。


「おそらくあの犯人は服役することになる。数年で出所してくるだろうけど、ハルが国内にいればどうにかして探し当てるかもしれない。でもそれが海外になれば・・・」

「!!」

「!!」


ハルもお兄さんも俺の考えを理解してくれたのか、驚きながらも表情が明るくなった。


「海外移住が可能かどうか、2~3年くらいかけて世界にでてみない?」


本格的に移住するならしなくてはいけない用意が山ほどある。

国もすぐに決めれるものじゃないし、ハルの仕事の需要もある。

その調査や治安、そのほかもろもろ調べないといけないことがあるのだ。


「わ・・私は仕事をほとんどしてないから大丈夫だけど・・・涼さん、仕事・・・」

「俺は大丈夫。ネットさえあればどこでも仕事はできるし。・・・それに実は事業を拡大しようかと思ってて。」

「え!?」


更に驚くハルに俺は自分ができる最大限の笑顔を見せた。


「あいつがハルを探しに来るんなら、あいつが探せないところに逃げちゃえばいいんだよ。」


そう軽く言うと、ハルはぽかんと口を開けたあと、くすくすと笑い始めた。


「ふふっ、そんな考え方があったんだね。」

「『どうやって隠れるか』じゃなくて『探せない場所に行けばいい』んだよ。」


そう伝えると、ハルはしばらく笑っていたけど、何かを思い出したのかその表情が曇った。

その瞬間を、俺とお兄さんは見逃さない。


「ハル、他に何かあるんだな?」


そうお兄さんが聞いたあと、ハルは諦めたように笑いながら答えた。


「ちょっと・・・人の顔がすぐそばに来るのが怖くて・・・。」


ハルはここ最近のことを話してくれた。

誰かに覗き込まれたりすると息がしにくくなることを。


(それで最近青ざめてるときがあったのか・・。)


毎日何かしら表情が強張ってるときがあったけど、その理由を今知ることができた。

俺は知らないうちにハルの恐怖心を煽っていたのだ。


「一種のトラウマだな。」


お兄さんがそう言ったあとハルは首を傾げながら聞いた。


「トラウマ・・?」

「心的外傷な。主な原因は身に危険を感じるような出来事。フラッシュバックしたり、急に何もかもが怖くなったりする。」

「そう・・なんだ・・・。」

「すぐに治る人もいるにはいるけど・・・まぁ、ハルの場合は環境を変えるのがいいかもな。犯人が出てきたら不安にかられるだろう。」


病気の治療法に関して俺は素人でわからないけど、お兄さんの言うことがハルには合ってそうだと俺も思った。

なら、『海外移住』はハルにとってプラスなことが増えるかもしれない。


「ハル、海外に行こう。」

「海外・・・。」

「向こうで住めば、あいつに会うことはもう無いだろう。安心も出来て、気分転換もできて・・・多分、華道家の仕事ができる。」


そう言うとハルは驚きながら俺を見た。


「『華道家の仕事が増える』?」

「うん、日本の文化って海外の需要が結構あるんだよ。本場のものとなればさらに需要は見込める。体調を考えながら仕事をするのもいいと思うよ?」


ハルは俺の言葉に少し視線を下げて悩み始めた。


「ま、それは追々でいいし・・・。とりあえず海外移住で話を進めてみない?無理そうだと判断したらまた考えればいい。」


できれば海外移住が一番いいと思ってるけど、国内にとどまるなら俺が持ってるツテを全て使ってハルを守る。

あとはハルの気持ち次第だ。


「今日はどうする?念の為に泊って行くか?」


話の大筋が決まったからか、お兄さんはまたパソコンを操作しながらハルに聞いた。


「帰る。」

「わかった。・・・薬、出してやろうか?睡眠の類のものしか出せれないけど。」


ハルはその言葉を聞いて、首を横に振った。


「いらないのか?まぁ、欲しくなったらいつでも出してやるから来いよ?」

「うん、ありがと。・・・じゃあ帰るね。」


椅子から立ち上がったハルの腰元を支え、俺はお兄さんに頭を下げた。


「・・・こんな形でお会いすることになってすみません。今度正式にご挨拶させていただきます。」


そう伝えるとお兄さんは一枚の名刺を俺に見せるように手に持った。

あれは・・・俺の名刺だ。


「この一枚でだいたいわかりますよ。妹のこともよく考えてくれてるようですし。」

「それでも必ずご挨拶に伺います。」

「・・・病院に事前連絡くださいね。」

「わかりました。ありがとうございます。」


もう一度頭を下げ、俺とハルは病院をあとにした。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

処理中です...