溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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ハルとオムライスを食べに行った日から5日が経った。

深夜1時の今、ハルは俺の隣ですぅすぅ寝息を立てて寝てる。

あの日からハルは明るさを取り戻し、前と変わらないような雰囲気で過ごしていた。

朝は一緒にご飯を作り、他愛ない話をしながら食べる。

仕事を休んだままにしてるハルは、俺が仕事に行くのを笑顔で見送ってくれ、昼を食べに帰ると一緒に食べてくれる。

俺の仕事の話を聞いてくれ、また見送ってくれて・・・夜に笑顔で出迎えてくれる。

それはあの事件の前と変わらないハルだったけど・・・一つ気になることができていたのだ。


(覗き込むとハルの顔が真っ青になるんだよな・・・。)


あの事件以来、ハルは顔を近づけると、ぴたっと動きが止まるのだ。

そして顔から血の気が引いて行き、俯く。

1分もしないうちにいつも通り笑ってはくれるけど、顔色は悪いままなのだ。


(辛いことは言ってくれたらいいのに・・・。)


ハルの性格上、言わずに自分でなんとかしようとしてることはわかっていた。

どうしようか悩みながら数日が経ってしまってる。


(時間が解決してくれるものなのか・・それとも早い対処がいいのか・・・。)


悩みながら、ベッドで眠ってるハルを背中側からぎゅっと抱きしめた。


(抱きたいけど・・・今の状態のハルを抱くわけにいかないしな・・・。)


せめてハルが安心してくれたらと思いながら、俺はハルを抱きしめて眠りについた。




ーーーーー




翌日。


「涼さん、今日ちょっと病院行ってきていい?そろそろ兄のところにいかないといけない時期が来てて・・・。」


一緒に朝食を食べてると、ハルが言いだした。

年に一回か二回、医者をしてるお兄さんのところで診察を受けてると教えてくれていたことを思い出し、俺は二つ返事をする。


「うんうん、行っといで?車、用意しとくし。・・・あ、警備にも連絡しとくから。」


そう言ってハルの外出に万全を期すためにスマホを手に取ると、ハルは笑いながら言った。


「いらない、いらない・・!電車で行くよ。」

「でも・・・」

「大丈夫。慣れてるから。」


そう言いきられ、仕方なく俺は了承することにした。

行き先にお兄さんがいることがまだ安心できることだったから。


「俺の名刺、持って行ってくれる?『今度ご挨拶に伺わせていただきます』って伝えて欲しい。」


名刺入れから名刺を一枚取り出し、ハルに手渡した。

するとハルは俺の名刺をまじまじと見つめてる。


「どした?」

「あのね?この名刺、もう一枚もらってもいい?」


そう聞いてくるハルに、俺はもう一枚取り出してハルに手渡した。


「はい、どうぞ。」

「へへっ、ありがとう。」


嬉しそうに受け取ったハル。

あまりの喜びように、『何に使うのか』聞いてみることにした。


「誰かに渡すの?」


そう聞くとハルは思いもよらない言葉を言った。


「え?ううん?誰にも渡さないよ?」

「え?じゃあなんで・・・」

「涼さんの名刺、私が持っていたいの。・・へへっ。」

「!!」


あまりにもかわいい理由に、理性が吹っ飛びそうになる。


(あぶな・・襲うとこだった・・・。)


それを抑え込みながらハルの頭を撫でた。


「なんかあったらすぐ電話な?」

「うんっ。」


そう伝え、俺とハルは朝食を食べたあと、一緒に出ることにした。

今日は土曜日だから病院は午前診療しかないらしく、ハルも早くに出るらしい。

お互いに支度を済ませてエレベーターに乗り込む。


「帰りは何時くらいになりそう?」


ハルの帰宅に合わせて仕事を終わらせようかと思いながら聞いた。


「うーん・・・ちょっとわかないかな。混んでなかったら午前で帰ってこれると思うし、混んでたらお昼回るだろうし・・・。」

「まぁ、そうだよな。明日が日曜日だから今日病院にって考えてる人もいるだろうし・・。まぁ、終わったらメールか電話して?近くにいたら迎えに行くから。」

「うん。ありがと。」


そんな話をしてるうちにエレベーターは俺の仕事場の階に止まった。

降りる間際にハルの唇に自分の唇を重ねる。


「んっ・・。」

「いってらっしゃい、気をつけてな。」

「・・・それは私のセリフだよ・・。」


顔を赤くするハルに手を振り、俺はエレベーターから下りた。


「今日もお仕事がんばってね。いってらっしゃい。」


閉まる直前に言ったハルの言葉に手を振り、言われた言葉通り、俺は仕事に励みに行った。



ーーーーー



「さてと。」


涼さんを見送ったあと、私は駅に向かった。

兄の病院に向かうために。


「ここからだったら・・・30分くらいで着くかな?」


ほぼ一週間ぶりくらいの一人の外出に、ドキドキしながら歩く。


「・・・先週か。」


4年ぶりに再会したストーカーは、逮捕されたことを涼さんから聞いていた。

裁判にかけられるけど、おそらく実刑になるだろうとのことだ。

あの日、私を仕事部屋から連れ出したスタッフリーダーも警察に捕まっていた。

彼女は、私を排除したかったらしく、利害が一致したストーカーと結託したんだと話してるらしい。

二人の出会いは仕事場の休憩所だったらしく、ぶつぶつ文句を言ってたスタッフリーダーに、ストーカーが近づいて話を持ち掛けたと聞いた。


(ほんと怖い・・・。)


私のケガは大したことなくて、もう傷口も塞がっていた。

あと何日かしたら瘡蓋も取れて元通りになるだろう。

問題は・・・


(・・・いつ社会に戻ってくるか・・・だよね。)


去り際に言われた言葉は頭から離れることはないだろう。

この先ずっと・・・私はストーカーのことを考えながら生きて行かなくちゃならない。

ある意味ストーカーにとっては万々歳なことかもしれない。


(はぁ・・・お兄ちゃんに相談してみようかなぁ・・・。)


そんなことを考えながら、私は駅に着き、電車に乗り込んだ。






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