溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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オムライス屋の中は、カントリー調な造りになってる。

外観もカントリー調で、女性受けのよさそうな店だ。

優しい色合いの木に囲まれ、店の真ん中に大きな薪ストーブが鎮座してる。

その薪ストーブを囲むように大きなテーブルがあって、二人掛けの長椅子が置かれていた。

梁からランプが吊り下げられていて、店の中にあるテーブルを照らしてる。

窓には薄いレースのカーテンが半分ほどかかってるのが見えた。


「すごくかわいい・・・。」

「気に入った?座って注文しようか。」


天井まで見上げてるハルの背中を軽く支えながら歩いて行き、店の奥にあるテーブルについた。

すぐに店員が水を持って来てくれ、メニューをテーブルに置く。


「いらっしゃいませ、決まりましたらお呼びください。」


そう言ってキッチンのほうに戻って行った。

俺はメニューをハルに向けた。


「どれがいい?」


メニューには写真は載ってない。

文字と、その金額のみしか書かれてないのだ。


「うーん・・・デミグラスソースオムライスがいいな。」

「じゃ、俺はホワイトソース。」


決まったところで店員を呼んだ。


「すみません。」


手を挙げて呼ぶと、店員はすぐに来てくれた。

ポケットから伝票を取り出して、ペンを握ってる。


「お決まりでしょうか?」

「はい、デミグラスソースと、ホワイトソースで。」

「かしこまりました。薔薇とドレス、どちらになさいますか?」


その言葉を聞いたハルは驚きながら俺と店員を交互に見ていた。


「えっ・・?え??」

「ハルはどっちがいい?」


その言葉の意味を知ってる俺は笑いながらハルに聞いた。

ハルは言葉の意味がわからないまま、二択の一つを答える。


「え・・・?ば・・薔薇・・?」

「オーケー。デミグラスソースが薔薇で、ホワイトソースはドレスでお願いします。」


そう店員に伝えた。


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」


キッチンのほうに戻って行く店員の背中と俺を何度も交互に見てるハル。

その姿がかわいくて・・・俺は笑いを堪えるのに必死だった。


「え??え・・涼さん、今の何?薔薇とドレスってなに??」

「まぁ、待てばわかるよ。」


笑いながらそう答えたけど、ハルは頭の上に『?』がずっとある状態だった。

話題を変えようと話を振るけど、さっきの店員の言葉が気になって仕方ないらしく、キッチンを何度も見てる。


(あー、もう、ほんとにかわいいな。)


しばらく待つと、店員がやってきた。

手には二つのオムライスがある。


「お待たせいたしました、こちら、バラのデミグラスソースオムライスです。」


そう言ってハルの前に置かれた皿には、まとめられたバターライスの上に卵で作られた薔薇が乗っていた。


「・・・えぇ!?すごい!!」


周りにデミグラスソースがかかっていて、黄色い卵がよく映えてる。


「こちら、ドレス・ド・オムライスのホワイトソースです。」


俺の前に置かれた皿は卵がドレープ状になっていた。

ふわふわと優雅にかぶせられた卵はまるで『ドレス』だ。


「うわぁ・・!涼さんのもすごい・・!」

「ごゆっくりどうぞー。」


店員が戻って行ったあと、ハルは皿を交互に何度も見ていた。

目を輝かせて見てる姿は子供みたいだ。


「調子悪そうだったけど・・食べれそう?」


そう聞くとハルのお腹が鳴る音が聞こえて来た。


「~~~~っ。」

「ははっ、イケそうだな。じゃあ・・温かいうちに食べようか。」


ハルにスプーンを渡し、俺たちは食べ始めた。

一口分、スプーンに乗せて口に運ぶと、ハルはスプーンを持ったまま皿をいろんな角度から見ていた。

どこから食べるのか悩んでそうだ。


「うーん・・・きれいすぎて崩したくない・・・。」

「ははっ、いつでも連れてきてあげるよ、だから食べな?」

「うーん・・・。」


ハルは悩みながらもスプーンを大きく入れて、オムライスを口に運んだ。

大きな口でぱくっと食べたあと、また一層ハルは目を輝かせた。


「ふぁぁ・・!おいしいっ・・!」

「よかった。ここのメニュー全制覇するまで通おうか。」


ハル笑顔が良すぎてそう言うと、ハルは首を縦に振った。

嬉しそうな顔をして何度も振る姿に笑いながら俺はまたスプーンを口に運んだ。

ハルもスプーンを口に運びながら、クスクスと笑ってる。


(楽しい時間をたくさん過ごせば・・・昨日のことも薄れていくよな・・?)


俺ができることなんて、たかがしれてる。

でも出来ることもあるハズだ。


(今度旅行でも誘おうかな。)


そんなことを色々考えながら、俺はオムライスを口に運んだ。





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