溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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俺の腕の中にいたハルの体重が急に重くなった。

どうしたのかと思って覗き込むと、意識を失ったようだった。

殺されるかもしれない恐怖からの解放で気が緩んだのか、それともあのストーカーの言葉に恐怖を覚えたのかどちらかだろう。


「とりあえず病院に連れて行きますので、今日のところは失礼します。」


そう言ってこの場を去ろうとしたとき、ハルの昔の職場の人が申し訳なさそうに頭を下げた。


「・・こんなことになってしまってすみません・・・。」

「あなたのせいではないですよ、では。」


俺も軽く頭を下げ、ハルを連れて通路を歩き始めた。

途中で貫地谷グループの代表に会ったけど、『あとで連絡します。』とだけ伝えて俺は病院に向かった。

今はハルが最優先だ。


「怖かったな・・ハル。ごめんな、早くにあいつを捕まえられなくて・・。」


深くはないハルの腕の傷をハンカチで押さえながら、俺は車に乗り込んだ。




ーーーーー



ーーーーー



翌日。

病院で目を覚ましたハルを連れて家に戻って来た俺は、ハルをソファーに座らせた。

目が覚めた時からぼーっとしてるハルは、言葉数も少なく、表情もあまりない。

そんなハルを心配するものの、どう声をかけるのが正解なのかわからずに何も言えないでいた。


「ハル、何か飲む?」

「・・・ううん、だいじょうぶ。」

「そっか・・。」


『大丈夫』と言われても気になる俺はキッチンに向かった。

甘い物がいいかと思ってホットココアを用意してみる。

湯気の立つホットココアにマシュマロを二つ浮かべ、ハルの前にあるテーブルに置いた。


「ハル、昨日のことは事件としてニュースになってる。ハルの名前は出てないから安心して?あと、花屋には連絡しといたよ。無期限で休むって伝えてあるから・・・ゆっくり休みな?」

「・・・うん。」


ぼーっと前を見ながら返事をするハルは、心ここにあらずって感じだ。

俺が言ったことが理解できてるか心配になる。


「ハル、俺、外せない仕事あるから・・・ちょっと行ってくる。すぐ戻ってくるから・・・いい子で寝てろよ?」

「うん。」

「・・・。」


素直に返事をするハルに不安を覚えながら、俺は家を出ようとハルに背を向けた。

その時・・・


「涼さん、ありがとう。」


ふり返ると、ハルは俺を見ながら微かに微笑んでいた。


「!!・・・どういたしまして。すぐ戻ってくるから待ってて?」

「うん。」


そう言って俺は家を出た。

急ぎ気味に仕事を終わらせ、5時間後に家に戻るとソファーで寝息を立ててるハルの姿があった。

テーブルに置いてあったココアは半分ほど無くなってる。


「飲んだのか。よかった。」


ふと家の時計を見ると19時を指していた。

もう晩御飯の時間だ。

いつもはハルがご飯を作ってくれていたけど、しばらくは無理だろう。

明日から俺が作るとして、今日はとりあえず外食を提案しようと思った。


「ハル?起きれる?ご飯行かない?」


そう言って肩を軽く揺さぶりながら顔を覗き込む。

するとハルは目を薄っすら開けて俺を見た。


「---っ!」

「ハル?」


俺と目があった瞬間、ハルは顔を一気に青くした。

血の気が引いて行くような表情に、何かあったのかと驚いた。


「どした?なんかあった?」


そう聞くとハルはゆっくり体を起こした。

俯きながらケガをした腕をぎゅっと押さえてる。


「だ・・大丈夫・・。」

「ほんとに?」


俺は隣に座り、ハルの身体を抱き寄せた。

そのまま腕や背中をゆっくり擦っていく。


「大丈夫・・・、お帰り・・涼さん。」

「うん。」


怖がるようにして身を縮めるハル。

何度か擦ってるうちに落ち着いたのか、強張っていた身体の力は抜けていった。

その様子を見ながらハルの体調が気になって仕方ない。


(やっぱ体調が悪そうだな・・。すぐに回復するようなものでもないだろうけど・・。)


どうすべきか考えながらハルの身体を抱きしめると、ハルは思い出したかのように言った。


「あ、ご飯・・・。」

「食べに行こうよ。何が食べたい?」

「うーん・・・。」


こうやって悩む姿はいつものハルだ。

ただ、身体に元気がないだけで・・・。


「オムライス・・かな?」

「お、いいな。おいしいとこあるから行こうよ。きっと驚くよ?」

「お・・驚くオムライス・・・?」

「きっと気に入るよ。ほら、行こう?」


俺はハルの身体を起こし、手を引いて立ち上がらせた。

軽く支度を済ませて家を出る。


「驚く・・・?」


ハルは悩みながら車に乗り込んだ。

車を走らせてる間もハルは悩んでいて、その様子は依然と変わらないように見えた。


(しばらくは浮き沈みも激しいかもな・・。)


さっきの様子を思い出しながら10分程車を走らせると、目的の店が見えて来た。

この店は家の近くにあるオムライス屋で、小さい店だけど一風変わったオムライスを提供してる店だ。

見た目も驚きがあり、味もいい。

きっとハルも驚くだろうと思いながら、駐車場に車を止めた。


「どうぞ?」


そういって車のドアを開けてハルの手を取る。

一緒に店の中に入ると、ハルは目を輝かせながら中を見まわした。


「うわぁ・・・。」




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