溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「ねぇ、涼さん?」


私に警備の人をつけてもらってから1カ月が経った金曜日。

出勤前の朝に、ご飯を食べながら私は涼さんに問いかけた。


「どした?」

「そろそろ警備の人・・・やめてもいいんじゃない・・・?」


この1カ月、特に何もなかったことから私は『自由』を提案した。

お店までの行き帰りはもちろん、お客さまの中にも怪しそうな人はいなかったのだ。


「警備は外す気ないよ。」


涼さんは、アスパラとベーコンを乗せたトーストを頬張りながらそう言った。


「でも・・警備員さんって結構お金かかる・・・」


一人つけてもらうだけでも結構な金額がかかりそうなものなのに、涼さんは私に3人もつけてくれてるのだ。


「それなりにかかるけど、外してハルに何かある方が俺は嫌だし。」

「うーん・・・。」


申し訳ない気持ちになりながらトーストを口に運んだ時、私のスマホが鳴り出した。


「?・・・あ、電話だ。」


口に入れたトーストを急いで飲み込み、私は電話に出た。


「もしもし?」

『朝早くに申し訳ありません、秋篠さまのお電話でしょうか。』

「そうです。」

『お住まいだったマンションの管理をしてる会社の事務担当の者です。火事の後の建物の修繕についてご連絡致しました。』


電話の相手はマンションの関係者だった。

一度、荷物を取りにマンションに帰ってから連絡はなかったのだ。


「どうなりました?」

『それが・・・』


事務の人は申し訳なさそうに話し始めた。


『申し訳ございません、消防や建築士、市の方たちと色々検証いたしまして、修繕はできないと判断いたしました。』

「・・・へ?」

『火事による損傷が思いのほか激しく、修繕はできないのです。』

「え、じゃあどうなるんですか?」

『つきましては、一度建物自体を取り壊し、また新たに立て直す所存にございます。』

「・・・え!?」

『現住民さまにおかれましては、再建築後、同じお部屋を確約いたします。契約の住人さまには毎月のお部屋使用料から1万円お値引きさせていただきます。購入の住人さまは、総支払額からのお値引きのご案内をさせていただきます。』


つまり、更地に戻してからもう一度立て直す代わりに、割り引いてくれるって話だ。

それはそれで構わないのだけど、一つ気になることがあった。


「あの・・入居までどれくらいかかるんでしょうか・・・。」


そう聞くと事務の人はとんでもない数字を言ってきた。


『そうですね・・・およそ24カ月くらいかと・・・。』

「!?・・・2年!?」

『はい・・・。一日でも早く入居していただけるように努力いたします。それでご相談なのですが・・・お家の中で必要なものがありましたら早急に取りにきていただけませんか。数日中に消防の方に連絡して中に入れるようにいたしますので・・・』

「必要なもの・・・」


私は頭の中で家にあるものを思い返した。

ソファーやテーブルなどの大きなものは持って出ることはできない。

家電なんかきっともう使い物にはならないだろう。

小物に関しては、特に思い入れもないので取りに行く必要もなさそうだ。


(観葉植物はもうだめだろうし・・・。)


薬剤のかかった植物はすべて生き返らせることはできない。

できれば全部の植物たちを連れ出したいところだけど、無理そうだった。


「・・・いえ、必要なものはないので・・そのまま処分してください。」

『よろしいんですか?』

「はい・・・。」

『わかりました。ご連絡は以上になります。また何かご不明なことがありましたらお気軽にお電話ください。失礼いたします。』

「失礼いたします・・・。」


電話を切った後、呆然とスマホを見つめてると涼さんが口を開いた。


「話、ちょっと聞こえてたけど・・・マンション取り壊すの?」

「あ・・うん。なんか修繕ができないらしくて・・・安全上?」


私は今あった電話の内容を涼さんに伝えた。

涼さんは『手放したくない物があるなら取りに行きな?俺も手伝うから。』と言ってくれたけど、もう2カ月もここで暮らしてるからか特に手離したいものは思いつかなかったのだ。


「でも・・2年もかかるのかー・・・ちょっと住むところ、他を考えようかなぁ・・・」


いつまでも涼さんの家にご厄介になるわけにはいかない。

預金の金額も考慮しながら別のマンションを探そうかとも思い始めていた。

今のマンションは見晴らしもよくて警備もしっかりしてて好きだったけど、さすがに2年は待てなさそうだ。


「まぁ、ゆっくり考えたら?俺は何年でもここに住んでもらってていいよ?」

「いやいやいや、さすがにそれは申し訳ないよ・・・。」


そんな話をしてるうちに仕事に行く時間が迫って来た。

残っていたパンたちを口に入れ、食器を下げる。


「俺、今日まだ時間あるから洗っとくよ。ハルは仕事行きな?」

「そう?ありがとう。・・・じゃあ行ってきまーす。」

「いってらっしゃい。」



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