溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「・・・え?」


涼さんが何を言ったのか理解できなかった私は、ただ涼さんの顔を見ていた。

そんな私を置いて、涼さんは話し続ける。


「ハルがストーカー被害に遭ったって話を聞いてから、人に頼んで犯人を探ってもらったんだよ。」


涼さんの話によると、私が涼さんにストーカーの話をしたときから探偵のような職業の人に犯人捜しを依頼していたらしい。

私が襲われた最初こそは警察も躍起になって犯人探しをしてくれていたけど、事件は風化していくもの。

徐々に操作人数も減っていき、最近では捜査がされてるのかさえ怪しい所だった。


「ハルにケガまで負わせた犯人が捕まってないとか、不安だったろ?」

「それは・・不安だったけど・・・」


「確かに『また襲われたら』という不安はあった。

その不安を解消するために引っ越してきて、細々と生活をしてきたのだ。


「犯人が捕まりさえすればそんな不安は無くなる。だからと思って調べてもらってたんだけど・・・まさかなところで繋がったんだよ。」

「それが・・・火事?」

「そう。」


ストーカー犯を探し当てた探偵のような職業の人は、犯人を見つけた後もその動向を見ていたらしく、マンションの放火犯に辿り着いてしまった。

同一人物ということから、おそらく『私を』狙った犯行だったのではないかと、ついさっき連絡が入ったらしいのだ。


「それで慌てて電話してきてくれたの・・?」

「そう。何か変わったことなかった?変なやつに絡まれたりとか・・・」


そう聞かれ、私は首を傾けて考えた。

でも特に思い当たることはない。


「うーん・・・?」

「接触がなかったならそれでいいんだ。もう警察にも連絡してあるからすぐに捕まると思うし・・・。」


涼さんは私をぎゅっと抱きしめた。

その腕が微かに震えてるような気がして、私は涼さんの身体に手を回す。


「・・・ありがとう。」


そう言うと涼さんは私を抱きしめながら頭を撫でた。


「しばらく家から出ないほうがいい。仕事も休んで。・・・いいね?」


その言葉に、私は抱きついていた手を離した。

少し身体を離して、涼さんの顔をじっと見つめる。


「・・・仕事に迷惑はかけれない。」

「犯人が警察に捕まるまでだから。」

「でも・・・!」

「何かあってからじゃ遅いだろ・・!?」


涼さんの真剣な表情に、私は今の自分の状況を考えた。

私は今、住んでいたマンションが火事になって涼さんの家で暮らさせてもらってる。

そのマンションの火事の犯人は4年前のストーカーだった。

私が住んでると確信しての放火だったみたいだから、近くに犯人がいるかもしれない。

一人で外に出るとまた・・・4年前みたいに襲われるかもしれないのだ。

もしかしたら4年前よりも酷いことが起こるかもしれない。

そう考えたら家から一歩も出ないのが一番の安全策になる。

でも・・・新しい仕事が少し軌道に乗りそうなのも今だった。

ひょんなことから私のハーバリウムが注目され、悠春の作品が売れ出した。

涼さんの指導の下、頑張ってる真っ最中だ。

作るのも楽しければ、売れるのも楽しい。

そんな中で中断することは・・・死活問題かもしれないのだ。


「・・・・。」

「ハル、『家から出ない』って言って。」


半ば強引に言う涼さん。

私のことを考えてくれる彼の気持ちは嬉しかったけど・・・何もかも投げ出すなんてこと、私にはできそうにない。


「涼さん、私の為にたくさんしてくれてありがとう。・・危ないかもしれないこと、すごくわかるんだけど・・・自分の仕事は投げ出せない。」


真剣な涼さんの顔に、私も真剣な表情で答えた。

家から出ないほうがいいことくらい、頭ではちゃんとわかってる。

わかっていても気持ちと頭は一緒の考えをもたないことがあるのだ。


(もしかしたら、ここも狙われるかもしれないし・・・。)



私の住んでたマンションを見つけた犯人なら、今住んでるところも見つけてしまうかもしれない。

なら涼さんやこの会社の人たちが危険にさらされてしまうことになるのだ。


(私のせいで・・・)


また放火なんてされたら誰かがケガをするかもしれない。

ケガどころで済まないことになるかもしれない。

そう考えるとこれ以上私がここにいること自体がよくないことになる。


「涼さん・・私と・・・・」


『別れて欲しい』。

一大決心してそう言おうとしたとき、目から涙が溢れた。

一瞬で溜まった涙は留まることを知らないみたいで私の頬を伝り落ちていった。


「ハル?どうした?」


私の涙を手で拭いながら、涼さんは心配そうに覗き込んでくる。

申し訳ない気持ちと感謝の気持ちが入り混じる中で、私はちゃんと言葉になるように涙を堪えて言った。


「別れて・・・ください・・・」



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