溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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私が連の仕事場に間借りするようになって1カ月が経った。

平日は花屋での仕事。

土日のどっちかは連のところに来て仕事を手伝いながらハーバリウムの作成をしてる。

暑い季節も終わりにさしかかり、花たちの種類も移り変わっていた。

そんなある日の土曜日。

私は間借りさせてもらってる仕事場に来ていた。

できあがってるハーバリウムを持って帰るためだ。


「いくつ持って帰ろうかなー。」


初めてハーバリウムを売った日から、毎週土曜日にハーバリウムを出品してるけど、全て一瞬で売り切れてしまってるのだ。

もう涼さんの家に在庫が無い為、出来上がってる分は全て持って帰りたいところだ。


「明日も来るとして・・・今日は10個・・ううん、20個持って帰ろうかな。」


私は鞄からケースを取り出した。

涼さんの家から持って来たやつだ。

そこに、割れないようにハーバリウムを入れていく。

間に緩衝材も入れながら一つ一つ丁寧に収めていった。

20個収めたハーバリウムはケース3つ分。

それを全部カウンターテーブルに並べた。


「よし。あとで持って帰るとして・・今日は連のお手伝い無いのかな?」


今日の私の作業が終わったところで、私は作業部屋から出た。

連がいつも作業している部屋に向かおうと足を向けた時、正面から連が走ってくるのが見えた。


「ハルっ・・!」

「?・・・連?どしたの?」

「悪い!ちょっと手伝ってくれ!」

「え?なんかあったの?」


私は連の元に駆け寄り、事情を聴いた。

どうも山本さんの確認ミスで、結婚式が終わる時間がダブルブッキングしてしまったらしい。


「え!」

「それでスタッフリーダーが山本を責めまくってるんだけど手が足りない!圧倒的に手が足りないんだ!だから・・・!」

「するする!どう作るのかだけ教えて!」


私は連と一緒に作業場に向かいながら大まかなことを教えてもらった。

二組の挙式に使われた花はほぼ同じ花だけど、一組はミニブーケ85個。

もう一組はバスケットアレンジで50個だった。


「うわぁ・・・すごい数・・・。」

「時間は1時間だ。間に合わない数じゃないんだけど・・いかんせん山本が使い物にならない。あいつに責められて自信喪失してる。」

「え、そんなに?」

「あぁ、今日を乗り切ったらちょっと・・・話し合いの場でも設けるわ。」


そんな話をしてるうちに私たちは作業場に着いた。

足を踏み入れるとそこはなんともいえない空気感が漂っていた。


「あなたの確認ミスでしょ!?どうするの!?」


突然の大声に、私は身体ごと驚いた。

その声に視線を向けると、スタッフリーダーと山本さんがいたのだ。


「わ・・私が見た時は時間が重なっては・・・」

「言い訳はいいの!!みんな迷惑してるのよ!?」

「でっ・・でもっ・・・!」


そんなやり取りを見てると、連が手をパンパンっと叩いた。

その瞬間、全員が連に注目した。


「過ぎてしまったことを問いても仕方ない。とりあえず乗り切るぞ。助っ人呼んできたから間に合うだろう。」


そう連が言ったあとで、私は手を挙げた。


「何回かお手伝いにきてる者です。よろしくお願いします。」


見渡しながら頭を下げた時、ガラガラと音を立てて台車が数台やって来た。

その台車には花がたくさん乗ってる。


「来たぞー!みんな作業に入ってくれ!」


連の言葉に全員が『はい!』と答え、大きなテーブルに手際よく花たちを並べていき始めた。

スタッフリーダーの元を離れた山本さんも、肩を落としながらテーブルにある花を手に取り始めてる。


「ハル、悪いけど山本のフォロー頼んでいいか?」

「え?うん、大丈夫だけど・・・」

「俺はスタッフリーダーに話してくるから。」

「・・・わかった。」


連に言われ、私は花たちを手に取って山本さんが作業する台に向かった。

暗い顔をしながら手を動かす山本さんに、声をかける。


「今日お手伝いにきた秋篠です。よろしくお願いします。」


そう笑顔で言うと、山本さんは暗い表情を少し明るくしてくれた。


「あ・・いつも手伝ってくださってありがとうございます。」

「いえ。・・・よかったら今日はミニブーケじゃなくてバスケットのほうを先にしません?」

「え?」

「私、ずっと思ってたんですけど、山本さんはアレンジメントを仕上げるの速いと思うんですー。」

「でもアレンジメントはまだしたことがなくて・・・」

「じゃあ一緒にしましょ!取ってきますねー!」


私は山本さんの手元にあった花と、自分が取って来ていた花を手に持ってテーブルに戻した。

そしてアレンジメント用に置いてあるテーブルからフローラルフォームとバスケット、それに花をいくつか持って山本さんのもとに戻った。


「さ、始めましょ!」


私は山本さんに作り方を教えながら、猛スピードでアレンジを仕上げていった。

山本さんは呑み込みが早く、数回コツを教えただけで仕上げて行けるようになっていった。

思った通り、彼女はアレンジメントを作るほうが向いてる。


「お?すごいな山本。配色もきれいだし、ボリュームもある。」


連はミニブーケを作りながら私たちの作業を覗き込んできていた。


「ほんとですか!?嬉しい・・・。」


山本さんの表情が、ぱっと明るくなった。

さっきまでの暗い表情は無くなり、嬉しそうにバスケットを見つめてる。


(・・お花が好きじゃないとこの仕事は楽しめないよね。)


バスケットに入った花を指でちょん・・と触る山本さんを、私は嬉しい気持ちで見つめていた。

もちろん手は動かしたままで。


「さ、まだまだあるんで作っていきましょうか!」

「はいっ!」


私の声に、山本さんは花たちを取りに行った。

その姿を見送ってる時、ふとスタッフリーダーの姿が無いことに気がついた。


「あれ?・・・ねぇ、連?」

「どした?」

「あのスタッフリーダーの人は?」


そう聞くと連も手を動かしながら辺りを見回した。


「・・・いないな。」

「トイレとか?」

「まぁ、そうかもしれないけど今が一番忙しいときだ。こんな時にトイレいける勇気のあるやつはいないだろ。」

「そうだよねぇ・・・。」

「戻ってきたら聞くわ。お前も手を動かせよ?」

「!・・言われなくてもやってますよっ・・!」


そう言って私は自分の作業に集中した。

この後、作業が終わる終盤に戻って来たスタッフリーダーは連にこっぴどく叱られていた。

その間、俯くような姿勢を取っていたけど、目線はずっと私を睨みつけたままだった。


(・・・なんで私?)


なぜ睨まれてるのかよくわからないまま私はみんなに挨拶をし、その作業場をあとにした。

今日は出来上がったハーバリウムたちを持って帰って出品しなくてはならない。

写真も撮って、パソコンに転送して、それをアップロードして・・・と、しなきゃいけないことが盛りだくさんだ。


「今の時間が・・・17時20分。帰って晩御飯作ってから作業かな。」


予定を立てながら私は自分の作業部屋のドアを開けた。

カウンターテーブルにあるハーバリウムを持って帰ろうと視線を向けたその時、目を疑う光景がそこに広がっていた。


「・・・・え?」



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