溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「え?」


どういう意味かわからずに聞き返すと、涼さんは私の左腕をそっと掴んだ。


「いぃっ・・!」


電気が走ったみたいな痛みを腕に感じた私は思わず声を出してしまった。

歩いていた足を止め、痛みに耐える。


「風邪で休んでた分、取り戻そうとして無理してたんじゃない?」


私は涼さんの手から逃げるように身を捻った。

そのまま右手で左腕を擦る。


「ち・・違うよ、さっき攣ったの。着物を早着替えしたから・・・。」


涼さんの言う通り、二日も仕事を休んでた私はそれを挽回するためにいつも以上に働いていた。

夏美さんと一緒に働くことが多い私が休んだら、夏美さんに迷惑がかかる。

だからこの三日は早く帰ってもらえるようにと、頑張っていたのだ。

でも今日、夕方まで仕事をしてた上に着物を早着替えして花を生けて・・・少し疲れが溜まってしまったみたいで・・・普段は出てこない後遺症が出て来たようだ。


(会食が終わったらすぐに帰って横にならないと・・・。明日は土日だから寝て過ごしたら回復できる・・。)


あと少しだと自分の身体に言い聞かせる。

涼さんは納得してないような表情を浮かべていたけど『大丈夫』と伝えるとなんとか納得してくれたようで、私たちはそのまま会場に戻っていった。




ーーーーー



会場に戻った後、俺はハルの様子を見ていた。

時々左腕を自分で擦るようなしぐさが見える。


(・・・俺に見えないように擦ってるところを見ると・・・やっぱ痛いんだろうな。)


『疲れが溜まると痛むことがある』と前に聞いていた。

今週は風邪で寝込んだし、仕事も遅くまでしていて・・・さらに今日のこともあって疲れは溜まってそうに見える。

このままだったら痛みは酷くなる一方だ。


(帰らせてあげたいけど、まだかかりそうだし・・。)


会場内はまだ盛り上がっていて、とても『帰る』とは言い出せない雰囲気だった。

話しかけて来る企業達も後を絶たず、ハルは健気に挨拶を繰り返してくれてる。


(どうしようか・・・。)


悩んでるうちに時間はどんどん過ぎていく。

その間もハルは痛みが増していくのか時々左腕をぎゅっと押さえていた。

息もだんだん荒くなり、とうとう足元がふらつき始めた。


「あっ・・!」

「おっと・・・!」


一歩を踏み出せずによろけたハルの腰元を捕まえる。

覗き込むと、ハルの顔色が悪かった。

青白く、貧血を起こしてる。


「ハル、出よう。・・・歩ける?」


そう聞くものの、ハルはとっくに限界を超えてたようで、息を荒くするばかりで俺の問いに答えれなかった。


「はぁっ・・はぁっ・・・」

「・・・無理だな。」


俺は周りにいた人たちに軽く事情を話し、ハルを抱きかかえた。

そのまま会場の外に出て、ホテルのスタッフに声をかける。


「悪いんだけど部屋一つ用意してくれない?彼女をちょっと休ませたくて・・・。」


そう言うとスタッフは無線で連絡を取ってくれた。

ハルを抱きかかえたまましばらく待ってると申し訳なさそうにスタッフが駆け寄ってくるのが見えた。


「申し訳ございません。」


その言葉に部屋が空いてないのかと思ってると、予想外な言葉が返ってきた。


「本日・・その・・・『スィートルーム』しか空きが・・・」

「スィート?」

「はい・・・いかがいたしましょう・・・。」

「あー・・・。」


スタッフの言葉に、俺はハルを見た。

青白い顔に荒い息、それに痛む腕と足を考える。


「そうだな・・その部屋、月曜日まで予約って入ってる?」


そう聞くとスタッフは驚いた顔を見せた。

それと同時に無線で確認を始めた。


「・・・お待たせいたしましたご予約は来月まで入っておりません。」

「ならその部屋を頼むよ。月曜までで。」

「かっ・・かしこまりました・・・!すぐにご案内いたします・・!」


俺はスタッフに案内してもらい。ホテルの最上階に位置するスィートルームに入った。

とりあえずベッドにハルを寝かせて次を考える。


「寝れたらいいけど・・・着物ってこのまま寝て苦しくないのかな・・?」


普段着物に触れることが無い俺には、着物のことはよくわからない。

でも帯で腹部を締めてるってだけで苦しそうに思えて仕方なかった。


「・・・破かない限り大丈夫だよな?」


そう思って俺は・・・ハルの帯に手をかけた。






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