溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「悠春、あいつ誰?」


私を両腕の檻に閉じ込めたまま連が聞いてきた。


「え?あ・・・」


『彼氏』というべきか『恋人』というべきかを悩んでると、涼さんが走って来た。

連の手を掴み上げ、私は身体を引っ張り出された。


「彼女に何してる。」


いつもと違う低い声で話す涼さん。

その姿に驚いてると、連が私の手を掴んでぐぃっと引き寄せた。


「わっ・・!?」

「お前こそ俺の悠春に何してんだよ。」


ぎゅっと連の腕に閉じ込められ、私は身動きが取れなかった。


「ちょ・・!離してっ・・!」


どうにかして抜け出そうともがいてると、涼さんが連を睨みつけた。

その顔は今まで見たこともないくらい・・・怒ってる顔だ。


「俺の彼女から手を離せ。」


すごむような顔で言う涼さんの表情を見た連が、私を見た。


「え、マジで知り合い?」

「知り合いっ!・・・彼氏!恋人なのっ・・!」


そう言うと連は私を腕から解放してくれた。

後ろ手に頭を掻きながら気まずそうにしてる。


「ごめん、お前がまたストーカーに絡まれてるのかと思って・・・」


涼さんは私を引き寄せ、背中側に私を隠した。


「ハル、大丈夫?」

「う・・うん、ごめんね、心配かけて・・・。」

「それはいいけど・・・知り合い?」


そう言われ、私は涼さんの背中側から連のことを説明した。

彼は華道の知り合いで、私が華道の世界に飛び込んだ時から付き合いのある人だ。

小学生の私が持てない花器を運んでくれたり、鋏で切りにくい花や木を代わりに切ってくれたりと何かと世話を焼いてくれた。

10ほど離れていて、私にとっては幼馴染であり、もう一人の兄的な存在の人だ。


「華道の人だったのか・・・。」

「うん、『貫地谷 一連』って名前なの。」


そう言うと涼さんは驚いた顔で連を見た。


「・・・ブライダルフラワーの『貫地谷グループ』!?」


連の家は代々結婚式関係のお花を扱っている。

式場はもちろんのこと、結納やお祝いなんかの時に置かれる花も貫地谷グループがしてることが多いのだ。

祝いの席で見ることの多い『貫地谷グループ』の名前は有名な名前だった。


「貫地谷グループ代表の貫地谷 一連と申します。悠春・・・秋篠 ハルがお世話になっております。」


連は頭を下げながら名乗った。

それを見たからか、涼さんも頭を下げる。


「TR社の代表、都築 涼と申します、以後お見知りおき頂きたいと思います。」


そう言ったあと、涼さんは頭を上げ、じっと連を見た。


「ところで彼女のご関係はどう認識されてるのでしょうか。」


そう聞く涼さんに、連は一瞬驚いた顔を見せたけど、すぐに呆れたように笑って見せた。


「・・・ご心配なく、彼女は『妹』ですよ。放っておけない大事な妹です。」


そう言って私を見る連の目線は優しいものだった。

4年前に私が姿を消すまでよく見てた・・・ものだった。


「そうですか。・・・申し訳ありませんが急ぎますのでこれで失礼させていただきます。ハルを・・・悠春を助けていただきありがとうございました。」


涼さんは私の肩を抱き、歩き始めようとした。

でもそれを連が止める。


「待ってください。悠春を助ける代わりに条件を出したんです。その条件、まだ飲んでもらってません。」

「条件・・・?」


その言葉に、涼さんは私を見た。

私は何度も首を上下に振り、『本当だ』と伝えた。


「その条件とは?」


諦めたように涼さんが聞くと、連はニヤッと笑って私を見た。


「・・・連絡先。」

「え?」

「お前の今の連絡先教えろ、悠春。」


何を条件に出して来たかと思えば、連は私のケータイ番号を聞いてきたのだ。


(てっきり『お花関連』だと思ったのに・・・。)


私は着物の袖から自分のスマホを取り出した。

その時、左腕に痛みが走り、スマホを落としてしまった。


「いぃっ・・!」


カシャーンっ・・!と落ちたスマホを連が拾ってくれるのが見える。


「大丈夫か?」

「う・・うん。ちょっと手が攣りそうになっただけ・・・。」


私は右手で左腕を擦りながらアドレスを開いて連に見せた。


「・・・私、あまりスマホ見ないから連絡もらってもすぐ気づかないよ?」

「いいんだよ。今度連絡する。・・・よし。」


私の電話番号とメールアドレスを読み取った連は、スマホをポケットにしまった。


「じゃ、今度連絡するから。・・・都築さん、失礼します。」


そう言って連は戻って行った。

残された私と涼さんはその姿を見送ってから会場に足を向ける。


「まさか『悠春』で現れるなんて思いもしなかったよ・・・。」


涼さんは私の頭を撫でながら言った。


「あー・・うん、ごめんね?相談も無しに・・・。」


突然の事態に、私がどう動くのが一番良いのかを考えが結果の行動だったことを説明した。

涼さんの会社関係の人だったからどうしても事態を好転させたかったことを。

それにはあの生け花を使うしか道はなさそうだったことを・・・。


「いや、助かったよ。あの後会場の人たちは悠春のことに夢中だったし、『ガードセンター366』の会社の人だって悠春を呼んだってことで質問攻めにあってた。」

「そうなんだ・・・。」

「ただ、あの乗り込んできた人は騒ぎに紛れて消えてしまって・・誰か分からないんだよ。」


顎に手をあてて、悩むようにして視線を上に向けた。


「そっか・・・。涼さん、気をつけてね?」


招待されてる人しかいない場所で他人を貶めるような行動を起こす人が現れたことはさすがに偶然とは思えないことだ。

狙っていたのは『ガードセンター366』っていう会社だったのかもしれないけど、もしかしたら涼さんの会社かもしれない。

心配になった私は涼さんに気をつけて欲しくて伝えたのに・・・涼さんは思ってもみなかった言葉を返してきた。


「・・・今の状態のハルに言われるとはねぇ。」




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