溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「・・・条件?」


連がなんの条件を出してくるのかはわからない。

でも今はとにかく時間がなかった。


「わかった!飲むから・・!だからお願い!!」

「オーケー、俺は何をする?」


手を解放してもらった私は連に頼みたいことを話した。


「私のウィッグに近いやつを貸して!あと赤い着物持ってない!?」

「あるけど・・・まさかお前・・・」

「あるなら貸して!!時間が無いの!!」

「・・・・わかった。こっちだ!」


連に先導され、私はウィッグと着物がある部屋に連れて行ってもらった。

そこで今起こってることを手短に話しながら急いで着替えを済ませる。


「お前の着付け、俺がしてやる!さっさとメイクしろ!」

「ありがと!!」


猛スピードで着付けをしていく連の邪魔にならないよう、メイクをしていく。

ちょうど連のメイクさんたちもいてて、私を手伝ってくれていた。

その中には・・・私のことを知ってる人もいる。


「きゃー!?悠春!?本物!?今までどこに・・・!?」

「話は後だ!!あと5分で終わらせろ!!」


怒号のような指示が飛び交う中、みんなのおかげで私はものの10分ほどで着替えとメイクを終わらせることができた。

漆黒のウィッグをつけて完成だ。


「・・・4年経ってもお前は変わってないな。ほら行ってこい!」

「ありがとう!連!」


私は部屋を飛び出し、涼さんがいる会場へ駆け戻って行った。




ーーーーー


ハルが着付けを終わらせて会場へ駆けてる時、その会場では未だ騒動が収まってなかった。

涼が警備会社の者の側で、どうフォローしようか悩んでる。


(さて・・どうしようか・・・。)


華道の作品は悠春のものではない。

それは本人に確認してあるから間違いないことだ。

騙されたのならそれを見抜けなかった会社側にも責任はあるけど、詐欺の話を持ち掛けて来た奴にこそ責任の非は重い。

でもそれはこの場で糾弾するように問うものでもないのハズだ。


(問題は・・この叫んでるやつが何者なのかと、なんでこんなことをするかだな)


明らかに意図があるように見えるこの光景。

もしかしたら警備会社に何か恨みでもあるやつの仕業じゃないかと、俺は思い始めていた。

でもこの場を収めるいい手段が見つからない。


(特に暴力を振るうわけではないみたいだし・・治まるのを待つしかないのか?)


そう思っていると、突然会場内がざわついた。

口々に何かを言いながら舞台上を指差してる。


「え・・あれって・・・」

「うそだろ・・!?」

「え・・ほんもの!?」


その視線に釣られるようにして舞台上を見ると、そこにはまるで『日本人形』のような女の子が立っていたのだ。

漆黒の髪の毛に、真っ赤な着物。

黒くて大きな目に、視線を奪われる。


(まさか・・・ハル・・!?)


俺はさっきハルと別れた場所を見た。

でもそこにハルの姿は無い。

辺りを見回しても、どこにもハルの姿はなかったのだ。


(何する気だ・・?)


じっと舞台を見つめると、ハルは机上の花に向かってゆっくりと一礼をした。

その所作に周りから感嘆の息が漏れるほど、きれいな一礼だ。


「わぁ・・・」

「素敵・・・」


ハルはそのまま花器に手を添え、挿されていた花を剣山から抜いていく。

そして着物の袖口からハンカチを取り出した。

何かを包んでるようで、開いていく様を見てると鋏が出て来たのだ。

ハルはその鋏を使ってさっき抜いた花の茎を整え始めた。


パチッ・・!パチンッ・・!


空気を切るような音が会場の中に響き渡る。

まわりにいる人たちは一言も話さずに、じっとハルの手元を見てる。

手際がいい上に加えて、見惚れるほどの所作に誰もが目を奪われていた。


(すごい・・・。)


先日見たことがあったハルの生ける姿とはまるっきり違う姿だ。

空気はピンと張っているのに、優しい感じもする。

その不思議な空気の中、ハルは花を全て生けた。

完成された花を前にハルは一歩下がり、また一礼をした。

そして振り返り、会場に響くように声を発した。


「皆様、初めまして。『悠春』と申します。」


その言葉に会場がまたざわめいた。


「本日は『ガードセンター366』様からお誘いをいただき、花を生けさせていただきに参りました。事前に用意されていた花を皆様の前で生けさせていただく機会を頂き、光栄に思います。皆様の未来が花開くものになりますよう願いを込めて。」


そう言ってハルは舞台袖に捌けていった。

その直後、会場中の人がスマホを手に舞台に駆けよる。


「写真撮りたい!!」

「私が先よ!!」

「悠春はどこ!?」


殺到する舞台を見ながら、俺はハルを探すためにその場を離れた。

会場の外に出ようと急ぎ気味に歩いてると、さっきの奴が舌打ちしてるのが見えた。

どうも思惑と外れた展開になったようだ。


(・・・嫌がらせだったのか?)


このことはあとで調査を入れることにして、俺は会場を出た。

走り回ってハルを探す。


(着替え・・とかあるよな?なら部屋があるところかも・・・)


右に左に視線を配り、俺はハルを探して走った。



ーーーーー



「連っ・・!ありがとうっ・・!」


花を生け終わった私は、連が着付けしてくれた部屋に戻った。


「いいけど・・・ちゃんと条件飲めよ?」

「わかってるって・・・!着替えながら内容聞いていい?急ぐし・・・!」


そう言って、着替え直すために帯を解いていこうと帯紐に手をかけたとき、背中側から声が聞こえてきた。


「悠春、手伝う・・・よ。」

「え?」


ふり返るとそこには連のスタッフの人が立ってる。

よくよく顔を見ると・・・その人は私が現役の時の・・・私のスタッフだった。


「!!・・・美園(みその)さん・・。」





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