溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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そう大きな声で言ったおじさんの言葉に、周りがざわつき始めた。


「え・・これ、悠春のじゃないの・・?」

「騙されたってこと?」

「いや、どっちかっていうと騙されたのは会社・・・」

「いくら払ったのかしら・・・」


非難や同情の声が耳に入ってくる。

それと同時に、俯き加減で背を丸くしていく人の姿が目に入った。

きっとあの人が『ガードセンター366』の会社の人だろう。


「一体どこの会社だぁ?見る目がない会社は!!」


にやにや笑いながら叫ぶおじさんを、涼さんはちらっと見た。


「なんか・・おかしいな。」

「え?」

「今日のこの会食、招待された人しか知らないハズなんだよ。なのにあいつは堂々と入ってきて迷うことなく花を見た。」


確かに、ケタケタと笑うおじさんは妙に堂々としていて、何か確信をもっているようにも見える。

でもそれが何の為なのか想像もつかない。


「ごめん、ハル。俺ちょっとあの警備会社の人のところ行ってくる。フォローしてあげないとさすがにまずい。」

「う・・うん・・・いってらっしゃい・・。」


涼さんを見送りながら、私は会場中を見まわした。

ヒソヒソと話す人たちは、みんな目線を警備会社の人に向けてる。


(涼さんの会社に入ってる会社・・っていうことはこのことは涼さんの会社にも影響でる・・?)


会社の信用というものは大事なもの。

その信用を失えば今後の業績に支障がでるかもしれないのだ。


(大変・・・!)


私は慌てて会場から出た。

辺りを見回しながら急ぎ足で駆けていく。


「どこかに美容院・・!」


キョロキョロしながら小走りに走っていると、私の手をグッと掴んだ人がいた。


「わっ・・!?」


急に止められた反動で身体が後ろに傾く。


(倒れる・・!!)


そう思って目を閉じたとき、私の身体は誰かにぎゅっと抱きしめられた。


「へ・・?」

「何やってんだ?こんなとこで・・・『悠春』?」


目を開けて視線を上げると、そこに見知った顔があった。


「・・・・連!?」


腰まであるストレートの黒髪をさらっと耳に掛け、私を見ながら微笑んでる。

高身長に整った顔立ち、それにその腰まである髪の毛は男の人の中ではかなり特徴的過ぎて、私は一瞬で誰だかわかってしまった。


「おぅ、久しぶりだな。」

「なんでここに・・・」


4年前に私が姿を消してから一度も連絡をしたことがなかった。

華道関係の人とはもう誰とも会わないと決めていたから、私は携帯電話を解約し、誰にも住所を告げずに引っ越した。

だから私の居場所なんて誰も知らないハズだった。


「うん?仕事でこのホテルに来てるんだけど、なんか見たことある着物が走ってるなと思ってさ。」


その言葉に、私は今自分がしようとしてることを思い出した。


「あっ・・!連!頼みがあるんだけど聞いてくれる!?」


できれば連とは今限りで離れたいところだ。

でも背に腹は代えられない。


「?」

「お願い・・!」


何が何だかわからないという表情を浮かべる連に、私は必死に食らいついた。

すると・・連のスーツをきゅっと掴んで詰め寄る私の雰囲気に負けたのか、連が承諾してくれたのだ。


「いいけど・・・。」

「ほんと!?」


その承諾に安堵した私は握っていたスーツから手を離した。

その瞬間、連が私の手をガシッと掴んだ。


「お前の頼みなら聞いてやる。でもその代わり・・・条件がある。」







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