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病み上がりのハルの様子が気になった俺は、仕事の合間に花屋に顔を出した。
いつも通り店に入ると、ハルが嬉しそうな顔をしながら俺を見てくれてる。
(そんなかわいい顔されたら困るんだけど・・・。)
内心笑いながらそう思った。
「ハル、いつものお願いしていい?」
笑顔を振りまいてくれるハルに頼むと、ハルは一層眩しい笑顔を見せてくれた。
「はいっ。今日はどのお花にします?」
「そうだな・・・」
俺は花の色を指定し、あとはいつも通りハルに任せた。
手際よく、また楽しそうに花をまとめていくハルに、俺は相談事をもちかける。
「あのさ・・・頼みがあるんだけど・・・。」
「うん?」
「実は・・今度の金曜の夜にちょっと会食のようなものに誘われてて、同伴してくれない?」
「へ?」
驚くハルに、俺は説明をした。
仕事の付き合いである会食は行くものの、今回は何か催しがあるらしくて『同伴』の指定があったのだ。
適当に人を連れて行くこともできるけど、できればそれは避けたいと思った。
(まだ付き合い始めては2カ月だけど・・・できればハルがいいんだよなぁ。)
ハルが嫌だと言ったら秘書でも連れて行こうかと考えながら打診してみた。
するとハルは俺が思っていたよりも簡単に返事をくれたのだ。
「いいよー?」
「・・・え、ほんと?」
驚きながら聞き返すと、ハルは作業を進めながら話し始めた。
「役に立つとは思えないけど・・昨日のお礼もしたかったし?私でよければ。」
そう言いながら花を生ける姿は凛としていてとてもきれいだった。
花を持つ手の動きは一つ一つがしっかりしていて目を奪われる。
(・・・『ハルがいい』って思うけど・・視線を集めそうで困るな。)
そんな心配を抱えながら、俺はハルが花を生けていく姿をじっと見ていた。
ーーーーー
涼さんから会食同伴のお話を頂いた私は、ふと日程のことを考えた。
月・火と休んだ私が出勤した今日は水曜日。
と、いうことは金曜日は明後日になる。
(結構日にちが無かった・・。ドレスコードとかあるか後で聞いとかないと。)
家にある服で間に合うのかどうか心配しながら、私は仕事に集中した。
ーーーーー
金曜日当日。
涼さんからドレスコードを聞いていた私は職場である花屋に服を持ち込んでいた。
仕事が終わるころに涼さんが迎えに来てくれる約束になってるのだ。
迎えに来てくれたあと、そのまま会場に向かってそこで着替えをしようと涼さんが言ってくれた。
なぜなら今日は私の仕事がかなり遅く終わる予定だったからだ。
「今日は17時まで仕事だから・・・会食が始まるのが19時。急がないと・・・。」
今の時間はお昼を少し回った所。
なんとか17時ちょうどに仕事を終わらせれるように、私は先々を考えながら仕事をしていった。
でも、予約の花束に飛び込みのアレンジメント、さらに鉢植えをお買い求めのお客さまが絶えることなく来店されてしまって、雑務が目に見えて溜まって行く。
(わー・・ちゃんと終わるかなぁ・・・。)
私はいつも以上に忙しく動き回った。
あれもこれもと動き回ってるうちに時計の針はぐるぐる回っていき、あっという間に17時近くになっていた。
「こんにちはー、ハル、もう終われそう?」
そう言って涼さんが私を迎えに来てしまった。
「わぁ・・!ちょ・・ちょっと待って・・!すぐ行くからっ・・!」
私は手に抱えていた雑務を終わらせ、他のパートさんたちに引き継ぐ。
「今日の予約分はもう終わってますー!あとお願いしまーす!」
そう言って裏に走って行き、荷物を持って涼さんの元へ行った。
涼さんは私が両手に抱えてる荷物を取ってくれ、車に乗せていく。
そして私たちは車に乗り込んだ。
「ハル、着替え大丈夫そう?やっぱ着付けの人呼んだ方がよかったんじゃない?」
運転しながら聞いてきた涼さん。
私は隣で軽く息を整えながら答える。
「大丈夫ー、一人で着れるから。」
「そう?」
今日の会食のドレスコードは『和』。
それに合わせて私は着物を選んだのだ。
涼さんはスーツだけど、胸元のネクタイが和柄だった。
「それ、素敵だね。」
そういうと涼さんは自分がつけてるネクタイをチラッと見た。
「あぁ、西陣織の桜柄なんだよ。赤色だけど、ハッキリした赤じゃないところが気に入ってる。」
くすみがかった赤色に、散りばめられた桜の花。
重なる花びらは色が少し違っていて立体感がある。
「・・・ふふ。」
そのネクタイを見て笑顔になった私。
涼さんは不審に思ったようで身体を私の方に少し倒しながら聞いてきた。
「え?なに?」
「ふふ、あとでわかるよ。」
「?」
「そういえば、今日の流れって涼さん知ってるの?」
「あぁ、大体だけどーーーーー」
涼さんは運転しながら今日のことを話してくれた。
いろんな会社の人たちが集まる今回の会食は、ホテルのパーティー会場で行われるらしい。
立食形式で、堅苦しくない感じだけど、催しがいくつかあると。
それが『和』に関連してるからドレスコードが『和』らしいのだ。
「あ、じゃあ着物の人、結構いそうね。」
「そうだな、きっと女性を同伴に連れてくる人多いだろうし・・・。」
「催しってなんだろなー、あ、私がしたほうがいいことってある?」
そう聞くと涼さんは驚いたような顔を見せた。
「どうしたの?」
「いや、ハルって会食慣れしてるような・・・行くことあったの?」
そう聞かれ、昔のことを軽く話す。
「あ、兄の仕事のパーティーとかに付き合ったり、あとお花の協会とか連盟とかの会食があったりしたから・・・場慣れはしてると思うよ?」
「なるほど・・。それでドレスコードとか聞いてきたのか・・。」
「うん。あとは両親の関係のもあってーーーー」
昔のことを話しながら説明をしてるうちに、車は会食の会場であるホテルの敷地に入った。
涼さんはエントランスで車を止め、エンジンをかけたまま車の鍵をスタッフさんに手渡す。
「あとはよろしく。」
「都築様、いつもありがとうございます。お車、お預かりいたします。」
私は助手席のドアを開けてくれたスタッフの人に促され、車から下りた。
「お着物の着替えをされると伺っております。どうぞこちらへ。」
「あ、ありがとうございます。」
私は涼さんが乗せてくれた荷物を持ち、スタッフの人の後ろをついて行く。
その私のすぐ隣を、涼さんが歩いていた。
「着付けの人が必要になったらすぐ呼んで?手配するから。」
「ありがとう。でも大丈夫、着るの慣れてるからー。」
パタパタと急ぎ足で部屋まで案内してもらい、私は一人で着付けに入った。
いつも通り店に入ると、ハルが嬉しそうな顔をしながら俺を見てくれてる。
(そんなかわいい顔されたら困るんだけど・・・。)
内心笑いながらそう思った。
「ハル、いつものお願いしていい?」
笑顔を振りまいてくれるハルに頼むと、ハルは一層眩しい笑顔を見せてくれた。
「はいっ。今日はどのお花にします?」
「そうだな・・・」
俺は花の色を指定し、あとはいつも通りハルに任せた。
手際よく、また楽しそうに花をまとめていくハルに、俺は相談事をもちかける。
「あのさ・・・頼みがあるんだけど・・・。」
「うん?」
「実は・・今度の金曜の夜にちょっと会食のようなものに誘われてて、同伴してくれない?」
「へ?」
驚くハルに、俺は説明をした。
仕事の付き合いである会食は行くものの、今回は何か催しがあるらしくて『同伴』の指定があったのだ。
適当に人を連れて行くこともできるけど、できればそれは避けたいと思った。
(まだ付き合い始めては2カ月だけど・・・できればハルがいいんだよなぁ。)
ハルが嫌だと言ったら秘書でも連れて行こうかと考えながら打診してみた。
するとハルは俺が思っていたよりも簡単に返事をくれたのだ。
「いいよー?」
「・・・え、ほんと?」
驚きながら聞き返すと、ハルは作業を進めながら話し始めた。
「役に立つとは思えないけど・・昨日のお礼もしたかったし?私でよければ。」
そう言いながら花を生ける姿は凛としていてとてもきれいだった。
花を持つ手の動きは一つ一つがしっかりしていて目を奪われる。
(・・・『ハルがいい』って思うけど・・視線を集めそうで困るな。)
そんな心配を抱えながら、俺はハルが花を生けていく姿をじっと見ていた。
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涼さんから会食同伴のお話を頂いた私は、ふと日程のことを考えた。
月・火と休んだ私が出勤した今日は水曜日。
と、いうことは金曜日は明後日になる。
(結構日にちが無かった・・。ドレスコードとかあるか後で聞いとかないと。)
家にある服で間に合うのかどうか心配しながら、私は仕事に集中した。
ーーーーー
金曜日当日。
涼さんからドレスコードを聞いていた私は職場である花屋に服を持ち込んでいた。
仕事が終わるころに涼さんが迎えに来てくれる約束になってるのだ。
迎えに来てくれたあと、そのまま会場に向かってそこで着替えをしようと涼さんが言ってくれた。
なぜなら今日は私の仕事がかなり遅く終わる予定だったからだ。
「今日は17時まで仕事だから・・・会食が始まるのが19時。急がないと・・・。」
今の時間はお昼を少し回った所。
なんとか17時ちょうどに仕事を終わらせれるように、私は先々を考えながら仕事をしていった。
でも、予約の花束に飛び込みのアレンジメント、さらに鉢植えをお買い求めのお客さまが絶えることなく来店されてしまって、雑務が目に見えて溜まって行く。
(わー・・ちゃんと終わるかなぁ・・・。)
私はいつも以上に忙しく動き回った。
あれもこれもと動き回ってるうちに時計の針はぐるぐる回っていき、あっという間に17時近くになっていた。
「こんにちはー、ハル、もう終われそう?」
そう言って涼さんが私を迎えに来てしまった。
「わぁ・・!ちょ・・ちょっと待って・・!すぐ行くからっ・・!」
私は手に抱えていた雑務を終わらせ、他のパートさんたちに引き継ぐ。
「今日の予約分はもう終わってますー!あとお願いしまーす!」
そう言って裏に走って行き、荷物を持って涼さんの元へ行った。
涼さんは私が両手に抱えてる荷物を取ってくれ、車に乗せていく。
そして私たちは車に乗り込んだ。
「ハル、着替え大丈夫そう?やっぱ着付けの人呼んだ方がよかったんじゃない?」
運転しながら聞いてきた涼さん。
私は隣で軽く息を整えながら答える。
「大丈夫ー、一人で着れるから。」
「そう?」
今日の会食のドレスコードは『和』。
それに合わせて私は着物を選んだのだ。
涼さんはスーツだけど、胸元のネクタイが和柄だった。
「それ、素敵だね。」
そういうと涼さんは自分がつけてるネクタイをチラッと見た。
「あぁ、西陣織の桜柄なんだよ。赤色だけど、ハッキリした赤じゃないところが気に入ってる。」
くすみがかった赤色に、散りばめられた桜の花。
重なる花びらは色が少し違っていて立体感がある。
「・・・ふふ。」
そのネクタイを見て笑顔になった私。
涼さんは不審に思ったようで身体を私の方に少し倒しながら聞いてきた。
「え?なに?」
「ふふ、あとでわかるよ。」
「?」
「そういえば、今日の流れって涼さん知ってるの?」
「あぁ、大体だけどーーーーー」
涼さんは運転しながら今日のことを話してくれた。
いろんな会社の人たちが集まる今回の会食は、ホテルのパーティー会場で行われるらしい。
立食形式で、堅苦しくない感じだけど、催しがいくつかあると。
それが『和』に関連してるからドレスコードが『和』らしいのだ。
「あ、じゃあ着物の人、結構いそうね。」
「そうだな、きっと女性を同伴に連れてくる人多いだろうし・・・。」
「催しってなんだろなー、あ、私がしたほうがいいことってある?」
そう聞くと涼さんは驚いたような顔を見せた。
「どうしたの?」
「いや、ハルって会食慣れしてるような・・・行くことあったの?」
そう聞かれ、昔のことを軽く話す。
「あ、兄の仕事のパーティーとかに付き合ったり、あとお花の協会とか連盟とかの会食があったりしたから・・・場慣れはしてると思うよ?」
「なるほど・・。それでドレスコードとか聞いてきたのか・・。」
「うん。あとは両親の関係のもあってーーーー」
昔のことを話しながら説明をしてるうちに、車は会食の会場であるホテルの敷地に入った。
涼さんはエントランスで車を止め、エンジンをかけたまま車の鍵をスタッフさんに手渡す。
「あとはよろしく。」
「都築様、いつもありがとうございます。お車、お預かりいたします。」
私は助手席のドアを開けてくれたスタッフの人に促され、車から下りた。
「お着物の着替えをされると伺っております。どうぞこちらへ。」
「あ、ありがとうございます。」
私は涼さんが乗せてくれた荷物を持ち、スタッフの人の後ろをついて行く。
その私のすぐ隣を、涼さんが歩いていた。
「着付けの人が必要になったらすぐ呼んで?手配するから。」
「ありがとう。でも大丈夫、着るの慣れてるからー。」
パタパタと急ぎ足で部屋まで案内してもらい、私は一人で着付けに入った。
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