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都築さ・・涼さんと付き合い始めて1カ月の時間が流れた。
仕事帰りにご飯を食べに行ったり、休みの日に少し遠くにおでかけしたりと・・・涼さんは私をいろんなところに連れて行ってくれていた。
初めての恋人ということもあり、私は涼さんとのおでかけが楽しくて仕方がない。
「でも・・いつも連れて行ってもらってるから私も何かしたいんだけど・・。」
そんなことを考えながら、私はお店のお花を手入れしていた。
その時・・・
「ハルちゃん。」
聞きなれた声が背中側から聞こえて来た。
ふりかえると、満面の笑みで立ってる涼さんがいたのだ。
「涼さん、いらっしゃいませ。・・・いつものですか?」
私に会うために買いに来ていたというアレンジメント。
付き合い始めてからもまだ、涼さんは週一で買いに来るのだ。
「もちろん。今日は・・・水色と白がいいな。」
「・・・かしこまりました。」
言われた通り、水色の花と白い花を決めに行く。
それと同時にグリーンも何種類か手に取った。
(確か・・私に会う口実を作るために買いに来てたって言ってたよね・・?付き合ってるのになんで毎週買いにくるのかな・・?)
疑問に思いながら作業を進めていく。
今回は白いボックスだ。
蓋に大きいゴールドのリボンがあって、箱そのものだけでもかわいい造りになってる。
ここに水色の花と白い花、それと少しだけピンクの花も入れた。
白色の花はカーネーションで、水色の花はブルースター、ピンクの花はバラにしてみた。
ボックスに合わせてカットしておいたフローラルフォームを水に浸し、ボックスにセットしていく。
そして花たちをバランスよく配置し、間にグリーンを入れていった。
程よい数のグリーンたちが、花たちの色を引き立てて見せてくれてる。
「あとは・・・これかな。」
そう言ってワイヤーについてる大きめパールをいくつか刺していく。
高級感が増し、見た目もぐんとかわいくなるアイテムを投入してアレンジメントの完成だ。
「よし、これで完成なんですけど・・・・」
いつも通り、私の作業をじっとみてる涼さんに、私は疑問に思ったことを聞いてみることにした。
「あの・・涼さん?」
「うん?」
「お花・・会社用にお買い上げされるんですか?」
遠回しに聞くと、涼さんはにこにこ笑いながら答えた。
「ううん?会社は会社だけど、俺の机に飾るよ?」
この答えは前にも聞いた内容だ。
『会社用』と称して買いに来てくれていた涼さんは、買った手前、会社の自分の机に飾っていると教えてくれた。
それはそれでいいと思うけど、毎回『色』を指定される理由がわからないでいたのだ。
「なんでいつも色を指定するんですか?好きな色とか?」
そう聞きながらラッピングをしてると、涼さんは笑いながら答えた。
「秘密。」
「うーん・・・。」
その真意がわからないままラッピングを終え、お会計に入る。
「6500円ですー。」
涼さんはお会計済ませ、軽く手を振りながら帰っていった。
私はその後姿を見つめながら、深まる謎を考える。
「・・・今日のラッキーカラーとかかな。」
そんなことを考えてる時、一緒に働いてる夏美さんが声をかけてくれた。
「ハルちゃーん、今日、2時上がりじゃない?病院の日でしょ?」
そう言われ、私はお店の時計を見た。
時間は2時になる5分前だ。
「わぁ・・!お先に失礼しますー!」
そう言って私はバタバタと帰る準備をし、お店をあとにした。
ーーーーー
「・・・こんにちはー。」
お店を出た私はそのまま直接病院に来ていた。
ここは『四条病院』。
国内でも指折りの大病院だ。
代表的な内科、外科を始め、皮膚科に歯科、美容外科、さらには移植科、高齢医学科など項目がかなり細かく分かれた診療科目が特徴の病院で、救急はもちろん、ドクターカーやドクターヘリなんかもある。
サイレンを鳴らした救急車がしょっちゅうくる病院なのだ。
「あらハルちゃん、いらっしゃい。今日は診察?」
ナースステーションにいつもいる看護師さんがそう聞いてくれた。
「そうなんですー。・・・兄っていますか?」
私の兄はこの四条病院で働いている医師だ。
いろんな科目を転々としてる、ちょっと変わりものの兄なのだ。
「いるよー。あとで呼ぶからちょっと待っててね?」
「はい。」
私は待合の椅子に腰かけた。
鞄から本でも取り出そうかと思った時、パタパタと廊下を走る音が聞こえてくる。
「ハルっ・・!」
「お兄ちゃん。」
走ってきたのは紛れもなく、私の兄だった。
白衣をたなびかせ、ほんの少しだけ息を切らせて私の名前を呼ぶ。
そして茶色い髪の毛を手でかき上げながら私の前に立った。
「今、どこの科にいるの?」
走って来たことを考えたら私が今いる『皮膚科』ではなさそうだった。
「今は腎移植科。さっきオペが終わったんだよ。ちょうどよかったな。」
そう言って私の頭をくしゃっと撫でた。
「へへ。」
「ちょっと待ってろ。診察室空いてるとこ聞いてくるから。」
そう言って兄はナースステーションに入っていった。
「お兄ちゃん・・・私に彼氏ができたって言ったら怒るかな。」
15歳も離れてる兄は、私が生まれた時から大事に大事にしてくれていた。
お花の展覧会や、品評会のときは必ずと言っていいほど毎回見に来てくれていたし、家で花を生けたら100枚くらい写真を撮ってくれる。
いつも優しくて・・・大好きなお兄ちゃんだ。
(あの事件のときもお兄ちゃんが治療してくれたから・・・私の腕と足が動くんだもんね。)
ストーカーに刺された傷は深かったらしく、神経を傷つけていた。
お兄ちゃんが懸命に手術で神経を繋いでくれたから・・・私の腕と足はちゃんと動いてるのだ。
「ハルー?こっち空いてるから来いー。」
思い返してると兄が私を呼んでいた。
「はーい。」
私は椅子から立ち上がり、兄と一緒に診察室に入っていった。
「で?調子はどう?」
服を脱ぎながら問診してくる兄に、私は最近のことを伝えた。
いつも通り仕事をしてること、してみたいことができたから挑戦中なこと、それと・・・彼氏ができたことを。
「・・・マジで!?」
「マジだよ。」
「どんなやつ!?」
ペンを置き、問診そっちのけで聞いてくる兄。
私は笑いながら答えた。
「ふふ、お兄ちゃんみたいな人だよ。」
そう言うと兄はペンを取り、カルテを見ながらぼそっと言った。
「まぁ、彼氏くらい出来てもおかしくない年だしな。」
「・・・ふふ。今度紹介するね?」
「うん。・・・じゃ、ベッドに横になって。」
「はーい。」
私はベッドに横になり、兄の診察を受けた。
ーーーーー
「異常はなさそうだな。」
診察が終わると兄はカルテに書き込み始めた。
それを横目に見ながら私は服を着ていく。
「・・・この傷ってさ、消えないかな?」
半袖を着ることすら迷うくらい、傷はしっかりと残っていた。
足はミニスカートを穿かない限り見えないからいいとしても、これから暑い季節に突入するから半袖は着たいところだ。
「まぁ、手術すれは消せるかもしれないけど・・・キレイにするのはちょっと難しいかな。結局また手術の痕は少し残るし。」
「そうだよねー・・・。」
「それにお前の場合、結構手術繰り返したから麻酔が効かなくなるかもしれないしな。人間『慣れ』ってのが一番怖いもんだ。」
「う・・それは困るかも・・・。」
この先大きい病気をしないとは限らない。
その時に麻酔が効かないなんてことになったら・・・考えただけでぞっとする。
「どうしてもって思うくらいになったらまた相談しろ。考えるから。」
そう言って兄は私のカルテを閉じた。
「うん、わかった。」
服を着終わり、私は鞄を持った。
診察室を出ようとしたとき、兄が私に言う。
「お前、このあと暇?」
「え?まぁ、用事とかはないけど?」
「ならメシ食いに行こう。俺ももう上がるから。」
「んー・・・わかった。じゃあ下の喫茶店で待ってるから迎えに来てね。」
「オーケー。」
私と兄はこの診察室で一旦別れた。
久しぶりの兄とのご飯に私の心が躍る。
「何食べよっかなー。」
機嫌よく喫茶店に向かってる私は、このあと大変なことになるなんて・・・考えもしなかった。
仕事帰りにご飯を食べに行ったり、休みの日に少し遠くにおでかけしたりと・・・涼さんは私をいろんなところに連れて行ってくれていた。
初めての恋人ということもあり、私は涼さんとのおでかけが楽しくて仕方がない。
「でも・・いつも連れて行ってもらってるから私も何かしたいんだけど・・。」
そんなことを考えながら、私はお店のお花を手入れしていた。
その時・・・
「ハルちゃん。」
聞きなれた声が背中側から聞こえて来た。
ふりかえると、満面の笑みで立ってる涼さんがいたのだ。
「涼さん、いらっしゃいませ。・・・いつものですか?」
私に会うために買いに来ていたというアレンジメント。
付き合い始めてからもまだ、涼さんは週一で買いに来るのだ。
「もちろん。今日は・・・水色と白がいいな。」
「・・・かしこまりました。」
言われた通り、水色の花と白い花を決めに行く。
それと同時にグリーンも何種類か手に取った。
(確か・・私に会う口実を作るために買いに来てたって言ってたよね・・?付き合ってるのになんで毎週買いにくるのかな・・?)
疑問に思いながら作業を進めていく。
今回は白いボックスだ。
蓋に大きいゴールドのリボンがあって、箱そのものだけでもかわいい造りになってる。
ここに水色の花と白い花、それと少しだけピンクの花も入れた。
白色の花はカーネーションで、水色の花はブルースター、ピンクの花はバラにしてみた。
ボックスに合わせてカットしておいたフローラルフォームを水に浸し、ボックスにセットしていく。
そして花たちをバランスよく配置し、間にグリーンを入れていった。
程よい数のグリーンたちが、花たちの色を引き立てて見せてくれてる。
「あとは・・・これかな。」
そう言ってワイヤーについてる大きめパールをいくつか刺していく。
高級感が増し、見た目もぐんとかわいくなるアイテムを投入してアレンジメントの完成だ。
「よし、これで完成なんですけど・・・・」
いつも通り、私の作業をじっとみてる涼さんに、私は疑問に思ったことを聞いてみることにした。
「あの・・涼さん?」
「うん?」
「お花・・会社用にお買い上げされるんですか?」
遠回しに聞くと、涼さんはにこにこ笑いながら答えた。
「ううん?会社は会社だけど、俺の机に飾るよ?」
この答えは前にも聞いた内容だ。
『会社用』と称して買いに来てくれていた涼さんは、買った手前、会社の自分の机に飾っていると教えてくれた。
それはそれでいいと思うけど、毎回『色』を指定される理由がわからないでいたのだ。
「なんでいつも色を指定するんですか?好きな色とか?」
そう聞きながらラッピングをしてると、涼さんは笑いながら答えた。
「秘密。」
「うーん・・・。」
その真意がわからないままラッピングを終え、お会計に入る。
「6500円ですー。」
涼さんはお会計済ませ、軽く手を振りながら帰っていった。
私はその後姿を見つめながら、深まる謎を考える。
「・・・今日のラッキーカラーとかかな。」
そんなことを考えてる時、一緒に働いてる夏美さんが声をかけてくれた。
「ハルちゃーん、今日、2時上がりじゃない?病院の日でしょ?」
そう言われ、私はお店の時計を見た。
時間は2時になる5分前だ。
「わぁ・・!お先に失礼しますー!」
そう言って私はバタバタと帰る準備をし、お店をあとにした。
ーーーーー
「・・・こんにちはー。」
お店を出た私はそのまま直接病院に来ていた。
ここは『四条病院』。
国内でも指折りの大病院だ。
代表的な内科、外科を始め、皮膚科に歯科、美容外科、さらには移植科、高齢医学科など項目がかなり細かく分かれた診療科目が特徴の病院で、救急はもちろん、ドクターカーやドクターヘリなんかもある。
サイレンを鳴らした救急車がしょっちゅうくる病院なのだ。
「あらハルちゃん、いらっしゃい。今日は診察?」
ナースステーションにいつもいる看護師さんがそう聞いてくれた。
「そうなんですー。・・・兄っていますか?」
私の兄はこの四条病院で働いている医師だ。
いろんな科目を転々としてる、ちょっと変わりものの兄なのだ。
「いるよー。あとで呼ぶからちょっと待っててね?」
「はい。」
私は待合の椅子に腰かけた。
鞄から本でも取り出そうかと思った時、パタパタと廊下を走る音が聞こえてくる。
「ハルっ・・!」
「お兄ちゃん。」
走ってきたのは紛れもなく、私の兄だった。
白衣をたなびかせ、ほんの少しだけ息を切らせて私の名前を呼ぶ。
そして茶色い髪の毛を手でかき上げながら私の前に立った。
「今、どこの科にいるの?」
走って来たことを考えたら私が今いる『皮膚科』ではなさそうだった。
「今は腎移植科。さっきオペが終わったんだよ。ちょうどよかったな。」
そう言って私の頭をくしゃっと撫でた。
「へへ。」
「ちょっと待ってろ。診察室空いてるとこ聞いてくるから。」
そう言って兄はナースステーションに入っていった。
「お兄ちゃん・・・私に彼氏ができたって言ったら怒るかな。」
15歳も離れてる兄は、私が生まれた時から大事に大事にしてくれていた。
お花の展覧会や、品評会のときは必ずと言っていいほど毎回見に来てくれていたし、家で花を生けたら100枚くらい写真を撮ってくれる。
いつも優しくて・・・大好きなお兄ちゃんだ。
(あの事件のときもお兄ちゃんが治療してくれたから・・・私の腕と足が動くんだもんね。)
ストーカーに刺された傷は深かったらしく、神経を傷つけていた。
お兄ちゃんが懸命に手術で神経を繋いでくれたから・・・私の腕と足はちゃんと動いてるのだ。
「ハルー?こっち空いてるから来いー。」
思い返してると兄が私を呼んでいた。
「はーい。」
私は椅子から立ち上がり、兄と一緒に診察室に入っていった。
「で?調子はどう?」
服を脱ぎながら問診してくる兄に、私は最近のことを伝えた。
いつも通り仕事をしてること、してみたいことができたから挑戦中なこと、それと・・・彼氏ができたことを。
「・・・マジで!?」
「マジだよ。」
「どんなやつ!?」
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私は笑いながら答えた。
「ふふ、お兄ちゃんみたいな人だよ。」
そう言うと兄はペンを取り、カルテを見ながらぼそっと言った。
「まぁ、彼氏くらい出来てもおかしくない年だしな。」
「・・・ふふ。今度紹介するね?」
「うん。・・・じゃ、ベッドに横になって。」
「はーい。」
私はベッドに横になり、兄の診察を受けた。
ーーーーー
「異常はなさそうだな。」
診察が終わると兄はカルテに書き込み始めた。
それを横目に見ながら私は服を着ていく。
「・・・この傷ってさ、消えないかな?」
半袖を着ることすら迷うくらい、傷はしっかりと残っていた。
足はミニスカートを穿かない限り見えないからいいとしても、これから暑い季節に突入するから半袖は着たいところだ。
「まぁ、手術すれは消せるかもしれないけど・・・キレイにするのはちょっと難しいかな。結局また手術の痕は少し残るし。」
「そうだよねー・・・。」
「それにお前の場合、結構手術繰り返したから麻酔が効かなくなるかもしれないしな。人間『慣れ』ってのが一番怖いもんだ。」
「う・・それは困るかも・・・。」
この先大きい病気をしないとは限らない。
その時に麻酔が効かないなんてことになったら・・・考えただけでぞっとする。
「どうしてもって思うくらいになったらまた相談しろ。考えるから。」
そう言って兄は私のカルテを閉じた。
「うん、わかった。」
服を着終わり、私は鞄を持った。
診察室を出ようとしたとき、兄が私に言う。
「お前、このあと暇?」
「え?まぁ、用事とかはないけど?」
「ならメシ食いに行こう。俺ももう上がるから。」
「んー・・・わかった。じゃあ下の喫茶店で待ってるから迎えに来てね。」
「オーケー。」
私と兄はこの診察室で一旦別れた。
久しぶりの兄とのご飯に私の心が躍る。
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