溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

文字の大きさ
上 下
18 / 91

18

しおりを挟む
4年前、当時高校3年生だった私は家にストーカーに押し入られた。

その時ちょうど兄が家にいたため、追い払ってくれて無事だったけど・・・その翌週にまた襲われたのだ。

それはちょうどお花の品評会の日だった。


ーーーーー

ーーーーー




「お疲れ様でしたー!またお願いしますー!」


4年前の夏終わりごろの夜、品評会を無事終えた私は着物から制服に着替え、会場をあとにした。


「あー・・もう真っ暗だなー・・雨降ってるし・・・。」


その日はお昼から天気は下り坂になってしまい、ぽつぽつと降り始めた雨はいつのまにか本降りに。

夕方で終わった品評会も、片付けや着替えなんかをしてるとあっという間に夜になってしまっていた。


「タクシー拾いたいけど・・・人通りもあんまりないから来なさそう・・。」


街の中心部から離れたホールで開かれていた品評会。

もう参加者たちのほとんどが帰ったようで、人通りがまばらだったのだ。


「コンビニ行くかー。駅までに一軒くらいあるよね。」


傘を持っていなかった私はコンビニで傘を買おうと小走りに駆け始めた。

鞄を傘代わりに頭に置き、濡れたマンホールでこけないようにして走って行く。


「んー、どこかなー。」


品評会の為に初めて来た場所だったこともあって、私はコンビニの場所がわからなかった。

走っていた足を止め、ひとまず辺りを見回してみる。


「駅って・・こっちだったよね・・?」


会場に来るときはタクシーを使った私。

来た道を辿っていたつもりだったけど、だんだん自信がなくなり始めていた。

駅に近づいてるハズなのに街の灯りは少なく、人もほとんどいないのだ。


「うーん・・間違えたかな?」


きょろきょろと辺りを見回しながら、私はスマホを取り出した。

兄に電話をかけて迎えに来てもらおうと思ったのだ。


「えーと、お兄ちゃんは・・と・・・」


雨で濡れる画面を服で拭きながら履歴を探してるとき、私の手をがしっと掴んで引っ張った人がいた。


「え・・・?」


ふり返る間もなく路地に引っ張り込まれ、私はバランスを崩して地面に倒れこんでしまった。


「きゃ・・!いたっ・・!」


コンクリートの地面に腕を擦り、じんじんと痛みが波を打つ。

誰に引きずり込まれたのか分からず、顔を上げるとそこには・・・前に家に押し入ってきたストーカーが立っていたのだ。


「え・・・?」

「ハ・・ハルちゃん・・だめじゃないか・・・」


ぼそぼそと話しながら一歩ずつ近づいてくるストーカー。

ポケットに右手を入れ、倒れこんだ私の上にまたがって乗って来たのだ。


「ちょ・・!何するんですか!!」

「この前、せっかくハルちゃんを迎えに行ったのに・・・お兄さんがいるなんて聞いてなかったよ・・?」


ニタニタ笑いながら空いた手で私の口を塞いできた。

抵抗するものの体重をぐっとかけられ、息をするので精いっぱいだ。


「んーーっ!!んーーーっ!?」

「この前はあんなことになったから一緒にいれなかったけど・・・僕、気がついたんだよ。・・・こうすればハルちゃんを連れて動きやすいってね。」


そう言ってストーカーはポケットからナイフを取り出した。

数少ない外灯の光を刃が反射し、鋭利な先端が目に映る。


「んーーーっ!?!?」

「大丈夫、すぐ終わるから。」


ストーカーは私の顔をじっと見ながら・・・私の太ももを刺した。


「んーーーーっ!!!」


突然走った左足の痛みに、私は抵抗するために握っていたストーカーの手首に爪を立てた。


「これで歩けないから、僕がだっこしてあげるね。・・・じゃあ次はその手・・その手は悪い手だね。」


そう言って今度は・・・私の左側の二の腕を刺した。


「!?・・・あぁぁぁぁっ!!!」


想像を絶する痛みから逃れようと、力いっぱい全身を揺らした。

その時にストーカーが押さえてた口元の手がずれ、思いっきり叫び声をあげたのだ。


「あ!そんなに大きな声出したら・・・!」


「・・・どうかしましたか!?」


尋常じゃない私の叫び声を聞きつけた人が路地裏に飛び込んできてくれた。


「あー・・もうほらー・・・仕方ない。」


そう言って私の上から下りて、路地の奥に走って逃げていった。


「大丈夫ですか!?すぐ救急車呼びますから・・!!」

「はぁ・・はぁ・・びょういん・・四条病院・・お願い・・しま・・」


波打つようにして痛む腕と足。

刺されたショックから、私はそのまま意識を失った。

目が覚めた時は病院のベッドの上で、心配そうに兄が覗き込んでいた。

主治医として私の治療にあたってくれた兄から言われたのは、後遺症のこと。

疲れが溜まったりすると腕や足が痛むことがあるとのことだった。

それから私は疲れを溜めないように極力努力して生活をすることになったのだ。

あのストーカーにまた襲われないために被害届を出し、遠くに引っ越しもした。

華道の表舞台には出ないことを決意し、今日まで生活してきたのだ。




ーーーーー


ーーーーー



「・・・と、こんな感じの続きがあったんです。神経を傷つけてるので雨の日とか痛むときありますし、何より傷痕は消えなくて・・・だから・・都築さんの優しさが辛くて・・」


そう言うと都築さんは私の両頬を手で包んだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

処理中です...