溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「え?」


都築さんの言葉に、私は目を開けた。

彼は隣でじっと私を見ている。


「今日、どうだった?楽しかった?」


笑顔で聞いてくる都築さんに、私は思ったことを素直に伝えた。


「楽しかったです。お出かけも久しぶりでしたし、ご飯もおいしかったですし。」


それに加えて思いがけずお花を触る機会もあった。

何より都築さんの話も楽しくて・・・私を気遣ってくれてるのがよくわかる。


「楽しかったならよかった。・・前に『チャンスが欲しい』って言ったの覚えてくれてる?」

「それは・・覚えてます。」


マンションまで衣装ケースを運んでもらった日に言われた言葉だ。

その日から私は都築さんのことをしょっちゅう考えるようになっていた。


「まだ1回しかちゃんと会ってないけど・・・また一緒にでかけたりしてくれる?どうかな?」

「・・・。」


正直、都築さんは非の打ち所がないくらいすごい人だ。

優しくて、気遣いも出来て、会社も経営してる。

整った顔立ちに、溢れる穏やかな雰囲気は何もかも包み込んでくれそうな感じがある。


(こんな人が私を好いてくれてるなんて・・・後にも先にもないことだなぁ・・。)


そんな幸せな気持ちに一瞬浸り、私は首を横に振った。


「申し訳ないんですけど・・・」


『今日限りでお願いします。』と言おうと思った時、なぜか私の目から涙がこぼれた。

手の甲に一粒落ちた涙をじっと見つめる。


「あれ・・ちょっと・・すみません・・・。」


鞄からタオルを取り出して目元を押さえた。

都築さんは心配そうに私を覗き込んでる。


「どうした?どっか痛い?大丈夫?」

「大丈夫です、どうして涙がでたのか分からないですけど・・・。」


そういいながら涙を拭うと、都築さんは私の背中を擦り始めた。

ゆっくりゆっくり上から下に擦ってる。

その手は大きくて・・擦られる端から安心感に包まれていく。


「何か心配事でもある?俺でよかったら聞くけど・・・?」

「いえ・・だいじょうぶです・・ほんとすみません・・・」


都築さんの優しさに、拭ったハズの涙がまた溢れて来るのがわかった。

これ以上は・・・まずい。


「大丈夫です・・!もうほんとに・・!あの!これで失礼します・・!」


そう言って私は立ち上がった。


「え・・!?ちょ・・!」


そのまま東屋を出て園内の通路を走るようにして突き進む。


「待って・・!秋篠さん・・!」


そう言って追いかけて来る都築さんに追いつかれないように、私はスピードを上げた。

キレイに咲いてる花たちの間をすり抜けていく。


「はぁっ・・!はぁっ・・!」


ひらひらと揺れるスカートを手で押さえながら前だけを向いて走ってると、その手を・・・都築さんが掴んだ。


「ゆっくりスピード落としながら止まって。」


片方の手で私の手を引き、もう片方の手で私の背中を押す都築さん。

私の速度を殺すように持って行かれ、私は見事に止まらされた。


「ゆっくりでいいから息、落ち着かせて。」

「はぁっ・・!はぁっ・・・」


私と違って息なんて一つも乱れてない都築さんは、また私の背中をゆっくりと擦り始める。

どくどくと波打つ心臓を落ち着かせようと胸を押さえながら深呼吸できるように繰り返す。


「はぁっ・・っ・・・・」


5分もすれば落ち着く荒い息。

その間ずっと、都築さんは背中を擦ってくれていた。


「も・・だいじょぶです・・・それよりなんで・・・」


『追いかけて来たのか』が疑問だった。


「ん?ここで逃がしたら男じゃない・・だろ?」


そう言う都築さんは、いつもの都築さんと雰囲気が違って見えた。

優しさを少し残して・・なんだか・・『男の人』に見える。


「----っ。」

「さて、ちょっと落ち着いたところで話、聞かせてくれる?」


背中を擦ってくれていた手は、いつの間にか私の手を握っていた。

都築さんはゆっくり歩き出し、私は引かれるようにして彼の少し後ろを歩く。


「どこがいいかな・・・。あ、ちょうどそこにベンチあるからそこ座ろうか。」


都築さんが見つけたのはハーブのエリアにあるベンチだ。

大きなリンデンの木の下に、木陰休みができるように設置されてる。

私はそこに座らされた。

都築さんは隣ではなく、私の前に屈んで覗き込むようにして座ってる。


「なんか辛いことでも思い出した?話してくれない?」

「・・・。」


心配そうに覗き込む都築さんに負け、私は今、自分が思ってることを全部話すことにした。

今日は本当に楽しかったこと、都築さんみたいな素敵な人が私のことを好きだと言ってくれてとても嬉しかったことを。


「都築さんみたいな素敵な人にそんなこと言ってもらえるなんて、この先二度とないだろうなと思ったら・・・涙がでたみたいですね。」


笑いながらいうと、都築さんは私の目元を指でなぞった。

さっき、涙が伝った場所だ。


「そう思ってくれてるならなんで断るの?俺じゃ足りない?」

「そんなことないです・・!こんな素敵な人、他にいませんよ。・・・でも・・」


私は自分の左側の二の腕を、反対の手でぎゅっと握った。

ここに、ストーカーから受けた傷がある。


「私・・4年前にストーカーが家に押し入ってきたって言いましたよね・・?」

「うん、聞いたよ?」

「それ・・続きがありまして・・・」





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