溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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「・・『やめた方がいい』?それはどうして?」


そう聞くと彼女は俯いて黙ってしまった。


「・・・。」

「言えないならそれはそれでいいんだけど・・俺が諦める理由にはならないよね?」

「それは・・・」


彼女は言葉に困ったのか、目が少し泳いでる。

問い詰める意味もないから、俺は席から立ち上がった。


「そろそろ出ようか?動ける?」


彼女は俺の動きに合わせるようにして立ち上がった。


「動けますー、大丈夫ですー。」

「そう?ふらついたりしたらすぐ教えてよ?」


彼女の様子を見ながら個室から出て、出口に向かって足を進めた。

ちらちら彼女を見るものの、足元がふらつくわけでもなく、普通に景色を見ながら歩いてる。


(そういえば・・秋篠さんっていくつなんだろ。)


前にお店まで送った時に聞いたのは『4年前まで高校生だった』ってことだけだ。

なら20歳から22歳の間っていう計算にはなるけど・・・


(どっちにしても若いんだよな・・・俺の歳聞いたら引くんじゃないかな・・。)


このあと俺が勝手に考えてる予定に誘うため、カウンターで会計の手続きをお願いしながら聞いてみる。


「秋篠さん、このあとよかったら植物園いかない?ちょっと距離あるんだけど・・・。」


彼女の好きな花や緑がたくさんある場所を調べ上げていた俺は、少し距離があるけど大きい植物園見つけていた。

距離があるということはその間にかかる時間は一緒にいることができる。


「!!・・いいんですか!?」


目を輝かせていう彼女に、俺は内心ガッツポーズをした。

これでもう少し彼女と一緒にいれる。


(好きになってくれたらいいのにな。)


淡い期待を抱きたい気持ちにかられてると、カウンター業務の従業員が俺に言った。


「申し訳ございません、代金を頂戴することはできないことになっております・・・。」


三門は徹底して伝達していたようで、会計をすることはできなさそうだった。


「わかった。・・・おいしいご飯ありがとう。ごちそうさま。」


そう言うと秋篠さんも従業員に向かって言った。


「ごちそうさまでした。」


軽く頭を下げる姿に、彼女の優しい性格が見える。


「じゃあ行こうか。」

「はいっ。」



ーーーーー



二人が『花鳥風月』をあとにしたとき、一人の男が『花鳥風月』の裏口から入って来た。

近くにいた従業員に声をかける。


「あ、ごめん、さっき花を生けに来た『貫地谷 一連(かんじや いちれん)』だけど・・忘れ物しちゃってさ、探しに行ってもいい?」

「あー・・・どうぞ?」

「ありがとう。」


背中の真ん中くらいまである黒い髪を一つに束ね、ジーンズに長袖シャツというラフな格好で館内を歩いて行く。


「多分トイレかなー、帰り際に行ったときに忘れてそうだ。」


彼が忘れたのは『スマホ』だ。

頼まれた花を生けた帰り道でスマホが無いことに気がついた。

あれがないと仕事に支障が出るため急ぎ足でトイレに向かうと、手洗いのカウンターにスマホがあるのが見えた。

自分のものだと確認し、ポケットに入れる。


「これでよし。・・・ついでだから俺の花も見て帰るか。」


そう思って館内エントランスに足を向けた。

生けた花をどこに飾るのかを事前に見せてもらっていたから場所はわかってる。


「確かこの先を曲がったところだったな。」


そう思って通路の角を曲がると、そこに俺の花はなかった。


「あれ・・?確かここだったハズ・・・。」


『ここに飾る』と言われてた場所には違う花が置かれていた。

周りを見回しても俺の花はどこにもない。


「どういうことだ?」


『花鳥風月』側が俺に依頼料を支払ってることから、生けた花を飾らないとは思えない。

かといって、あんな大きくて重たい花器を、違う場所に持って行って飾るとも思えなかった。


(あれはエントランスしか映えないだろうし・・・。)


首を捻りながら考えてるとき、足元に花器の破片を見つけた。

かなり小さい破片だったけど、柄が少し残っていて花器だとわかったのだ。


(あー・・なるほど。落としたのか。なら金は返さないとな。)


大体察しがついた俺は、俺の代わりに置かれた花をじっと見た。

シュッと伸びた空木に根元にある葉。

それに赤い花が添えられてる生け方に、俺はピンときた。


「へぇ・・・『悠春』が来たのか。」


懐かしい名前に、俺の気分は急に上がった。

ニヤつく口元を手で押さえ、そのまま裏口に向かう。


(あいつ・・4年前に表から姿消してからどこほっつき歩いてるのかと思ったら・・こんなとこにいたのか。)


そのうち悠春に会えることを確信した俺は、そのまま『花鳥風月』をあとにした。





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