溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

文字の大きさ
上 下
10 / 91

10

しおりを挟む
「特定の人・・ですか?」


彼女は首をかしげながら聞いてきた。

どうやら意味は伝わってないみたいだ。


「あー・・彼氏・・とか?」


そう聞き直した時、ちょうどエレベーターに着いた。

さっき乗って来たエレベーターがまだいてくれたようで、ボタンを押すとすぐにドアが開いた。


「あ、彼氏ですか。いないですー。」


その言葉に俺は内心ガッツポーズを決めた。

二人でエレベーターに乗り込み、『1階』を押す。


「好きな人とかもいない?」


『いる』と言われたらどうしようかと思いながらも聞いてみる。

さっき決めたガッツポーズが無駄にならないことを祈るばかりだ。


「好きな人は・・・そうですね、いないです。」

(よし!!)


再びガッツポーズを決めれたところで、彼女は俺にとって不利になるようなことを言った。


「いないというか・・好きな人ができても仕方ないので・・。」

「・・え?」


『仕方ない』という言葉が気になった俺は聞き返した。


「仕方ないって?」


すると彼女は上を見ながら話し始めた。


「まぁ、収入も安定ではないですし、過去の事件もありますし?ストーカー被害にあった女の子なんて相手にしてもらえると思えませんし。」


諦めてるような口調で淡々と話す彼女。

『恋愛を諦めてる』なら・・『チャンス』だと思った。


「あ、1階に着きましたね。どうぞ。」


ちょうどエレベーターが1階に着き、彼女はそう言って開いたドアを押さえた。

その手を取って15階のボタンを押し、ドアを閉める。


「じゃあ・・俺が立候補してもいい?」


そう聞くと彼女は驚いたような顔を見せた。


「・・・へ!?」


ぐんぐん上るエレベーターの中で、彼女は困ったように笑いながら言う。


「いや・・聞いてました?私、収入も安定してませんし、何より4年前にストーカーにーーー」


俺が言ったことを冗談だとでも思ったのか、ペラペラと話続ける彼女。

必死に話し続けるのは・・・動揺してる証拠だ。


「聞いて?秋篠さん。」


優しく話しかけると、彼女の話が止まった。

そしてゆっくりと俯いた。


「今度、ご飯でもいかない?だめなら断ってくれていい。でも・・・『理由』が無いなら断らないで?俺にチャンスを与えて?」

「・・・。」


そう聞いたとき、エレベーターはまた15階に止まった。

開いたドアを手で押さえ、彼女の背中をそっと押してエレベーターから出す。

俺はエレベーターに残ったまま、1階のボタンを押した。

そしてドアが閉まる直前に、彼女に言った。


「来週、お店に行くから。そのとき返事聞かせて?ご飯付き合ってくれるなら・・休みの日を教えて?」


そう伝えたあと、エレベーターのドアは閉まった。



ーーーーー



エレベーターのドアが閉まったあと、私は15階の通路で一歩も動けないまま立っていた。


(立候補って・・え・・?)


言われた言葉の意味はわかっていた。

わかってはいたけど自分の身に起きてることだと認識できるまでに時間がかかってるような気がする。


(え・・私、言ったよね?収入も安定してないし・・ストーカーにもって・・・。)


襲われたわけではないけど、被害にあったことは事実だ。

普通ならこんな女の子、相手にされるはずがない。


(冗談・・だよね?)


そう思うものの、都築さまの表情や言葉から『冗談だった』という選択肢は適切ではない気がした。

本気だとしても俄かには信じがたい。


(どうしたらいいんだろう・・・。)


悩みながら、私は歩き始めた。

今日はもうドライフラワーを作るような気分になれそうもなく、私は家のソファーでごろごろするしかなかった。




ーーーーー



それから4日後。

いつも通り私は花屋で仕事をしていた。

お客さまの波が引き、雑用の時間に入ったから地面にしゃがみ込んで、バケツで吸水させていた花たちの茎を整えてる。


「・・・。」


パキパキと花鋏で切ってると、夏美さんが悲鳴に近いような声を放った。


「きゃぁ!?ハルちゃんどうしたのそれ!?」

「え?」


ふと手元を見ると、持っていた花の茎が無くなってしまっていたのだ。


「わぁ・・!!」


辺りには短い茎がいくつも落ちてる。

そのことから考えると、私は何回も茎を切ってしまって、とうとう花だけにしてしまったようだった。

そしてそれは一輪だけではなく、茎を失くした花たちが五つほどあったのだ。


「す・・すみません・・・。」


謝りながら手で茎たちを集め、ダストボックスに入れる。

茎を失くしてしまったお花たちは余ってる吸水バケツにそっと浮かべた。


「珍しいねぇ、ハルちゃんがそんなことするなんて・・・。」

「すみませんー・・・。」


気を引き締め直して、私は次のバケツに手を伸ばした。

そのとき、夏美さんが私の隣にしゃがみ込んできたのだ。


「ねぇねぇ、なんかあった?」

「!!」


その言葉に、私は持っていた花の茎をありえない位置で落としてしまった。


「あ・・・」

「あーあー・・こりゃ何かあったね。この夏美さんに言ってみな?」


そう言われ、私はこの前の都築さまとのやり取りを夏美さんに話した。

それからどうしたらいいのかわからないまま、4日も経ってることを。


「あー・・なるほどー・・・。」


いくら考えても、自分がどうすればいいのかわからなかった。

このまま都築さまが来店される日が来てしまったらパニックを起こしそうだ。


「ねぇ、ハルちゃんは都築さまのことどう思う?見た目とか、なんでもいいから言ってみて?」

「え・・うーん・・・。」


私はいつも来店される都築さまを思い出した。

スーツに身を包んでること、いつもアレンジメントをお買い上げされること、去年の春くらいから来店されるようになったこと、あと・・・


「いつも優しいですね、話し方もそうですし、視線とか、一つ一つの動作とかも。」


高圧的な態度は見たことがなかった。

大量のシリカゲルを持っていたときは何も言わずに運んでくれたし、先日の大きい衣装ケースだって普通に持ってくれたのだ。

良い印象しかない都築さまを思い出してると、夏美さんがとんでもないことを言った。


「ならさ、ご飯行ってみたら?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

処理中です...