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都築さまにお店まで送って頂いてから数日が経った土曜日。
私はレシピを見ていた。
それは『ドライフラワー』のレシピだ。
「えーと・・・。」
ドライフラワー自体は作り方は知っていた。
作って家に飾ってるものもいくつかある。
ただ普通のドライフラワーは色が褪せてしまい、生花のような色は残せないのが普通なのだ。
「この前、聞いたんだよねー、『シリカゲル』を使って乾燥させたら生花と変わらないドライフラワーが作れるって。」
お客さまでハーバリウムを趣味にされてる方が教えてくれたこと。
短期間でドライフラワーに出来る上に色も残せる方法があるのだと。
そんな方法、聞いてしまったら試さずにはいられない。
『大量に使うからたくさんいるよ』と教えてくださったお客さまの言葉から私は先日業者に頼み、シリカゲルを大量購入したのだった。
家の廊下にずらっと並んだシリカゲルたちは10袋。
2万円払ってどれくらいのドライフラワーができるのかわからなかったけど、備えあれば患いなし。
『足りない』っていうのが一番困ることだから、これだけあれば大丈夫だと勝手に思ったのだ。
「さてさて、まず必要なのがー・・・・」
『お花友達』に連絡して教えてもらった作り方。
そのレシピを読んで私は驚いた。
「え・・・大きい入れ物・・!?」
レシピに書かれていた『必要なもの』はシリカゲルのほかに大きな入れ物だったのだ。
作り方を見ると、生花を大きな入れ物に入れてシリカゲルで埋めて作る・・というものだった。
自宅に大きな入れ物なんて無い私は、ここで早くも壁にぶち当たってしまったのだ。
「あー・・もー・・買いに行くしかないじゃんっ。」
仕方なく私は鞄を持ち、家を出た。
向かうのは歩いて30分のところにある大型のホームセンターだ。
「衣装ケースだったら大きい入れ物だよね。シリカゲル使うんなら蓋があった方がいいし・・・3つくらいあればいいかな?」
私はドライフラワーを作るのを楽しみに、ホームセンターに向かった。
ーーーーー
「・・・うーん、衣装ケースって意外とかさばる・・・。」
無事にホームセンターで衣装ケースを手に入れた私は、3つ重ねた衣装ケースをだっこするような形で持っていた。
そこそこ重たいものの、この前の20キロと比べると何ともないと思える重さだ。
でも・・・衣装ケースは大きすぎた。
両手を真っ直ぐに伸ばした状態で衣装ケースを持ってる私は、自分の身体に押さえつけるようにして落下を防いでいるのだ。
ちょっとでも手を緩めると足元に落ちてしまいそうなのを堪えながら歩いてる。
「何回か下ろさないと無理かな?」
そんなことを考えながらひたすら歩いてると、持ってる衣装ケースが急に浮いた感覚に襲われた。
「ふぁっ・・!?」
驚いて足を止めると、知った声が聞こえて来たのだ。
「・・・また重いの持ってるの?秋篠さん。」
「!!・・・都築さま!?」
ひょいと衣装ケースを取り上げられ、私の視界に都築さまが入った。
「わ・・お休みですか?」
いつもスーツ姿の都築さまが今日はラフな格好をされていた。
薄手の白のTシャツに上下が紺のジャケットにパンツ。
似合ってる着こなし方に、思わず見入ってしまう。
「休みだけど・・秋篠さんはこんな大きいの持って何してるの?」
そう聞かれ私は取られた衣装ケースに手を伸ばした。
「ちょっと必要でして・・・」
手を伸ばすものの、都築さまは衣装ケースを片手で小脇に抱えるように持ってしまった。
「家で?」
「家・・ですね。ちょっと作りたいものがあって衣装ケース買いに来たんですー。」
そう伝えながら私は両手を差し出した。
「えっと・・返していただいてもいいですか・・?」
そう聞くと都築さまはスマホを取り出し、何か操作しながら言った。
「タクシー呼ぶから待ってて?」
その言葉に私は慌てて否定した。
「だっ・・大丈夫ですっ・・!30分くらいで着きますからっ・・!」
衣装ケースを返してもらおうと手を伸ばすと、都築さまは驚いた顔で私に聞き返してきた。
「30分!?歩いて!?」
「そうです・・!いつも歩いてる距離なんで大丈夫ですから・・!」
そう言うと都築さまは手に持っていたスマホをポケットにしまった。
空いた手で道路の先を指差してる。
「家ってあっちのほう?」
「そう・・ですけど・・。」
「近くまで持っていくよ。案内してくれる?」
都築さまはそう言って歩き出してしまった。
「え・・!?」
「ここ真っ直ぐ?」
スタスタと歩いて行く都築さまの後ろを追いかけるようにして歩いて行く。
「大丈夫ですっ・・!ちゃんと持って帰れますので・・!」
そう言っても都築さまは返してくれる気配なんか微塵も見せない。
それどころか歩くスピードがだんだん上がってるような気もしていた。
「はぁっ・・!はぁっ・・!ちょ・・待って・・・」
すぐに息が切れた私は追いかけることを諦めて立ち止まった。
若干息を整えて、都築さまに向かって叫ぶ。
「言います・・!言うんで待ってください・・!」
私の声に、都築さまは足を止めた。
そして少し困ったように笑いながら言った。
ーーーーー
私はレシピを見ていた。
それは『ドライフラワー』のレシピだ。
「えーと・・・。」
ドライフラワー自体は作り方は知っていた。
作って家に飾ってるものもいくつかある。
ただ普通のドライフラワーは色が褪せてしまい、生花のような色は残せないのが普通なのだ。
「この前、聞いたんだよねー、『シリカゲル』を使って乾燥させたら生花と変わらないドライフラワーが作れるって。」
お客さまでハーバリウムを趣味にされてる方が教えてくれたこと。
短期間でドライフラワーに出来る上に色も残せる方法があるのだと。
そんな方法、聞いてしまったら試さずにはいられない。
『大量に使うからたくさんいるよ』と教えてくださったお客さまの言葉から私は先日業者に頼み、シリカゲルを大量購入したのだった。
家の廊下にずらっと並んだシリカゲルたちは10袋。
2万円払ってどれくらいのドライフラワーができるのかわからなかったけど、備えあれば患いなし。
『足りない』っていうのが一番困ることだから、これだけあれば大丈夫だと勝手に思ったのだ。
「さてさて、まず必要なのがー・・・・」
『お花友達』に連絡して教えてもらった作り方。
そのレシピを読んで私は驚いた。
「え・・・大きい入れ物・・!?」
レシピに書かれていた『必要なもの』はシリカゲルのほかに大きな入れ物だったのだ。
作り方を見ると、生花を大きな入れ物に入れてシリカゲルで埋めて作る・・というものだった。
自宅に大きな入れ物なんて無い私は、ここで早くも壁にぶち当たってしまったのだ。
「あー・・もー・・買いに行くしかないじゃんっ。」
仕方なく私は鞄を持ち、家を出た。
向かうのは歩いて30分のところにある大型のホームセンターだ。
「衣装ケースだったら大きい入れ物だよね。シリカゲル使うんなら蓋があった方がいいし・・・3つくらいあればいいかな?」
私はドライフラワーを作るのを楽しみに、ホームセンターに向かった。
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「・・・うーん、衣装ケースって意外とかさばる・・・。」
無事にホームセンターで衣装ケースを手に入れた私は、3つ重ねた衣装ケースをだっこするような形で持っていた。
そこそこ重たいものの、この前の20キロと比べると何ともないと思える重さだ。
でも・・・衣装ケースは大きすぎた。
両手を真っ直ぐに伸ばした状態で衣装ケースを持ってる私は、自分の身体に押さえつけるようにして落下を防いでいるのだ。
ちょっとでも手を緩めると足元に落ちてしまいそうなのを堪えながら歩いてる。
「何回か下ろさないと無理かな?」
そんなことを考えながらひたすら歩いてると、持ってる衣装ケースが急に浮いた感覚に襲われた。
「ふぁっ・・!?」
驚いて足を止めると、知った声が聞こえて来たのだ。
「・・・また重いの持ってるの?秋篠さん。」
「!!・・・都築さま!?」
ひょいと衣装ケースを取り上げられ、私の視界に都築さまが入った。
「わ・・お休みですか?」
いつもスーツ姿の都築さまが今日はラフな格好をされていた。
薄手の白のTシャツに上下が紺のジャケットにパンツ。
似合ってる着こなし方に、思わず見入ってしまう。
「休みだけど・・秋篠さんはこんな大きいの持って何してるの?」
そう聞かれ私は取られた衣装ケースに手を伸ばした。
「ちょっと必要でして・・・」
手を伸ばすものの、都築さまは衣装ケースを片手で小脇に抱えるように持ってしまった。
「家で?」
「家・・ですね。ちょっと作りたいものがあって衣装ケース買いに来たんですー。」
そう伝えながら私は両手を差し出した。
「えっと・・返していただいてもいいですか・・?」
そう聞くと都築さまはスマホを取り出し、何か操作しながら言った。
「タクシー呼ぶから待ってて?」
その言葉に私は慌てて否定した。
「だっ・・大丈夫ですっ・・!30分くらいで着きますからっ・・!」
衣装ケースを返してもらおうと手を伸ばすと、都築さまは驚いた顔で私に聞き返してきた。
「30分!?歩いて!?」
「そうです・・!いつも歩いてる距離なんで大丈夫ですから・・!」
そう言うと都築さまは手に持っていたスマホをポケットにしまった。
空いた手で道路の先を指差してる。
「家ってあっちのほう?」
「そう・・ですけど・・。」
「近くまで持っていくよ。案内してくれる?」
都築さまはそう言って歩き出してしまった。
「え・・!?」
「ここ真っ直ぐ?」
スタスタと歩いて行く都築さまの後ろを追いかけるようにして歩いて行く。
「大丈夫ですっ・・!ちゃんと持って帰れますので・・!」
そう言っても都築さまは返してくれる気配なんか微塵も見せない。
それどころか歩くスピードがだんだん上がってるような気もしていた。
「はぁっ・・!はぁっ・・!ちょ・・待って・・・」
すぐに息が切れた私は追いかけることを諦めて立ち止まった。
若干息を整えて、都築さまに向かって叫ぶ。
「言います・・!言うんで待ってください・・!」
私の声に、都築さまは足を止めた。
そして少し困ったように笑いながら言った。
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