溺愛彼氏は経営者!?教えられた夜は明けない日が来る!?

すずなり。

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陽射しが暑く感じ始めた4月最後の火曜日の朝8時。

職場である花屋で私は仕事をしていた。

水揚げが終わってる花たちをバケツから出し、種類別に並べていく。

きちんと水を吸収できた花たちはどれもキレイに輝いていた。


「ふふ、今日も誰かに大切にしてもえるようにお手伝いするね?」


色も形も違う花たちはお祝い事やプレゼントによく選ばれる。

他にも仕事場の『華』としてや、お店のディスプレイ用としても使われることも多いのだ。


「さて、予約のチェックしなきゃ。」


そう思ってカウンターに向かった時、一緒に仕事をしてる『夏美さん』が花が入ったバケツを両手に抱えて泣きそうな顔をしながら裏口から入って来た。


「ハルちゃーん・・オープンの10時までにアレンジメント6個できるー?今日、予約が凄すぎるのよー・・。」

「え!?10時までですか!?」


私はカウンターにある予約表を慌てて確認した。

そこには3000円から8000円の値段設定で、確かに6個の注文があったのだ。


「わぁ・・・」

「花束の予約もあるのよー・・終わったらアレンジに回るから・・・頑張って!」


時計を見ると時間は午前8時35分。

10時に6個のアレンジメントを終わらせようと思ったら1個にかけれる時間は15分しかないことになる。


(3000円のは間に合うかもしれないけど、ラッピングと伝票作るのに時間もかかる・・・8000円のはもっと時間かかるし・・・)


考えてるうちにも時間は過ぎていく。

私は悩みながらもお客さまの『ご希望欄』を見た。


(!!・・・これは・・・)


ご希望欄に書かれていたのは『色』の指定だった。

運良く、6個とも『紫』を指定してくれていたのだ。


「夏美さん、バックカウンター、全部使わせてください!10時までに仕上げます!」


お花の手入れやラッピングに使うバックカウンター。

そこを全部使って一度に作ってしまおうと、私は考えたのだ。


「良いよ!任せて!!」


そう言って夏美さんは持っていたバケツを床に置き、バックカウンターを一瞬で片付けた。

手入れあとの葉や枝、それに花びらなんかがたくさんあるのをざっと集めてダストボックスに入れたのだ。


「よろしくね!ハルちゃん!!」

「はいっ!」


私はカウンターの下から吸水スポンジのフローラルフォームとアレンジ用のバスケットを取り出した。

茶色に白、ピンクに黒と、大小大きさの違うバスケットに合わせてフローラルフォームをカットし、それを水の入ったバケツに浮かべる。


(フローラルフォームが水を吸って沈むまでの間に花を決めなきゃ。)


ディスプレイしてある花たちをいくつか取り、カウンターに並べていく。

カーネーションにデンファレ、ユリにバラ、紫は大ぶりのトルコキキョウに決めた。

グリーンもいくつか用意し、どう作るかをイメージする。


(3000円のアレンジメントはボリュームあるように見せたいし、8000円のは種類を増やして豪華に・・・)


バスケットにカラービニールを敷き、水を吸って沈んだフローラルフォームを置いた。

着けてるエプロンのポケットから花ばさみを取り出して、作業に入る。


(これはこっち・・ここは多く・・この辺にグリーン入れて・・・)


バスケットの形や大きさに見合うように花たちの茎をカットし、挿していく。

イメージに合うようにお花を足し、ボリュームを考え、所々にピックタイプのリボンも入れてバランスを整えていった。


(こちらの方はお祝い、こちらは記念日、こちらは・・・)


用途や相手の年齢を考えてはしゃぎすぎないように調節していく。

決まった時間に終わらせるために、時計をチラチラ見ながら進めていった。

そして・・・


「できた・・!!」


私は午前10時になる少し前に6個のアレンジメントを作り終えることができたのだ。


「お疲れ!ハルちゃん!伝票はできてるからお引き渡しの棚にお願い!」

「はいっ!」


私はすぐさま『予約引き渡し用の棚』にアレンジメントたちを運んだ。

夏美さんが伝票を持って来てくれて、それを貼って行く。


「よし、お店開けるよー!」


夏美さんがお店のドアを開け、今日も接客の一日が始まった。




ーーーーー



「ふー・・ちょっと落ち着いたね。」


お客さまの波が引き、時間に余裕ができたことに気がついたのは午後2時のことだった。

減ったお花を補充し、道行く人が手に取りやすいように小さなブーケを店の外に並べた時に夏美さんが言ったのだ。


「そうですねー。この後はしばらく時間空きそうですし・・夏美さんお昼行ってきます?」


空いた時間にぱぱっと食べることが多い私たちは、時間をずらして食べることにしてる。

大体お昼過ぎがお客さまの波が引き、夕方に少し混むのがいつものパターンなのだ。


「いいの?じゃあダッシュで食べて来るねー!」


そう言って夏美さんはバックヤードに入っていった。

私はお客さまがいない間に備品の補充や明日の予約のチェックを済ませておく。


「えーと・・リボンは予備が1,2,3・・・うん、大丈夫。明日の予約もそんなに多くないし大丈夫だね。」


一人ぶつぶつ言いながらカウンターでチェックをしてると、お店の扉が開く音が聞こえた。


カランカラン・・・


「いらっしゃいませー。」


音に反応して扉を見ると、グレーのスーツを着たお客さまが立っていた。



「こんにちは、秋篠さん。」




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